虹彩萎縮症と緑内障
<% index %>
虹彩萎縮症の原因と病態:ぶどう膜炎と角膜内皮
虹彩萎縮症は「虹彩実質が薄くなる・欠損する」という所見であり、臨床では原因疾患(炎症、角膜内皮異常、手術や外傷、薬剤など)をまず同定する姿勢が安全です。
たとえばヘルペス性前部ぶどう膜炎では、虹彩萎縮が経過中にみられ得ることがガイドライン本文でも触れられており、片眼性の急性経過・高眼圧・角膜所見と合わせて病因を詰める必要があります。
またICE(虹彩角膜内皮)症候群では、角膜内皮・前房隅角・虹彩に構造的/増殖性の異常が生じ、虹彩萎縮、角膜浮腫、続発緑内障、瞳孔異常(歪み~多瞳孔)が「セットで」出てくるのが特徴です。
この“虹彩だけを見ると分かりにくいが、前眼部全体のパターンで見える”という点が、虹彩萎縮症の診療を難しくしている核心です。
虹彩萎縮症の症状:羞明と瞳孔異常と視力低下
虹彩萎縮が目立つと、瞳孔縁の形状異常や光の遮断不全が起こりやすく、羞明(まぶしさ)・グレア・見え方の不快感を訴える患者が増えます。
ただし視力低下の主因は、虹彩萎縮そのものより、①角膜内皮不全による角膜浮腫、②続発緑内障による視神経障害、③合併する白内障や硝子体混濁など“同時進行する要素”であることが多い点に注意が必要です。
ICE症候群では、朝に見えにくい(角膜の水分バランスが朝に悪化しやすい)といった訴えから始まり、霧視やハローが前景に立つことがあります。
「羞明=炎症」「視力低下=白内障」と短絡せず、角膜(浮腫)・眼圧(緑内障)・炎症(ぶどう膜炎)を同時に評価するのが、実務上の近道です。
虹彩萎縮症の診断:隅角検査と周辺虹彩前癒着
虹彩萎縮症を見たら、眼圧測定に加えて隅角検査(ゴニオ)で周辺虹彩前癒着(PAS)の有無と広がりを必ず確認し、続発緑内障のメカニズムを推定します。
ICE症候群では、異常角膜内皮がSchwalbe線を越えて隅角から虹彩表面へ進展し、膜形成と収縮を介してPASや瞳孔異常、虹彩萎縮を引き起こすという“膜理論”が病態理解に有用です。
さらに、診断の補助としてスペキュラーマイクロスコープやin vivo共焦点顕微鏡で“ICE-cells”を確認するアプローチが紹介されており、角膜浮腫が強くて観察が難しい場面でも有利です。
一方、ぶどう膜炎が背景にある場合は、活動性評価(前房細胞・フレアなど)を客観的に記録し、治療反応と眼圧推移を並走させるのが安全です。
参考:ぶどう膜炎の所見評価(前房細胞・フレア等)と治療、合併症(緑内障/白内障)への対応がまとまっている
虹彩萎縮症の治療:眼圧管理と手術と点眼
虹彩萎縮症の治療は、虹彩そのものを“戻す”より、合併する続発緑内障と角膜浮腫をどう抑えるかが中心になります。
ICE関連緑内障では、点眼での眼圧管理が破綻しやすく、濾過手術やドレナージインプラントなど外科的治療が早期から検討され得る一方、手術成績の変動や再介入が課題になり得ます。
角膜浮腫に対しては、高張食塩水点眼が朝の浮腫軽減に役立つ可能性が述べられ、進行例では角膜内皮移植(内皮角膜移植)で視機能と疼痛が改善し得ると整理されています。
ぶどう膜炎がベースの場合は、ステロイド点眼が治療の軸になる一方、ステロイド緑内障のリスクもあるため、炎症コントロールと眼圧モニタリングを同じ強度で運用する必要があります。
虹彩萎縮症の独自視点:医療安全としての「片眼性」トリアージ
検索上位の解説は疾患各論に寄りがちですが、現場の医療安全では「片眼性か両眼性か」を最初に固定して考えるだけで、見逃しが減ります(独自の運用ルールとして有用です)。
ICE症候群は典型的に片眼性の後天性疾患として記載され、若年~中年女性に多いという疫学も報告されているため、「片眼性+虹彩萎縮+PAS疑い」の組み合わせは強いシグナルになります。
一方で、片眼性の前部ぶどう膜炎(とくにヘルペス関連)でも虹彩萎縮や高眼圧が問題になり得るため、炎症所見と病因検査(前房水PCR等の適応判断)まで含めた連携設計が重要です。
このトリアージは、眼圧がまだ高くない段階でも「将来的に難治化し得る緑内障」を早期に想定させ、フォロー間隔・検査(視野/OCT/隅角)計画の質を上げられます。