多血小板血漿費用と保険適用の現状

多血小板血漿費用と保険適用

この記事のポイント
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治療費の相場

治療部位や使用システムにより5万円から50万円と幅広い価格設定

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保険適用の範囲

難治性皮膚潰瘍のみが保険適用、その他は自由診療で全額自己負担

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治療回数と効果期間

効果は数か月から半年持続、症状により1~3回の治療を推奨

多血小板血漿治療の費用相場と内訳

多血小板血漿(PRP)療法の費用は、治療部位や利用するシステムにより大きく異なります。一般的な費用相場は5万円から30万円前後と幅広く設定されており、白血球をなるべく含まないように作製するACPであれば費用が安く、次世代システムであるAPSの場合は費用が高くなる傾向があります。

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整形外科領域における具体的な費用として、変形性膝関節症に対する第2種関節内注射を片ひざに4週ごとに6回投与した場合、77,000円×6回+ウイルス検査代5,500円で合計467,500円(税込)となります。半月板損傷に対して3回投与した場合は、片ひざで236,500円(税込)です。順天堂大学医学部附属順天堂医院では、一回のPRP注射にかかる費用が26,400円(両膝の場合は52,800円)+第二種再生医療実施料(13,200円)となっています。

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美容目的のPRP療法の場合、顔全体の施術で20万円から50万円、目の下(両側)で10万円弱から20万円、ほうれい線では10万円弱から30万円程度が相場です。PRP療法が登場した当初は顔全体で100万円を超える高額な料金がかかりましたが、現在はそれほど高くありません。

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治療費用の内訳には、血液採取費用、血液感染症検査費用、PRP作成費用、施術料、麻酔代金が含まれます。患者の症状の重さによっては、手技料として別途料金が発生する可能性もあります。​

多血小板血漿療法における保険適用の現状

多血小板血漿療法は、2023年5月現在、保険適用外の自由診療として扱われており、治療にかかる費用は全額自己負担となります。ただし、難治性皮膚潰瘍に対する自家多血小板血漿(PRP)を用いた治療は、2020年4月に保険適応が認められました。

参考)https://prs-kpum.jp/prp.html


難治性皮膚潰瘍に対する多血小板血漿処置は、トラフェルミン(遺伝子組換え)を用いた治療または局所陰圧閉鎖処置を28日以上行っても効果が得られない場合に限り算定できます。一連につき2クールを限度として行い、1クール(4週間に限る)につき1回を限度として算定されます。

参考)診療報酬


変形性膝関節症の再生医療のうち、保険適用されるのは「自家軟骨培養移植」のみで、2013年4月から健康保険が適用されています。ただし、保険適用される自家軟骨培養移植は、膝関節における外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎に限られています。変形性膝関節症に対する「脂肪由来幹細胞移植」「PRP療法」「APS療法」については保険適用にはなっておらず、自由診療として全額自己負担となります。

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2024年10月1日からは、J003-4【多血小板血漿処置】を取得するための施設基準ルールについて一部見直しが行われました。

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多血小板血漿療法の効果持続期間と治療回数

多血小板血漿療法の効果は、個々の体質や治療部位によって異なりますが、1回の治療で数か月から半年程度持続することが多いとされています。治療後数か月間は効果を強く感じられる時期ですが、その後徐々に落ち着いていくため、効果が薄れる前に再治療を行うことで持続的な改善が期待できます。

参考)PRP療法の効果はどのくらい持続する?何回受けると良いの?そ…


PRP療法のおすすめの治療回数は、改善したい症状や患者の目的によって異なりますが、一般的には1~3回が推奨されています。美容目的の場合は、初回の治療後から1~2か月後に2回目の治療を推奨しており、短期間で治療を行うと美容効果をより発揮するからです。​
PRPに成長因子を加えるなどの工夫により、効果を3年以上持続させることも可能といわれています。ただし、PRP療法は繰り返し治療を受けることで効果を積み重ねることができるため、おすすめの治療頻度は約2~3か月に1回、または半年に1回程度です。

参考)PRP療法の効果はいつから現れる?持続期間はどのくらい?PR…


効果の程度や現れる時期、効果の持続時間には個人差が見られますが、PRP療法は患者自身の血液を利用するため、副作用のリスクが少ないメリットがあります。治療後は一時的に炎症が起きるため、痛みや腫れ、赤みなどの症状が出ることがありますが、これらの症状は自然に消えていきます。

参考)PRP療法のメリット・デメリットは?効果や費用も紹介

多血小板血漿療法の種類による費用差

多血小板血漿療法には、基本的なPRP療法のほかに、次世代システムとして注目されるAPS(自己タンパク質溶液)療法があり、これらの違いが費用に大きく影響します。PRP療法では血小板を多く含む血漿を抽出するのに対し、APS療法ではPRPをさらに遠心分離・処理して特定タンパク質を濃縮します。

