向精神薬取締法 一覧
向精神薬取締法 一覧と分類(第1種・第2種・第3種)
向精神薬は、乱用の危険性と治療上の有用性のバランスで「第1種向精神薬」「第2種向精神薬」「第3種向精神薬」の3分類として整理されます。
分類を押さえる最大の理由は、同じ“向精神薬”でも、譲受け・譲渡し・廃棄・記録などの実務義務が「種別」で変わるからです。
たとえば手引きの例示では、第1種にメチルフェニデート、第2種にフルニトラゼパム・ペンタゾシン、第3種にトリアゾラム・ブロチゾラムが挙げられ、現場が遭遇しやすい薬剤が多く含まれます。
医療従事者向けに「一覧」を読み解くときは、次の2つの“名前の層”を分けると理解が速くなります。
参考)e-Gov 法令検索
- 物質名(一般名・化学物質としての指定):法令上の指定単位で、原則こちらが基準です。
- 製剤名(販売名):実務では棚卸や伝票が販売名中心になりやすいため、どの販売名がどの物質名に結びつくかが重要です。
さらに意外と見落とされがちなのが、「○向」などの表示です。向精神薬卸売業者等から譲り受ける外箱等に記号表示があることが示されており、現場での仕分け・監査対応の“入口チェック”として使えます。
参考リンク(向精神薬の分類・譲受け/譲渡し/保管/事故/記録の要点と、向精神薬一覧表がまとまっている)
向精神薬取締法 一覧で押さえる譲受け・譲渡し(処方せん・返品・災害備蓄)
薬局の手引きでは、向精神薬は「向精神薬輸入業者、向精神薬製造製剤業者、向精神薬卸売業者」など、法で認められた相手から譲り受けできることが示されています。
また例外として、患者へ交付済みの向精神薬の返却、返品、災害備蓄として地方公共団体の長に譲り渡した向精神薬の返品、向精神薬取扱者が取扱者でなくなった場合に50日以内に譲り受ける場合など、現場で起きがちな場面が具体的に列挙されています。
この「50日以内」という期限は、閉局・廃止・免許失効などの混乱時に抜けやすい論点で、在庫の行き先を決める運用フロー(責任者・期限・伝票の束ね方)まで事前に決めておく価値があります。
譲渡し側のルールも同様に限定列挙で、処方せん所持者への交付(小売業者として行う場合)や、病院・診療所等の開設者、卸売業者等の関係者への譲渡し(卸売業者として行う場合)など、立場(小売/卸)でできることが変わります。
「いつもの取引先だから大丈夫」と現場感覚で進めると、監査で“誰に・どの立場で・どの根拠で”が説明できずに詰まるため、伝票の相手先区分(卸売業者としての取引か等)を帳票上で分けておくのが安全です。
処方せん周りの盲点として、不備または不審な処方せんは疑義照会後でなければ調剤できないこと、さらに偽造(カラーコピーやパソコン偽造など)の注意喚起が明記されています。
特に向精神薬は詐取目的のターゲットになりやすく、「遠隔地の医療機関」「印影が不自然」「書式が不自然」などの“引っかかり”を見逃さない受け付け動線(確認ポイントのチェックリスト化)が有効です。
向精神薬取締法 一覧と保管・廃棄・事故(盗難・所在不明の届出基準)
保管は「薬局内の人目につかない場所」が基本で、業務従事者が実地に盗難防止の注意をしている場合以外は「かぎをかけた設備内」で行うことが示されています。
夜間・休日など注意する者がいない時間帯の考え方まで例示されており、部屋の出入口に鍵をかける、ロッカーや引き出しのいずれかに鍵をかけるなど、運用設計の具体例として使えます。
また、ペンタゾシン・ブプレノルフィン等の注射剤については乱用・盗難のおそれが高いとして、より厳重な管理が求められる旨が明記されています。
廃棄は、許可や届出は不要としつつ、第1種・第2種を廃棄した場合は記録が必要とされています。
