無痛分娩の費用
無痛分娩の費用は、正常分娩の費用に麻酔関連の費用が上乗せされる形となります。2025年1月時点で、全国の正常分娩の平均費用は50.6万円(室料差額、その他、産科医療補償制度の掛金は除く)となっており、これに無痛分娩の追加費用として約10万~20万円が加算されます。結果として、無痛分娩の総額は一般的に60万~70万円程度になることが多いです。
病院の規模や種類によっても費用は異なり、無痛分娩の費用相場は約15万~20万円とされています。昭和大学病院での実例では、基本の経腟分娩費用が約65万円で、無痛分娩費用として+15万円が必要でした。さらに個室を希望した場合は個室代が約10万円上乗せされ、総額が90万円台に達したケースもあります。
参考)無痛分娩の費用はどのくらい?地域差・内訳・保険適用などを徹底…
無痛分娩の麻酔費用は、多くの医療機関で以下のような内訳となっています。麻酔処置料として2万円(硬膜外カテーテル挿入などの処置)、麻酔管理料として4万円(無痛分娩用の薬液投与の開始時点で発生、日数によらず一律)、麻酔分娩料として4万円(無痛分娩中の分娩料金)が代表的な例です。
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無痛分娩の地域別費用相場
無痛分娩の費用には顕著な地域差が存在します。2022年度における正常分娩の費用は、地域によって20万円以上の差が生じています。全国平均が48.2万円であるのに対し、東京都は最も高く60.5万円、熊本県は最も低く36.1万円となっています。この正常分娩費用に無痛分娩の追加費用(約5万~20万円)を加算すると、東京都では約65.5万~80.5万円、熊本県では約41.1万~56.1万円と、地域による違いが大きくなります。
公立病院と私立病院の費用差も重要なポイントです。2023年度の調査によると、公立病院の正常分娩費用が47.3万円であるのに対し、私立病院は52.4万円と約5万円の差があります。このため、無痛分娩を希望する場合は、施設の種類や地域を考慮して病院選びをすることが費用負担の軽減につながります。
無痛分娩の計画分娩と追加費用
無痛分娩には計画分娩と自然陣痛待ち分娩の2つの方法があり、費用も異なります。計画無痛分娩の場合、初産婦は39週前後、経産婦は38週前後での入院となり、前日入院のための入院費として約2万円が追加されることが一般的です。麻酔費用も分娩方法によって異なり、経産婦で75,000円、初産婦で150,000円とする医療機関もあります。
無痛分娩では麻酔により陣痛が弱くなることがあるため、陣痛促進剤を使用するケースが多くなります。陣痛促進剤(陣痛誘発剤)の費用は医療機関により異なりますが、健康保険適用外の場合は1回1万~3万円ほどが相場です。また、分娩の時間帯によって時間外加算が発生し、平日・土曜日の時間外や休日・深夜の分娩では33,000円の加算が別途かかることがあります。
参考)陣痛促進剤が保険適用になる場合とは?誘発分娩の出産費用を徹底…
無痛分娩の保険適用と助成制度
通常の無痛分娩は保険適用の対象外となり、全額自己負担が基本です。しかし、医学的に必要と判断された場合には健康保険が適用されることがあります。例えば、妊娠高血圧症候群などで医師が「無痛分娩でなければ危険な状態」と判断した場合、麻酔費用が健康保険適用になる可能性があります。ただし、この場合でも分娩介助料、赤ちゃんの産後ケア費用、食事代、パジャマ代、差額ベッド代はすべて自費となります。
参考)妊娠高血圧による無痛分娩は保険適用?なぜ出産が保険適用外かも…
2025年度から東京都では無痛分娩費用の助成制度が開始されました。この制度では、都内在住の妊婦が指定医療機関で無痛分娩を受けた場合、最大10万円の助成が受けられます。対象となるのは2025年10月1日以降に出産した方で、硬膜外麻酔または脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔による無痛分娩を受けた場合です。助成対象となる費用は、出産後に請求された無痛分娩にかかる医療行為の費用で、硬膜外麻酔の手技料・管理費用や麻酔に使用された薬剤費が含まれます。
参考)東京都の無痛分娩補助・助成|費用が支援される医療機関一覧
東京都の無痛分娩助成制度の詳細や対象医療機関のリストが確認できる公式サイトです。
無痛分娩の病院選びと費用比較
無痛分娩の費用を抑えるためには、複数の医療機関を比較検討することが重要です。2024年10月に厚生労働省が開設した「出産なび」というウェブサイトでは、全国の医療施設の出産費用が一覧で確認でき、地域や病院毎に異なる費用やサービス内容を同一フォームで比較できます。掲載されている費用は分娩施設から審査支払機関に提出される請求書のデータを基に計算されているため、公平性の高い情報として活用できます。
参考)「出産なび」全国の医療施設の出産費用が一覧できるサイトを厚生…
医療機関を選ぶ際には、費用だけでなく無痛分娩の実施体制も確認が必要です。東京都の助成対象医療機関となるためには、厚生労働省が作成した「無痛分娩取扱施設のための自主点検表」の項目をすべて満たしている必要があります。また、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)の情報公開事業に参画し、自施設の診療体制に関する情報を公表していることも重要な判断材料となります。
厚生労働省「出産なび」
全国の分娩施設の費用やサービス内容を比較検討できる公式サイトです。
無痛分娩費用の最近の改定動向
近年、医療材料費や光熱費、人件費などの高騰により、無痛分娩費用を改定する医療機関が増えています。埼玉県の加藤クリニックでは2025年9月1日以降、通常の分娩費用にプラス12万円、分娩に至らず翌日以降に持ち越す場合は麻酔管理料として1日につき2万円(入院費別)に改定されました。東京都内の永井病院でも2026年4月1日より無痛分娩費用を一律10万円に改定し、以前は診療時間内8万円、診療時間外9万円、休日・深夜10万円だった価格を統一しました。
参考)無痛分娩 価格改定のお知らせ – 埼玉県さいたま市浦和区 産…
これらの価格改定は、医療材料や医薬品価格、施設維持管理費などの上昇が主な理由とされています。ただし、東京都の無痛分娩助成事業の対象機関であれば、10万円の助成が受けられるため、実質的な持ち出しは抑えられるケースもあります。今後も医療費の上昇に伴い、無痛分娩費用が改定される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
参考)無痛分娩費用の価格改定について(2026年4月1日より)