ロボット支援手術の費用
ロボット支援手術の保険適用範囲
ロボット支援手術は2012年4月に前立腺がん摘出術で初めて保険適用となって以降、対象疾患が大幅に拡大しています。2016年4月には腎臓がん手術が追加され、2018年4月には12件の新たな術式が保険適用となりました。現在では呼吸器、心臓、消化器、泌尿器、婦人科、頭頸部など幅広い領域で保険診療が可能です。
参考)ロボット支援手術の治療費。2018年の保険適応拡大で治療費負…
具体的な保険適用疾患には、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、腎盂尿管がん、胃がん、食道がん、直腸がん、結腸がん、子宮体がん、子宮筋腫、肺がん、縦隔腫瘍、膵がんなどが含まれます。また、がんの手術だけでなく、腎盂尿管移行部狭窄症や骨盤内臓器脱などの良性疾患にも適用されています。
参考)費用
保険適用により、従来は高額だったロボット支援手術が一般の患者にも利用しやすくなり、医療費の負担は従来の手術とほぼ変わらなくなりました。ただし、手術の内容や患者の状態によってはロボット支援手術が適応とならない場合もあるため、担当医との十分な相談が必要です。
参考)https://www.ych.or.jp/pickup/davinci-xi/
ロボット支援手術の実際の費用負担
ロボット支援手術の費用は疾患や入院期間により異なりますが、3割負担の場合で40万円~58万円程度が一般的です。国立がん研究センター中央病院の例では、ロボット支援前立腺全摘術の場合、入院日数10~14日で費用は約48万円とされています。
参考)ロボット支援下手術
より具体的には、前立腺がん手術では入院期間10日間で3割負担50万~55万円程度、直腸がん手術では入院期間10日で3割負担58万円程度、胃切除術では入院日数12~14日で40~50万円程度となっています。従来の腹腔鏡手術や開腹手術と比較しても、費用はほぼ同等か若干高い程度です。
国立がん研究センターのロボット支援下手術費用に関する詳細情報
年齢や収入、健康保険制度によって費用は変動するため、詳細は各医療機関の医事課に問い合わせることが推奨されます。また、保険適用外の術式では手術費用が50万円~200万円と高額になり、すべて自己負担となるため経済的負担が大きくなります。
参考)最新の医療ロボットの種類とロボット手術の保険適用範囲、費用負…
高額療養費制度による負担軽減
高額療養費制度を利用することで、ロボット支援手術の実質的な自己負担額を大幅に軽減できます。この制度により、所得区分にもよりますが多くの場合、実質負担額は約10万円程度に抑えられます。
所得区分による自己負担限度額は以下のように設定されています。70歳未満で標準報酬月額28万円~50万円の方(所得区分ウ)の場合、自己負担限度額は約12万円程度です。70歳以上の一般所得者では約8万円程度となり、さらに負担が軽減されます。一方、1割負担の方では約7.2万円の自己負担で済みます。
参考)ロボット支援直腸切除術
制度の適用には申請が必要で、治療を受けた方の年齢と所得水準に応じて限度額が異なります。入院期間が月をまたぐ場合は計算方法が変わることもあるため、事前に医療機関のソーシャルワーカーや医事課に相談することが重要です。食事代や個室代は別途必要になる点にも注意が必要です。
参考)婦人科ロボット手術外来(ダヴィンチ)|婦人科【千船病院】
ロボット支援手術の入院期間と回復
ロボット支援手術は低侵襲手術であるため、従来の開腹手術と比較して入院期間が大幅に短縮されています。前立腺がん手術の場合、従来は2週間程度の入院が必要でしたが、ロボット支援手術では最短1週間、一般的には10~14日程度で退院が可能です。
直腸がん手術や胃がん手術でも入院期間は約10日程度とされ、良性腫瘍の場合はさらに短く術後3~5日で退院できることもあります。傷口が5~12mm程度と非常に小さいため、術後の回復が早く、手術翌日から食事や歩行が可能になります。
参考)手術支援ロボット ダヴィンチ(da Vinci Xi システ…
出血量が少なく身体への負担が軽減されることで、術後の痛みも少なく、合併症のリスクも低くなります。より早い術後の回復および経口摂取、術後疼痛の軽減により、患者のQOL(生活の質)向上につながっています。入院期間の短縮は医療費削減にも貢献しており、患者と医療機関双方にメリットがあります。
参考)ロボット支援手術の現場拝見! ~最新機器「ダビンチXi」の…
ロボット支援手術のメリットと医療機関の課題
ロボット支援手術の最大のメリットは高精度の安全性とQOLの向上です。3次元の高解像度画像により術野が拡大され、従来は見えにくかった角度からも患部を確認できます。ロボットのアームは人の手より関節の動きに制限がなく、繊細な操作が可能なため、がんの取り残しが少なく機能温存もしやすくなります。
参考)手術支援ロボットについて|社会福祉法人恩賜財団 済生会滋賀県…
開腹手術や従来の内視鏡下外科手術と比較すると、合併症のリスクが低く、傷が小さいため細菌感染を起こすことも少なくなっています。前立腺がん手術では術後の尿失禁の回復が早く、ほとんど失禁しない患者もいます。腎臓がんでは、従来は腎臓全体を摘出していたケースでも、ロボット支援手術により腎臓を残せる場合があります。
一方で、医療機関側には深刻な課題があります。ロボットの装置価格は数億円、購入後の維持費が1台あたり年間1000~2000万円かかるため、導入費用とメンテナンス費用の負担が大きくなっています。手術の内容によっては内視鏡手術と同程度の保険点数しかつかないため、病院が受け取る診療報酬が十分でないという制度上の問題もあります。また、術者にとって最大の欠点は力覚および触覚を欠如していることで、骨盤内手術では恥骨などに接触してもその感覚がありません。