内シャント 合併症
内シャント 合併症 の 狭窄 の 徴候 と 観察
内シャント合併症のなかで、最も「頻度が高く、かつ次の大きな事故(血栓性閉塞)につながる」起点が狭窄です。
狭窄は、吻合部近傍(上流側)に多く、脱血不良の原因となりやすい一方で、穿刺部より中枢側(下流側)の狭窄は静脈圧の上昇などで見つかりやすい、という整理が実務に役立ちます。
観察のコアは「視診・触診・聴診」を同じ順番で毎回行い、“いつもの所見”からのズレを言語化することです。
- 視診:上腕〜手指の色、浮腫、表在静脈の怒張、側副路の出現。
- 触診:吻合部から下流へ、静脈の径・張り・拍動、スリルの連続性を確認。
- 聴診:狭窄部で高調の狭窄音が出やすく、スリル/血流音が局所で増強した後、心臓側で急に低下するパターンは狭窄を疑う助けになります。
意外に見逃しやすいのは、「シャント音が聞こえる=大丈夫」という思い込みです。血流音が聴取できても血管の発達が不良な場合があるため、音の“質”と触診所見を必ずセットで解釈します。
また、透析記録の情報は理学所見を補強します。脱血不良、穿刺困難、止血時間延長、透析中の静脈圧上昇、透析効率低下などはVA機能不全の徴候として列挙されており、直近3回の透析記録を先に確認する、という手順はチームで標準化しやすいです。
参考:日本透析医学会ガイドライン(目次:モニタリング、心機能、修復の方針など全体像)
内シャント 合併症 の 血栓 と 閉塞 の 初期対応
内シャント合併症としての閉塞は、血栓性閉塞と非血栓性閉塞に分けて考えると、対応の優先順位が明確になります。
血栓形成の最大の原因は狭窄であり、脱水・低血圧・過凝固状態も関与するため、「いつから・何がきっかけで」所見が変わったかを病棟/透析室で共有する価値があります。
血栓性閉塞の理学所見は、“血栓があるところが硬い”という触知が手がかりになります。
非血栓性閉塞は、長期の高度狭窄が進んで血管内腔が虚脱し閉塞に至るタイプで、慢性変化のため側副路が形成されていることが多く、「拍動の途絶」や「索状に触れる」など別の所見で捉えます。
現場の初動で重要なのは、閉塞を疑った時点で「穿刺を増やして何とか回す」よりも、状態の見える化(所見+記録)を優先することです。VA機能不全徴候には、脱血不良・穿刺困難・止血時間延長・血管痛・静脈圧上昇・透析効率低下などが含まれます。
- チェック項目(例):スリル消失/減弱、拍動化、局所の硬結、急な静脈圧上昇、止血に時間がかかる、痛みの新規出現。
- 連携のポイント:直近3回のQB・静脈圧・血圧推移・穿刺部位・透析中症状をまとめ、VA評価(超音波など)につなげると、次の手技選択がスムーズになります。
「狭窄への適切な対応が、結果的に閉塞の予防になる」という考え方は、教育・監査・指標化(早期介入率など)にも転用できます。
参考:VAIVTでの評価・適応・禁忌・手技の考え方(技術寄りの実務情報)
内シャント 合併症 の 感染 の 評価 と 禁忌
内シャント合併症で、判断を誤ると一気に重篤化しうるのが感染です。
特に「感染したバスキュラーアクセス」はVAIVT(血管内治療)の禁忌に含まれ、感染したAVGの血栓性閉塞を再開通させると、感染物質や起因菌が血流で全身に広がり敗血症に至る可能性がある、と明確に注意喚起されています。
このため、発赤・熱感・疼痛・排膿などの感染所見が疑われる場合は、画像や手技の前に「感染の可能性をまず除外する」判断の順番が重要です。
透析室では「局所だけの問題に見える感染」を見逃しやすい一方、感染が絡むと“治療の選択肢が狭くなる”という意味で、合併症のなかでも優先度が上がります。
- 観察の観点:穿刺部だけでなく、アクセス全長の皮膚状態(発赤、びらん、滲出)を毎回同じ場所で記録する。
参考)バスキュラーアクセスのトラブル│人工透析・シャントの情報サイ…
- エスカレーション:感染が疑われる場合は「血管内治療が禁忌になり得る」ことを共有し、外科的バックアップも含めた対応経路へ早めに乗せます。
