急性涙のう炎 症状と原因と治療と合併症

急性涙のう炎 症状と原因と治療

急性涙のう炎の全体像
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急性涙のう炎の典型症状

眼頭部の発赤・腫脹・圧痛と流涙、膿性眼脂の増加を中心に、局所から全身へ波及しうる感染症として把握します。

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原因と検査の押さえどころ

慢性涙のう炎や涙道閉塞を背景に、細菌感染が急性増悪する病態であり、画像検査と涙道評価が重症例では特に重要です。

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治療・合併症・ケアのポイント

抗菌薬投与と排膿のタイミング、蜂窩織炎や眼窩内波及の見逃し防止、術前管理などを総合的に整理します。

急性涙のう炎 症状と診断のポイント

 

急性涙のう炎は多くの場合、眼頭(内眼角)付近の限局した強い発赤・腫脹・圧痛と、流涙および膿性眼脂の増加を特徴とします。 典型例では患者自身が「メガネが当たると痛い」「まぶたの内側だけが急に腫れた」と訴えることが多く、問診時の表現からも病変局在をイメージすることが重要です。

炎症が進行すると、皮膚表面は光沢を伴う紅斑となり、触診で明瞭な熱感と波動を認めるようになります。 涙のう部を軽く圧迫すると涙点から膿性分泌物が逆流することがあり、この所見は涙道閉塞と涙のう内感染を示す臨床的に重要なサインです。

診断は基本的に臨床所見で可能ですが、以下のような場面では追加検査が推奨されます。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin/105/8/105_753/_pdf/-char/ja

  • 高熱や全身倦怠感を伴う症例
  • 眼球運動障害、複視、視力低下を伴う症例(眼窩内波及疑い)
  • 小児や免疫不全患者など重症化リスクが高い症例

このような症例では、CTやMRIによって眼窩内・副鼻腔・顔面軟部組織への炎症波及を評価し、眼窩蜂窩織炎や骨膜下膿瘍、硬膜外膿瘍の併発を鑑別する必要があります。 さらに、可能であれば膿の穿刺吸引を行い、細菌培養および薬剤感受性試験を行うことで、耐性菌の関与や適切な抗菌薬選択に役立ちます。

参考)急性涙囊炎 (臨床眼科 77巻12号)

涙道通水検査は炎症のピークでは疼痛を増悪させるため原則として急性期には避け、炎症の鎮静化後に慢性涙のう炎や涙道閉塞の評価として施行するのが一般的です。 臨床現場では「今すぐに行う検査」と「炎症が落ち着いてから改めて行う検査」を意識的に切り分けることが、患者負担軽減と合併症回避のうえで重要となります。

参考)涙嚢炎

急性涙のう炎 原因菌と背景疾患

急性涙のう炎の多くは、慢性涙のう炎や鼻涙管閉塞といった既存の涙道疾患を背景に、涙のう内に停滞した涙液と粘液に細菌が感染して急性増悪する形で発症します。 したがって、急性期の治療だけでなく、基礎にある涙道閉塞の有無を念頭に置くことが、再発予防と長期的な視機能保護につながります。

原因菌としては、ブドウ球菌属や連鎖球菌属などのグラム陽性球菌が古典的に多いとされますが、近年では高齢者や基礎疾患を有する症例でグラム陰性桿菌(例:インフルエンザ菌など)が検出される報告もみられます。 特に小児例では、副鼻腔炎や上気道感染との関連から、起炎菌スペクトラムが成人とはやや異なる可能性も指摘されており、地域の耐性菌動向を踏まえた経験的治療が求められます。

背景因子としては、以下のような要素が重なりやすいとされています。

参考)涙道 – 仙台なみだの眼科クリニック|涙道疾患(なみだ目・目…

  • 慢性涙のう炎や長期の流涙・眼脂の既往
  • 眼瞼内反・睫毛乱生などによる慢性的な角結膜刺激
  • 眼科手術(白内障術前など)に伴う涙道の変化
  • 糖尿病免疫抑制状態、高齢など全身状態の脆弱性

