高血圧性虹彩毛様体炎と眼圧と診断

高血圧性虹彩毛様体炎

高血圧性虹彩毛様体炎:臨床の要点
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定義のコア

「軽い前房炎症」と「発作的な高眼圧」が同居する前部ぶどう膜炎スペクトラムとして捉えると整理しやすい。

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診断の鍵

細隙灯での前房細胞・フレア評価、眼圧、角膜後面沈着物、隅角所見をセットで読む。必要なら前房水PCRを検討。

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見落としやすい危険

発作が自然軽快しても、反復する高眼圧で視神経障害(続発緑内障)へ進みうるため、発作間欠期こそ管理が重要。


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高血圧性虹彩毛様体炎の病態と眼圧

高血圧性虹彩毛様体炎は、臨床的には「前部ぶどう膜炎(虹彩・毛様体の炎症)」に高眼圧が強く合併する状態として問題になります。

ぶどう膜炎は虹彩・毛様体・脈絡膜の炎症で、炎症が眼内の周辺組織へ波及し得て、視力低下や合併症(白内障緑内障)につながることがある、という土台を押さえると全体像が理解しやすいです。

「炎症が強いほど眼圧が上がる」と単純化すると誤りやすく、軽度の前房炎症でも高度の眼圧上昇を示すタイプがある点が臨床の落とし穴になります。

病態の中心にあるのは、房水流出路(線維柱帯)レベルでの機能障害です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/abf290180e63bf2ac233d8dde3a76477cb857c0b

ぶどう膜炎関連の続発緑内障は、瞳孔ブロックや周辺虹彩前癒着などの“構造的閉塞”だけでなく、線維柱帯以降の房水排出路の機械的閉塞あるいは機能障害でも起こり得る、とガイドラインで整理されています。

したがって診察では「開放隅角か、閉塞隅角か」「癒着があるか」「角膜浮腫が高眼圧由来か」などを、炎症所見と同じ比重で評価します。

高血圧性虹彩毛様体炎の診断と検査

診断の出発点は、細隙灯で前房炎症(前房細胞・フレア)を定量し、同時に眼圧を測定することです。

前房細胞はSUNの枠組みで「1視野あたりの細胞数」により0、0.5+、1+…と評価し、所見を再現可能な形で残すことが推奨されています。

フレアも同様にグレーディングし、炎症の活動性評価・治療反応の判定に用います。

高眼圧を伴う軽度前房炎症では、鑑別としてヘルペス属ウイルス関連(HSV/VZV/CMV)を常に意識します。

ぶどう膜炎診療ガイドラインでは、CMV虹彩毛様体炎は「角膜浮腫がはっきりしない」「白色の角膜後面沈着物が数個」「高眼圧を伴い軽度前房細胞」などを呈し、所見的にPosner-Schlossman症候群と区別が困難なことがあり、PCRによるウイルスDNA同定が必要になると述べられています。

つまり「高血圧性虹彩毛様体炎」というラベルを貼って終えるのではなく、感染性ぶどう膜炎の可能性を潰すプロセスが医療安全上の要点になります。semanticscholar+1​

検査としては、眼底検査を含む一般眼科検査に加え、必要に応じて蛍光眼底造影、血液検査、胸部X線、CTなど全身評価も行う、というのが眼科医会の一般向け解説でも整理されています(医療者側は“なぜそれが必要か”を説明できると強い)。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/45aa2dc19dfe47976500cb69524c92c5d4742e96

さらに病気によっては房水を採取して詳しく調べることや特殊検査が必要になる、と明記されています。

高眼圧+軽度前房炎症の反復例で、治療反応が典型から外れる場合は「前房水PCR」という次の一手を想定しておくと、紹介の質が上がります。semanticscholar+1​

参考:ぶどう膜炎の基本(検査・治療の全体像、房水採取の位置づけ)

ぶどう膜炎 なぜ? どうしたらいいの | 目についての健康情報 | 公益社団法人 日本眼科医会

参考:ぶどう膜炎診療ガイドライン(高眼圧を伴う前部ぶどう膜炎、CMV虹彩毛様体炎とPSS鑑別、ステロイド局所治療の注意点)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/uveitis_guideline.pdf

高血圧性虹彩毛様体炎の治療とステロイド

非感染性ぶどう膜炎の治療の基本は、眼局所であればまずステロイド点眼、必要に応じて局所注射や全身投与を追加し、病勢に応じて免疫抑制剤や生物学的製剤も選択肢になる、という構造です。