また、感染と紛らわしい所見として、血栓性閉塞で血管が硬く触れるケースがあります。
そのため、局所所見だけで断定せず、「スリル/音の変化」「透析条件の変化」「疼痛の時間経過」を合わせて解釈する姿勢が、誤介入の予防になります。
内シャント 合併症 の スチール症候群 と 末梢循環
内シャント合併症のスチール症候群は、アクセス血流が末梢側の血流を“盗む”ことで末梢循環障害を起こす状態として整理され、指先が冷たい・白いなどの症状が説明されています。
VAIVTのガイドラインでも、スチール症候群がVAIVTの適応になり得る例に触れつつ、病変治療により末梢手指への血流がさらに減少する可能性がある場合は適応にならない、と注意されています。
つまり、スチール症候群は「介入すれば良い」ではなく、介入が末梢虚血を悪化させないかを含めた評価が必要です。
透析室・病棟で拾うべきサインは、患者が自覚しやすい“冷感・しびれ・痛み”だけではありません。色調変化や創傷治癒の遅れなど、末梢のトラブルをアクセス側の問題として結びつける視点が重要です。
- 観察の例:手指の色(蒼白、チアノーゼ)、冷感、毛細血管再充満の遅れ、疼痛の出現タイミング(透析中/後)。
- 共有の仕方:症状が「いつから」「透析と関連するか」「アクセス側に偏るか」をテンプレ化して記録すると、紹介先での評価が速くなります。
意外な落とし穴は、スチール症候群を「しびれ=穿刺や体位の問題」と片づけてしまうことです。末梢循環障害の可能性を残したまま経過を見ると、壊疽などの取り返しのつかない転帰につながり得るため、“末梢症状はアクセス合併症として扱う”という合意形成がチーム安全に直結します。
内シャント 合併症 の 独自視点:透析記録 と 触診 の すり合わせ
内シャント合併症の早期発見は、最新機器よりも「所見と言葉を揃える」運用設計で精度が上がります。
VAIVTの記載では、手技前にVA機能不全徴候の確認と直近3回の透析記録確認をまず行い、血圧推移・QB・静脈圧・穿刺部位・透析中疼痛などを確認する、と具体的に述べられています。
この発想を“治療前だけでなく日常”に降ろすのが、医療従事者向け記事としての独自の実装ポイントです。
例えば、触診所見(スリルの連続性、拍動化、硬結)を「A:いつも通り/B:弱い/C:部分的に途切れる/D:消失」のように段階化し、透析記録の静脈圧・QBの変化と同じ画面(同じ欄)に並べるだけで、狭窄の拾い上げがチームで再現可能になります。
- 運用の工夫:申し送りで「所見の形容詞」を統一(例:高調音、連続性、拍動化)し、個人の感覚差を減らす。
- 教育の工夫:新人には“どこからどこまで触るか”を固定し、吻合部から下流へ診る手順を徹底すると、所見のばらつきが減ります。
- 安全の工夫:「感染疑いは血管内治療が禁忌になり得る」など、選択肢を変える所見にフラグを立てる運用が有効です。
さらに一歩踏み込むなら、超音波の結果やIVTの所見(狭窄部位、再狭窄までの期間)を“透析室に戻す”仕組みも効果的です。狭窄が吻合部近傍に多い、静脈圧上昇で見つかる狭窄がある、といった知識が、チームの触診の焦点を育てます。
| 合併症 | 現場での気づき(例) | 次の一手(考え方) |
|---|---|---|
| 狭窄 | 脱血不良、穿刺困難、静脈圧上昇、止血時間延長、狭窄音など。 | 理学所見+直近3回の透析記録を揃え、超音波などの客観評価へつなぐ。 |
| 血栓性閉塞 | 硬結として触れる、急な所見変化、機能不全徴候の増悪。 | 狭窄が起点になりやすい前提で、責任病変の評価と再開通方針を検討する。 |
| 感染 | 発赤・熱感・疼痛など(局所所見の積み上げ)。 | 感染VAはVAIVT禁忌になり得るため、疑いの段階で介入経路を切り替える。 |
| スチール症候群 | 指先の冷感・蒼白など末梢虚血の症状。 | VAIVTが適応になり得る一方、末梢血流を悪化させる可能性があれば適応外もあるため慎重に評価する。 |
