セフォテタンとセフメタゾールの特徴と違い
セフメタゾール投与8日目で重篤な出血が起きる
セフォテタンとセフメタゾールの基本的な分類と構造
セフォテタンとセフメタゾールは、どちらもセファマイシン系抗菌薬に分類される注射用抗生物質です。第2世代セフェム系として位置づけられますが、正確にはセファロスポリンとは微妙に構造が異なる系統に属します。
つまり別系統ということですね。
両薬剤の最大の特徴は、通常のセファロスポリンとは異なり、ESBL(基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)によって分解されにくい点にあります。ESBLは第3世代セフェム系抗菌薬を分解する酵素で、この酵素を産生する大腸菌やクレブシエラ属が近年増加していることが問題となっています。セファマイシン系の構造的特徴により、これらの耐性菌に対しても有効性が期待できるのです。
セフメタゾールはNMTT基(N-methylthiotetrazole基)を側鎖に持つという構造的特徴があります。この構造が後述する出血リスクと深く関連しています。対してセフォテタンも同様の側鎖を持つため、両薬剤ともビタミンK代謝への影響を考慮する必要があります。
日本では両薬剤とも長年使用されており、セフメタゾールは「セフメタゾン」、セフォテタンは「ヤマテタン」などの商品名で知られています。腹腔内感染症や骨盤内炎症性疾患、尿路感染症などで幅広く使用されてきた実績があります。
セフメタゾールの抗菌スペクトルとESBL産生菌への有効性
セフメタゾールは第2世代セフェム系の特徴として、グラム陽性菌から陰性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有しています。特に注目すべきは、横隔膜下の嫌気性菌であるバクテロイデス属にも有効な点です。
この特性が基本です。
グラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く、大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌科の菌に対して優れた効果を発揮します。第1世代のセファゾリンと比較すると、グラム陰性菌への活性がより強化されており、加えて嫌気性菌のバクテロイデス・フラジリスにも活性を持つことで、腹腔内や骨盤内感染により使いやすい薬剤となっています。
ESBL産生菌感染症に対する有効性については、複数の臨床研究が存在します。2015年に報告された多施設後ろ向き研究では、ESBL産生大腸菌による菌血症に対して、セフメタゾールとフロモキセフの治療成績がカルバペネム系抗菌薬と比較して死亡率、治療成功率、再発などで劣らないという結果が示されました。
尿路感染症における使用では、セフメタゾールが尿中に高濃度で排泄されるため、ESBL産生菌による尿路感染症の治療選択肢として期待されています。ただし、全てのESBL産生菌に有効というわけではなく、薬剤感受性検査の結果を確認することが重要です。
感受性確認が原則です。
カルバペネム系抗菌薬の使用頻度増加がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌を増加させる可能性があるため、抗菌薬適正使用の観点から、非重症のESBL産生菌感染症ではセフメタゾールのようなセファマイシン系抗菌薬の使用が推奨されつつあります。
セフォテタンの薬物動態と投与方法の特徴
セフォテタンは広域スペクトルを持ち、骨、皮膚、尿路および下気道の細菌感染の治療に使用されます。バクテロイデス属、レンサ球菌などの嫌気性菌に対しても有効性を示すことが知られています。
これは使えそうです。
薬物動態の面では、セフメタゾールと比較してセフォテタンはやや長い半減期を持つとされています。セフメタゾールの血中濃度半減期が約1時間前後であるのに対し、セフォテタンは若干長い傾向にあります。この違いが投与間隔の設定に影響を与える可能性があります。
投与方法については、両薬剤とも通常は1日2回の投与が基本となります。セフメタゾールでは1回1g、12時間毎の投与が最も多く用いられ、かつ有効率が高い結果が得られています。腎機能障害がある場合は、血中濃度の上昇や半減期の延長がみられるため、投与量や投与間隔の適切な調節が必要です。
周術期予防投与においては、術中の血中濃度を適切に保つことが重要です。手術時間が長時間に及ぶ場合には、半減期の2倍の間隔で術中再投与を行います。また、短時間に1500mL以上の大量出血が認められた場合は追加投与を考慮することが推奨されています。
組織移行性については、両薬剤とも大半の体液と組織の細胞外液へ良好に移行します。特に炎症がある部位では移行性が高くなるため、感染部位での十分な薬剤濃度が期待できます。ただし、髄液移行性は限定的であるため、髄膜炎の治療には適していません。
セフメタゾールの重大な副作用:出血リスクとビタミンK欠乏
