卵巣嚢腫の症状と原因から治療まで

卵巣嚢腫の症状と診断

この記事でわかること
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初期症状の特徴

卵巣嚢腫は初期段階ではほとんど無症状で、検診で偶然発見されることが多い

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進行時の症状

腫瘍が大きくなると下腹部痛、腹部膨満感、頻尿などの症状が出現する

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診断と治療方法

超音波検査やMRIで診断し、サイズや種類に応じて経過観察または手術を選択

卵巣嚢腫の初期症状は無症状が多い

卵巣嚢腫のほとんどは初期段階では自覚症状がありません。多くの場合、月経不順や不正性器出血、他の疾患での受診時に偶然発見されることが特徴です。卵巣嚢腫が初期に症状を示しにくい理由は、卵巣が腹腔内の深い位置にあるため、小さな腫瘍では周囲の臓器を圧迫しないからです。

参考)卵巣疾患 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)について – 青葉レデ…


定期的な婦人科検診を受けることで、無症状の段階での早期発見が可能になります。特に妊娠を希望している女性や、家族歴に卵巣疾患がある方は、定期的な超音波検査による卵巣のチェックが推奨されます。検診での早期発見により、茎捻転や破裂などの合併症を予防できる可能性が高まります。

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卵巣嚢腫が大きくなると現れる症状

卵巣嚢腫が大きくなると、下腹部痛や腹部膨満感が最も一般的な症状として現れます。腫瘍がある程度のサイズになると、周囲の臓器を圧迫することで頻尿や便秘といった排尿・排便障害が生じることもあります。衣類のウエストがきつくなったり、太っていないのに下腹部が膨らんできたと感じる場合は、卵巣嚢腫が大きくなっている可能性があります。

参考)卵巣嚢腫とは?症状や卵巣嚢胞との違い、卵巣がんとの関連につい…


腫瘍が20〜30cmにまで肥大するケースもあり、このような場合には外から触ってもわかるほどのしこりや腫瘤を感じることがあります。月経痛が急に強くなったり、経血量が増加したりする変化も、卵巣嚢腫の進行を示すサインとなることがあります。

参考)健康ライブラリ – ACUFEM

注意すべき下腹部の症状

・下腹部の持続的な痛みや圧迫感

・腹部の膨満感や張り

・下腹部に触れるしこり

・腰痛の出現

卵巣嚢腫の合併症による急性症状

卵巣嚢腫が一定のサイズを超えると、茎捻転という合併症のリスクが高まります。茎捻転とは、卵巣を支持する靱帯がねじれて血流が途絶える状態で、突然の激しい下腹部痛を伴います。一般的に5〜6cm以上の卵巣嚢腫で茎捻転を起こしやすいとされており、緊急手術が必要となります。

参考)卵巣嚢腫


卵巣嚢腫が破裂した場合も、強い下腹部痛と吐き気を伴う急性症状が出現します。破裂すると嚢腫の内容物が腹腔内に漏れ出し、化学性腹膜炎や感染症を引き起こす可能性があるため、迅速な処置が求められます。特に成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)が破裂すると、脂肪成分による重度の腹膜炎を生じやすいことが報告されています。

参考)卵巣嚢腫は急速に腫れることも 精緻な腹腔鏡手術でニーズに応え…


茎捻転や破裂を放置すると、卵巣の壊死や腹膜炎が進行し、場合によっては卵巣を温存できなくなることもあります。急激な強い痛みや吐き気、発熱などの症状が現れた際には、すぐに医療機関を受診することが重要です。

参考)卵巣嚢腫|疾患ガイド|患者さん向けガイド|原三信病院

卵巣嚢腫の種類別の特徴的症状

チョコレート嚢胞子宮内膜症性卵巣嚢腫)は、他の卵巣嚢腫とは異なる特徴的な症状を示します。この嚢腫は子宮内膜症が原因で形成され、月経のたびに卵巣内に出血が蓄積します。主な症状として、進行性の月経痛、慢性的な骨盤痛、性交痛、排便痛などがあり、周囲の臓器と癒着しやすいという特性があります。

参考)卵巣嚢腫(のう腫)の症状と原因|腹腔鏡手術の安藤正明【婦人科…


漿液性嚢腫や粘液性嚢腫は、水様や粘液状の液体が貯留するタイプで、比較的症状が乏しいことが多いです。しかし粘液性嚢腫は非常に大きく成長する傾向があり、巨大化すると腹部全体が膨らむほどになることもあります。成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)は、脂肪や髪の毛などが含まれる腫瘍で、若年層にも多く見られます。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10608514/


卵巣がんなどの悪性腫瘍の場合、初期には卵巣嚢腫と区別がつきにくいですが、急速に肥大化する傾向があります。腹水が溜まると腹部が前に突き出るような変化が見られ、食欲不振や全身倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。

参考)卵巣がん・卵管がん 全ページ:[国立がん研究センター がん情…

卵巣嚢腫の主な種類と内容物

種類 内容物 特徴
漿液性嚢腫 水様の液体 比較的症状が少ない
粘液性嚢腫 粘液状の液体 大きく成長しやすい
成熟嚢胞性奇形腫 脂肪、髪の毛など 若年層に多い
チョコレート嚢胞 月経血 月経痛が強い

