尿酸排泄促進薬一覧と効果的な治療薬の選び方

尿酸排泄促進薬の一覧と特徴

尿酸排泄促進薬の基本情報
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作用機序

腎尿細管における尿酸の再吸収を抑制し、血中尿酸値を低下させる

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適応

主に尿酸排泄低下型の高尿酸血症患者に使用

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注意点

尿路結石のリスク増加、腎機能低下患者への使用制限あり

高尿酸血症は、血清尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を指し、放置すると痛風発作や腎障害などの合併症を引き起こす可能性があります。高尿酸血症の薬物治療では、主に尿酸産生抑制薬と尿酸排泄促進薬の2種類が用いられます。本稿では、尿酸排泄促進薬に焦点を当て、その種類や特徴、適切な使用法について詳しく解説します。

尿酸排泄促進薬の作用機序と適応

尿酸排泄促進薬は、腎尿細管における尿酸の再吸収を抑制することで、血液中の尿酸を尿中に排泄させ、高尿酸血症を改善する薬剤です。主に尿酸排泄低下型の高尿酸血症患者に適応となります。

尿酸排泄促進薬の作用機序は、腎臓の尿細管に存在する「URAT1」という尿酸トランスポーターの働きを阻害することにあります。URAT1は尿酸の再吸収に関わる重要な輸送体で、これを阻害することにより、一度腎臓で濾過された尿酸の再吸収が減少し、より多くの尿酸が尿とともに体外へ排出されます。結果として血中の尿酸濃度が低下するのです。

高尿酸血症は、その成因から尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、混合型の3つに分類されます。尿酸排泄促進薬は、特に尿酸排泄低下型の患者に効果的です。尿酸排泄低下型は、全高尿酸血症患者の約60%を占めると言われており、腎臓での尿酸排泄機能が低下していることが特徴です。

尿酸排泄促進薬の種類と一覧表

現在、日本で使用可能な主な尿酸排泄促進薬は以下の3種類です。それぞれの特徴や用法用量について詳しく見ていきましょう。

一般名 商品名 用法・用量 特徴 薬価(2025年4月現在)
ベンズブロマロン ユリノーム錠など 25〜100mg/日 分1〜2 強力な尿酸排泄作用、肝障害リスクあり 先発品:25mg 8円/錠、50mg 11円/錠後発品:25mg 6.1円/錠、50mg 6.1円/錠
プロベネシド ベネシッド錠 250〜1000mg/日 分2〜4 最も古い尿酸排泄促進薬、効果は比較的弱い 250mg 18.7円/錠
ドチヌラド ユリス錠 0.5〜4mg/日 分1 新世代の選択的尿酸再吸収阻害薬 0.5mg、1mg、2mg

1. ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム錠など)

ベンズブロマロンは、強力な尿酸排泄作用を持つ薬剤です。通常、成人には1日25〜100mgを1〜2回に分けて経口投与します。尿酸降下作用は強力ですが、重篤な肝障害の報告があるため、導入後少なくとも半年間は肝機能の慎重なフォローが必要です。世界的には使用が制限されていますが、日本では依然として使用されています。

2. プロベネシド(商品名:ベネシッド錠)

プロベネシドは最も古い尿酸排泄促進薬で、元々はペニシリンの効果を高めるために開発された薬剤です。尿酸降下作用は比較的弱く、現在ではほとんど処方されることはありません。通常、成人には1日250〜1000mgを2〜4回に分けて経口投与します。

3. ドチヌラド(商品名:ユリス錠)

ドチヌラドは、選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)と呼ばれる新世代の尿酸排泄促進薬です。URAT1に対する選択性が高く、副作用が少ないとされています。通常、成人には1日0.5〜4mgを1回経口投与します。

尿酸排泄促進薬の副作用と注意点

尿酸排泄促進薬を使用する際には、以下の副作用や注意点に留意する必要があります。

1. 尿路結石のリスク増加

尿酸排泄促進薬は尿中尿酸排泄量を増加させるため、尿路結石のリスクが高まります。特に尿酸結石の既往がある患者や、尿pHが酸性に傾いている患者では注意が必要です。尿路結石予防のために、以下の対策が重要です。

  • 十分な水分摂取(1日2L以上)
  • 尿アルカリ化薬(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤:ウラリット配合錠など)の併用
  • 尿pHのモニタリング

2. 肝機能障害

特にベンズブロマロンでは、重篤な肝機能障害が報告されています。服用開始後は定期的な肝機能検査が必要です。肝機能障害の初期症状(倦怠感、食欲不振、黄疸など)が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師に相談するよう患者に指導することが重要です。

3. 薬物相互作用

尿酸排泄促進薬は、他の薬剤との相互作用に注意が必要です。特に以下の薬剤との併用には注意が必要です。

  • サリチル酸系薬剤(アスピリンなど)
  • 抗凝固薬ワルファリンなど)
  • スルホニル尿素系経口血糖降下薬
  • メトトレキサート

4. 腎機能低下患者への使用

尿酸排泄促進薬は腎機能に依存するため、腎機能低下患者では効果が減弱します。一般的に、eGFR 30mL/min/1.73m²未満の重度腎機能障害患者では使用が制限されます。

