視束管圧迫と視神経管骨折の診断治療

視束管圧迫と診断治療

視束管圧迫:臨床で迷わない要点
🔎

まず疑う所見

外傷後の急激な視力低下・視野欠損、対光反射の減弱、瞳孔不同は「圧迫」を強く示唆します。

🧠

CTで見るポイント

視神経管周囲の骨折・狭窄・血腫の評価が重要で、CTで骨折線がなくても否定できません。

⏱️

時間が予後を左右

視神経への圧迫解除やステロイド大量投与は早期ほど改善が見込まれ、48時間以内が一つの目安になります。


<% index %>

視束管圧迫の原因と症状:視力低下・視野欠損

視束管圧迫は、視神経(視路)の通過部位に外力や腫脹、血腫、骨片などが加わり、伝導障害と循環障害が重なって視機能が落ちる状態として臨床的に捉えると整理しやすくなります。

外傷領域では、視神経管骨折により「折れた骨や周囲の腫れで視神経が圧迫される」ことで、急激な視力低下、視野の欠け、瞳孔不同、対光反射の減弱が出るとされます。

また、症状は軽い視力低下から全盲まで幅が広く、患者の訴えだけで重症度を推定しにくい点が実務上の落とし穴です。

意外に見逃されやすいのは「受傷直後は会話できる」「眼球そのものに外傷が目立たない」ケースで、視神経管という“骨に囲まれた通路”の中で障害が進むため、外見上の所見が乏しくても重症化し得ます。

医療従事者向けの初動としては、視力(可能なら矯正視力)、視野(対座法でもよい)、瞳孔(RAPD含む)、眼底(乳頭所見)を最低限そろえ、圧迫性の神経障害パターンかをまず判断します。

  • 要注意サイン:急激な視力低下、視野欠損、対光反射の減弱、瞳孔不同
  • 外観が軽くても否定できない:視神経管内の浮腫・血腫・骨片による圧迫
  • “眼の病気”に見えても、頭蓋底〜副鼻腔〜眼窩の評価が必要になり得る

視束管圧迫の検査:CT・画像検査と視機能検査

外傷が背景にある視束管圧迫(実務上は視神経管周囲の圧迫性障害を含めて対応)では、視神経管周囲のCTで骨折や狭窄、血腫の有無を確認することが中核になります。

重要なのは「CTで骨折線が認められない場合でも、視神経管骨折を否定できない」「手術中に骨折を認めることがある」という点で、画像陰性=圧迫なし、と短絡しない判断が求められます。

視機能検査としては、視力検査・視野検査・眼底検査・瞳孔検査を組み合わせて評価することが推奨され、画像所見と機能所見を突き合わせて“治療に値する圧迫”を見逃さない設計が重要です。

臨床の工夫として、救急外来では「視力が測れない」状況があるため、手動弁・指数弁・光覚などの粗い段階評価を残し、治療前後で比較可能にしておくとチーム医療が回りやすくなります。

さらに、前額部(特に眉毛外側)を強打した病歴は、視神経管骨折を伴う外傷性視神経症で多いとされ、画像を撮る優先度を上げる根拠になります。

  • 画像検査:視神経管周囲CTで骨折・狭窄・血腫を評価
  • 機能検査:視力・視野・眼底・瞳孔(RAPD)をセットで
  • 注意:CTで骨折線がなくても骨折(=圧迫原因)を否定できない

検査・治療連携(チームアプローチと術式の概説)。

慶應義塾大学病院:視神経管骨折を伴う外傷性視神経症の診断(視機能検査+CT)と、視神経管開放術・ステロイド大量投与、治療時期(48時間)の考え方

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/736dedcf548a57328fb13c59a2ff13ae12e08d27

視束管圧迫の治療:ステロイド大量投与と視神経管開放術

視神経管骨折が関与する圧迫性障害では、治療選択肢として「視神経管開放術」と「点滴での副腎ステロイド大量投与」が軸になり、施設によっては両者を並行して行います。

視神経管開放術は、視神経管の骨の一部を除去して視神経への圧迫を解除する手術で、骨折がある場合には骨片を除去することで視力・視野障害の改善が見込まれるとされています。

時間依存性は極めて重要で、早いほど(できれば48時間以内)改善の見込みが高いとされ、発症から1週間以上では改善可能性が低くなるという臨床メッセージは、救急から専門科への連携を急ぐ根拠になります。

アプローチは経鼻内視鏡など低侵襲化が進み、耳鼻咽喉科・眼科・脳神経外科が連携して診断・治療する体制が紹介されています。

独自視点としては、治療法の優劣を単純比較するより、「視機能のベースライン」「血腫・狭窄・骨片の関与」「治療開始までの時間」「全身状態(多発外傷、意識障害)」を同じ土俵に載せて意思決定するほうが、現場の齟齬を減らします。

  • 治療の2本柱:視神経管開放術/ステロイド大量投与
  • キーポイント:治療開始の早さ(48時間以内が目安)
  • 術式の潮流:内視鏡下の低侵襲手術が増加

視束管圧迫の鑑別:外傷性視神経症と視神経管骨折

外傷性視神経症の中には視神経管骨折が原因の一つとして含まれ、外傷による視神経の挫滅・浮腫に加えて、骨折や血腫による圧迫で視神経障害が起こると整理されています。

そのため「視束管圧迫」という臨床疑いが立ったら、鑑別の実務は“骨折があるか”だけでなく、“骨折がなくても起こる腫脹・出血による圧迫性循環障害”まで含めて評価するのが安全です。

診断は眼科が中心となり、視機能検査(視力・視野・眼底など)と画像検査(視神経管周囲CT)を組み合わせ、外傷性視神経症かつ視神経管骨折と診断(または強く疑う)場合に治療へ進む流れが示されています。

臨床で意外に重要なのは、飲酒時の受傷や意識障害がある多発外傷では視力障害が“気付かれにくい”点で、病棟・救急でのスクリーニング設計(瞳孔・対光反射・簡易視力)が予後に直結し得ます。

つまり、鑑別の結論は「眼科疾患か脳外科疾患か」ではなく、「視機能障害があるのに眼球所見が乏しい=視神経管内の圧迫を疑う」という一段抽象度の高い判断が、見逃し防止に効きます。

  • 外傷性視神経症の原因:挫滅・浮腫+骨折・血腫による圧迫
  • CT陰性でも否定できない:臨床所見を優先して治療検討する場面がある
  • 見逃しやすい状況:意識障害、飲酒、児・高齢者での訴えの乏しさ