ペフィシチニブ添付文書
ペフィシチニブ添付文書の用法用量と効能効果
ペフィシチニブ(製品名:スマイラフ)は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)を効能・効果とし、少なくとも1剤の抗リウマチ薬等で適切な治療を行っても症状が残る場合に投与する位置づけが明記されています。
用法・用量は、通常成人でペフィシチニブとして150mgを1日1回「食後」に経口投与し、状態に応じて100mgを1日1回に調整可能です。
この「食後」は実務上見落とされがちですが、健康成人で空腹時に比べ食後投与でCmaxが約56%増加、AUCも増加したデータが添付文書中に示されており、服薬タイミングのブレが曝露量に影響し得る点は指導の要点になります。
また、中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)では、投与量を50mg 1日1回とする旨が明確で、十分な反応が得られない場合も漫然増量ではなく継続の必要性再検討が求められます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11814924/
一方で重度の肝機能障害は禁忌であり、「減量で何とか使う」という発想自体が不適切になるため、外来導入前に肝機能の重症度確認を手順化しておくと安全です。
高齢者では「用量に留意し慎重投与」とされ、重篤な感染症の発現率上昇が認められている旨も記載されているため、年齢だけでなく感染リスク(既往・併存疾患・ステロイド量など)の棚卸しが有用です。
ペフィシチニブ添付文書の禁忌と投与前スクリーニング
禁忌は、重篤な感染症(敗血症等)、活動性結核、重度肝機能障害、著明な血球減少(好中球<500/mm3、リンパ球<500/mm3、Hb<8g/dL)、過敏症既往、妊婦(妊娠の可能性含む)などが列挙されています。
特に感染症・結核については警告として強調され、投与前に結核の問診、胸部レントゲン、インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)またはツベルクリン反応を行い、必要に応じて胸部CTまで含めて感染の有無を確認するよう求められています。
結核既感染者では播種性結核や肺外結核も含めて発症可能性があると記載され、既往歴や画像上の治癒所見がある場合には、結核診療経験医との連携や抗結核薬の前投与を原則とする流れが提示されています。
B型肝炎についても、抗リウマチ生物製剤やJAK阻害剤で再活性化が報告されているとして、投与前の感染有無確認(HBVマーカー)と、キャリア/既往感染者では投与中の肝機能・ウイルスマーカーのモニタリングが明記されています。
臨床の落とし穴は「HBs抗原陰性=安心」と誤解してしまう点で、添付文書ではHBs抗原陰性でもHBc抗体またはHBs抗体陽性(既往感染)を明示して注意喚起しているため、検査オーダーのセット化が現場では効きます。
さらに「本剤が疾患を完治させる薬剤でないことも含め患者に十分説明し、理解を確認した上で投与する」という、同意形成に踏み込んだ警告文があるため、説明文書や指導内容をチームで標準化しておくと監査にも耐えやすくなります。
ペフィシチニブ添付文書の重大な副作用と頻度
重大な副作用として、感染症(帯状疱疹、肺炎〔ニューモシスチス肺炎等含む〕、敗血症等)、血球減少(好中球減少症、リンパ球減少症、ヘモグロビン減少)、消化管穿孔、肝機能障害・黄疸、間質性肺炎、静脈血栓塞栓症が挙げられています。
頻度が添付文書に具体的に示されているものもあり、例えば帯状疱疹12.9%、肺炎4.7%、敗血症0.2%と記載されています。
この「帯状疱疹の頻度の高さ」は、患者説明での納得感に直結しやすく、疼痛・皮疹が出たら受診する、重篤例(播種性)もあり得ることを事前に共有しておくことが、早期中断と抗ウイルス治療につながります。
血球減少については、投与開始前および投与中の定期的血液検査が求められ、好中球は500~1000/mm3が持続する場合に1000/mm3を超えるまで中断、リンパ球<500/mm3で500/mm3以上まで中止、Hb<8g/dLで正常化まで中止といった具体的な運用が明記されています。
間質性肺炎では、発熱・咳嗽・呼吸困難などの症状に注意し、胸部X線/CT、血液ガス、さらにニューモシスチス肺炎鑑別としてβ-Dグルカン測定も考慮する、と「鑑別の方向性」まで踏み込んで書かれている点が実務的です。
消化管穿孔は頻度0.3%とされ、腸管憩室のある患者でリスクに言及されているため、腹痛を「胃腸炎」として見逃さないよう、導入時に既往・大腸憩室歴・NSAIDs併用などを確認する運用が望まれます。
また、添付文書の「その他の注意」には、トファシチニブの海外試験でMACEおよび悪性腫瘍のリスクがTNF阻害剤群に対して非劣性を満たさなかった結果が記載され、本剤でも国内市販後の自発報告で心血管系事象が認められているとされています。
この記載は、ペフィシチニブ単剤データの断定ではなく「クラス/関連薬の知見を踏まえた注意喚起」として読むべきですが、だからこそ高リスク患者(喫煙、既往、脂質異常など)では説明とフォローアップを厚くする判断材料になります。
