内視鏡用バルーンと拡張術と偶発症と適応

内視鏡用バルーンと適応と偶発症

内視鏡用バルーンの要点
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バルーンの役割

「到達(挿入補助)」と「拡張(狭窄治療)」の2系統を同じ言葉で呼びがちなので、場面ごとに整理すると説明が通りやすくなります。

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適応の考え方

狭窄の長さ・潰瘍の深さ・瘻孔/膿瘍の有無・屈曲/癒着などで安全域が変わり、特に小腸では事前評価が結果を左右します。

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偶発症の見取り

穿孔・出血に加え、経口アプローチのバルーン内視鏡で膵炎など“バルーン内視鏡特有”の論点も押さえると実務に効きます。

内視鏡用バルーンのバルーン内視鏡とダブルバルーン

 

内視鏡用バルーンという言葉は、①小腸など深部へ到達するための「バルーン内視鏡(BAE)」と、②狭窄を広げるための「内視鏡的バルーン拡張術(EBD)」で意味が分岐します。

とくにダブルバルーン内視鏡は、内視鏡本体とオーバーチューブの先端に付いた2つのバルーンを交互に拡張・収縮させ、腸管を固定しながら“たぐり寄せて”前進する仕組みが特徴です。

この「腸管をアコーディオンのように短縮させる」発想により、従来の胃カメラ・大腸カメラでは届きにくかった小腸深部の観察や、生検、止血、ポリープ切除、さらに狭窄に対する拡張までが視野に入ります。

現場で混乱が起きやすいのは、患者説明で「バルーン」という単語だけが独り歩きする点です。たとえば、同じ“風船”でも「検査のために腸をつかむ風船」と「狭窄を広げる風船」は目的もリスクも違います。説明用の定型文を作るなら、以下のように2つを明確に分けるとトラブルが減ります。

・🔍到達目的:小腸の奥まで観察するため、バルーンで腸を固定して進む(検査+処置)

参考)クローン病小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術ガイドライン…


・🎈治療目的:狭窄部にバルーンカテーテルを当てて拡張する(EBD)

参考)https://www.bostonscientific.com/jp-JP/health-conditions/Esophageal-Balloon-Dilation/esophageal-balloon-dilation-05.html

内視鏡用バルーンの内視鏡的バルーン拡張術と適応

クローン病小腸狭窄に対するEBDは、外科的切除を回避しうる低侵襲治療として位置づけられ、バルーン小腸内視鏡(BAE)の登場が普及を後押ししました。

日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、挿入経路、腸管前処置、適応判断、偶発症、目標拡張径、拡張時間など“標準的な方法”の要点が整理されています。

また、狭窄が長いほど治療成績が悪く、狭窄長4〜5cm以下がよい適応と考えられる、という実務に直結する見立ても示されています。

適応を現場で判断する際は、「狭窄そのもの」だけでなく「狭窄の周辺環境」をセットで見るのがコツです。ガイドラインの論点を臨床で使いやすく並べ替えると、だいたい次の順で危険度が上がります。

  • ✅比較的狙いやすい:短い狭窄、深い潰瘍なし、瘻孔/膿瘍なし、強い屈曲なし。
  • ⚠️慎重:炎症や浅い潰瘍を伴う(禁忌ではないが“深い潰瘍は避けるべき”)。
  • ❌基本的に外す:膿瘍や瘻孔を伴う狭窄(対象としない)。
  • ⚠️落とし穴:癒着+強い屈曲は狭窄部だけでなく前後で穿孔が起きうるため注意、という指摘があります。

内視鏡用バルーンの前処置と挿入経路

BAEの挿入経路は経口・経肛門の両方があり、狭窄部位に応じて到達しやすいルートを選ぶのが基本です。

クローン病小腸狭窄では回腸に多いことから経肛門が選ばれやすい一方、癒着や変形で経肛門から到達困難な場合は経口が有利になることもあり、過去画像や既往手術歴を踏まえた戦略が重要です。

さらに、広範囲に複数狭窄がある場合、片側ルートだけでは全狭窄に届かないため、両経路でEBDを試みる考え方も示されています。

前処置は「大腸内視鏡の延長」ではなく、狭窄がある前提で設計する必要があります。ガイドラインでは、経口挿入でも狭窄口側に食残渣が残りやすい点を踏まえ、前日〜前々日から流動食/成分栄養へ寄せること、残留しやすい徐放性5-ASAなどを休薬することが述べられています。

経肛門の腸管洗浄剤は、当日朝に全量を一気に飲むと狭窄症状が出る懸念があるため、半量ずつ前日と当日に分割して“ゆっくり”服用するのが望ましい、と具体的です。

高度狭窄では高圧浣腸のみの前処置も検討対象になり、前処置の設計そのものが安全管理の一部といえます。

内視鏡用バルーンの偶発症と独自視点

クローン病小腸狭窄に対するEBDの主要な偶発症(穿孔・高度出血・外科手術を要するもの)は、システマティックレビューで患者数ベース3.21%、手技数ベース1.82%と整理されています。

穿孔は最も回避すべき偶発症で、深い潰瘍や瘻孔性合併症がないことが適応として挙げられ、施行前の活動性評価が重要とされています。

出血についても「EBDは出血高リスクの手技であることは間違いない」と明記され、抗凝固薬併用の有無を事前に確認し、関連ガイドラインに沿った対応が必要とされています。

ここからが検索上位では語られにくい“独自視点”として有用なのが、バルーン内視鏡の価値を「狭窄を広げる」だけで終わらせない発想です。ガイドラインでは、EBDで狭窄部通過が可能になった場合に、より深部を観察して腫瘍性病変の随伴がないか確認する重要性が述べられています(※拡張で観察範囲が広がること自体が“診断機会”になる)。

さらに、クローン病では小腸悪性腫瘍が狭窄症状として出てくることが多く、EBDの適応症状と重なるため注意が必要、という指摘もあります。

つまり、内視鏡用バルーンは「治療デバイス」であると同時に「見逃しを減らすための観察拡張デバイス」としても設計し直せます(患者説明でも、治療後に“追加観察”が必要になる理由を言語化しやすくなります)。

参考:クローン病小腸狭窄に対するEBDの挿入経路、前処置、適応、偶発症、拡張径/時間などの標準的な考え方

J-STAGE(日本消化器内視鏡学会雑誌)掲載PDF

参考:ダブルバルーン内視鏡の仕組み(オーバーチューブ+2つのバルーンを交互に操作して小腸深部へ到達)、検査手順や適応イメージ

内視鏡情報サイトの解説ページ

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