後天性眼振原因と脳幹小脳めまい鑑別

後天性眼振原因と鑑別

後天性眼振原因と鑑別:臨床で迷わない要点
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中枢性を最初に除外

後天性眼振は脳幹・小脳などの中枢病変が背景にあることがあり、めまい診療では「危険なめまい」を最優先で見分ける。

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末梢性でも例外に注意

方向固定性眼振など末梢性を示唆する所見でも、中枢性を完全に否定できない。蝸牛症状・体幹失調・経過を合わせて判断する。

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薬剤・代謝も原因

抗痙攣薬やアルコールなどの薬剤性、全身状態(代謝異常など)も後天性眼振の原因となり得るため、内服歴・嗜好歴の確認が重要。


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後天性眼振原因の分類:中枢と末梢

後天性眼振を見たとき、まず「先天性か後天性か」を分けるだけで臨床の優先順位が変わる。日本眼科学会の解説では、先天性眼振は弱視や斜視を伴うことが多く自覚症状が乏しい一方、後天性眼振は動揺視を伴い、めまい、脳梗塞、脳脊髄奇形、小脳変性疾患、多発性硬化症など脳や耳の病気から生じることが多いとされる。

後天性である時点で「原因検索を止めない」姿勢が重要で、眼科単独ではなく神経内科・耳鼻咽喉科・救急との連携が前提になる(同学会でも他科連携が多いと明記される)。

分類の軸は大きく2つで、医療者向けにはこの整理が説明しやすい。

  • 中枢性:大脳、小脳、脳幹などの障害が背景(危険なめまいに直結しうる)。
  • 末梢性:前庭神経、平衡感覚器(内耳)などの障害が背景。

眼振の「型」も原因推定に役立つ。日本眼科学会は眼振を、緩徐相と急速相が明確な衝動性眼振と、区別がはっきりしない振子様眼振に分類し、さらに水平性・垂直性・回旋性、注視眼振、頭位眼振、体位変換眼振などに分けて説明している。

この分類は検査の組み立て(注視で変わるか/頭位で変わるか/固視で抑制されるか)に直結するため、問診より先に「観察の型」を言語化するとチーム内共有が速い。

参考リンク(後天性眼振の原因疾患、分類(衝動性/振子様、誘発眼振)、生理的眼振までまとまっている)

日本眼科学会:眼球がよく動いている(眼振)

後天性眼振原因と脳幹小脳:危険なめまい

一次対応で最も重要なのは、後天性眼振が「危険なめまい」の入り口になり得る点である。日本めまい平衡医学会のフローチャート解説を含む教育セミナー資料では、生命に関係する危険なめまいの多くは脳幹および小脳の脳血管障害であり、急性めまいとして発症するため、脳血管障害の否定と末梢性めまいを積極的に診断することが重要と述べられている。

同資料は、中枢性めまいを脳幹障害と小脳障害に分け、脳幹では前庭神経核周辺の障害に加えて他の脳神経核障害が合併しやすく、構音嚥下障害、感覚障害、ホルネル症候群など多彩な神経症状が出ること、眼球運動異常として純回旋性・純垂直性眼振や注視方向性眼振が出現しうることを説明している。

さらに小脳では、小脳半球障害は四肢の運動失調が目立つ一方、小脳虫部障害は四肢失調が目立たず体幹失調のみで起立不能となる場合があるため注意が必要とされる。

臨床上の落とし穴として重要なのが「末梢っぽく見える中枢」である。資料ではAICA(前下小脳動脈)領域の障害は内耳動脈を分枝するため、難聴や耳鳴、方向固定性眼振など末梢性めまいに類似した症状を呈しうると注意喚起している。

つまり、眼振の方向や“末梢らしさ”だけで安心せず、同時に「体幹失調」「神経局在を示唆する随伴症状」「血管リスク」「初回単発の急性発症」といった背景を束ねて判断するのが安全である(同資料で初回めまい・高齢・合併症は脳血管障害を念頭に置くべきとされる)。

参考リンク(危ないめまいを見分ける観察点、末梢/中枢の特徴、体幹失調の重要性が具体的)

教育セミナー:めまいの鑑別診断(J-STAGE PDF)

後天性眼振原因と注視眼振:所見の読み方

眼振観察は「検査機器の前に、所見の言語化」が要である。上記の教育セミナー資料では、注視眼振検査において定方向性眼振は前庭系の左右非対称性を示唆し、多くは末梢前庭性障害だが中枢性を否定するものではないと整理されている。

一方で注視方向性眼振は、注視した方向に急速相をもつ眼振で、主として脳幹・小脳障害に出現すると明記されており、「注視で方向が変わる」所見は中枢性を疑うサインとして扱いやすい。

救急などで臥位のまま所見を取らざるを得ない場合、頭位による影響を考慮すべき点も同資料で強調されているため、「座位での所見」と「臥位での所見」を混ぜて結論を急がないことが重要になる。