悪性腫瘍についても因果関係が明らかでないとしつつ発現報告があるため、長期投与ではスクリーニング(皮膚、リンパ節、体重減少など一般的な視点)を診療の中に自然に組み込む工夫が求められます。
ペフィシチニブ添付文書の相互作用と併用注意
相互作用の実務上の最重要点は、免疫抑制が増強され感染症リスクが増加することが予想されるため、TNF阻害剤、IL-6阻害剤、T細胞選択的共刺激調節剤等の生物製剤や、他のJAK阻害剤など強力な免疫抑制剤(局所製剤以外)との併用は「しないこと」と明記されている点です。
「どの薬が該当するか」を迷ったら、同系統の免疫抑制薬の追加・スイッチの際に“重複期間を作らない”ことを原則に、疑義照会の観点として固定すると事故が減ります。
併用注意としては、肝機能障害を起こす可能性のある薬剤が挙げられ、特にメトトレキサート併用で本剤単独より肝機能障害発現率上昇が認められている、とされています。
意外に知られていないポイントとして、添付文書の薬物動態欄では、ペフィシチニブはCYP3A4代謝主体ではなく「主に硫酸抱合(SULT2A1)で代謝され、一部メチル化(NNMT)も寄与」と記載されています。
このため、CYP阻害/誘導の典型的な相互作用だけを想定していると読み違えやすい一方で、P-gp基質であること、またペフィシチニブ自体がCYP3AやCYP2C8、BCRP、OATP1B1、OCT1などを阻害し得ることが示されており、“相互作用はむしろ周辺薬が影響を受ける側”の視点も必要になります。
実際、臨床相互作用試験として、P-gp阻害薬ベラパミル併用でペフィシチニブのCmaxとAUCが増加したデータ、またミダゾラム(CYP3A基質)やタクロリムス(CYP3A基質)で曝露が増える方向のデータが添付文書に掲載されています。
ただし、これらPKデータは承認用法用量と異なる投与条件(例:100mgを1日2回など)も含まれる旨が注記されているため、現場では「機序の方向性をつかむ材料」として活用し、実際の用量調整は添付文書の相互作用欄・禁忌・用法関連注意と整合させて判断するのが安全です。
さらに、脂質検査値(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリド)の上昇が起こり得るため定期的確認を行い、必要なら脂質異常症治療薬を考慮する、と明記されています。
相互作用という言葉から外れがちですが、脂質管理薬(スタチン等)の追加や増量が実臨床では起こり得るため、導入後の検査→処方変更→相互作用チェックの導線を作っておくと、処方連鎖による見落としを減らせます。
ペフィシチニブ添付文書を現場で使う独自視点(チェックリスト運用)
検索上位の解説は「禁忌・副作用の列挙」に寄りがちですが、現場で事故が起きやすいのは“書かれているのに運用されない”部分です。そこで、添付文書の要求事項を「導入時・維持期・有害事象時」に分解し、誰がいつ何を確認するかまで落とし込むと、医師・薬剤師・看護師の連携が滑らかになります。
具体的には次のように、最低限のチェックリストをEHRテンプレや薬剤指導記録に組み込む運用が現実的です(施設状況に合わせて項目は増減してください)。
✅導入前(初回処方前)
・感染症の評価:現在の感染兆候、既往、易感染性の状態の有無(添付文書で注意喚起)
・結核スクリーニング:問診+胸部画像+IGRA/ツ反、必要ならCT(添付文書で具体的手順を提示)
・HBV評価:HBs抗原だけでなく既往感染の拾い上げ(HBc抗体/HBs抗体)と、フォロー計画の設定
・妊娠回避:妊婦禁忌、妊娠可能女性には投与中および終了後少なくとも1月経周期の避妊指導
・ベースライン検査:血算(好中球/リンパ球/Hb)、肝機能、脂質など、添付文書で定期確認が求められる項目の初期値確保
✅維持期(定期受診)
・発熱、倦怠感、咳などの症状聴取(感染症の早期拾い上げ)
・血算の定期確認と、中断基準(好中球/リンパ球/Hb)をチームで共有
・肝機能と脂質の定期確認(異常時の対応を事前に合意)
・生ワクチン接種の回避(投与中は行わないこと)
✅有害事象疑い(電話相談含む)
・帯状疱疹疑い:重症化(播種性)も念頭に早期受診を促し、中断と治療方針を迅速に判断
・呼吸器症状:間質性肺炎/ニューモシスチス肺炎鑑別の導線(CT、β-Dグルカン等)を想起
・腹痛:憩室の有無を含め消化管穿孔を除外(画像検査を検討)
このように添付文書を「読み物」ではなく「運用ルール」に翻訳すると、医療安全と診療効率が同時に上がります。
加えて、警告には“緊急時対応が十分可能な医療施設及び医師が使用”とあるため、地域連携(夜間連絡先、救急受診の基準、主治医への連絡手順)の整備も、薬剤そのものの知識と同じくらい重要になります。
最後に、PTP誤飲による食道穿孔・縦隔洞炎等の重篤合併症への注意が「適用上の注意」に明記されているので、服薬指導ではシートから取り出して服用する基本動作を、あえて毎回確認する価値があります。
投与前の結核評価や血算の中断基準など、添付文書に書かれた“行動”を確実に回すことが、ペフィシチニブを安全に活かす最短ルートです。
【権威性のある日本語の参考リンク:添付文書(警告・禁忌・用法用量・相互作用・重大な副作用・薬物動態)の原文確認】