局所麻酔成分とメトヘモグロビン血症の治療量

局所麻酔成分とメトヘモグロビン血症

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の要点
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原因は「薬剤性」をまず疑う

ベンゾカインやプロピトカイン(プリロカイン)などで起こり得るため、投与経路と総量の確認が最優先。

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SpO2が酸素投与で上がらない

チアノーゼや低SpO2が目立つのに呼吸状態の説明がつかない時はMetHbを想定して追加評価へ。

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治療はメチレンブルーが軸

症候がある場合やMetHb高値ではメチレンブルーを用いるが、G-6-PD欠乏など例外条件も押さえる。

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の原因薬剤

 

局所麻酔成分が原因となるメトヘモグロビン血症は「薬剤性後天性MetHb血症」の代表例で、特にンゾカインやプロピトカイン(製剤によってはプリロカイン/プロピトカイン表記の混在に注意)など一部の局所麻酔薬で“まれに”発生すると整理されます。J-STAGEの総説でも、ベンゾカインやプロピトカインをはじめ一部局所麻酔薬でメトヘモグロビン血症が起こり得て、酸素投与でも改善しないSpO2低下やチアノーゼを呈する点が臨床の気づきとして強調されています。

一方、医療現場では「局所麻酔=注射」だけでなく、スプレー、ゼリー、クリーム、貼付剤など投与形態が多様です。たとえば外用局所麻酔のリドカイン・プロピトカイン配合剤(エムラクリーム)では、禁忌として“メトヘモグロビン血症のある患者”が明記され、理由としてプロピトカイン代謝物(o-トルイジン)がMetHbを産生し症状を悪化させ得る、と添付文書レベルで説明されています。

さらに重要なのは「併用薬・背景」で、同じ添付文書内に、サルファ剤硝酸薬エステル型局所麻酔薬など“単独でもMetHbが報告されている薬”との併用でメトヘモグロビン血症を起こすことがある、と注意喚起があります。

臨床では、処置前に以下を短時間で確認できると安全性が上がります。

  • 直近の局所麻酔成分(スプレー、外用、注射)の種類と総使用量
  • 併用薬(ニトログリセリン等の硝酸薬、サルファ剤など)
  • 乳児・低出生体重児、腎障害、肝障害、G-6-PD欠乏の可能性(後述)

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の症状とSpO2

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症が疑われる“典型的な入口”は、酸素投与をしても改善しにくいSpO2低下とチアノーゼの組み合わせです。麻酔科学の総説では、酸素投与でも改善しないSpO2低下やチアノーゼがポイントになると記載されています。

ここで医療従事者がハマりやすい落とし穴は、「SpO2低い=換気が悪い/肺が悪い」と短絡してしまうことです。MetHb血症では“酸素化の手技”そのものが無意味というより、「ヘモグロビンが酸素を運べない比率が増える」ため、通常のパルスオキシメータ表示が臨床像と乖離しやすくなります(患者が苦しそうなのに画像は軽い、あるいはその逆)。そしてこのギャップが、気道・循環の不要な侵襲(過換気、過鎮静、過輸液など)につながることがあります。

症状は重症度に応じて幅があり、添付文書の過量投与の項でも、メトヘモグロビン血症で酸素運搬能力が減少し、めまい、悪心、頭痛、呼吸困難、錯乱、痙攣、昏睡に至り得るとされています。

現場での実務としては、以下のような所見が揃うほど“局所麻酔成分によるMetHb”の確度が上がります。

  • チアノーゼが目立つのに胸部所見が乏しい
  • 酸素投与を増やしてもSpO2が上がりにくい
  • 直前に局所麻酔成分(特に粘膜投与や外用で広範囲)が使われた
  • 既往や併用薬にMetHbリスクがある(硝酸薬等)

    参考)メトヘモグロビン血症 − 歯科辞書|OralStudio オ…

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の診断とCO-oximetry

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症は、疑った時点で「確認検査」を急ぐのが実務的です。総説では、CO-oximetryで確定できると明記されています。

CO-oximetryは、一般的な血ガスの酸素分圧(PaO2)だけでは拾えない“異常ヘモグロビンの割合”を評価できる点が肝です。現場では、SpO2低下があるのにPaO2が保たれる(あるいは酸素投与でPaO2は上がる)のに患者の色調が悪い、という形で「PaO2とSpO2の違和感」が診断の糸口になります。