卵巣嚢腫の診断方法と検査

卵巣嚢腫の診断は、まず問診と内診(触診)から始まります。内診では卵巣の大きさや形状、可動性、圧痛の有無などを確認し、異常が疑われる場合には経腟超音波検査を実施します。超音波検査により、卵巣嚢腫の大きさ、内部構造、充実性部分の有無などを詳細に観察できます。

参考)卵巣腫瘍


さらに詳しい情報が必要な場合には、MRI検査やCT検査が行われます。MRIは嚢腫の内容物の性質を判定するのに優れており、チョコレート嚢胞や成熟嚢胞性奇形腫の診断に特に有用です。悪性かどうかの判断のために、血液検査腫瘍マーカー(CA125、CA19-9など)を測定することもあります。

参考)卵巣嚢腫(のう腫)|岡山県倉敷市の倉敷成人病センター


国立がん研究センターがん情報サービス:卵巣がん・卵管がんの症状と診断方法について詳しい情報
病理学的な最終診断は、手術で摘出した組織を顕微鏡で調べることで確定します。そのため、画像検査で悪性の可能性が疑われる場合や、増大傾向がある場合には手術が推奨されることがあります。

参考)卵巣嚢腫

卵巣嚢腫の治療方法と経過観察

卵巣嚢腫が小さい場合(一般的に5cm未満)で、悪性の可能性が低いと判断されれば、数ヶ月ごとの定期的な経過観察を行います。機能性嚢胞などの場合は、自然に消失することもあるため、まずは経過を見守る選択肢が取られます。経過観察中は3ヶ月おきに超音波検査で大きさや形状の変化をチェックします。

参考)卵巣嚢腫(卵巣癌)について


手術を考慮するのは、嚢腫が5〜6cmを超えた場合や、増大傾向が見られる場合です。このサイズになると茎捻転や破裂のリスクが高まるため、予防的な手術が行われることがあります。手術では通常、病巣部分だけを摘出し正常な卵巣組織を温存する嚢腫核出術が選択されますが、サイズが大きい場合や悪性が疑われる場合には卵巣切除が必要になることもあります。

参考)卵巣嚢腫と子宮内膜症の治療


近年では腹腔鏡下手術が主流となっており、開腹手術に比べて傷が小さく、術後の回復も早いという利点があります。ただし、悪性の可能性が高い場合や高度な癒着がある場合には、安全性を優先して開腹手術が選択されます。

参考)https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63%2F61%2F9%2FKJ00005703776.pdf

卵巣嚢腫が妊娠と不妊に与える影響

卵巣嚢腫が妊娠に与える影響は、嚢腫のサイズと種類によって異なります。大きな卵巣嚢腫は卵巣組織を圧迫することで、卵子の成熟や排卵のメカニズムに悪影響を及ぼす可能性があります。特にチョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢腫)は不妊の大きな要因となりやすく、慢性的な炎症により卵管や卵巣の機能が低下することがあります。

参考)卵巣嚢腫と不妊:症状、影響、そして対策 – 三軒茶屋Artク…


妊娠中に卵巣嚢腫が発見された場合、妊娠週数や嚢腫のサイズを考慮して対応が決定されます。妊娠初期に茎捻転を起こすと緊急手術が必要になることもあり、母体と胎児の両方にリスクが生じます。妊娠を希望する場合には、卵巣機能を維持するためにも、適切なタイミングでの手術を検討することが重要です。

参考)https://assets.cureus.com/uploads/case_report/pdf/189654/20231107-19356-1kk6d3v.pdf


チョコレート嚢胞は約1%が悪性化するリスクがあり、特に40歳以上や10cm以上の大きさの場合には注意が必要です。不妊治療を検討している女性で卵巣嚢腫が見つかった場合は、生殖医療専門医との相談により、手術のタイミングや治療方針を決定します。

参考)不妊リスクにもつながる「卵巣嚢腫」とは?種類ごとの症状や原因…

卵巣嚢腫の予防と日常生活での注意点

卵巣嚢腫を確実に予防する方法は現在のところ確立されていませんが、いくつかの生活習慣により発症リスクを減らせる可能性があります。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理、禁煙、飲酒の制限などが、卵巣の健康維持に役立つと考えられています。これらの健康的な生活習慣は、婦人科系トラブル全般の予防にもつながります。

参考)自覚症状がない「卵巣のう腫」は要注意


低用量ピルの服用により卵巣を休ませることで、卵巣嚢腫ができるリスクを減らせる可能性が指摘されています。これは排卵回数を減らすことで、卵巣表面の修復回数が減少し、異常な細胞増殖のリスクが低下するためと考えられています。ただし、ピルの使用については婦人科医との相談が必要です。​
最も重要な予防策は、定期的な婦人科検診を受けることです。特に周閉経期(更年期前後)の女性は、ホルモンバランスの変化により卵巣疾患のリスクが高まるため、定期的なチェックが推奨されます。下腹部の違和感や痛み、腹部膨満感などの症状に気づいた場合には、早めに婦人科を受診することで、重症化を防ぐことができます。

参考)卵巣腫瘍・卵巣嚢腫の初期症状と治療|野洲市の平田レディースク…

卵巣の健康を守るための生活習慣

・栄養バランスの取れた食事を心がける

・週3回以上の適度な運動を取り入れる

・1日7〜8時間の質の良い睡眠を確保する

・ストレス解消法を見つけて実践する

・喫煙習慣がある場合は禁煙する

・過度な飲酒を控える

日本婦人科腫瘍学会:卵巣腫瘍に関する一般向け情報と検診の重要性について