局在性脈絡膜炎の診断と治療
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局在性脈絡膜炎の症状と所見
局在性脈絡膜炎は、病変が限局していても後眼部炎症の一型として捉え、視力低下・変視症・中心暗点など「黄斑に近い病変」で症状が出やすい点を最初に意識します。
眼底では黄白色〜灰白色の病変や、治癒後の色素変化(色素沈着・萎縮)を示すことがあり、活動期と瘢痕期を分けて記載すると経過判断がしやすくなります。
後部ぶどう膜炎では網膜浮腫や滲出性網膜剥離など多彩な眼底変化を取り得るため、局在性に見えても「周辺の見落とし」を避ける目的で広い視野で所見を拾う運用が実用的です。
補足として、患者説明では「炎症が引く=完治」ではなく、炎症が引いた後に残る瘢痕が視機能のボトルネックになり得ることを、初診時から共有しておくと再燃時の受診行動につながります。
また、痛みや充血が乏しいケースでも後眼部炎症は進行し得るため、「症状が軽い」ことを過小評価しない姿勢が重要です。
局在性脈絡膜炎の診断と検査(OCT・FA・ICGA)
局在性脈絡膜炎の診断では、眼底所見だけで「炎症の主座」を言い切らず、OCTで網膜外層〜RPE〜脈絡膜のどこが主に障害されているかを確認します。
後部炎症では蛍光眼底造影(FA)やインドシアニングリーン血管造影(ICGA)で、血管透過性・漏出・遮断・低蛍光などを通じて活動性や範囲評価が可能とされ、網膜・脈絡膜それぞれの情報を分けて得られるのが利点です。
特にICGAは脈絡膜炎症の評価における重要性が繰り返し指摘されており、OCTやOCTAだけで置換できない場面が残る、という整理が臨床判断に役立ちます。
OCTAは非侵襲で魅力的ですが、「炎症の活動性」そのものを必ずしも十分に追えるわけではないため、患者負担と得られる情報のバランスで検査計画を立てます。
病変が黄斑近傍の場合、OCTでの微細変化(網膜下液、外網状層〜楕円体帯の連続性、RPEの不整)を、治療前後で同じスキャン条件で追跡するだけでも、説明可能な客観指標になります。
参考リンク(ぶどう膜炎一般の治療方針として、ステロイド局所投与〜免疫抑制剤/生物学的製剤を組み合わせる考え方)。
日本眼科学会:ぶどう膜炎の治療の全体像(ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤)
局在性脈絡膜炎の鑑別(白点・感染・MNV)
局在性脈絡膜炎を診断するときは、まず「感染性ぶどう膜炎を否定してよいか」を考え、感染が疑われる状況では抗感染症薬が主となり、ステロイドは病勢や状況により使い方が変わるという原則を外さないことが安全です。
次に、白点症候群(いわゆる白点系の網脈絡膜疾患群)を意識し、MEWDS、PIC、MFCなどのスペクトラムのどこに近いかを、年齢・近視・炎症の前眼部所見の乏しさ・造影所見の癖で整理します。
また、局在性病変の背後にMNV(CNV)が隠れていると、炎症が落ち着いても視力が改善しない(または悪化する)ため、「炎症」だけでなく「新生血管の合併」を拾う設計が必要です。
臨床で意外に効くコツは、鑑別を疾患名の暗記で回さず、(1)炎症細胞の量(前房・硝子体)、(2)病変の深さ(網膜外層/RPE/脈絡膜)、(3)血管イベント(漏出・虚血・MNV)という3軸で整理することです。
この3軸に落とすと、「局在性脈絡膜炎」と一言で呼ばれている症例の中に、治療反応性が異なる病態が混在しうる点を、チーム内で共有しやすくなります。
参考リンク(後部ぶどう膜炎・白点症候群に関連する疾患群の公的資料として、類似所見やMNVに触れている箇所がある)。
厚生労働科学研究:網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究(類似所見・MNVなどの記載)
局在性脈絡膜炎の治療(ステロイド・免疫抑制・抗感染症薬)
治療は大きく「非感染性を想定した抗炎症・免疫調整」と「感染性を想定した抗感染症薬」に分かれ、感染性が疑われる場合は原因微生物への治療が優先されます。
非感染性ぶどう膜炎では、ステロイド(点眼・局所注射・全身投与)を病勢に応じて組み合わせ、必要により免疫抑制剤や生物学的製剤を用いる、という枠組みが基本です。
このとき、局在性であっても黄斑近傍・再発例・両眼性・治療中断で増悪を繰り返す例では、局所治療だけで完結させず、全身治療や併診も含めた設計が必要になります。
実務上のポイントは、治療の「強さ」よりも、(1)感染除外の確度、(2)活動性評価の指標(OCT/造影/視機能)、(3)減量計画(いつ・何を根拠に減らすか)をカルテに固定化することです。
特にステロイド反応性が良い症例ほど、症状が軽くなった段階で自己中断が起きやすいので、医療者側が「再燃時のサイン(変視・暗点・見え方の歪み)」と「受診の閾値」を具体化して共有します。
参考リンク(感染性では抗菌薬/抗ウイルス薬、非感染性ではステロイドや免疫抑制が基本という整理が簡潔)。
局在性脈絡膜炎の独自視点:OCT所見の言語化と再燃予測
検索上位の一般解説では「OCTで見ます」で止まりがちですが、現場では“何がどこで途切れているか”を言語化できるかが、治療判断の再現性を左右します。
たとえば、楕円体帯(IS/OS相当)の連続性、RPEの不整、網膜下液の有無をセットで書き、前回画像との比較(増悪・不変・改善)を明確にすると、主治医が変わっても意思決定がぶれにくくなります。
さらに、患者が自覚する「見え方の質(歪み、コントラスト低下、暗点の位置)」を、OCTのどの所見と結びつけて説明するかをテンプレ化しておくと、再燃の早期受診につながりやすいという実務的メリットがあります。
意外に見落とされるのは、「炎症が落ち着いた後のフォロー設計」です。
局在性病変でも、瘢痕部位が脆弱な場合や、MNVを起こしやすい背景(白点系のスペクトラムが疑わしい等)があると、再燃より先に“二次病変”で視機能が落ちることがあるため、症状がない時期でも検査間隔を急に伸ばしすぎない工夫が役立ちます。
最後に、チームでの運用としては、紹介状やサマリーに「局在性脈絡膜炎疑い」だけを書かず、
📌「感染除外の根拠(検査・病歴)」「造影の要点(FA/ICGA)」「OCTの要点(外層/RPE/網膜下液)」「MNV評価」
を短い箇条書きで残すと、次の医療者が最短距離で同じ景色を見られます。