局所ステロイド薬の選択基準と適正使用法

局所ステロイド薬の選択と適正使用

顔面へのストロング以上は副作用率が3倍以上に上昇します。

この記事の3つのポイント
📊

5段階分類と部位別選択

ステロイド外用薬は効果の強さで5段階に分類され、部位による吸収率の違いを考慮した選択が必要です

💊

FTU基準の適正塗布量

1FTU(約0.5g)で手のひら2枚分が基準ですが、5gチューブでは実測0.2g程度と不足しがちです

⚠️

感染症禁忌と眼圧リスク

真菌・水痘への使用禁忌と眼瞼部使用時の緑内障リスクについて患者指導が重要です

局所ステロイド薬の強さ分類とランク別特性

 

局所ステロイド薬は抗炎症作用の強さによって5段階に分類されています。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018では、ストロンゲスト(Ⅰ群)からウィーク(Ⅴ群)までの明確な区分が示されており、この分類は処方選択の基本となります。

最強クラスのⅠ群にはクロベタゾールプロピオン酸エステルデルモベート)やジフロラゾン酢酸エステル(ダイアコート)が含まれます。これらは手足の掌蹠など角質層が厚い部位の重度炎症に適していますが、顔面や頸部への使用は原則避けるべきです。吸収率が高い部位では局所的副作用のリスクが急激に高まるためです。

Ⅱ群のベリーストロングクラスには、モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ)やベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート)が分類されます。体幹部の中等度から重度の皮膚炎に一選択となることが多いランクです。

Ⅲ群のストロングクラスは、ベタメタゾン吉草酸エステル(リンデロンV)やフルオシノロンアセトニドフルコート)などが該当し、日常診療で最も汎用されるランクとなっています。顔面への使用も短期間であれば選択肢に入ります。

Ⅳ群のマイルドクラスとⅤ群のウィークは、小児や高齢者、顔面・頸部への使用に適しています。プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス)やヒドロコルチゾン酢酸エステルなどが含まれ、副作用リスクを最小限に抑えながら治療を進められます。

部位による吸収率の違いは処方判断で極めて重要です。前腕内側を1とした場合、頰は13倍、額は6倍、頭皮は3.5倍、陰嚢は42倍もの吸収率を示します。つまり同じランクの薬剤でも、使用部位によって実効的な強さが大きく変わるということですね。

日本皮膚科学会のステロイド外用薬ランク表(PDF)では、各製剤の詳細な分類と適応部位が確認できます

局所ステロイド薬の適切な塗布量とFTU指導

ステロイド外用薬の効果を十分に得るには、適切な量を塗布することが不可欠です。しかし実際の診療現場では、患者の多くが必要量の半分以下しか使用していないという報告があります。

FTU(フィンガーチップユニット)は塗布量の標準的な指標として広く用いられています。成人の人差し指第一関節までチューブから押し出した量が1FTU、約0.5gに相当します。この量で手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)を塗布するのが基準です。

ところが実測調査によると、5gチューブでは1FTU相当を押し出しても実際には約0.2g、10gチューブでも約0.3gにしかならないという問題が明らかになっています。チューブの口径や製剤の粘度によって押し出される量に差が生じるためです。

これは指導上の重要なポイントです。

患者に「第一関節まで」と説明するだけでは不十分な塗布量になる可能性があります。実際には「やや多めに」「しっかりと白く残る程度」といった補足説明が必要になります。塗布後に皮膚表面がやや光る程度が適量の目安です。

ローションタイプの場合、1円玉大(直径約2cm)が1FTUに相当します。液状製剤は広範囲への塗布には便利ですが、量の把握が難しいため、患者への視覚的な指導がより重要になります。

成人のアトピー性皮膚炎で全身に塗布する場合、1回の使用量は15~30gに達することもあります。つまり5gチューブなら3~6本、10gチューブでも1.5~3本が1回分に必要となる計算です。この量を1日2回使用するなら、週単位で相当量の処方が必要になります。

処方日数の判断では、実際の必要量を考慮することが大切です。「5gを2本」といった少量処方では、患者が適切な量を使えず治療効果が不十分になるリスクがあります。

マルホ株式会社の外用剤塗布量に関する資料では、FTUの実測データと指導のポイントが詳しく解説されています

局所ステロイド薬の部位別選択と副作用回避

顔面と頸部は皮膚が薄く血管が豊富なため、ステロイド外用薬の副作用が最も出やすい部位です。毛細血管拡張、酒さ様皮膚炎、ステロイドざ瘡などの局所性副作用は、主にこの部位で発生します。

顔面への処方では、原則としてⅢ群(ストロング)以下のランクを選択すべきです。短期間の使用であればⅢ群も選択肢に入りますが、2週間を超える連用は避けるのが安全です。長期管理が必要な場合は、Ⅳ群(マイルド)やⅤ群(ウィーク)への切り替えを検討します。

眼瞼部への使用では、さらに慎重な判断が求められます。眼内への薬剤移行により眼圧上昇や緑内障のリスクがあるためです。数週間の使用でも眼圧が30~40mmHgまで上昇した症例報告があり、ステロイド緑内障は不可逆的な視野障害を引き起こす可能性があります。

眼瞼部に使用する場合の対策は明確です。

使用期間を1~2週間以内に制限し、可能な限り弱いランクを選択することが基本となります。やむを得ず長期使用が必要な場合は、眼科との連携のもと定期的な眼圧測定を行う必要があります。