参考)PRP療法とAPS療法の違いとは?効果・治療法・注目の再生医…


APS療法は関節に特化したPRP療法とされており、変形性膝関節症や変形性股関節症などの治療におすすめですが、費用が30万円前後と高めのクリニックが多いため、医師と相談して決めることが重要です。APSは血液からPRP(多血小板血漿)を分離し特別な加工を加えることで、膝関節症の治療に有効といわれる成分を高濃度に抽出するため、次世代PRPとも呼ばれています。

参考)https://www.hiro-clinic-kobe.jp/prp.pdf


使用する血液量にも違いがあり、PRP療法では一般に10~20ml前後を使用するのに対し、APS療法では約50~60ml程度を使用します。主な成分として、PRP療法は血小板由来の成長因子を含み、APS療法は成長因子と抗炎症性サイトカインを含みます。​
PDF-FD療法は、PRP療法を応用した技術で、血漿由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものを使用します。のりまつ整形外科・骨粗しょう症クリニックでは、PDF-FD療法をキャンペーン価格として1回目98,000円(税込)、2回目以降88,000円(税込)で提供しています。

参考)バイオセラピー(PRP療法)|仙川駅|千歳烏山駅|のりまつ整…

多血小板血漿療法の副作用とリスク

多血小板血漿療法では、自分自身の血液を使用するため基本的に副作用は起きないと考えられています。患者自身の血液を用いるため、免疫反応の起きる可能性は極めて低いと考えられます。また、採血と注射のみで終わるため、患者の体への負担も少なくて済みます。

参考)PRP(多血小板血漿)療法のご相談は仙川の「仙川整形外科」


ただし、PRPを注射した後は3~4日間、赤みやかゆみ、痛み、腫れなどが出ることがあります。個人差はあるものの一時的に炎症が起きるので、痛みや腫れ、赤みなどの症状が出ますが、それらの症状は自然に消えていくので様子をみるようにしてください。​
治療後の数日間は、長時間の入浴や運動などの血流が良くなる活動を行うと治療に伴う痛みが強くなる可能性があります。関節は細菌による感染に弱いので、治療後は清潔に保つようにしてください。治療当日は、入浴や飲酒、喫煙、激しい運動やマッサージは控えるようにしましょう。​
がんやリウマチ膠原病などで治療中の方や重篤な合併症(心疾患、肺疾患など)などがある方の場合は治療ができないことがあります。また、消炎鎮痛剤などの痛み止めを服用している場合、治療の1週間前から服用を中止いただく場合があるので、治療を検討している方は、ご自身がPRP療法を受けることができるか治療を受ける医師に確認する必要があります。

参考)https://kansetsu-life.com/comm_rept/3_48.html

変形性膝関節症における多血小板血漿治療の実際

変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療は、安全性が高く、膝関節痛軽減効果が期待できることが示されています。変形性膝関節症に対する従来の治療法として、日本ではヒアルロン酸関節内注射が保険診療として行われていますが、変形性関節症に対する最新の国際治療ガイドライン(国際関節症学会、アメリカ整形外科学会など)では、ヒアルロン酸の治療効果が不明確または非推奨となっています。

参考)https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/published_plan/download/03C1902006/5/0


多血小板血漿治療は、細胞提供者および再生医療等を受ける者が同一であり全て任意です。本治療は患者自身から採血した血液に含まれている多血小板血漿を取り出し、患者の関節腔内に戻す治療です。多血小板血漿関節内注射治療は、血液を固める性質をもつ血小板を取り分けて、少量の血漿と一緒に関節腔内に注射し、膝関節の痛みを軽減できる可能性があります。

参考)https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/published_plan/download/03E2405011/5/0


プロスポーツ選手から学生スポーツ、中高年のスポーツ愛好家まで、幅広い対象の方にこの治療法が行われています。他院で手術加療を勧められたが決心がつかず、最後の保存療法としてPRP療法を希望して来院され、PRP療法が奏効して手術を回避できた方も複数います。非常に副作用の少ない治療ですので、数ある保存加療のうちの一つの選択肢として、特に既存の治療法への反応が乏しい方への実施がお勧めされています。

参考)多血小板血漿(PRP)による治療について|順天堂大学医学部附…


PRP療法実施日の痛み止めや湿布の処方、および検査もすべて自費となりますので注意が必要です。治療後にはリハビリテーションが必要で、リハビリテーションは治療の翌日から約1か月間、関節の動きを確認しながら頻度を調整していきます。​