尿酸排泄促進薬と尿酸産生抑制薬の使い分け

高尿酸血症治療において、尿酸排泄促進薬と尿酸産生抑制薬をどのように使い分けるかは重要なポイントです。一般的には、患者の高尿酸血症のタイプや合併症の有無に基づいて選択します。

1. 高尿酸血症のタイプによる選択

  • 尿酸産生過剰型:尿中尿酸排泄量が増加しているタイプです。尿酸産生抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットなど)が第一選択となります。
  • 尿酸排泄低下型:尿中尿酸排泄量が減少しているタイプです。尿酸排泄促進薬が第一選択となります。
  • 混合型:両方の特徴を持つタイプです。尿酸産生抑制薬が優先されることが多いですが、効果不十分な場合は尿酸排泄促進薬との併用も検討されます。

2. 合併症による選択

  • 腎機能障害:腎機能低下患者では尿酸産生抑制薬が優先されます。特にフェブキソスタットは、中等度の腎機能障害(eGFR 30以上)でも用量調整なしで使用可能です。
  • 尿路結石:尿路結石の既往や合併がある場合は、尿酸排泄促進薬の使用は慎重に行う必要があります。尿酸産生抑制薬が優先されます。
  • 肝機能障害:肝機能障害がある場合、ベンズブロマロンの使用は避け、尿酸産生抑制薬(特にアロプリノール)が選択されることが多いです。

3. 併用療法

単剤で目標尿酸値に達しない場合は、作用機序の異なる薬剤の併用が検討されます。尿酸産生抑制薬と尿酸排泄促進薬の併用は、相加的な尿酸降下作用が期待できます。

尿酸排泄促進薬の臨床的位置づけと最新動向

尿酸排泄促進薬は、高尿酸血症治療において重要な位置を占めていますが、近年の研究や臨床実践では、いくつかの新たな知見や動向が見られます。

1. 治療ガイドラインにおける位置づけ

日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)」では、尿酸排泄低下型の高尿酸血症に対しては尿酸排泄促進薬が第一選択とされています。しかし、実臨床では尿酸産生抑制薬(特にフェブキソスタット)の使用頻度が増加しており、尿酸排泄促進薬の処方割合は減少傾向にあります。

2. 新規薬剤の開発

ドチヌラドに代表される選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)の開発が進んでいます。これらの薬剤は、従来の尿酸排泄促進薬と比較して、より選択的にURAT1を阻害することで、効果的な尿酸降下作用と少ない副作用が期待されています。

3. 心血管リスクとの関連

高尿酸血症は心血管疾患のリスク因子として注目されています。尿酸排泄促進薬による治療が心血管イベントの予防に寄与するかどうかについては、まだ十分なエビデンスがありません。一方、尿酸産生抑制薬のアロプリノールやフェブキソスタットについては、心血管リスクに関する大規模臨床試験(CARES試験など)が実施されています。

4. 個別化医療の重要性

高尿酸血症の治療においては、患者の病態(尿酸産生過剰型か排泄低下型か)、合併症、腎機能、肝機能などを総合的に評価し、最適な治療薬を選択する個別化医療の重要性が高まっています。遺伝子多型(ABCG2遺伝子など)と薬剤応答性の関連も研究されており、将来的には遺伝情報に基づく薬剤選択も可能になるかもしれません。

日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインの詳細はこちら

尿酸排泄促進薬の長期使用における安全性と効果

尿酸排泄促進薬を長期間使用する際の安全性と効果について理解することは、継続的な高尿酸血症管理において重要です。

1. 長期使用の有効性

尿酸排泄促進薬の長期使用により、血清尿酸値を目標値(6.0mg/dL未満)に維持することで、痛風発作の頻度や重症度が減少することが示されています。また、尿酸降下療法を継続することで、痛風結節の縮小や消失も期待できます。

長期的な尿酸コントロールは、腎機能の保護にも寄与する可能性があります。高尿酸血症は慢性腎臓病CKD)の進行因子とされており、適切な尿酸管理がCKDの進行を抑制する可能性が示唆されています。

2. 長期安全性のモニタリング

尿酸排泄促進薬を長期使用する際には、定期的な安全性モニタリングが必要です。特に以下の点に注意が必要です。

  • 肝機能検査:ベンズブロマロン使用時は、特に服用開始後6ヶ月間は1〜2ヶ月ごとの肝機能検査が推奨されます。その後も3〜6ヶ月ごとの定期的な検査が望ましいです。
  • 腎機能検査:尿酸排泄促進薬の効果は腎機能に依存するため、定期的な腎機能評価(血清クレアチニン、eGFRなど)が重要です。腎機能が低下した場合は、薬剤の変更や用量調整が必要になることがあります。
  • 尿路結石のモニタリング:尿路結石の症状(側腹部痛、血尿など)に注意し、必要に応じて画像検査(腹部エコー、CTなど)を行います。

3. 服薬アドヒアランスの重要性

高尿酸血症治療の成功には、患者の服薬アドヒアランスが不可欠です。尿酸排泄促進薬は症状を改善するものではなく、血清尿酸値を低下させることで将来の痛風発作や合併症を予防するものであるため、患者が治療の必要性を理解し、継続的に服薬することが重要です。

医療従事者は、以下の点に留意して患者の服薬アドヒアランスを支援することが望ましいです。

  • 治療の目的と重要性の説明
  • 副作用と対処法の説明
  • 定期的な血清尿酸値モニタリングによるフィードバック
  • 生活習