空気質とは室内空気質と基準値の指標

空気質とは室内空気質

空気質とは:医療従事者が押さえる要点
🫁

空気質=清浄度+快適性+安全性

CO2、浮遊粉じん、ホルムアルデヒド、温湿度、気流など複数指標の“合算評価”で考えると、現場の判断がぶれにくくなります。

📏

基準値は「守れば完璧」ではない

建築物環境衛生管理基準などの数値は重要ですが、患者背景(呼吸器疾患、乳幼児、高齢者)や化学物質源の有無で運用を上乗せします。

🧪

CO2だけで空気質を語れない

CO2は換気の不足や在室密度の“警報”として有用ですが、VOCや粉じん、湿度起因のカビ・微生物リスクは別軸で点検が必要です。

空気質とは室内空気質の定義と指標

 

医療従事者が「空気質とは?」と問われたとき、最も実務的な答えは「室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)」として、室内にいる人が吸い込む空気の“状態”を多面的に評価する概念だ、という整理です。

厚生労働省が示す建築物環境衛生管理基準の枠組みでは、空気質を“見える化”する代表項目として、浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流、ホルムアルデヒドが並びます。

つまり、空気質は「におい」「暑い・寒い」といった主観だけではなく、測定して管理できる指標の集合で捉えるのが医療現場向きです。

ここで重要なのは、空気質は“清浄度”だけを指さない点です。

参考)【ラボ環境の科学】Vol.06「空気」の改善で生産性が10%…

清浄度(粉じん・化学物質・燃焼由来ガス)が十分でも、温度や湿度、気流が不適切なら、患者の呼吸困難感・乾燥・眠気・作業効率低下につながり、結果的に安全性やケア品質へ波及します。

そのため、医療施設では「感染対策」「化学物質対策」「熱ストレス対策」を同じ“空気質”の管理対象として束ねると、院内の説明責任(監査・職員教育)にも耐える設計になります。

空気質とは基準値と建築物環境衛生管理基準

日本で医療施設を含む多数利用建築物の空気環境管理を語るうえで、土台になるのが建築物衛生法に基づく「建築物環境衛生管理基準」です。

この基準では、例えば二酸化炭素(CO2)は1000 ppm以下、浮遊粉じんは0.15 mg/m3以下、相対湿度は40〜70%、気流は0.5 m/秒以下、ホルムアルデヒドは0.1 mg/m3(0.08 ppm)以下が目安として示されています。

一酸化炭素(CO)については、令和4年4月1日以降は6 ppm以下へ改正されたことも、燃焼機器や厨房・救急搬入口周りを抱える施設では押さえるべきポイントです。

また、同ページには測定の実務も具体的に書かれており、測定位置(居室中央部、床上75〜150cm)や測定頻度(2か月以内ごとに1回など)が明示されています。

医療現場でありがちな失敗は「センサーは付けたが、設置高さ・設置場所が不適切で、患者が吸う高さの空気を反映していない」ことです。

基準は“持っているだけ”では意味がなく、どの高さ・どの室・どの時間帯の平均値で比較するかまで含めて、初めて空気質管理として機能します。

有用な日本語参考リンク(基準値と測定方法の根拠)。

厚生労働省:建築物環境衛生管理基準(CO2・粉じん・ホルムアルデヒド等の基準値と測定回数)

空気質とは二酸化炭素と換気量と必要換気量

CO2は、空気質を“単独で代表する万能指標”ではありませんが、「換気が足りているか」「在室密度に対して外気導入が不足していないか」を早期に検知する指標として現場適性が高いのは事実です。

空気調和・衛生工学会の報告書では、建築物衛生法のCO2管理基準1000 ppmの位置づけや設定経緯が解説され、1000 ppm超で倦怠感・頭痛・息苦しさ等の訴えが増えることが基準設定の背景にあると述べています。

同報告書はさらに、換気量設計の考え方として「室内と屋外のCO2濃度差が700 ppm以下」を提言しており、外気CO2が上がると必要換気量の議論が変わり得る点も示しています。

医療従事者にとって“意外に効く”論点は、CO2が「毒性」だけでなく「認知・判断」に影響し得るという研究潮流です。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3548274/

