小胸筋トリガーポイントの痛みと効果的なケア方法

小胸筋トリガーポイントの症状と治療

小胸筋トリガーポイントの主要な特徴
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好発部位

烏口突起付近と第4肋骨起始部にトリガーポイントが形成されやすい

関連痛の範囲

肩前面から上腕・前腕の内側、手指まで痛みやしびれが放散

💪

筋肉の特徴

大胸筋の深部に位置し、肩甲骨を下方に引く働きを持つ小さな筋肉

小胸筋トリガーポイントの位置と関連痛領域

小胸筋は大胸筋の深部に完全に隠れている筋肉で、第3~5肋骨から肩甲骨の烏口突起に付着しています。トリガーポイントの好発部位は主に2箇所存在します。

参考)小胸筋のトリガーポイント|トリガーポイント・ネット|トリガー…


①のトリガーポイントは烏口突起に付く腱から筋への移行部付近にあり、②のトリガーポイントは小胸筋の第4肋骨起始部付近に形成されます。これらのトリガーポイントは、大胸筋の鎖骨部にできるトリガーポイントとほとんど同じ関連痛パターンを示すことが知られています。​
関連痛領域は主に肩の前面を中心に放散し、三角筋前部に非常に強い痛みを生じます。痛みは胸部全体に広がり、上腕から前腕の内側、手の尺側を通って小指、薬指、中指にまで及ぶことがあります。時にはしびれを伴うこともあり、胸郭出口症候群と誤診されるケースも報告されています。

参考)トリガーポイント一覧(胸部、腹部、性器の痛み)


小胸筋のトリガーポイントの詳細な位置と関連痛領域については、こちらの専門サイトで図解付きで解説されています。

小胸筋トリガーポイントの原因と発生メカニズム

小胸筋のトリガーポイントは急性・慢性の両方のストレスにより発生しますが、主に慢性的なストレスの影響を受けやすい特徴があります。​
急性的な原因としては、重いリュックサックを長時間背負うことが挙げられます。これにより小胸筋に急激な負荷がかかり、トリガーポイントが形成される可能性があります。​
慢性的な原因はより複雑で、大胸筋や斜角筋のトリガーポイントが存在する状態で放置すると、小胸筋にもトリガーポイントができやすくなります。これらの筋肉は神経支配が共通しているため、一つの筋肉に問題が生じると他の筋肉にも悪影響を及ぼします。​
悪い姿勢、特に肩や背中を丸めた姿勢は小胸筋を短縮させることになり、トリガーポイント形成の主要な原因となります。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前傾姿勢が続くと、小胸筋が緊張して血流が悪化します。

参考)小胸筋症候群はどうやって治すの?/江東区亀戸


腕を骨折して首から吊り下げられたギプス固定が続く場合も、小胸筋にトリガーポイントができる原因となります。ギプスを外しても腕に痛みが続く場合、それは骨折による痛みではなく、小胸筋のトリガーポイントから放散する関連痛の可能性があります。​
意外なことに、心筋梗塞もトリガーポイント形成の原因となります。狭心症や心筋梗塞の患者は小胸筋にトリガーポイントができやすくなることが知られています。​

小胸筋症候群とトリガーポイントの関係性

小胸筋のトリガーポイントは、小胸筋症候群という特有の病態を引き起こす典型的な原因となります。小胸筋症候群とは、胸部の筋肉である小胸筋が緊張し、腕や手に痛みやしびれを引き起こす症状を指します。

参考)胸郭出口症候群|トリガーポイント注射で痛みを解消|ビタカイン…


トリガーポイントによって緊張した小胸筋は、腋窩動脈や上腕神経を圧迫します。ひどくなると腕への血流が制限され、脈が出なくなることもあります。小胸筋の下を腕神経叢が通過するため、上肢を挙上位にする(腕を上げる)と腕神経叢にストレスがかかります。

参考)胸郭出口症候群について


小胸筋症候群の主な症状には以下のようなものがあります。​

  • 肩や胸の痛みや違和感
  • 腕や手のしびれ
  • 肩甲骨の動きの制限
  • 首のコリや頭痛
  • 呼吸の浅さや胸の圧迫感

これらの症状を放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、慢性化して治療が難しくなることがあります。円背姿勢(いわゆる猫背)になってしまうと、小胸筋への負担がさらに増加します。​
胸郭出口症候群は、神経や血管の絞扼部位によって斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれますが、小胸筋症候群はその一つの病態です。この領域の狭窄により発症する症状を小胸筋症候群と言い、トリガーポイントはその典型的な原因となっています。

参考)href=”https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html” target=”_blank”>https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.htmlamp;#x300C;href=”https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html” target=”_blank”>https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.htmlamp;#x80F8;href=”https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html” target=”_blank”>https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.htmlamp;#x90ED;href=”https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html” target=”_blank”>https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.htmlamp;#x51F…


日本整形外科学会による胸郭出口症候群の公式解説では、小胸筋症候群を含む病態の詳細が説明されています。

小胸筋トリガーポイントの診断方法

トリガーポイントを診断するための必須項目として、4つの重要な確認事項があります。

参考)トリガーポイントの分類と探索方法|トリガーポイントとは|トリ…

  • 触知可能な筋では索状硬結を触知する
  • 索状硬結内に強烈な圧痛点が存在する
  • その圧痛点上の圧迫により、患者の訴える筋痛が再現される
  • 圧迫により逃避反応であるジャンプサインが見られる

