黄斑部白斑と硬性白斑と綿花状白斑

黄斑部白斑

黄斑部白斑の臨床整理(医療従事者向け)
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まず「白斑の種類」を決める

境界明瞭で黄白色なら硬性白斑、境界不明瞭で綿状なら綿花状白斑(軟性白斑)を疑い、病態(漏出か虚血か)を先に整理します。

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OCTで「位置」と「合併」を見る

硬性白斑はOCTで高反射物質として捉えられ、黄斑浮腫の有無・中心窩直下かどうかが視力予後に直結します。

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紹介・緊急度を判断する

白斑が黄斑中心に及ぶ、急な視力低下や変視がある、虚血を示唆する所見が強い場合は、原因疾患(糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞など)を想定して早期に眼科評価へつなげます。


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黄斑部白斑の硬性白斑の見分け

黄斑部白斑という言葉は、病名というより「眼底で黄斑部に白く見える所見」をまとめて指す場面が多く、実務ではまず“硬性白斑なのか、綿花状白斑(軟性白斑)なのか、別の白色病変なのか”を切り分けるのが安全です。

硬性白斑は、血管から漏れ出た血漿成分(脂質や蛋白など)が網膜内に沈着したもので、眼底では比較的くっきりした黄白色の斑点〜斑状病変として捉えられます。

一方で綿花状白斑(軟性白斑)は境界が不明瞭で綿花のように見え、網膜神経線維層の虚血・浮腫や、フィブリンや白血球集積などを反映する所見として説明されています。

医療現場で迷いやすいのは「黄斑部に白いものがある=硬性白斑」と短絡しやすい点です。黄斑部に白色調があっても、出血の陳旧性変化、炎症性白点(白点症候群)、滲出性変化、あるいは撮影条件によるアーチファクトが紛れることがあります。そこで、①境界(明瞭か不明瞭か)、②色調(黄白色か灰白色か)、③周辺の出血・浮腫・血管所見、④症状(視力低下、変視、暗点)を同時に確認します。

加えて、健診や人間ドックで「白い斑点」を指摘されたケースは、糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症など背景疾患が潜んでいることもあり、黄斑部に及ぶ所見は視機能に直結します。

参考)健診・人間ドックで指摘されることの多い眼科の異常

白斑が黄斑中心付近にある場合、患者は自覚が乏しくても、読書や運転で初めて気づく程度の微妙な見え方の変化が進行していることがあります。問診では「線が曲がる」「中心が欠ける」「片眼だけ見にくい」を短いフレーズで確認すると拾い上げやすいです。

黄斑部白斑の綿花状白斑と虚血

綿花状白斑(軟性白斑)は網膜虚血のサインとして扱われ、白斑=漏出(硬性白斑)とは逆方向の病態を示す点が重要です。

虚血が関与する白斑は、背景に糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞、高血圧性変化などがあり得るため、「局所所見」ではなく「全身リスクの反映」として読む姿勢が求められます。

糖尿病網膜症の分子病態の解説でも、網膜虚血の結果として神経線維層に浮腫が生じ、綿花状の軟性白斑として観察される趣旨が述べられています。

黄斑部に綿花状白斑が目立つとき、注意したいのは“その部位に黄斑浮腫が合併して視機能低下が進んでいないか”です。黄斑浮腫は原因疾患により治療戦略が変わるため、所見だけで断定せず、次の一手としてOCT(可能ならOCTA)で層構造と灌流の評価へ進めます。

また綿花状白斑が多発している場合、眼底だけで完結せず、血圧、血糖、腎機能、貧血、凝固異常、睡眠時無呼吸など、虚血の下地となる全身因子を再点検する価値があります(特に見逃しやすいのは未治療高血圧と腎障害です)。

臨床では「綿花状白斑がある=すぐ失明」ではありませんが、虚血が進むと視力だけでなく視野にも影響します。患者説明では“白い点そのもの”より、“血流が悪いサインの可能性があるので原因を確認する”と伝える方が納得されやすいでしょう。

