ステロイド点眼薬副作用と眼圧上昇リスク対策

ステロイド点眼薬の副作用

小児の半数以上が眼圧上昇する

この記事の3つのポイント
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眼圧上昇の高頻度発生

成人の約30%、小児ではさらに高頻度でステロイド点眼薬により眼圧上昇が発生。自覚症状がないまま進行するため定期的な眼圧測定が必須

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3大副作用のメカニズム

眼圧上昇・ステロイド白内障・易感染性という3つの重大な副作用が発生。房水流出抵抗の増大や免疫抑制作用が原因

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適切なモニタリング体制

2〜3週間ごとの眼圧測定と細隙灯顕微鏡検査が推奨。レスポンダー体質の患者では1〜2週間で眼圧上昇が起こる可能性

ステロイド点眼薬による眼圧上昇の発生頻度

 

ステロイド点眼薬を使用すると、予想以上に多くの患者で眼圧上昇が発生します。日本眼科医会の最新データによると、0.1%デキサメタゾン点眼薬を使用した場合、正常者の約5〜6%に高度な眼圧上昇、約30%に中等度の眼圧上昇が認められています。つまり、成人患者の約3分の1がステロイド点眼薬に反応して眼圧が上がる可能性があるということです。

さらに注意が必要なのが小児患者です。小児では成人よりもさらに高頻度で眼圧上昇が発生することが複数の研究で報告されています。10歳未満の小児を対象とした臨床研究では、0.1%デキサメタゾン点眼による眼圧上昇の頻度が成人を大きく上回ることが確認されました。

眼圧上昇の程度も個人差が大きいです。眼圧が16mmHg以上上昇する患者が5%、6〜15mmHg上昇する患者が29%存在するという報告があります。正常眼圧は10〜21mmHg程度ですから、15mmHgの上昇があれば30mmHgを超える高眼圧状態になる可能性があります。これは東京ドーム内の気圧が急激に上昇するようなイメージで、眼球内部に強い圧力がかかっている状態です。

この眼圧上昇には自覚症状がほとんどありません。患者自身が気づかないまま数週間から数ヶ月にわたって高眼圧状態が続くと、視神経が徐々に損傷を受け、不可逆的な視野障害を引き起こします。

これが「ステロイド緑内障」です。

日本眼科医会によるステロイド治療薬の眼圧上昇リスクに関する詳細なガイドラインはこちら

ステロイド点眼薬の主要な副作用メカニズム

ステロイド点眼薬には3つの重大な副作用があります。

眼圧上昇とステロイド緑内障

眼圧上昇は最も警戒すべき副作用です。ステロイドは眼内の房水(目の中を循環する液体)の流出を妨げる作用があります。房水は毛様体という組織で産生され、線維柱帯というフィルターのような構造を通って眼外に排出されます。ステロイドはこの線維柱帯の細胞に作用し、房水流出抵抗を増大させるため、眼球内に房水が溜まって眼圧が上昇するのです。

眼圧上昇は通常、ステロイド使用開始後1〜2週間から数週間で発生します。強力なステロイド点眼薬(ベタメタゾン、デキサメタゾンなど)を使用している場合や、点眼回数が多い場合、継続期間が長い場合ほど眼圧上昇のリスクが高まります。高眼圧状態が持続すると、視神経が圧迫されて視神経乳頭の陥凹(へこみ)が進行し、視野欠損が生じます。

つまり眼圧上昇が原因ですね。

ステロイド白内障の発症リスク

長期的なステロイド使用により、水晶体が濁る白内障が発症することがあります。特に「後嚢下白内障」と呼ばれるタイプが特徴的で、水晶体の後ろ側(後嚢の直下)から濁りが始まります。この部位は光の通り道にあたるため、比較的早期から視力低下や眩しさ、かすみなどの症状が現れやすいです。