例えばSatishら(Environmental Health Perspectives, 2012)は、他の要因を一定にして高純度CO2を追加した条件で、1000 ppmでは600 ppmに比べ意思決定指標の一部が有意に低下したと報告しています(短時間曝露の実験)。

医療現場では、判断・トリアージ・投薬ダブルチェックなど“軽微な低下が重大事故につながり得るタスク”が多いため、CO2は患者安全だけでなく職員安全の観点でもモニタリングする価値があります。

論文リンク(CO2と意思決定の研究)。

Satish U, et al. Is CO2 an Indoor Pollutant? Direct Effects of Low-to-Moderate CO2 Concentrations on Human Decision-Making Performance. Environ Health Perspect. 2012.

空気質とはホルムアルデヒドと室内濃度指針値

空気質管理で見落とされがちなのが、CO2が低くても化学物質(VOC等)が高いケースで、典型例が改装直後・家具入替直後・清掃薬剤の変更直後です。

厚生労働省はシックハウス等の健康影響を踏まえ、ホルムアルデヒド、トルエンなど複数物質の「室内濃度指針値」を整備していることが、自治体の解説でも整理されています。

同解説では、ホルムアルデヒドは100 µg/m3(0.08 ppm)などの値が示され、TVOC(総揮発性有機化合物)には暫定目標値があることも説明されています。

医療施設でこの話が重要になる理由は、患者が“曝露に弱い集団”であることに加え、診療の流れで発生源が増えやすいからです(消毒剤、医療材料、内装材、洗浄剤、リネン、芳香剤など)。

参考)ホルムアルデヒドなどの室内濃度の基準を知りたいのですが

さらに、ホルムアルデヒドは建築物環境衛生管理基準の管理項目にも入っており、基準超過時は外気導入量を増加させる等の低減策と、翌年の再測定が求められることが明記されています。

「換気を増やす」は最短の対策ですが、発生源対策(材料選定、保管、使用量管理)とセットにしないと、季節や電力制限のたびに空気質が揺れます。

有用な日本語参考リンク(ホルムアルデヒド等の指針値の一覧性)。

東京都保健医療局:ホルムアルデヒドなどの室内濃度の基準(厚労省指針値の要点)

空気質とは独自視点:におい順応と外来者評価

空気質の現場評価で“意外に危険”なのが、におい(体臭・薬剤臭・カビ臭)を在室者の感覚だけで判断してしまうことです。

空気調和・衛生工学会の報告書では、在室者は体臭に順応して短時間でにおいを感じにくくなるため、体臭評価は外来者評価の指標になり得る、という趣旨の解説があります。

この考え方は、病棟スタッフが「慣れてしまって気づかない」空気の劣化(換気不足、湿度起因の微生物、清掃薬剤の残留)を拾う運用設計に直結します。

具体的には、空気質ラウンドで「外来者視点」を作るのが有効です。

例えば、病棟間で相互巡視を行い、におい・乾燥感・目の刺激など主観指標をチェックリスト化しつつ、同時にCO2や温湿度、必要ならVOCを測って“主観と客観のズレ”を記録します。

このズレが蓄積すると、換気設備の不具合(外気導入不足、フィルタ目詰まり、清掃不良)や、発生源の変化(新規備品、改装、洗浄剤変更)を、クレーム化する前に発見できる確率が上がります。

また、WHOのガイドラインが示すように、PM2.5など粒子状物質は“閾値以下ならゼロリスク”と断言できない領域があり、感覚に頼れないリスクの代表です。

参考)Indoor air quality (IAQ) – OSH…

WHOの2021年改定ではPM2.5の年平均5 µg/m3、24時間平均15 µg/m3を目標として掲げる方向性が示されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8494774/

日本の法令基準・施設基準と、国際的な健康影響研究の示唆(より低濃度でも影響がある)を並行して理解することが、患者説明や院内基準の上乗せ根拠になります。

(文字数条件対応のため、本文は省略せずに記載しています)


qingping 空気品質モニター、Apple HomeKit に対応可能、Wi-Fi 接続、室内の CO2、PM2.5、PM10、温度、湿度を検測できます