頭位・頭位変換検査では、末梢性BPPVが頻度として多い一方、方向交代性眼振が見られたからといって安易にBPPVと決めつけるのは危険だとされている。資料では、中枢性頭位眼振は末梢性のような眼振の頻度・強度の増減(増強/減衰)が乏しく、明瞭な眼振がないのに頭位変化で嘔気を強く訴える場合に中枢性頭位めまい症を疑う、という臨床的に使いやすいヒントが示されている。

また頭位検査での下眼瞼向き眼振(垂直性眼振)は中枢病変の所見であり、小脳小節障害による耳石器眼反射の脱抑制が原因と説明されている。

医療従事者向けにまとめるなら、現場での“危険サイン”をチェックリスト化すると運用しやすい。

  • 注視方向性眼振(脳幹・小脳を疑う)。
  • 純垂直性・純回旋性(中枢を強く疑う文脈で使われる)。
  • 体幹失調(開眼でも改善しない、起立不能など)。
  • 頭位変化で強い嘔気の割に眼振がはっきりしない。
  • 定方向性でも「中枢否定ではない」を思い出す(特にAICAなど)。

後天性眼振原因と薬剤:抗痙攣薬とアルコール

後天性眼振の原因検索では、画像や神経所見に意識が寄りがちだが、薬剤性・中毒性を外すのは同じくらい重要である。日本眼科学会は、後天性眼振が脳や耳の病気から生じることが多い一方で、抗痙攣薬を内服している方やアルコール中毒でも生じることがあると明記している。

この一文は短いが実務上の価値が高く、救急・入院・外来のどの場面でも「内服歴」「飲酒歴」「離脱の可能性」「増量や飲み合わせ」を問診テンプレに入れる根拠になる。

薬剤性を疑うときの実装(現場での使い方)は次の通り。

  • 内服歴:抗痙攣薬(てんかん/神経障害の治療薬)を含む中枢作用薬の有無を確認する(同学会で抗痙攣薬が例示される)。
  • 嗜好歴:大量飲酒、慢性飲酒、最近の断酒(離脱)を確認し、必要なら家族から補足する(同学会でアルコール中毒が例示される)。
  • タイミング:薬の開始・増量・併用追加と症状発現の時系列を整理する。
  • 併存症状:眠気、構音障害、歩行失調など“薬剤過量”を示唆する所見があれば、神経学的危険所見との切り分けを急ぐ。

意外に見逃されるのは「原因が単独ではない」ケースである。たとえば脳血管リスクのある患者が抗痙攣薬や睡眠薬を追加され、ふらつき・眼振様の訴えが増悪した場合、薬剤性だけに見えて実は小脳・脳幹イベントが重なっている可能性がある。後天性眼振は“中枢か末梢か”の二択ではなく、“中枢+薬剤”“末梢+飲酒”のように重なり得る、という発想をチームで共有しておくと安全側に倒しやすい(後天性眼振が他科連携になることは同学会でも触れられている)。

後天性眼振原因と生理的眼振:独自視点の問診

検索上位の説明では病的原因が中心になりやすいが、医療者向けの記事では「生理的眼振」との誤認・誤解を先にほどくと、患者説明の質が上がる。日本眼科学会は、眼振には病的でないものもあり、車や電車の窓から外の景色を見ている時に生じる視運動眼振は正常な人に起きる生理的現象だと説明している。

この視点は、後天性眼振の原因検索を進める一方で、患者が訴える「目が揺れる」のうち、いつ・どの状況で起きるのかを具体化する問診に直結する。

独自視点として、問診で使える“状況依存の切り分け”を提案する。

  • 「電車の窓」「高速で流れる景色」「動画視聴」など視覚刺激で出る:視運動眼振(生理)を含めて整理し、常時の動揺視と区別する(同学会で視運動眼振が生理的とされる)。
  • 「暗所」「固視できない状況」で悪化:固視抑制の有無を疑い、末梢・中枢の議論につなげる(眼振が固視条件で変わることは同学会の分類とも整合する)。
  • 「頭位変換で誘発」「潜時や疲労がある/ない」:末梢BPPVと中枢性頭位めまい症の鑑別観点に接続する(頭位検査で観察すべきポイントは教育セミナー資料で説明される)。

さらに、説明の際には「後天性眼振=すべて脳卒中」ではないことも同時に伝える必要がある。後天性眼振には脳や耳の病気が多い一方で、抗痙攣薬やアルコールでも生じ得て、生理的な視運動眼振も存在する、と日本眼科学会が同一ページで併記しているため、患者の不安を過不足なく調整する材料になる。

このように「危険な病気を見逃さない」と「不必要に怖がらせない」を両立させるのが、後天性眼振を扱う現場のコミュニケーション技術である。