廃棄方法として焼却、酸/アルカリ分解、希釈、他薬剤との混合など「回収が困難な方法」が挙げられており、委託廃棄の手順書に“回収困難性”の観点を入れると監査で説明しやすくなります。
事故(滅失・盗取・所在不明等)については、一定数量以上なら「向精神薬事故届」で速やかに都道府県知事へ届出が必要で、剤形ごとの数量基準が示されています。
手引きの基準では、末/散/顆粒は100グラム(包)、錠剤/カプセル/坐剤は120個、注射剤は10アンプル(バイアル)、内用液剤は10容器、経皮吸収型製剤は10枚で、ODフィルム剤は「錠剤」にあたるとされています。
さらに、基準以下でも盗取・詐取等では都道府県への届出と警察への届出を行うよう注意喚起があり、“少量だから内輪で処理”が事故対応の落とし穴になります。
向精神薬取締法 一覧と記録(2年保存・伝票代替・第3種の実務推奨)
第1種または第2種向精神薬を「譲り受け」「譲り渡し」「廃棄」したときは、品名(販売名)・数量、年月日、相手方の営業所等の名称・所在地を記録し、最終記載日から2年間保存する義務があります。
一方で、患者への交付、患者からの返却、返却品の廃棄は記録不要とされており、どのイベントが記録対象かを“業務フローの分岐”で明確にしておくと混乱が減ります。
記録は伝票の保存で代替できるものの、向精神薬が記載されていない伝票とは別に綴る必要があるとされ、監査での提示性(すぐ出せるか)が運用品質として問われます。
さらに実務で詰まりやすいポイントとして、同一薬局内で「向精神薬小売業者の記録」と「向精神薬卸売業者の記録」を別にする必要があり、両者の間で譲受け・譲渡しがあれば双方で記録が必要と示されています。
この部分は電子帳票化の設計ミスが起きやすく、会計上は同じ取引に見えても、法令上は“立場が違う別帳簿”として求められる点が意外性の高い落とし穴です。
第3種については記録義務はないものの、譲受けの記録や定期的な在庫確認が望ましいとされており、内部統制(インシデント予防)の観点では第3種も“準記録”の設計が実務的です。
特に多店舗運営や夜間救急を抱える施設では、記録義務の有無より「不正持ち出しを早期に検知できるか」が重大で、棚卸頻度・差異のエスカレーション基準を予め決めておくと事故対応の速度が上がります。
向精神薬取締法 一覧:独自視点の現場運用(承認条件・流通管理・講習修了確認)
向精神薬の“法令上の区分”とは別に、手引きには製剤ごとの「承認条件」による流通管理の注意点が書かれており、ここが現場で想定外の監査ポイントになりやすいです。
具体例として、メチルフェニデート製剤(リタリン/コンサータ)は承認条件に基づき、投薬する医師・医療機関・薬局が限定され、第三者委員会による流通管理が行われているため注意が必要とされています。
またブプレノルフィン経皮吸収型製剤では、慢性疼痛患者への処方・施用にあたり、薬剤師が「処方医が製造販売業者の提供する講習を修了した医師であること」を確認する必要がある旨が示され、単なる“処方せん監査”を超えた確認行為が求められます。
この承認条件の論点は、向精神薬取締法の「一覧」を暗記しても自動的には身につかないため、薬局・病院の教育では“法令(種別)×承認条件(製剤別)”の二段構えで研修設計するのが効果的です。
運用上のコツは、処方せん受付時のチェックに「承認条件対象の販売名フラグ」を持たせ、該当時だけ講習修了確認や施設限定条件の確認を必須化することです(全処方で同じ厳格さにすると、現場が疲弊して形骸化しやすいためです)。
さらに手引きでは「向精神薬に指定されていない習慣性医薬品についても、向精神薬と同様に管理することが望ましい」とされており、指定・非指定の境界でインシデントが起きる実情を踏まえた“先回り”の示唆になっています。
