錐体外路症状 覚え方 語呂合わせ
錐体外路症状の覚え方:パーキンソニズム・アカシジア・ジストニア・ジスキネジア
錐体外路症状は、意思とは関係なく出現する不随意運動や筋緊張異常が中心で、明らかな運動麻痺がないことが特徴、とまず定義で押さえます。看護系の用語解説でも、錐体外路は姿勢・運動の「無意識的」なコントロールに関わる点が強調されています。
次に、臨床で“とりあえず”困るのは「何が起きているかを素早く分類できない」ことです。そこで、覚え方は細部からではなく、4つの名前をワンセットで固定します。
【語呂合わせ(基本形)】
✅「パ・ア・ジ・遅ジ(パアジおくじ)」
- パ:パーキンソニズム(動作が遅い/固い/振える系)
- ア:アカシジア(じっとしていられない系)
- ジ:急性ジストニア(ねじれる・つっぱる・眼球上転など急な異常姿勢)
- 遅ジ:遅発性ジスキネジア(口周囲・舌などの不随意運動が“遅れて”出る)
語呂は完璧である必要はなく、重要なのは「4つのラベルが頭の中で必ず並ぶ」ことです。錐体外路症状は“種類名の暗記”が第一関門で、これが曖昧だと以後の対応(減量?抗コリン?経過観察?)が全て遅れます。
さらに“覚えやすさ”を上げるなら、症状の手触りで短いフレーズに落とします。
【症状の手触りで覚えるミニ語呂】
- パーキンソニズム:🧊「固い・遅い」
- アカシジア:🔥「そわそわで座れない」
- 急性ジストニア:🔧「ねじれて固定される」
- 遅発性ジスキネジア:👄「口が勝手に動く(遅れて)」
看護roo!の解説では、錐体外路症状は運動減少(例:筋強剛、寡動)と運動過多(例:振戦、ジストニアなど)に大別できるとも示されます。ここを“二分法”として持っておくと、症状を見た瞬間に「減少系か?過多系か?」の当たりが付きます。
錐体外路症状の覚え方:発症時期(数時間〜数年)で語呂合わせ
EPSを現場で強くするのは、症状の名前よりも「いつ起きたか」を問う習慣です。精神科領域の副作用まとめでも、急性ジストニアは投与開始後数時間〜数日、アカシジアは数日〜数週間、薬剤性パーキンソニズムは数週間〜数か月、遅発性ジスキネジアは数か月〜数年以上という“時間の階段”で整理されています。
【時間で覚える語呂(階段法)】
⏱️「ジ(数日)→ア(数週)→パ(数月)→遅ジ(数年)」
- ジストニア:最短で出る
- アカシジア:その次に出る
- パーキンソニズム:さらに遅い
- 遅発性ジスキネジア:最も遅い
この順番を丸暗記できると、問診の一言で候補が絞れます。例えば「開始翌日に首が変にねじれて目が上を向く」は、知識がなくても“数日=ジストニア”へ寄せられます(もちろん鑑別は要りますが、初動が速い)。
また、遅発性ジスキネジアは“一度出ると不可逆的な場合がある”点が問題になります。統合失調症薬物治療のガイドラインでも、遅発性ジスキネジアは抗精神病薬服用後数か月してから生じ、治療方法が確立されていないことが明記されています。
参考:遅発性ジスキネジアの記載(不可逆の可能性・治療確立の難しさ)
つまり、語呂合わせは単なる試験対策ではなく、「遅い副作用を早めに疑う」ための安全装置にもなります。
錐体外路症状の覚え方:抗精神病薬と線条体D2受容体(意外と“数字”が効く)
錐体外路症状は、黒質線条体ドーパミン経路(いわゆる錐体外路の中核に関わる経路)でのドーパミン遮断が一因になり得ます。製薬企業の啓発ページでは、線条体でD2受容体の占拠率が高くなると錐体外路症状が出現し得ること、PET研究で「75〜80%以上の占拠でEPSが発生しやすい」一方「65〜70%以上で抗精神病効果が表れやすい」ことが紹介されています。
ここが意外に“覚え方”として効く理由は、症状名よりも数字の方が記憶に残りやすい人が一定数いるからです。
【数字で覚えるフック】
- 「D2は“7割で効いて、8割で固まる”】【※イメージ】
※厳密な境界ではなく、臨床研究の紹介に基づく目安として理解するのが安全です。