ステロイド白内障は、点眼薬よりも内服薬や吸入薬で問題となることが多く、数ヶ月から数年の使用で症状が出現します。ステロイドが水晶体のタンパク質構造に作用し、酸化ストレスを増加させることが原因と考えられています。

易感染性による感染症リスク

ステロイドには強力な免疫抑制作用があります。炎症を抑える効果がある一方で、眼の局所的な免疫力を低下させるため、細菌・ウイルス・真菌などの感染症にかかりやすくなります。

特に危険なのが、既存の角膜ヘルペスや細菌性角膜炎がある状態でステロイド点眼薬を使用した場合です。ステロイドは病原体の増殖を抑える免疫反応を弱めてしまうため、感染症が急速に悪化し、角膜穿孔(角膜に穴が開く)や眼内炎といった重篤な合併症を引き起こすことがあります。

結論は感染リスクの増大です。

ステロイド点眼薬のレスポンダーと遺伝的要因

ステロイドによって眼圧が上昇しやすい体質の人を「ステロイドレスポンダー」と呼びます。人口の約4〜6%がこの体質に該当すると報告されていますが、実際の臨床現場ではより高い割合でレスポンダーが確認されています。

レスポンダー体質には遺伝的な要因が関与していると考えられています。複数の研究で、線維柱帯の細胞におけるステロイド受容体の感受性や、房水流出路の構造的な特徴に個人差があることが示されています。原発開放隅角緑内障の患者やその近親者、糖尿病患者では、レスポンダー体質である可能性が高いことも知られています。

レスポンダーの人は、強力なステロイド点眼薬を1〜2週間使用しただけで眼圧が大幅に上昇することがあります。場合によっては30〜40mmHgといった危険な高眼圧状態になることもあります。これは通常の2倍近い圧力で、視神経への損傷が急速に進行するリスクがあります。

レスポンダー体質が基本です。

重要なのは、レスポンダー体質かどうかは事前に完全には予測できないという点です。遺伝的素因に加えて、年齢、既往歴、併用薬などの複数の要因が関与するため、ステロイド点眼薬を使用するすべての患者で定期的な眼圧測定が必要になります。

非レスポンダーの人でも、長期間のステロイド使用により徐々に眼圧が上昇してくることがあります。短期間でレスポンダー体質が確認されなかった患者でも、数ヶ月以上の継続使用では眼圧モニタリングが必須です。

ステロイドレスポンダーの詳細な臨床的特徴についてはこちら

ステロイド点眼薬使用時の適切なモニタリング方法

ステロイド点眼薬を安全に使用するためには、適切な頻度でのモニタリングが不可欠です。日本眼科学会のガイドラインでは、ステロイド点眼薬使用中は2〜3週間ごとの眼科受診が推奨されています。

初回処方時の評価

ステロイド点眼薬を処方する前に、患者の背景リスクを評価することが重要です。緑内障の既往、家族歴、糖尿病の有無、過去のステロイド使用歴などを確認します。ベースラインの眼圧を測定し、比較の基準値とします。また、細隙灯顕微鏡検査で角膜や前房の状態、感染症の有無を確認します。

使用開始後のモニタリング頻度

使用開始後1〜2週間で最初の眼圧測定を行います。特にレスポンダー体質が疑われる患者や、強力なステロイド(ベタメタゾン、デキサメタゾン)を使用している場合は、1週間後の早期チェックが推奨されます。

2〜4週間の使用では、2〜3週間ごとのモニタリングが適切です。この時期に眼圧上昇が検出されることが多いため、見逃さないよう注意が必要です。

1ヶ月以上の長期使用では、継続的に2〜4週間ごとの眼圧測定を続けます。3ヶ月以上の使用では、眼圧測定に加えて視神経乳頭の評価や視野検査も検討します。

これが条件です。

小児患者への特別な配慮

小児では眼圧上昇の頻度が成人より高いにもかかわらず、検査への協力が得にくいという問題があります。可能な限り非接触式の眼圧計を使用し、短時間で確実に測定できる工夫が必要です。小児にステロイド点眼薬を使用する場合は、特に慎重な判断と頻回のモニタリングが求められます。

