出血性虹彩炎と原因と治療
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出血性虹彩炎の原因と鑑別と前房出血
出血性虹彩炎は「虹彩炎(前部ぶどう膜炎)に前房出血(hyphema)が合併した状態」を臨床的に指すことが多く、まず“出血の出どころ”と“炎症の出どころ”を同時に追う必要があります。前房出血は重力で下方に沈殿し鏡面形成を作るため、量が少なくてもスリットで腹側を丁寧に観察すると拾いやすい一方、量が多いと虹彩・水晶体・眼底観察を妨げ、鑑別が一気に難しくなります。
原因の大枠は、(1)外傷(鈍的/穿孔性)(2)感染(特にヘルペス属など)(3)血液凝固異常・抗凝固薬関連(4)虹彩新生血管や腫瘍(仮面症候群を含む)(5)強い炎症で血液房水関門が破綻するケース、に整理すると考えやすいです。一般にぶどう膜は血管が多く炎症を起こしやすい組織で、炎症が隣接組織へ波及して視力低下に至ることがあるため、「出血だけ」よりも危険度が上がります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a9bc98c10f34b74c955796d8c0778f6f63938255
鑑別の落とし穴は、前房出血が見えると外傷に引っ張られがちな点です。外傷が明確なら整合しますが、外傷エピソードが乏しい場合は、ヘルペスウイルス感染、血液凝固異常、術後合併症、眼内悪性腫瘍などを“外傷以外の原因候補”として積極的に拾いに行くべきだとされます。特にヘルペス関連では、炎症所見に加えて眼圧上昇を伴うことがあり、通常の前部ぶどう膜炎と見分けが難しくなることが示唆されています。
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また、血液疾患(白血病など)が虹彩・毛様体へ浸潤すると、虹彩毛様体炎様所見、前房蓄膿、前房出血、虹彩の色調変化などを来し得る、という“ぶどう膜炎様=仮面症候群”の視点も重要です。眼所見だけで炎症性と決めつけず、全身の症状・既往・薬剤歴・採血所見を合わせて、見落としリスクを下げます。
参考)https://twinkle.repo.nii.ac.jp/record/16984/files/KJ00006024510.pdf
参考リンク(原因の全体像、感染性/非感染性の整理と検査・治療の考え方がまとまっています)
出血性虹彩炎の症状と所見と眼圧
症状は、ぶどう膜炎として典型的な「充血、眼痛、羞明、視力低下、霧視、変視」を土台にしつつ、前房出血が加わることで“見え方の急変”や“霞みが強い”など訴えが強くなることがあります。医療従事者の初期評価では、視力・疼痛の程度・左右差・急性発症か反復かを確認し、眼圧(IOP)を必ず押さえます。
ぶどう膜炎は一般に低眼圧側に振れることがありますが、病態によっては眼圧上昇も起き得ます。前房出血が多いと血球成分が房水流出部につまり、眼圧が上がることがある、と解説されています。さらに、虹彩後癒着が進行して瞳孔ブロック→膨隆虹彩→続発緑内障へ移行する経路も臨床上よく問題になります(活動性や癒着の程度で治療選択が変わる領域です)。
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所見としては、前房フレア/セル、フィブリン、角膜後面沈着物、縮瞳、虹彩後癒着など“炎症の強さ”を示す項目と、前房出血の量・再出血の有無・角膜血染の兆候など“出血の管理”項目を並行して追います。ぶどう膜炎では眼底検査や造影検査を含む一般検査で炎症部位を見極め、必要に応じて血液検査やCTなど全身評価も行う、とされています。重症例ほど「局所に見える現象(出血)」が、全身の異常の入口になっている可能性があるため、診断の射程を狭めないのがポイントです。
出血性虹彩炎の検査と診断と血液検査
検査は、(A)眼局所で病変部位と重症度を確定する系統と、(B)原因を絞るための全身・病原体評価、の二段構えで設計します。ぶどう膜炎が疑われる場合、眼底検査を含めた一般検査に加えて、蛍光眼底造影で炎症部位・形態を確認し、必要なら房水採取など特殊検査を組み合わせて診断する、と日本眼科医会の一般向け解説でも述べられています。医療従事者向けの運用では、前房出血で眼底が見えにくいときほど、Bモード超音波などで後眼部病変(網膜剥離、硝子体出血、腫瘍など)を補う発想が重要になります。