日常診療では、これら全てを確認することは困難であるため、まず索状硬結の存在と刺激による症状(痛み)の再現を確認することが重要であると考えられます。​
トリガーポイントの探索には、平面診法がよく用いられます。平面診法とは、痛みが存在する筋肉直上の皮膚を一方向に引き寄せ、次に指先をすばやく筋線維を横切るように滑らせ、ローリング(弾指触診)により痛みを確認する方法です。この時に逃避反応によるジャンプサインが見られることがよくあります。​
セルフチェックの方法としては、トリガーポイントの特徴である「イタ気持ちがいい動き」や「やりたくない嫌な動き」を探すことが有効です。関節一つ一つの可動域を確かめるように動かして、手先・足先の小さな関節から順に肩・股関節などの大きな関節、体幹へと順にゆっくりと動かしていきましょう。

参考)トリガーポイントの見つけ方とほぐし方を徹底解説!手軽で有効な…


小胸筋の場合、大胸筋の深部に完全に隠れているため、直接触れるというよりは大胸筋を通して感じることになります。そのため、診断には専門的な知識と技術が必要となる場合があります。​

小胸筋トリガーポイントの効果的なほぐし方とセルフケア

小胸筋のトリガーポイントには、いくつかの効果的なセルフケア方法があります。

参考)トリガーポイント(Trigger Point )とは?マッサ…


マッサージボールを使った方法が最も手軽で効果的です。肩と胸の境目あたりにテニスボールを当て、やさしく圧をかけながら転がします。鎖骨に当たらないように気を付けることが重要です。テニスボールがなければ指先で行うこともできます。

参考)小さくても大切!小胸筋


うつ伏せになり、ボールを肩近くの胸のくぼみに置き、ボールを転がして硬さを感じるところにあてます。肘を90度に曲げ、ボールに圧をかけながら腕を前後に動かすと効果的です。

参考)小胸筋リリース


指圧やマッサージによる方法では、トリガーポイント(こりのポイント)に指や親指、またはマッサージ用のツールを使って軽く圧をかけます。痛みが少し和らいだら、ゆっくりと圧を解放し、この動きを繰り返すことで効果的にほぐすことができます。​
ほぐし方としては、指やマッサージボールを使い、ゆっくり圧をかけながらほぐしていくのが効果的です。また、周囲の筋肉も同時にほぐすことで血流が改善し、より高い効果が期待できます。​
セルフケアの重要なポイントとして、リラックスした状態で行うことが大切です。入浴後など筋肉が温まった状態で行うと、さらに効果的に筋肉をほぐすことができます。​
自宅でできるセルフケアとして、以下の方法も有効です。​

  • 胸を開くストレッチ:両腕を肩の高さで広げ、胸を前に突き出すように伸ばす(1回10秒程度)
  • 肩甲骨を動かす運動:両肩を後ろに回すことで、肩甲骨周りをほぐす
  • 深呼吸:吸うときに胸を開き、吐くときにリラックスする

痛みが強い場合や慢性的な症状が続く場合は、無理をせず専門家への相談も検討してください。

参考)小胸筋のほぐし方で猫背や肩こりを改善!自宅ストレッチと原因か…


マッサージボールを使った小胸筋のリリース方法は、こちらの動画で実演付きで詳しく解説されています。

小胸筋の筋膜リリースとストレッチ方法

小胸筋の筋膜リリースは、筋肉だけでなく筋膜の癒着を緩める手法で、慢性的なコリや姿勢の崩れ、自律神経の乱れにも効果が期待できます。​
筋膜リリースの基本的な方法として、ストレッチポールやフォームローラーで胸部にゆっくり体重をかけて深呼吸を行う方法があります。30秒×2セットを目安に行うと効果的です。​

筋膜リリースを行う際の重要なポイントは、小胸筋の筋線維の走行をしっかりイメージすることです。小胸筋は肋骨3番、4番、5番から烏口突起に向かって走っており、その上に大胸筋や皮下組織があります。指を深く入れて、硬い方向にゆっくり動かすことで効果的にリリースできます。youtube​

最近の研究では、大胸筋筋膜への4分間の筋膜リリースが、前方肩姿勢、肩の水平外転可動域、僧帽筋と大胸筋の筋活動に急性的な効果をもたらすことが示されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11421133/


ストレッチの具体的な方法には以下のようなものがあります。

参考)小胸筋の起始・停止は?おもな作用やストレッチ・筋トレ方法もご…

【ストレッチのやり方:その1】

  • うつ伏せになる
  • 右肩を90度外転、肘を90度屈曲させて床につける
  • 左の手で床を押し、上半身を回旋させる
  • 右手を床につけたまま、できる限り上半身を回旋させた状態を20秒程度キープする
  • 反対の手で行う

【ストレッチのやり方:その2】

  • 横向きに寝る
  • 右手を支えにして上半身を起こす
  • 左足を前に倒す
  • 重力に従って、右肩をゆっくり引き下げる
  • できるだけ引き下げた状態を20秒ほどキープする

壁を使った方法も効果的です。壁に肘を曲げた状態で肘と手をつけ、腕を壁につけたまま身体を前方に移動させることで小胸筋を伸ばすことができます。

参考)肩痛・肩こり改善ストレッチ① (小胸筋) href=”https://washizawa-seikeigeka.com/news/2020/05/18/%E8%82%A9%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81%EF%BC%88%E5%B0%8F%E8%83%B8%E7%AD%8B%EF%BC%89/” target=”_blank”>https://washizawa-seikeigeka.com/news/2020/05/18/%E8%82%A9%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%81%EF%BC%88%E5%B0%8F%E8%83%B8%E7%AD%8B%EF%BC%89/amp;#8211; わ…


筋膜リリースは継続が大切で、筋膜の緊張緩和により全身の動きやすさも実感できます。​
小胸筋の起始・停止や作用、詳細なストレッチ方法については、こちらの医療専門サイトで解説されています。