抗コリン性抗パーキンソン薬の効果と副作用を解説

抗コリン性抗パーキンソン薬の作用と使用

65歳以上の患者に3年以上処方すると認知症リスクが約1.5倍になります

この記事の3つのポイント
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抗コリン性抗パーキンソン薬の基本

アセチルコリン受容体を遮断してドパミンとのバランスを調整し、振戦などのパーキンソン病症状を改善する薬剤です

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高齢者における認知症リスク

3年以上の常用量服用で認知症発症リスクが約1.5倍に上昇し、特に65歳以上では慎重投与が必要です

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適切な処方判断のポイント

振戦への効果は高いものの、認知機能低下や排尿障害などの副作用を考慮し、若年患者や短期使用に限定することが推奨されます

抗コリン性抗パーキンソン薬の作用機序とドパミンバランス

 

抗コリン性抗パーキンソン薬は、パーキンソン病治療において19世紀から使用されてきた歴史ある薬剤群です。代表的な薬剤としては、トリヘキシフェニジル塩酸塩(商品名:アーテン)やビペリデン塩酸塩(商品名:アキネトン)があり、現在でも臨床現場で処方されています。これらの薬剤は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで症状を改善します。

パーキンソン病では、脳内のドパミンが減少することで、相対的にアセチルコリンの作用が強まってしまいます。つまり、ドパミンとアセチルコリンという2つの神経伝達物質のバランスが崩れることが、パーキンソン病の症状を引き起こす一因となっているのです。線条体にはコリン系の介在ニューロンがあり、ムスカリンM1受容体を介してシナプス後膜側の細胞を活性化します。抗コリン薬はこのムスカリン受容体を遮断することで、過剰になったアセチルコリンの作用を抑制し、相対的にドパミンの作用を強める効果を発揮します。

つまり、ドパミンを直接補充するのではなく、アセチルコリンの働きを抑えることでバランスを取り戻す仕組みです。この作用により、パーキンソン病の運動症状、特に振戦(ふるえ)の改善に効果を示します。レボドパやドパミンアゴニストといった他の抗パーキンソン病薬とは異なる作用機序を持っているため、補助的な治療選択肢として位置づけられています。

日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドライン2018では、抗コリン薬の作用機序と使用上の注意点が詳しく解説されています

抗コリン性抗パーキンソン薬の種類と適応症状

日本国内で使用可能な抗コリン性抗パーキンソン薬は主に2種類です。トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン)とビペリデン塩酸塩(アキネトン)が代表的な薬剤で、それぞれ錠剤、散剤、細粒の剤形があります。アーテンは1日2~6mgを分割投与し、アキネトンは1日1~3mgを分割投与するのが一般的です。注射剤としては、アキネトン注射液5mgがあり、急性のパーキンソニズム症状に対して使用されることがあります。

これらの薬剤の適応症状は、特発性パーキンソン病だけでなく、薬剤性パーキンソニズムにも及びます。薬剤性パーキンソニズムは、抗精神病薬などのドパミン受容体遮断薬を投与された際に出現する副作用です。統合失調症の治療などで抗精神病薬を使用すると、約30~50%の高齢者がパーキンソニズム症状を呈することがあり、そのような場合に抗コリン薬が補助的に使用されます。

抗コリン薬の最も顕著な効果は、振戦(手足の震え)に対するものです。複数の臨床研究において、レボドパやアマンタジンと比較した場合、振戦に対する有効率が高いことが報告されています。特に注目すべきは、レボドパで効果が不十分な振戦症状に対しても、抗コリン薬が有効な場合があるという点です。これは、振戦の発生メカニズムにアセチルコリン系神経が関与していることを示唆しています。

一方で、筋固縮や無動といった他のパーキンソン病症状に対しては、振戦ほど顕著な効果は認められません。早期パーキンソン病患者に対する有効性は「おそらく有効」と評価されていますが、進行期パーキンソン病患者に対する有効性については十分なエビデンスがなく、判定不能とされています。このため、抗コリン薬は主に軽症から中等症の患者、特に振戦が主症状である場合に選択されることが多くなります。

