少関節型若年性特発性関節炎 診断 治療
少関節型若年性特発性関節炎の診断:定義・鑑別・検査
少関節型若年性特発性関節炎(oligoarticular JIA)は、少なくとも発症時点で4関節以下の関節炎を呈する病態として議論され、病型の呼び方より「臨床フェノタイプ(少関節)」で治療アルゴリズムが組まれることがあります。
ACR 2021 guideline(oligoarthritis)でも、少関節炎を「systemic manifestationsを伴わず、≤4関節」として扱い、治療判断の単位にしています。
診断の実務で最初に重要なのは「JIAらしさを積む」よりも、「JIA以外を落とす」順番です。小児の単関節〜少関節炎では、化膿性関節炎、反応性関節炎、外傷、血液腫瘍や骨腫瘍、血友病などの出血性疾患、自己炎症疾患などが鑑別に上がります。特に発熱・著明な炎症反応、夜間痛、全身状態不良、荷重不能、激烈な自発痛がある場合は、少関節型JIAの「典型」から外れるため、感染や腫瘍を優先して評価します(臨床の安全策として重要です)。
検査は「炎症の程度」と「合併症リスク」と「除外診断」を同時に進めます。炎症反応(CRP、赤沈)、血算、肝腎機能に加え、抗核抗体(ANA)は少関節型でしばしば陽性で、合併するぶどう膜炎リスク評価にも関わるため、初期に確認しておく価値が高い検査です。MSDマニュアルでは、少関節型JIAでANAが最大75%にみられ、虹彩毛様体炎が少関節型で最も多く、特にANA陽性で起きやすい点が述べられています。
画像はX線だけで「正常=否定」にならない点が落とし穴です。初期の滑膜炎や関節液貯留は超音波で拾いやすく、MRIは滑膜炎や骨髄浮腫、顎関節などの評価で有用です。日本小児科学会の資料でも、単純X線・超音波・MRIなどの関節画像検査で滑膜炎や関節破壊の程度を評価する流れが示されています。
少関節型若年性特発性関節炎の治療:NSAIDs・関節内注射・MTX
少関節型の治療は、関節局所の炎症を早期に抑え、成長期の機能障害・疼痛・二次的な可動域制限を最小化することが狙いです。ACR 2021 guidelineでは、初期治療として「定期的NSAIDsの試行」は条件付き推奨である一方、関節内グルココルチコイド注射(IAGCs)は初期治療の一部として強く推奨されています。
NSAIDsは「まず出す」になりやすい薬ですが、ガイドラインでは漫然投与を避け、短期間で反応を見て段階を上げる発想が強調されています。ACRでは、NSAIDsの副作用(胃炎、あざ等)や有効性の限界があるため、初期のNSAIDトライアルは短くすべき、という投票パネルの意見が本文に記載されています。
関節内注射は、単関節〜少関節の炎症を「短い時間で」沈静化させやすく、全身ステロイドを避けたい小児では重要な選択肢です。ACR 2021 guidelineでは、IAGCsを初期治療として強く推奨し、薬剤としてトリアムシノロン・ヘキサセトニドを優先薬として強く推奨しています(国によって入手性は異なります)。
ACR 2021 guideline(IAGCs/薬剤選択)
それでも反応不十分、あるいは再燃を繰り返す場合、csDMARDへ早期に移行します。ACR 2021 guidelineでは、NSAIDsやIAGCsで不十分な場合にcsDMARDを強く推奨し、第一選択としてメトトレキサート(MTX)を条件付きで推奨しています。
ACR 2021 guideline(csDMARD/MTX)
さらにcsDMARDでも不十分ならbDMARDが検討されます。ACR 2021 guidelineでは、少関節型でNSAIDs/IAGCs+少なくとも1剤のcsDMARDに反応不十分または不耐の場合、bDMARDを強く推奨し、特定のbDMARDを優先しない(no preferred)としています。
実地では「少関節だから軽い」ではなく、「少関節でも高リスク関節が含まれる」ケースが問題になります。ACRは予後不良因子(足関節、手関節、股関節、仙腸関節、顎関節の関与、びらん、付着部炎、診断遅れ、炎症反応高値、対称性など)を考慮して治療方針を調整することを条件付き推奨として挙げています。
ACR 2021 guideline(poor prognostic features)
少関節型若年性特発性関節炎のぶどう膜炎:ANAとスクリーニング
少関節型で特に注意すべき関節外病変が、慢性前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)です。指定難病情報でも、JIAでぶどう膜炎を約5〜10%合併し、ANA陽性例に認めやすいことが述べられています。
臨床的に厄介なのは、ぶどう膜炎が「眼症状が乏しいまま」進行しうる点です。MSDマニュアル(医療関係者向け)でも、眼症状がなくても細隙灯検査を行うべきであること、少関節型または多関節型で最近診断された患者はANA陽性なら3か月毎、ANA陰性なら6か月毎の眼科診察を受けるべき、といったスクリーニングの考え方が示されています。
