ミオコールスプレー代替品と選択
ミオコールスプレー供給停止の経緯
トーアエイヨー株式会社製造のミオコールスプレー0.3mgは、2025年3月より出荷停止となっています。出荷前の一部製品に噴霧不良の懸念がある部品破損が確認されたことが理由です。本製剤は狭心症発作時の寛解に広く使用されてきた実績があり、医療現場での影響は大きいといえます。
参考)https://www.cvit.jp/webcms/wp-content/uploads/2025/03/da634e8320f18ca231d196d11aff4de5.pdf
製造販売元からは代替品としてニトロペン舌下錠0.3mg(日本化薬株式会社製造販売)が推奨されていますが、これ以外にも複数の選択肢が存在します。供給停止は医薬品の安定供給という製薬会社の重要な使命を果たせない事態であり、医療関係者および患者への影響が懸念されています。
各医療機関では在庫消尽とともに処方オーダーの停止措置が取られており、速やかな代替品への切り替え対応が求められています。
参考)https://www.gifu-hp.jp/wp-content/uploads/2015/03/ingai_mioko-ru.pdf
ニトロペン舌下錠との使い分け
ニトロペン舌下錠0.3mgは、ニトログリセリンを有効成分とする舌下投与製剤であり、ミオコールスプレーと同等の有効成分量を含有しています。両製剤の主な違いは投与形態にあり、ニトロペン舌下錠は錠剤を舌下に置いて溶解させる方式です。
参考)https://www.phamnote.com/2017/12/blog-post_12.html
薬物動態の比較では、ミオコールスプレーは1噴霧でニトロペンの2倍以上の血中濃度に達するという特徴があります。このため、ミオコールスプレーは1回の発作に対して最大2回までの投与に制限されているのに対し、ニトロペンは最大3回まで投与可能とされています。
参考)内科・循環器科 あおやまクリニック:ニトロ製剤の正しい使い方
口腔内乾燥状態の患者、特に高齢者や意識消失患者においては、ミオコールスプレーのほうが個人差なく効果発現が早いとされています。一方でニトロペンは錠剤であるため、口渇がある場合には溶解遅延により効果発現までに30分程度かかる事例も報告されています。副作用面では、ミオコールスプレーは頭痛の発現が少ない傾向にありますが、味覚異常の報告が多いという特徴があります。
参考)口腔内の乾燥によるニトロペン舌下錠の溶解遅延|リクナビ薬剤師
ニトロールスプレー製剤の特性
ニトロールスプレー1.25mgは硝酸イソソルビドを有効成分とする口腔内スプレー製剤です。ニトログリセリン製剤とは異なる有効成分を使用しているため、薬物動態や作用機序に若干の違いがあります。
本製剤の特徴として、ニトロール錠5mgと比較して吸収が良好であり速効性に優れている点が挙げられます。また口腔内が乾燥した状態でも吸収が良く、簡単に口腔内へ噴霧できる利便性があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00003897.pdf
ニトロールスプレーとミオコールスプレーの製剤的な違いとしては、ニトロールスプレーは細いプラスチックボトル形状でやや刺激感があり、約100回の噴霧が可能です。投与方法は通常1回1噴霧を口腔内に投与し、効果不十分の場合には追加投与が可能とされています。
狭心症治療における硝酸薬選択基準
狭心症発作時の硝酸薬選択では、患者の病態や使用環境に応じた適切な製剤選択が求められます。現在日本では、ニトログリセリン(NTG)、硝酸イソソルビド(ISDN)、一硝酸イソソルビド(ISMN)の3種類の硝酸薬が臨床で使用可能です。
参考)薬剤部|診療技術部門|診療科・部門|心臓血管センター 金沢循…
発作時頓用製剤としては、効果発現時間が最も重要な選択基準となります。ニトログリセリン舌下投与は1~3分で効果が現れるため、速効性が求められる場面で第一選択となります。一方で硝酸イソソルビドのスプレー製剤も同様に速効性を有しており、口腔内乾燥患者への適応が広いという利点があります。
患者背景として、高齢者や意識障害リスクのある患者ではスプレー製剤が推奨されます。錠剤の舌下投与が困難な場合や、確実な投与が必要な場合にはスプレー製剤の選択が合理的です。また発作頻度が高い患者では、投与回数制限や副作用プロファイルも考慮して製剤を選択する必要があります。
ミオコールスプレー代替における医療安全上の配慮
代替品への切り替え時には、患者への十分な説明と投与方法の再指導が不可欠です。特にニトロペン舌下錠に変更する場合、錠剤を飲み込まずに舌下で溶解させる投与法の徹底が重要となります。誤って飲み込んでしまうと効果発現までの時間が遅延し、効果も半減するため注意が必要です。
参考)ニトロの使い方 狭心症や心不全の治療 ◆562 &#8211…
スプレー製剤からスプレー製剤への変更であっても、有効成分の違いや投与回数制限の差異について患者教育を行う必要があります。ミオコールスプレー使用経験者がニトロールスプレーに変更する場合、刺激感の違いや噴霧感覚の相違について事前に説明しておくことで、患者の不安軽減につながります。
代替品の在庫確保も医療機関における重要な課題です。ミオコールスプレーの供給停止により、代替品への需要が集中する可能性があるため、計画的な在庫管理と処方動向の把握が求められます。また緊急時対応として、複数の代替品を採用しておくことでリスク分散を図ることも有効な戦略といえます。
参考)https://ims.gr.jp/meirikaichuo/concerned/parts/pdf/pharmacis/dinews_2504/04.pdf
患者が発作時に適切に薬剤を使用できるよう、携帯方法や保管方法についても再確認が必要です。特にスプレー製剤は使用前に空打ちが必要な場合があり、1か月以上使用していなかった場合には薬液が噴霧されるか確認するよう指導します。
トーアエイヨー株式会社による公式の代替品情報とお詫び文書
日本循環器学会による急性冠症候群ガイドライン(硝酸薬の使用指針を含む)