他科との連携体制

皮膚科や耳鼻咽喉科、内科などでステロイド治療を受けている患者では、眼科との連携が重要です。顔面や眼周囲へのステロイド軟膏の塗布、全身的なステロイド内服でも眼圧上昇のリスクがあるため、定期的な眼科紹介が推奨されます。

医療機関間で情報共有を行い、患者がどのようなステロイド治療を受けているか把握することで、眼圧上昇を早期に発見できる体制を構築することが望ましいです。

ステロイド点眼薬使用における他剤形の影響と注意点

ステロイドによる眼圧上昇は、点眼薬だけでなく他の剤形でも発生することが知られています。特に医療従事者が見落としやすいのが、眼周囲への軟膏塗布や全身投与による影響です。

眼周囲ステロイド軟膏の吸収経路

アトピー性皮膚炎や眼瞼湿疹の治療で、まぶたや眼周囲にステロイド軟膏を塗布することがあります。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、ランクが高いステロイドを眼周囲に使用すると、塗布回数や期間に応じて眼圧上昇や緑内障のリスクが高まると明記されています。

皮膚から吸収されたステロイドは血流を介して眼組織に到達します。また、手指についたステロイド軟膏が誤って眼に入ることもあります。顔面や頭皮への塗布でも、遠隔部位であっても眼圧上昇を来すのに十分な量が吸収される可能性があります。

実際の症例報告では、2年間から14年間にわたり眼周囲にステロイド軟膏を塗布していた患者で、軽度から中等度の眼圧上昇が確認されています。長期使用により徐々に房水流出抵抗が増大し、緑内障に移行するケースもあります。

全身投与(内服・吸入・注射)の影響

全身的なステロイド投与でも眼圧上昇は起こります。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでは、「副腎皮質ステロイド薬であれば種類や投与方法にかかわらず眼圧上昇を来しうる」と記載されています。

内服ステロイドは、喘息、リウマチ性疾患自己免疫疾患など多くの疾患で使用されます。吸入ステロイドは喘息やCOPDの治療で日常的に使用されています。これらの全身投与は点眼薬と比較すれば眼への影響は少ないものの、長期使用では眼圧上昇のリスクが存在します。

痛いですね。

投与期間は1週間から数年と一定しておらず、個人差が大きいのが特徴です。全身投与を受けている患者には、定期的な眼科受診を勧めるべきです。特に高用量のステロイドを長期間使用している場合や、複数の剤形を併用している場合は、眼圧上昇のリスクが相加的に高まります。

点眼薬の種類と力価の違い

ステロイド点眼薬にはさまざまな種類があり、抗炎症作用の強さ(力価)が異なります。デキサメタゾンやベタメタゾンは力価が高く、眼内移行も良好なため、強力なステロイド点眼薬として認識されています。一方、フルオロメトロン(フルメトロン)は比較的マイルドな作用です。

臨床現場でよく使用される点眼薬として、フルメトロン、オドメール、ビジュアリン、サンベタゾンリンデロンなどがあります。作用の強さは一般にフルメトロン < サンテゾーン < リンデロンの順に強くなります。

強力なステロイドほど眼圧上昇のリスクが高いため、症状の重症度に応じて適切な力価の薬剤を選択することが重要です。軽症例ではまずマイルドなステロイドから開始し、効果不十分な場合にステップアップするアプローチが推奨されます。

患者の訴えや炎症所見を詳細に評価し、必要最小限の力価・投与量・投与期間でコントロールすることが、副作用リスクを最小化する鍵となります。症状改善後は漫然と継続せず、計画的に減量・中止することが大切です。

ステロイド点眼薬の使い方に関する詳細な臨床ガイダンスはこちら

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