薬価の面では比較的安価で、アーテン錠2mgは1錠あたり9.1円、アキネトン錠1mgは5.9円となっており、経済的負担は小さいと言えます。

抗コリン性抗パーキンソン薬の副作用と高齢者リスク

抗コリン性抗パーキンソン薬の副作用は、その作用機序から予測される抗コリン作用に関連したものが中心となります。最も頻度の高い副作用は、口渇、便秘、排尿障害、目のかすみ、悪心、食欲不振などです。これらは抗コリン作用が全身の副交感神経系に影響を及ぼすことで生じます。例えば、口渇は唾液分泌の抑制により、便秘は消化管運動の低下により、排尿障害は膀胱の収縮力低下により引き起こされます。

重大な副作用として注意が必要なのは、認知機能への影響です。複数の大規模研究により、抗コリン薬の長期使用が認知機能低下や認知症発症リスクを高めることが明らかになっています。特に衝撃的なデータとして、65歳以上の高齢者が常用量の抗コリン薬を3年以上服用した場合、認知症全体の発症リスクが約1.54倍(95%信頼区間:1.21~1.96)、アルツハイマー病の発症リスクが約1.63倍(95%信頼区間:1.24~2.14)に有意に増加することが報告されています。これは3年分の累積使用量で換算すると1,095単位を超える場合に相当します。

さらに驚くべきことに、この認知症リスクの増加は、認知症診断の15~20年前の抗コリン薬曝露でも観察されています。つまり、薬を中止してから長期間経過した後でも、認知症発症リスクが持続する可能性があるということです。このリスクは、うつ病治療薬、泌尿器系治療薬、パーキンソン病治療薬としての抗コリン薬で特に顕著であり、消化器系や心血管系の抗コリン薬では明らかな関連は認められていません。

パーキンソン病では、早期から中枢のドパミンニューロンだけでなく、アセチルコリン系ニューロンも変性・脱落することが知られています。これがパーキンソン病患者に生じるうつ、アパシー、幻覚・妄想、認知機能低下の背景となっているため、抗コリン薬の使用によりこれらの症状がさらに悪化するリスクがあります。Cochraneのシステマティックレビューでは、20週間程度の臨床試験期間中にも認知機能の低下や精神症状の誘発が報告され、治験からの脱落理由としても主要因に挙げられています。

その他の副作用として、せん妄の誘発、幻覚、転倒リスクの増加も報告されています。高齢者では、抗コリン薬によるせん妄が焦燥感や幻視を伴うことが多く、臨床的に問題となります。長期投与では閉塞隅角緑内障を誘発する可能性もあり、実際にトリヘキシフェニジルは緑内障患者、重症筋無力症患者では使用禁忌となっています。

これらの理由から、日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドライン2018では、「認知症のある患者および高齢者では使用を控えるべき」という推奨がなされています。グレードDの推奨であり、特に75歳以上の高齢者や認知機能が低下している患者では、慎重な判断が求められます。

抗コリン性抗パーキンソン薬の処方における注意点と禁忌

抗コリン性抗パーキンソン薬を処方する際には、複数の禁忌・慎重投与事項を確認する必要があります。まず絶対的禁忌として、緑内障(特に閉塞隅角緑内障)と重症筋無力症が挙げられます。抗コリン作用により眼圧が上昇し緑内障を悪化させる可能性があり、また神経筋接合部での伝達を阻害することで重症筋無力症の症状を増悪させるおそれがあります。

慎重投与が必要な患者群として、前立腺肥大による排尿障害を有する患者、胃腸管に閉塞性疾患のある患者、高温環境にある患者、動脈硬化性パーキンソン症候群の患者が挙げられます。前立腺肥大患者では、抗コリン作用により膀胱の収縮力が低下し、尿閉を引き起こす可能性があります。胃腸管閉塞性疾患では、消化管運動の抑制により症状が悪化します。高温環境では、抗コリン作用による発汗抑制が起こり、重篤な場合は熱射病へと進展するおそれがあります。

特に重要なのは、高齢者への処方判断です。65歳以上の高齢者では、非高齢者と比較して幻覚などの精神症状の発現率が高くなることが臨床試験で確認されています。また、前述のように3年以上の長期服用により認知症リスクが約1.5倍に上昇するため、高齢者への処方は原則として短期間に限定し、定期的な認知機能評価を行うべきです。日本老年医学会の「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」にも抗コリン薬は含まれており、75歳以上の高齢者および75歳未満でもフレイル~要介護状態の高齢者では特に注意が必要です。

漫然投与を避けることも重要な注意点です。抗コリン薬は症状改善のために一時的に使用することは有用ですが、長期間にわたって漫然と投与し続けることは避けるべきです。定期的に投与の必要性を見直し、可能であれば減量や中止を検討します。特に、他の抗パーキンソン病薬(レボドパ、ドパミンアゴニストなど)で症状コントロールが可能になった場合は、抗コリン薬の中止を積極的に検討すべきです。