さらに、第一世代抗精神病薬(FGA)より第二世代抗精神病薬(SGA)の方がEPSリスクが低い傾向がある、という整理も、対応方針とセットで覚えやすくなります。統合失調症薬物治療のガイドラインでは、薬剤性パーキンソン症状が出た場合の抗精神病薬変更はSGAなどリスクが低い薬剤が望ましい、また予防としてもFGAよりSGA選択が望ましい、と書かれています。
つまり暗記は、
「FGAで起きやすい→SGAへ」
という“方向”を一緒に刷り込むと、臨床で迷いにくくなります。
錐体外路症状の覚え方:対応(減量・中止・変更)と抗コリン薬の位置づけ
EPSを覚える目的が「国試」だけなら症状名で終われますが、医療従事者向けの記事なら“次の一手”までセットにして初めて実用です。統合失調症薬物治療のガイドラインでは、薬剤性パーキンソン症状が発現した際は原則として原因薬剤を減量し、重篤なら一旦中止し、他の抗精神病薬へ(SGAなどリスクが低い薬剤が望ましい)と整理されています。
【対応の覚え方(語呂)】
🧯「げん・ちゅう・かえ」
- 減:減量(まずここ)
- 中:中止(重篤なら)
- 変:変更(SGAなどへ)
そして、抗コリン薬は“何でも足す薬”ではありません。ガイドラインでは、やむを得ず抗コリン薬を追加する場合は抗コリン性副作用に注意、と明記されています。
また急性ジストニアについても、発現時は原因薬の減量・中止・変更が原則で、次に抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジル)や抗ヒスタミン薬(プロメタジン)の投与を考慮する、という流れが提示されています。急性ジストニアは通常投与後3日以内に生じ、眼球上転や頸部・躯幹の捻転が好発部位で、まれに喉頭ジストニアなど生命に関わる場合があることも注意点として書かれています。
【臨床での“覚え間違い”を防ぐ注意】
- アカシジアを「不安」と誤認すると、抗精神病薬の増量や別の鎮静だけで悪化することがあります(焦燥と静座不能がセットならEPS側も疑う)。アカシジアは強い不安焦燥感を伴い、希死念慮や自殺企図、他害の誘因となることもあるとガイドラインで注意喚起されています。参考:アカシジアと自殺リスク等の注意
この「誤認しやすい」点まで含めて覚えると、語呂合わせが“安全管理”に変わります。
錐体外路症状の覚え方(独自視点):患者の言葉を“トリガー文”で収集する語呂
検索上位は症状の羅列や語呂が中心になりがちですが、現場で差がつくのは「患者の言葉→副作用候補」への変換速度です。そこで独自視点として、問診で使える“トリガー文”を語呂化します(看護・薬剤・医師いずれの職種でも使いやすい形式)。
【患者の言葉トリガー:EPS版】
🗣️「座れない」=アカシジア
🗣️「首が勝手に回る/目が上を向く」=急性ジストニア(早い)
🗣️「動き出しにくい/表情が固い/歩幅が小さい」=パーキンソニズム(遅め)
🗣️「口がもごもご勝手に動く/舌が勝手に動く」=遅発性ジスキネジア(かなり遅い可能性)
この“トリガー文”は、錐体外路症状が不随意運動や筋緊張異常を特徴とする、という基本定義に沿って作っています。定義レベルがブレないため、スタッフ間の情報共有(申し送り)でも再現性が高くなります。
さらに、時間軸の語呂(ジ→ア→パ→遅ジ)を問診テンプレに組み込むと、聞き漏らしが減ります。
【聞き方のテンプレ(そのまま使える)】
- いつから?(開始日と薬剤開始・増量のタイミング)参考:発症時期の違い
- じっとできる?歩ける?首や目は?口や舌は?(4分類をなぞる)
- 生活上の困りごとは?(転倒、嚥下、仕事、睡眠など)
「語呂合わせ=暗記」から一段進めて、「語呂合わせ=問診の順番」にすると、覚えた知識が臨床で自然に回り始めます。
(日本語の権威性ある参考リンク:ガイドライン該当箇所)
抗精神病薬の薬剤性錐体外路系副作用(治療・予防、アカシジアの自殺リスク注意など):日本神経精神薬理学会 統合失調症薬物治療ガイドライン(第3章)

DIEPSS(薬原性錐体外路症状評価尺度 英語版)