意外に見落とされやすい点として、長期の防腐剤入り点眼薬使用に伴う結膜炎や涙道粘膜障害が、涙道狭窄・閉塞の一因となりうることが挙げられます。 慢性結膜炎の治療歴が長い患者では、流涙や眼脂の原因を結膜炎だけと決めつけず、涙道疾患の併存を疑う視点が有用です。

また、急性涙のう炎を契機に、以前から自覚の少なかった慢性涙のう炎や無症候性の鼻副鼻腔疾患が明らかになることも少なくありません。 医療従事者としては、「急性期の炎症を抑えたら終了」ではなく、背景疾患に踏み込んだ評価と患者教育まで含めた包括的な対応が求められます。

急性涙のう炎 治療と抗菌薬・排膿の実際

急性涙のう炎の治療の基本は、適切な抗菌薬投与と、必要に応じた排膿処置、そして炎症の鎮静化後に行う涙道再建術などの根治治療です。 軽症で全身状態が安定している成人では、経口セファロスポリン系やペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン系抗菌薬を第一選択とし、局所には温罨法と抗菌薬含有点眼・眼軟膏を併用するのが一般的です。

発熱や広範囲の発赤、蜂窩織炎が疑われる症例では、より広域な静脈内抗菌薬が推奨され、敗血症リスクが高い患者では入院下での全身管理が必要です。 特に小児や糖尿病患者、免疫抑制状態では、眼窩内・頭蓋内への波及が急速に進行する可能性があり、画像検査と専門科連携(眼科・耳鼻咽喉科・脳神経外科など)を早期から意識する必要があります。

参考)涙嚢炎 – 17. 眼疾患 – MSDマニュアル プロフェッ…

膿瘍形成が明らかな場合、局所麻酔下で涙のう部を穿刺または切開して排膿することで、疼痛軽減と炎症コントロールを図ります。 排膿操作では、できる限り膿を採取して細菌培養・薬剤感受性検査を行い、エビデンスに基づいたデエスカレーションを行うことが、耐性菌対策の観点からも重要です。

急性期の炎症が収まった後は、慢性涙のう炎・鼻涙管閉塞への対応として、涙のう鼻腔吻合術(DCR)などの外科的治療が検討されます。 外来での説明では「今は火事を消す段階(急性炎症の治療)」と「再び火事が起きないように家を作り直す段階(根治術)」という二段階で考えてもらうと、患者にも治療の全体像が理解されやすくなります。

MSDマニュアルなどのプロフェッショナル向け資料では、急性涙のう炎に対する抗菌薬選択や投与経路、温罨法の位置づけも整理されており、標準治療の確認に有用です。 一方、国内の眼科専門施設の情報では、具体的な手術適応や術式の選択、術後フォローの注意点が詳述されているため、医師だけでなく看護師やコメディカルにとっても実務的な参考となります。

急性涙のう炎の治療アルゴリズムや標準的な抗菌薬選択について詳しく知りたい場合に参考になるページです(治療・抗菌薬選択の参考リンク)。

MSDマニュアル プロフェッショナル版 涙嚢炎

急性涙のう炎 合併症と術前評価・眼科手術への影響

急性涙のう炎を適切にコントロールできない場合、局所の膿瘍が涙のう周囲の皮下組織へ拡大し、顔面蜂窩織炎や眼窩蜂窩織炎をきたすことがあります。 さらに重症例では、眼窩内の骨膜下膿瘍や硬膜外膿瘍、髄膜炎など、視機能だけでなく生命予後にも関わる深部感染症へ進展するリスクが報告されています。

