子宮体がんとは症状から治療法まで医療従事者向け詳細解説

子宮体がんとは症状から診断治療

 

子宮体がんの基本概要
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発生部位と頻度

子宮内膜から発生するがんで、40代後半から発症率が増加し50~60代でピークを迎える

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主要な組織型

80%以上が類内膜がんで予後良好。その他に漿液性がん、明細胞がんなどが存在

早期発見の重要性

約70%が早期発見され、きちんと治療すれば全体として約80%が治癒する

 

子宮体がんの基本的な病態と発生メカニズム

子宮体がんは子宮内膜から発生する悪性腫瘍で、子宮内膜がんとも呼ばれています 。この疾患は40代後半から発症率が増加し、50~60代にピークを迎える特徴があります 。近年、日本では年齢に関係なく増加傾向にあり、特に欧米先進国で罹患率が高い傾向が見られます 。

参考)子宮体がん

子宮体がんの80%以上は類内膜がんが占めており、これは他のがん種と比較して予後が良好とされています 。その他の組織型として、漿液性がん、明細胞がん、粘液性がんなどに分類されますが、これらの予後は類内膜がんよりも不良とされています 。

参考)https://www.az-gynecologic-cancer.jp/shikyutaigan/about/

発生機序においては、エストロゲンが関与するタイプ1(約80%)と、エストロゲンに関係しないタイプ2に大別されます 。タイプ1は比較的予後良好で、エストロゲンの長期的・持続的な過剰産生により子宮内膜が厚くなり、前がん病変の子宮内膜異型増殖症を経て発症すると考えられています 。

参考)がんの種類

子宮体がんの症状と早期発見の重要性

子宮体がんの最も多い自覚症状は不正出血で、患者の約90%以上が経験します 。特に閉経後の出血や月経周期以外での出血は注意が必要で、これらは子宮体がんの初期症状として最も重要な指標とされています 。

参考)子宮体がん(子宮内膜がん):[国立がん研究センター がん情報…

出血の特徴として、血液の色は鮮血から暗赤色まで様々で、質感に粘り気が出る場合もあります 。月経周期以外や閉経後に起こる出血は特に警戒すべき症状です 。また、不正出血以外の症状として、おりものの色や量の変化、下腹部の違和感、排尿時の痛みや頻尿なども認められることがあります 。

参考)子宮体がんの初期症状とは? 出血量などの特徴と受診の目安を解…

40歳以上で不正出血がみられた場合は、積極的に子宮体がんの検査を受けることが推奨されています 。症状があってから診断されても、その時点で約70%が早期であり、きちんと治療すれば全体として約80%は治癒するという良好な予後が報告されています 。

参考)子宮体がん 

子宮体がんの診断法と検査技術の進歩

子宮体がんの診断は、主に病理検査が中心となります 。初期診断として細胞診が行われ、腟から子宮内に細いチューブやブラシのような器具を挿入して子宮内膜を軽くこすり細胞を採取します 。異型細胞が見つかった場合には、組織診を行ってがんかどうかを確定します 。

参考)子宮体がん(子宮内膜がん) 全ページ:[国立がん研究センター…

組織診では、細いスプーンやチューブのような形をした器具を使って子宮内膜から細胞のかたまりを掻き取り、顕微鏡でさらに詳しく調べます 。この検査で子宮体がんかどうかを確定し、組織型とグレード(がんの悪性度)を診断します 。

参考)子宮体がん(子宮内膜がん) 検査:[国立がん研究センター が…

画像診断としては、経腟超音波検査により子宮内膜の厚さや形状をチェックできる非侵襲検査が有用です 。さらに骨盤MRI検査では、子宮体がんの大きさや子宮筋肉への浸潤具合、子宮周囲のリンパ節への転移について評価します 。CT(PET-CT)検査は全身を検査することで、子宮から離れた臓器やリンパ節への転移について評価できます 。

参考)https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/learn/results27/

子宮体がんの治療選択肢と最新アプローチ

子宮体がんの標準治療は手術療法で、子宮全摘+付属器(卵巣・卵管)切除+骨盤(~傍大動脈)リンパ節郭清+腹腔洗浄細胞診が基本となります 。手術のアプローチとして、術前ステージがIA期の類内膜がん異型度1-2に対しては、ダ・ヴィンチXiを用いたロボット支援腹腔鏡下手術や従来の腹腔鏡下手術が行われています 。
薬物療法では、手術後の再発リスクが中または高と判定された場合に抗がん剤による治療を行います 。進行・再発子宮体がんに対してはTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン併用療法)やAP療法(アドリアマイシン+シスプラチン併用療法)が選択されることが多くなっています 。

参考)内科的治療 |子宮がん|九州大学病院のがん診療|九州大学病院…

最新の治療として、治療経過や検査結果によっては分子標的治療薬であるレンバチニブ免疫チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブの併用療法やペムブロリズマブ単剤療法が行われることもあります 。
若年者で妊孕性温存の希望がある場合には、分化が良い組織型で早期である場合に限り、高用量黄体ホルモン療法が適応となることがあります 。この治療が奏功した場合には子宮を摘出する必要がなく、治療後に妊娠・出産された症例も報告されています 。

参考)婦人科|子宮体がんに対する子宮温存治療|慶應義塾大学医学部 …

子宮体がんの予後とリスク因子管理の新知見

子宮体がんの予後はステージにより大きく異なり、5年相対生存率はステージⅠで96.4%、ステージⅡで88.1%、ステージⅢで66.3%、ステージⅣで18.8%と報告されています 。手術を受けた患者では、ステージⅠで96.7%、ステージⅡで88.0%、ステージⅢで73.6%、ステージⅣで32.8%となり、特にステージⅣでは手術による生存率の改善効果が顕著に認められます 。

参考)子宮体がんのステージ別生存率と平均余命

確立したリスク要因として、閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満、エストロゲン産生がんなどが挙げられます 。薬剤では乳がんホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、エストロゲン製剤の単独使用などがリスク因子とされています 。その他のリスク要因として糖尿病高血圧、乳がん・大腸がんの家族歴との関連が指摘されています 。
興味深い新知見として、40歳未満の早期子宮体がん患者では、ホルモン療法と子宮全摘術の10年生存率に差がみられず(95.6% vs 96.5%)、一方で40~49歳ではホルモン療法の予後が不良であったという報告があります 。これは年齢による治療選択の重要性を示唆する重要な知見です。

参考)早期子宮体がんへのホルモン療法、40歳未満では全摘術と長期予…

予防としては、妊娠・授乳がエストロゲン分泌量減少につながり子宮内膜がんのリスクを低下させること、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせた混合型経口避妊薬の長期服用が防御効果を示すことが報告されています 。また、肥満がリスク要因であることから、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形の維持が予防に繋がると考えられています 。