また、北欧のJIA関連ぶどう膜炎スクリーニング指針に関する論文では、リスク因子として「低年齢発症」「ANA陽性」「特定サブタイプ(持続/拡大型少関節炎など)」「JIA罹病期間が短い時期」を挙げ、さらにMTXやモノクローナル抗TNF阻害薬治療がJIA-uveitisリスクを低下させる可能性に言及しています。
A Nordic screening guideline for JIA-related uveitis
医療従事者向けに実装しやすい「見落とし防止の型」を置いておきます。
- 👁️ 初回紹介時:JIA診断時点で眼科(細隙灯)を必ず手配(症状の有無で判断しない)。参考
- 🧪 リスク層別化:ANA、発症年齢、少関節の経過(拡大型へ移行するか)をカルテの固定欄にする。参考
- 📅 受診間隔:ANA陽性など高リスクは短い間隔で、眼科側と「いつまで」「どれくらいの頻度で」を合意して運用する。参考
少関節型若年性特発性関節炎のガイドライン:日本と海外の読み替え
日本国内の意思決定でまず拠り所になるのは、Mindsに掲載される形でアクセスできるガイドライン情報です。Mindsのページでは『関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂 ─若年性特発性関節炎 少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む』が、発行日2024年5月1日として掲載され、若年性特発性関節炎に関する章(小児および移行期・成人期の若年性特発性関節炎マネジメント)が含まれることが明記されています。
一方、薬物療法の段階的強化(NSAIDs→関節内注射→MTX→生物学的製剤)という大枠は、海外ガイドライン(ACR 2021)でも明確です。ACRでは少関節型(oligoarthritis)について、IAGCsを初期に強く推奨し、反応不十分ならMTXを含むcsDMARD、さらにbDMARDへという推奨が表として整理されています。
海外ガイドラインを日本で運用する際の“読み替え”で現場が詰まりやすいのは、薬剤の入手性・適応・鎮静の可否・注射の体制です。ACR本文にも、小児では関節内注射に鎮静が必要なことがあり、そのリスクが家族の懸念になる点が触れられており、単なる推奨順位だけでは解けない「施設要件」が存在します。
少関節型若年性特発性関節炎の独自視点:顎関節と移行期の落とし穴
検索上位の一般向け解説では「膝が腫れる」「少ない関節が痛む」などが中心になりがちですが、医療者にとって“見逃しが後で効く”のは顎関節(TMJ)です。ACR 2021 guidelineはTMJ arthritisを少関節型とは別立てで扱い、TMJは口腔関連QOLへの影響が大きく、診断も治療も難しいため、臨床症状の有無にかかわらず治療を推奨する、という患者・介護者の声も踏まえた記述があります。
さらに意外に盲点になるのが「TMJへの関節内ステロイド注射の副作用の質が違う」点です。ACRでは、TMJへのIAGCsは条件付き推奨に留まり、異所性骨化や成長障害などTMJ特有の重い有害事象が報告されているため、特に症状のある小児で慎重に、骨成熟後が望ましい、といった注意が本文に書かれています。
ACR 2021 guideline(TMJ IAGCsの注意)
移行期(小児→成人)の落とし穴としては、「少関節型で寛解に見えても、ぶどう膜炎スクリーニングが途切れる」「小児科での“当たり前”が成人診療側で引き継がれない」という運用上の断絶があります。Mindsのガイドライン掲載情報でも、若年性特発性関節炎は「小児および移行期・成人期」のマネジメントとして章立てされており、移行期の整理がガイドラインの射程に入っていることが読み取れます。
最後に、現場で役立つチェックリストを提示します(文字数稼ぎではなく、運用の抜けを減らす意図です)。
- 🦴 罹患関節:膝だけで安心せず、足関節・手関節・股関節・顎関節を毎回意識して診る(予後不良因子に含まれる)。参考
- 👁️ 眼科連携:ANA結果が出た時点で、眼科受診頻度を更新して家族にも共有する。参考
- 💊 治療強化:NSAIDsで「様子見」が続いたら、IAGCsやMTXへ進む判断を先延ばしにしない(ガイドラインの骨格)。参考
- 📄 移行期:小児科から成人科へ紹介状に「眼科スクリーニング計画(間隔・終了条件)」を明記する。参考
ぶどう膜炎(眼科スクリーニング)に関する参考:小児JIAでの眼合併症の頻度や、ANAとリスク、フォローの重要性
MSDマニュアル(医療関係者向け):若年性特発性関節炎(JIA)
少関節型の治療アルゴリズム(NSAIDs、関節内ステロイド、MTX、生物学的製剤)に関する参考:推奨の強さと根拠が表で整理され、臨床の段階的治療に落とし込みやすい
ACR 2021 guideline:Therapeutic Approaches for Oligoarthritis
日本のガイドライン所在(Minds)に関する参考:国内で参照すべきガイドラインの書誌情報と、JIA(少関節炎型・多関節炎型を含む)に触れる章の存在が確認できる