陰部や腋窩などの間擦部位も吸収率が極めて高い部位です。陰嚢の吸収率は前腕の42倍に達するため、弱いランクでも強い効果が得られます。これらの部位にⅠ群やⅢ群を使用すると、皮膚萎縮や線条が生じやすくなります。

体幹部や四肢では、炎症の程度に応じてⅠ~Ⅲ群を使い分けることができます。ただし手掌や足底は角質層が厚いため、Ⅰ群やⅡ群でないと十分な効果が得られないことがあります。部位の特性に応じた強さの選択が治療成功の鍵です。

小児では成人より皮膚が薄く吸収率が高いため、原則として一段階弱いランクを選択します。乳幼児のおむつ部位は密封効果で吸収率がさらに高まるため、Ⅳ群以下が推奨されます。

局所ステロイド薬の禁忌疾患と感染症リスク管理

ステロイド外用薬は免疫機能を局所的に抑制するため、特定の感染症には絶対禁忌となります。この判断を誤ると、疾患の急速な悪化や播種性感染症への移行リスクが生じます。

真菌感染症(白癬、カンジダ症)への使用は禁忌です。ステロイドの免疫抑制作用により真菌の増殖が促進され、病巣が拡大します。特に体部白癬にステロイドを使用すると、炎症症状は一時的に軽減するものの、真菌が皮膚深部に広がり「白癬の治癒遷延」を引き起こします。

水痘、単純疱疹、帯状疱疹などのウイルス性皮膚疾患も禁忌に該当します。ステロイドによる局所免疫抑制でウイルスの増殖が加速し、重症化や全身播種のリスクが高まります。水痘患児に誤ってステロイドを使用した場合、水痘脳炎や播種性血管内凝固症候群といった重篤な合併症につながる可能性があります。

細菌感染症で化膿している創傷にも使用できません。ただし抗菌薬配合のステロイド外用薬(リンデロンVG、テラ・コートリルなど)は、細菌感染を伴う炎症性皮膚疾患に適応があります。とはいえ長期使用は耐性菌のリスクがあるため、1~2週間程度に留めるべきです。

鑑別診断が重要なのは明らかです。

湿疹と誤認しやすい皮膚疾患には、白癬、貨幣状湿疹に似た体部白癬、接触皮膚炎に似た帯状疱疹初期などがあります。診断に迷う場合は、真菌検査(KOH法)やウイルス抗原検査を行ってから処方を決定することが安全です。

アトピー性皮膚炎患者では、掻破による二次感染のリスクが常に存在します。黄色ブドウ球菌の感染を合併している場合、ステロイド単独では改善せず、むしろ感染が拡大することがあります。滲出液や痂皮形成が目立つ場合は、抗菌薬の併用や一時的なステロイド中止を検討すべきです。

種痘疹(予防接種部位の異常反応)も禁忌疾患に含まれます。現在は天然痘ワクチンの定期接種はありませんが、海外渡航者や医療従事者で接種を受けた場合には注意が必要です。

局所ステロイド薬のアンテドラッグ型と長期管理戦略

アンテドラッグステロイドは、局所での高い抗炎症効果と全身性副作用の低減を両立させた設計の薬剤です。患部で効果を発揮した後、体内に吸収されると速やかに代謝されて低活性物質に変化する特性を持ちます。

代表的なアンテドラッグには、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス)やヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(パンデル)があります。これらはⅣ群(マイルド)やⅡ群(ベリーストロング)に分類され、顔面や小児への使用、広範囲塗布が必要な場合に選択されます。

アンテドラッグの利点は全身性副作用のリスクが低いことです。従来のステロイドでは広範囲・長期使用により、視床下部-下垂体-副腎系の抑制が問題となることがありました。アンテドラッグでは体循環に入る前に肝臓で速やかに不活化されるため、このリスクが大幅に軽減されています。

ただし局所性副作用のリスクは通常のステロイドと同等です。長期連用により皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡などが生じる可能性は変わりません。「アンテドラッグだから安全」という過信は禁物です。

長期管理が必要なアトピー性皮膚炎では、プロアクティブ療法が標準的な戦略となっています。この方法では、急性期に十分量のステロイドで炎症を完全に鎮静化させた後、保湿剤に加えてステロイドまたはタクロリムスを週2回程度の間欠投与で継続します。

プロアクティブ療法の有効性は複数の臨床試験で確認されています。寛解維持率は従来のリアクティブ療法(症状が出たら塗る方法)と比較して有意に高く、ステロイド総使用量は減少するという結果が得られています。

間欠投与の典型的なスケジュールは、月曜日と木曜日など週2回の定期塗布です。これにより皮膚の潜在的な炎症(サブクリニカルな炎症)を抑制し、急性増悪を予防できます。プロアクティブ療法では、使用期間が数ヶ月に及んでも副作用の増加は認められていません。

タキフィラキシー(薬剤耐性)への懸念もあります。

同じステロイドを長期間連続使用すると、効果が徐々に減弱する現象が報告されています。この場合は1ヶ月程度の休薬期間を設けるか、別のランクまたは別の種類のステロイドに変更することで、再び効果が得られることが多いです。

日本アトピー協会の外用薬に関するページでは、プロアクティブ療法の具体的な実施方法と患者指導のポイントが解説されています

長期管理では非ステロイド性抗炎症外用薬(タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラスト)との併用や切り替えも選択肢となります。これらの薬剤は免疫抑制機序がステロイドと異なるため、ステロイドによる副作用が懸念される部位や長期使用が必要な症例で有用です。


ヒフメディックPV軟膏14g【セルフメディケーション税制対象】