特に小児では、涙のう炎を契機として眼窩顔面骨膜下膿瘍を発症した症例が報告されており、早期のCT撮影と外科的ドレナージ、広域抗菌薬投与が視神経障害回避の鍵とされています。 眼球運動障害、視力低下、眼瞼の高度腫脹、発熱・頭痛の持続といったサインを見逃さないことが、医療従事者に求められる重要な役割です。

もう一つ臨床的に重要なのが、白内障手術などの眼科手術への影響です。 慢性涙のう炎や未治療の涙道閉塞を抱えたまま眼内手術を行うと、術後眼内炎のリスクが有意に高まるとされており、多くの施設では術前スクリーニングとして流涙・眼脂の有無や涙のう圧迫時の分泌物を確認しています。

参考)涙道の病気(涙目)|北区・十条駅徒歩1分、東十条徒歩9分のザ…

術前に流涙や粘液性分泌物が目立つ場合、以下の点をチェックすることが推奨されます。

  • 涙のう部圧迫で膿・粘液が逆流しないか
  • 結膜炎のみで説明できる所見かどうか
  • 必要に応じて涙道通水や画像検査を追加すべきか

急性涙のう炎の既往がある患者では、再発リスクと涙道の状態を評価したうえで、可能であれば根治的な涙道手術を先行させてから眼内手術を計画することが望ましいとされています。 この点は患者説明でも誤解が生じやすく、「目の手術を遅らせる理由」として涙道疾患のリスクを丁寧に共有することが、信頼関係構築とインフォームドコンセントの質向上につながります。

眼科手術前の涙道評価や、涙のう炎と術後眼内炎リスクとの関連を確認する際に役立つページです(合併症・術前評価の参考リンク)。

ザ・タワー十条よつば眼科 涙道の病気(涙目)

急性涙のう炎 医療従事者のケアと多職種連携の工夫

急性涙のう炎の診療では、医師による診断・治療方針決定だけでなく、看護師や視能訓練士、薬剤師など多職種による継続的なケアが、再発防止とQOL維持に大きく寄与します。 急性期の看護では、疼痛コントロールと局所ケア、抗菌薬の投与管理、全身状態の観察が中心となり、特に高齢者では脱水や食事摂取量の低下にも注意が必要です。

局所ケアとしては、医師の指示のもとでの温罨法の実施や、排膿後の創部清潔管理、眼脂の除去などが挙げられます。 温罨法は患者自身または家族が自宅で継続することも多いため、「温度は熱すぎないこと」「1回10〜15分を1日数回」「清潔なタオルを使用」といった具体的な手技指導が重要です。

意外と見落とされがちなポイントとして、慢性涙のう炎や涙道閉塞が長期に続く患者では、常に眼脂や流涙がある生活に心理的な負担を感じているケースが少なくありません。 マスクの内側が常に濡れて不快、外出をためらう、といった訴えに耳を傾けることで、単なる局所疾患ではなく生活の質の問題として捉え直すきっかけになります。

多職種連携の観点では、以下のような工夫が考えられます。

  • 眼科外来と耳鼻咽喉科との間で、涙道手術や副鼻腔手術のタイミングを共有
  • 薬剤師による抗菌薬アドヒアランス支援と副作用モニタリング
  • 在宅・施設スタッフへの、流涙・眼脂悪化時の早期受診基準の共有

また、白内障手術を予定している患者で涙のう炎が見つかった場合、手術待機というネガティブな側面だけでなく、「この機会に長年の涙目を根本から治すチャンス」と前向きに捉えられるようなコミュニケーションも有効です。 医療従事者側が「急性期対応」と「長期的な生活支援」の両面から関わることで、急性涙のう炎の診療は単なる感染症マネジメントから、患者の人生の質を高める支援へと広がっていきます。

急性・慢性の涙のう炎に対する検査・治療法や、患者説明に利用しやすい図解が掲載されています(患者指導・多職種連携の参考リンク)。

社会福祉法人 恩賜財団 済生会 涙のう炎とは

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