全身評価としては、感染性/非感染性の大分類が治療方針を左右します。感染性ぶどう膜炎では抗菌薬・抗ウイルス薬など原因治療を行い、非感染性では免疫反応を抑える治療(ステロイド点眼→局所注射/全身投与、免疫抑制剤、生物学的製剤など)が中心になる、という整理が示されています。この“治療の方向性が真逆になり得る”構造があるため、出血性虹彩炎では特に「安易にステロイドで押さえる」判断が危険になる場面がありえます。
血液検査は、炎症反応だけでなく、貧血・血小板・凝固系(PT-INR、APTTなど)を確認し、抗凝固薬/抗血小板薬の内服状況も照合します。前房出血の原因として血液凝固異常が挙げられること、外傷がなければそうした原因探索が重要であることが解説されています。高齢者・多剤併用では「眼所見が軽そうに見えるのに出血が強い」というズレが、薬剤性・全身性のヒントになることがあります。
出血性虹彩炎の治療とステロイドと点眼
治療は「炎症を鎮める」「出血を悪化させない」「合併症(後癒着・緑内障・白内障など)を防ぐ」を同時に満たす必要があります。ぶどう膜炎では炎症の程度に応じてステロイド点眼を基本にし、必要ならステロイドの眼局所注射や全身投与を追加する、という流れが一般的な治療として示されています。ただし出血性虹彩炎では、原因が感染性の可能性もあるため、初期から“原因治療の同定”を急ぐ姿勢がより重要です(感染性なら抗菌薬・抗ウイルス薬で病原に対する治療を行う、という原則が明記されています)。
散瞳薬(いわゆる癒着予防・毛様体痙攣の軽減)は、前房炎症で虹彩と水晶体が癒着するのを防ぐ目的で用いられることがある、と解説されています。臨床上は、後癒着が固着してしまう前のタイミングが勝負で、特に“前房出血+強い炎症”の組合せでは癒着が進みやすい印象を持つスタッフも多いはずです。
参考)ぶどう膜炎とは?その症状、原因、治療法と気を付けるべき点を解…
眼圧が上がる場合は、出血そのもの(血球の目詰まり)と、炎症・癒着による房水流出障害の双方を疑います。前房出血の量が多いと房水流出部につまって眼圧が上昇することがある、とされ、通常は薬物治療で対応すると解説されています。加えて、ぶどう膜炎の主な合併症として白内障と緑内障が挙げられており、炎症コントロールと並行して“合併症マネジメント”を治療計画に組み込みます。kato-eye-clinic+1
出血性虹彩炎の独自視点と再発予防
検索上位の多くは「症状・原因・治療」を網羅する一方で、現場の再発予防・安全管理(とくに多職種連携と服薬確認)の具体像は薄くなりがちです。出血性虹彩炎では、同じ「前房出血」という所見でも、(1)外傷後の一過性 (2)ヘルペス関連などで再発し得る (3)凝固異常・薬剤性で再燃し得る (4)腫瘍・血液疾患で進行する、という“時間軸の違い”があり、再発予防策も変わります。
例えば、外傷が乏しい前房出血では、ヘルペスウイルス感染、血液凝固異常、眼内悪性腫瘍などを原因候補として探すべき、とされています。この一文をチーム運用に落とすなら、救急外来・一般外来での標準化として、問診テンプレに「抗凝固薬/抗血小板薬、最近の手術、感染兆候、悪性腫瘍の既往、免疫不全の示唆」を固定で入れ、カルテレビューを看護師・視能訓練士・薬剤師が分担して“抜け”を減らす設計が有効です。特に薬剤性を疑う局面では、患者が薬名を把握していないこともあるため、お薬手帳・電子処方データの確認が再発予防そのものになります。
また、患者説明(アドヒアランス)も再発予防に直結します。日本眼科医会は、ぶどう膜炎の治療では医師の指示を守って発作や再発をできるだけ防ぐこと、定期検査を必ず受けることを治療のポイントとして挙げています。医療従事者向けに言い換えると、点眼回数の多さ・副作用モニタ・再燃時の受診目安を“紙1枚で渡す”など、行動に落ちる設計が再発率と視機能予後を左右します。
最後に、意外に効く運用上の工夫として「前房出血が少量でも写真で残す」ことがあります。前房出血は体位や時間で見え方が変わり、他院紹介や上級医レビュー時に“出血の確かさ”が伝わりにくいことがあります。スマートフォン撮影(院内規程と同意の範囲で)や前眼部写真を残し、眼圧・炎症グレードとセットで経時比較できるようにしておくと、治療反応と再発の判定が安定し、チーム内の認識齟齬が減ります。これも広義の再発予防(無用な治療のブレを減らす)として価値があります。