他剤との相互作用も考慮が必要です。抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)、抗精神病薬(クロザピン、オランザピン、クエチアピンなど)、頻尿治療薬の一部にも抗コリン作用があります。これらの薬剤を併用している患者では、抗コリン作用が累積し、副作用リスクが増大します。パーキンソン病患者でこのような薬物を服用している場合、8年後には有意な認知機能低下を生じることが報告されています。

処方する場合は、患者や家族に対して副作用について十分に説明し、口渇、便秘、排尿困難、物忘れなどの症状が出現した場合は速やかに報告するよう指導することが重要です。

抗コリン性抗パーキンソン薬の適切な使用判断と代替療法

抗コリン性抗パーキンソン薬を適切に使用するためには、患者の年齢、症状、認知機能、併存疾患を総合的に評価し、リスクとベネフィットのバランスを慎重に判断する必要があります。現在のエビデンスに基づくと、抗コリン薬が最も有用なのは、若年(65歳未満)で認知機能低下を認めず、振戦が主症状である早期パーキンソン病患者です。このような患者層では、抗コリン薬の振戦に対する高い有効性を活かしながら、認知症リスクを最小限に抑えることができます。

逆に、使用を避けるべき患者は明確です。認知症を既に発症している患者、75歳以上の高齢者、認知機能低下の兆候がある患者、前立腺肥大や緑内障などの併存疾患を持つ患者では、抗コリン薬の使用は原則として避けるべきです。これらの患者では、副作用のリスクが治療効果を上回る可能性が高いためです。

では、高齢者や認知機能低下リスクのある患者で振戦コントロールが必要な場合、どのような代替療法があるでしょうか。第一選択となるのは、レボドパ製剤やドパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロピニロールなど)です。これらの薬剤は抗コリン作用を持たないため、認知機能への影響が少なく、高齢者でも比較的安全に使用できます。プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール、ミラペックス)は、振戦に対してもある程度の効果が期待できるドパミンアゴニストです。

薬剤性パーキンソニズムの場合は、原因薬剤の減量や変更を最優先に検討します。抗精神病薬が原因であれば、パーキンソニズムを起こしにくいクエチアピンやクロザピンへの変更を考慮します。やむを得ず抗コリン薬を使用する場合でも、できるだけ短期間(数週間から数か月程度)に限定し、症状改善後は速やかに減量・中止を試みることが推奨されます。

非薬物療法も重要な選択肢です。パーキンソン病のリハビリテーション、特に理学療法や作業療法は、薬物療法と併用することで症状改善に寄与します。進行期で薬物療法の効果が不十分な場合は、脳深部刺激療法(DBS)や集束超音波治療(FUS)などの外科的治療も選択肢となります。特にFUSは、薬剤抵抗性の振戦に対して効果を示すことが報告されています。

処方の継続判断においては、定期的な評価が不可欠です。少なくとも3~6か月ごとに、症状の改善度、副作用の有無、認知機能の変化を評価し、投与継続の必要性を見直します。特に認知機能評価には、MMSEやMoCAなどの簡易認知機能検査を活用し、スコアの低下が認められた場合は、抗コリン薬の減量や中止を積極的に検討すべきです。

また、他の抗コリン作用を持つ薬剤との併用状況も確認が必要です。日本版抗コリン薬リスクスケール(J-ARS)を用いて、患者が服用している全ての薬剤の抗コリン負荷を評価することで、総合的なリスク管理が可能になります。ACoB(Anticholinergic Cognitive Burden)スコアが3ポイント以上になると、嚥下障害のリスクが4倍以上に増加するという報告もあり、多剤併用時には特に注意が必要です。

最終的には、患者の生活の質(QOL)を最優先に考えた治療選択が重要です。振戦による日常生活への支障が大きく、他の治療法では十分な効果が得られない場合、短期間の抗コリン薬使用が患者のQOL向上に寄与する可能性もあります。その場合でも、リスクとベネフィットについて患者・家族と十分に話し合い、インフォームドコンセントを得た上で慎重に使用することが求められます。

日本老年医学会の高齢者の安全な薬物療法ガイドラインでは、抗コリン薬を含む高齢者への慎重投与が必要な薬剤リストと具体的な使用指針が示されています

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