一方で高血圧性虹彩毛様体炎の文脈では、ステロイドが“炎症を抑える武器”であると同時に“眼圧上昇のリスク要因”にもなり得る点が重要です。

ぶどう膜炎診療ガイドラインでも、ステロイド点眼治療による白内障進行やステロイド緑内障の発症・進行に十分注意する、と明確に書かれています。

また、ガイドラインの「注意を要するぶどう膜炎」として、Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎やPosner-Schlossman症候群では、炎症が沈静化している期間のステロイド点眼は不要とされています。

この記載は、高眼圧発作を繰り返す症例で「発作時の短期介入」と「間欠期の漫然投与を避ける」という実務に直結します。

高眼圧への対応としては眼圧下降薬を用い、視神経障害の進行(続発緑内障)を防ぐ、という目的をチームで共有することが大切です。shec+1​

実装上のチェックポイント(外来運用を想定)

✅ 眼圧のピークが高い、角膜浮腫が出る:まず視機能保護を優先し迅速に眼圧を下げる。www5a.biglobe+1​

✅ 炎症は軽いのに眼圧が極端:CMVなど感染性を再評価し、必要なら前房水PCRを検討。

✅ ステロイドで炎症は落ちるが眼圧が上がる:ステロイド反応性(ステロイド緑内障)も並行して評価する。

✅ 反復例:発作が自然軽快しても視神経評価(視野・乳頭)を忘れない。shec+1​

高血圧性虹彩毛様体炎の鑑別とぶどう膜炎

高血圧性虹彩毛様体炎の鑑別は「同じ前部ぶどう膜炎でも、原因とマネジメントが変わるもの」を優先順位高く並べるのが実務的です。

感染性ぶどう膜炎では、ヘルペス属ウイルス(HSV/VZV/CMV)が原因となる虹彩毛様体炎があり、PCRによるDNA検出や特異抗体測定が有用とされています。

特にCMV虹彩毛様体炎はPosner-Schlossman症候群と所見的に区別困難になり得るため、眼圧だけでなく角膜後面沈着物や隅角所見も含めた“セット診断”が必要です。

また、ぶどう膜炎は全身疾患が隠れている可能性があるため、問診・眼科所見・全身所見を統合して診断し、他科連携も行う、という大原則が日本眼科医会の解説で強調されています。

眼症状がきっかけで全身疾患が見つかることがあるため、眼と関係ないと思われる症状も医師に話す、というメッセージは、医療者側では「問診で拾うべき項目」の裏返しになります。

高眼圧を伴う症例では、緑内障の合併(あるいは移行)を常に念頭に置き、眼圧値だけでなく視神経障害の程度・進行を評価しながら治療時期を逃さない、というガイドラインの姿勢が重要です。

高血圧性虹彩毛様体炎の独自視点:発作間欠期と視神経

検索上位の一般解説は「発作時の高眼圧」に焦点が当たりがちですが、医療従事者向けには“発作がない時期に何を守るか”を言語化しておくと臨床で差が出ます。

ぶどう膜炎診療ガイドラインは、ぶどう膜炎に続発する緑内障の外科的治療の章で、眼圧値のみを指標にせず視神経障害の程度や進行具合を評価し、時期を逃さず最も望ましい眼圧下降方法を模索する必要がある、と述べています。

この考え方を発作性高眼圧の症例に当てはめると、「発作が治まった=安全」ではなく、「次の発作までに視神経がどれだけ守られているか」を確認することが、本質的なアウトカムになります。

発作間欠期に実務でやること(医療者向けToDo)

  • 🧾 診療録の標準化:前房細胞・フレアをSUNで記録し、再発時に“前回との差”を比較できるようにする。​
  • 👁️ 視神経のベースライン化:眼圧が落ち着いた時に乳頭・OCT・視野を揃え、進行判定の土台を作る。​
  • 🧪 原因の再点検:所見が非典型、再発頻回、片眼性の反復などでは、ヘルペス属(特にCMV)を再評価しPCRを検討する。​
  • 💊 ステロイド設計:炎症が沈静化している期間のステロイド点眼は不要とされる病態があるため、漫然投与を避け“必要最小限”で組む。​
  • 🤝 連携:全身疾患が背景にある可能性を常に残し、必要なら他科と協働して診断・治療を組み立てる。​

ここまでを押さえると、高血圧性虹彩毛様体炎は「発作時対応の疾患」ではなく、「反復発作を前提に視機能を守る慢性管理の疾患」として運用でき、現場の事故(見落とし・遅れ)を減らせます。shec+1​