診断を急ぐべき状況(例)は次の通りです。

  • 局所麻酔成分投与後にチアノーゼ+低SpO2が出現
  • 呼吸状態や画像所見だけで説明しづらい低SpO2
  • 乳児・低出生体重児などリスク群で外用局所麻酔成分を使用した​

なお、エムラクリームの添付文書では「特に低出生体重児、新生児、乳児(1歳未満)で重篤なメトヘモグロビン血症が多く報告」と海外情報として注意喚起されており、年齢が若いほど“早めに疑って早めに測る”判断が重要になります。

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の治療とメチレンブルー

治療の基本は「原因薬剤の中止+酸素投与などの全身管理」に加え、重症度により特異的治療を行う流れです。麻酔科学の総説では、症候出現時やメトヘモグロビン30%以上ではメチレンブルーで治療する、と具体的な目安が示されています。

添付文書でも、メトヘモグロビン血症が出た場合は投与中止し、メチレンブルー投与など適切な処置を行うことが明記されています。

この“投与の意思決定を遅らせない”ことが臨床では重要で、重症化すると痙攣や意識障害など、局所麻酔成分の中枢毒性(LAST)との鑑別もさらに難しくなります(併発する可能性もゼロではありません)。

一方で、メチレンブルーは万能ではなく、同じ添付文書に「G-6-PD欠乏患者ではメトヘモグロビン血症が発現しやすい」旨の記載があり、背景因子の確認も必要です。

現場で“知られていないことが多いが実務に効く点”として、次のような運用が役立ちます。

  • 「MetHbを疑ったら、治療薬の院内在庫と投与ルートを先に確保」:検査結果待ちで時間を失わない。
  • 「原因薬剤の経路を必ず確認」:注射ではなく、粘膜スプレーや広範囲外用の見落としが起きやすい。
  • 「小児は最大塗布量・最大塗布時間が安全域そのもの」:外用局所麻酔成分は“守らないと中毒になり得る薬”として扱う。

※権威性のある日本語の参考リンク(禁忌、併用注意、小児での注意、MetHb血症の重大な副作用、用量・塗布時間の上限がまとまっています)

リドカイン・プロピトカイン配合(エムラクリーム)添付文書PDF(禁忌・注意事項・副作用・用法用量)

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症の予防と独自視点の現場チェック

局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症は“まれ”とされる一方、起こると「酸素投与で改善しない低SpO2」という形で周術期・処置室の判断を難しくします。総説でも、局所麻酔薬投与量を必要最小限にし、厳重な観察と迅速な対応準備を行うべき、という安全管理の原則が述べられています。

予防の柱は、(1)リスク患者の同定、(2)総投与量(外用含む)の管理、(3)“疑ったら測る”の導線整備です。特に外用局所麻酔成分では、添付文書で成人は「1回あたり10gまで」「塗布時間120分を超えない」、小児は年齢・体重に応じた最大塗布量と最大塗布時間が細かく規定され、遵守が求められます。

ここからは検索上位の記事だけだと抜けがちな、現場で再現性の高い“独自視点”の提案です。キーワードは「局所麻酔成分の総量の見える化」と「SpO2異常時の分岐表」です。

  • 🧾局所麻酔成分の総量チェック(処置前30秒)
    • スプレー回数、外用量(g)、注射量(mL)を“足し算”で把握する(経路が違っても体内では合算リスクになるため)。
  • 🧭SpO2低下の分岐表(処置室の壁に貼る)
    • 「酸素投与でSpO2が改善しない」→「直前の局所麻酔成分」→「CO-oximetry依頼」→「メチレンブルー準備」という導線を、チームで共有する。​
  • 👶小児・乳児は“時間”が毒性を作ることがある
    • 小児では塗布時間や塗布量の上限が明確で、特に乳児では重篤例が多いという注意喚起があるため、タイマー運用をルール化する(開始時刻を記録し、60分で必ず剥がす等)。

    最後に、局所麻酔成分によるメトヘモグロビン血症は「知っていれば早期に回避・治療できる」タイプの有害事象です。投与形態が多い現代ほど、注射だけでなく外用・粘膜投与まで含めて“局所麻酔成分を一つの薬剤群として管理する”発想が、インシデントを減らします。





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