垂直眼振 犬の前庭疾患
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垂直眼振 犬の眼振と前庭疾患の基本
犬の眼振は、前庭入力の左右差やそれを補正する眼球運動系の破綻で生じ、臨床的には「前庭症候群」を構成する主要徴候として扱われます。
前庭症候群は大きく末梢(内耳〜前庭神経)と中枢(脳幹・小脳)に分けて考えるのが実務的で、病変部位により併発徴候と経過が変わります。
臨床現場では「水平・回旋性の眼振は末梢/中枢どちらもあり得るが、垂直眼振は中枢性を強く疑う」という整理が、トリアージの起点になります。
垂直眼振を見逃さないためには、眼振の方向だけでなく、①自発眼振か、②頭位変換で誘発/方向変化するか、③意識・姿勢反応・眼位の異常が併存するか、を同時に記録します。jvma-vet+1
また、眼振は時間経過で変化するため、初診時の動画記録は情報価値が高く、再診時の変化(改善・固定・悪化)を客観化できます。
参考)https://koshigayavet.jp/wp/blog/3058/
嘔吐や悪心、食欲低下を伴うことも多く、全身状態の悪化(脱水、転倒リスク)への初期対応も診断精度に影響します。
参考)犬のめまい(眼振)の原因は?|眼振は脳腫瘍の可能性もある
垂直眼振 犬で中枢性を疑う所見と鑑別
垂直眼振は「通常、中枢性前庭疾患の場合だけでみられる症状」と整理されることがあり、中枢病変の可能性を最優先に評価します。
中枢性前庭障害を示唆する所見として、意識障害、姿勢反応異常、不全麻痺、垂直自発眼振、頭位変換での眼振方向の変化などが挙げられ、これらがあれば中枢性前提で診断を進める必要があるとされています。
鑑別としては、脳幹・小脳の炎症、腫瘍、脳梗塞/血管障害、外傷/出血などが典型で、末梢性より経過が重いケースがある点も臨床上重要です。
一方で、末梢性前庭疾患の代表は中耳炎/内耳炎、特発性前庭疾患などで、臨床ではこちらの頻度が高いことも多いため、局在推定を誤ると精査の優先度がずれます。roots-ah+1
そのため「垂直眼振=必ず中枢」と短絡せず、神経学的検査全体の整合性(前庭+他の脳幹徴候の有無)で“疑う強さ”を段階化すると安全です。shinkei+1
特に高齢犬で急性発症し、神経徴候が軽微でも、血管障害(例:小脳梗塞)を含めて画像で裏を取りたくなる状況がある点は、現場感として押さえておく価値があります。
参考)https://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2013/09/topics.vol_.17.pdf
垂直眼振 犬の検査とMRIの考え方
中枢性前庭障害が疑われる場合、身体検査と神経学的検査に加えて、血液検査や画像検査を組み合わせ、必要に応じて脳のMRI検査などで鑑別する必要があると説明されています。
脳梗塞を疑うケースではMRIが診断に必須とされ、画像上の特徴(限局性、くさび型、T2高信号/T1低信号、mass effectが乏しい等)を手掛かりに評価します。
末梢性前庭疾患でもMRIは鑑別に役立ち、原因(例:中耳・内耳領域の病変、末梢性の背景疾患)を整理するうえで有用な場合があります。
現場では「いつMRIを勧めるか」が悩みどころですが、垂直眼振を含む中枢性を示唆する所見がある場合は、説明の段階で“画像検査の優先度が上がる”ことを明確に伝えると同意形成が進みやすいです。ac-animalhospital+1
加えて、頭位変換で眼振方向が変わる、姿勢反応異常がある、意識レベルが普段と違う、といった情報は、MRI適応の後押し材料としてカルテに具体的に残せます。
参考)https://jvma-vet.jp/mag/07604/i1.pdf
「急性で非進行性に見える」ケースでも、病変が小さくても局在が重要(脳幹・小脳)なことがあるため、症状の“軽さ”だけで見送らない設計が求められます。
垂直眼振 犬の治療と予後の伝え方
治療は原因療法+対症療法の組み立てになり、前庭症状による悪心・嘔吐・食欲不振に対しては制吐や支持療法を行い、転倒防止の環境調整も重要になります。
末梢性前庭疾患の原因として頻度が高い中耳炎/内耳炎では、洗浄と抗菌薬などが一般的治療として挙げられ、適切な薬剤選択が必要とされています。
一方で中枢性(脳炎、腫瘍、脳梗塞など)が疑われる場合は、画像・髄液検査等で方針を分岐し、病態に応じて抗菌/抗真菌、免疫抑制、脳圧管理、抗てんかん薬などを検討する流れが示されています。
予後説明は“疾患名”より“局在と進行性”で整理すると伝わりやすく、末梢性(特発性など)では数日〜数週間で改善していくことが多いと説明される一方、中枢性は経過が悪いケースがあるとされています。koshigayavet+1
ただし末梢性でも斜頸が残ることがあるなど、症状ごとの回復速度が一致しない点は、飼い主の不安を減らすために先に共有すると有用です。
参考)【獣医師監修】 首がねじれる、目が回る!ペットに起こる前庭障…
垂直眼振がある犬では、生命予後だけでなく「転倒・誤嚥・脱水」など短期リスクを具体的に挙げ、入院や集中ケアの必要性を判断します。roots-ah+1
垂直眼振 犬で見落としやすい独自視点
独自視点として強調したいのは、「眼振の“方向”は重要だが、眼振の“文脈”(誘発条件・変動性・随伴徴候)を構造化しないと、局在推定がぶれる」という点です。
たとえば頭位変換で眼振方向が変化する所見は中枢性を前提に診断を進めるべきサインとされ、単発の観察よりも“条件付きで再現できるか”が情報価値を上げます。
また、前庭症状の背景に小脳・脳幹・視床などの限局病変が隠れることがあり、同じ「ふらつき」でもMRIで病変部位が異なるケース報告が存在します。
さらに、末梢性前庭疾患の頻度が高い現場では「よくある前庭」として片付けたくなる場面が出ますが、垂直眼振が混じるときは“例外ルール”として扱い、説明と同意の段取りを変えるのが安全です。otaka.21ah+1
具体的には、①神経学的検査の記録の粒度を上げる、②動画を残す、③再診の時間軸を短く設定する、④画像検査(MRI)の説明を早期に行う、という運用が現実的です。ac-animalhospital+1
「垂直眼振+他の中枢サインがない」ように見える場合でも、観察の不足(暗室での眼振評価不足、緊張での抑制、短時間での消失)で“ないことになっている”ケースが起こり得るため、評価手順の標準化が有効です。
中枢性前庭障害を疑う所見(垂直眼振など)について:https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/921
前庭疾患の診断と治療(中枢性を示唆する所見の整理):https://shinkei.com/data/shoroku/20/kyoiku/5.pdf
脳梗塞とMRI所見(犬にもある脳梗塞):https://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2013/09/topics.vol_.17.pdf