セフメタゾール使用において最も注意すべき副作用が、ビタミンK欠乏による低プロトロンビン血症と出血傾向です。これは致死的になりえる重篤な副作用であり、医療従事者は必ず認識しておく必要があります。
厳しいところですね。
NMTT基を持つセフメタゾールは、肝臓におけるビタミンKエポキシドリダクターゼを阻害することでビタミンK代謝を妨げます。ビタミンK依存性凝固因子(第II、VII、IX、X因子)は、ビタミンKが存在しないと活性化できないため、セフメタゾール投与によりこれらの凝固因子の活性が低下します。
特に第VII因子は半減期が6から8時間と極めて短いため、ビタミンK欠乏時にはまず第VII因子欠乏が生じ、プロトロンビン時間(PT-INR)の延長が先に起こります。その後、他の凝固因子も低下し、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)も延長していきます。
報告された症例では、セフメタゾール投与開始から低プロトロンビン血症の判明または出血症状出現までの期間の中央値は8日(範囲4から13日)でした。鼻出血、性器出血、口腔粘膜からの出血、動脈採血穿刺部の止血困難など、様々な部位からの出血が報告されています。一部の症例では出血性ショックから死亡に至っています。
痛いですね。
高リスク患者の特徴としては、高齢者、低栄養状態(アルブミン値が低い)、腎機能障害、肝疾患、食事摂取量の低下、長期絶食などが挙げられます。これらの背景因子がある患者では、ビタミンKの摂取不足や貯蔵量の減少により、セフメタゾール投与による出血リスクがさらに高まります。
ビタミンK欠乏による出血が疑われる場合の対応としては、直ちにセフメタゾールを中止し、ビタミンK製剤を投与します。通常、ビタミンK投与後24時間以内にPT-INRとAPTTは速やかに改善します。重篤な出血を伴う場合には、新鮮凍結血漿などによる凝固因子補充も考慮する必要があります。
この出血リスクを回避するためには、高リスク患者へのセフメタゾール投与時に予防的なビタミンK補充を行うか、定期的なPT-INRモニタリングを実施することが重要です。特に投与開始後1週間前後の時期には注意深い観察が求められます。
セフォテタンとセフメタゾールの臨床での使い分けポイント
腹腔内感染症や骨盤内炎症性疾患においては、両薬剤とも嫌気性菌を含む混合感染に有効です。横隔膜下の感染では、バクテロイデス属などの嫌気性菌が関与することが多く、セファマイシン系の嫌気性菌カバーが重要な役割を果たします。どういうことでしょうか?
消化器外科の周術期予防投与では、セフメタゾールが広く使用されてきました。下部消化管手術において、腸内細菌科の菌とバクテロイデス属の両方をカバーできることが利点です。ただし近年、バクテロイデス属の一部(non-fragilis group)でセフメタゾールへの耐性化が進行していることが報告されており、注意が必要です。
尿路感染症の治療では、セフメタゾールがESBL産生大腸菌による感染に対する選択肢として期待されています。尿中への高い排泄率により、尿路での十分な薬剤濃度が得られます。投与量は通常1回1から2g、12時間毎で、感染の重症度に応じて調整します。
患者背景による選択のポイントとして、高齢者、低栄養、腎機能障害、食事摂取不良などの出血リスク因子を複数持つ患者では、セフメタゾールよりも他の抗菌薬を選択するか、十分なモニタリング体制を整えることが望ましいです。
出血リスクは知らないと損する重要情報です。
具体的には、高リスク患者にセフメタゾールを使用する場合、投与開始前にベースラインのPT-INRとAPTTを測定し、投与開始後3から5日目、その後は1週間ごとに凝固系検査を実施することが推奨されます。PT-INRが1.5を超えて延長した場合は、セフメタゾールの中止とビタミンK補充を検討すべきです。
カルバペネム系抗菌薬との使い分けでは、ESBL産生菌感染症の非重症例においてセフメタゾールが選択肢となります。敗血症性ショックなどの重症例では依然としてカルバペネム系が第一選択ですが、軽症から中等症の尿路感染症や腹腔内感染症では、薬剤感受性があればセフメタゾールの使用により、カルバペネム耐性菌の出現を抑制できる可能性があります。
最終的な薬剤選択においては、感染部位、重症度、患者の腎機能や栄養状態、出血リスク因子の有無、施設での薬剤感受性パターンなどを総合的に評価することが重要です。セフメタゾール使用時には、出血という重篤な副作用の可能性を常に念頭に置き、適切なモニタリングと早期発見・早期対応の体制を整えることが患者安全につながります。
民医連新聞「副作用モニター情報:セフメタゾールによる凝固障害」では、高リスク患者への投与時の凝固能モニタリングの重要性が解説されています
CareNet「尿路感染症への抗菌薬、フロモキセフvs.セフメタゾール」では、ESBL産生菌による尿路感染症に対する両薬剤の比較データが報告されています