黄斑部白斑のOCTと黄斑浮腫

黄斑部白斑の評価では、OCTが「黄斑部の状態を詳細に確認する」検査として、臨床現場で広く用いられています。

糖尿病網膜症の解説では、黄斑部中央の黄白色の固まりが硬性白斑であり、OCTでも高反射の固まりとして描出されることが示されています。

この「OCTで白斑の実体(沈着物か、浮腫に伴う反射変化か、層構造の乱れか)を確認する」発想が、黄斑部白斑を安全に扱うコアになります。

黄斑部白斑が硬性白斑だった場合、次に見るべきは“中心窩直下に及んでいるか”と“黄斑浮腫の併発があるか”です。中心窩直下の沈着は、浮腫が引いても視力が伸びない要因になり得るため、治療のタイミングや目標設定(どこまで視力回復が見込めるか)に影響します。

さらに、眼底写真で白斑が目立たなくても、OCTで黄斑浮腫が先に見つかることがあり、健診後紹介での“見た目と症状のズレ”を説明する材料になります。

実務上の工夫として、OCT所見を「①網膜肥厚(浮腫)」「②網膜下液」「③高反射沈着(硬性白斑相当)」「④硝子体黄斑牽引や膜(ERM)」「⑤外層(EZなど)の連続性」の5点でテンプレ化すると、医師間・施設間の引き継ぎが滑らかになります。

特に外層(視細胞関連)の連続性は、炎症性白点や白点症候群のときに“見た目の白斑”とは別の層で異常が出ることがあり、鑑別の方向性を変えることがあります。

黄斑部白斑の糖尿病網膜症と抗VEGF

糖尿病網膜症では、血管透過性亢進により硬性白斑や黄斑浮腫が出現し得ることが、眼底検査の解説資料でも示されています。

また日本眼科学会の解説では、抗VEGF治療はVEGFの働きを抑える薬剤を眼内注射し、黄斑浮腫を改善させ病気の進行を抑制する治療法として位置づけられ、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑症、網膜静脈閉塞などが対象に挙げられています。

このため黄斑部白斑が糖尿病網膜症(特に黄斑浮腫合併)に紐づく場合、白斑そのものより“黄斑浮腫の活動性”を治療ターゲットとして捉えるのが実臨床に即します。

意外に見落としやすいのは、硬性白斑が「慢性の漏出の痕跡」であり、必ずしも同時点の漏出の強さを正確に表すとは限らない点です。つまり、眼底の白斑が多いからといって“今この瞬間の浮腫が強い”とは限らず、逆に白斑が少なくてもOCTで浮腫が強いことがあります。

患者説明では「沈着物(白斑)は“漏れた成分の置き土産”で、むくみ(浮腫)は“現在進行形の水分”」と整理すると理解されやすいです。

さらに、中心窩直下に硬性白斑が集積したケースでは、治療後に浮腫が改善しても視機能が伸び悩むことがあるため、早期の病勢コントロールが重要になります。治療選択は主治医判断ですが、紹介状には「視力」「変視」「OCTでの中心窩厚」「硬性白斑の中心窩直下の有無」を最低限書くと、初診時の意思決定が速くなります。

参考リンク(抗VEGF治療の位置づけ・適応疾患の整理に有用)

抗VEGF治療|日本眼科学会による病気の解説

黄斑部白斑のMEWDSの独自視点

黄斑部白斑の鑑別で、一般的な「糖尿病網膜症/静脈閉塞/加齢黄斑変性」以外に、白点症候群(例:MEWDS)という“炎症性・一過性”の文脈を持ち込むと見落としが減ります。

MEWDSの解説では、OCTで黄斑部のEZの消失を認めることが述べられており、眼底の「白さ」だけでなく外層障害が鍵になる点が示されています。

また別の症例報告でも、黄斑部耳側などに境界不鮮明な淡い白斑と黄斑部顆粒状変化を認め、治療せず経過観察した旨が記載されています。

ここでの独自視点は、「黄斑部白斑を“沈着(硬性白斑)か虚血(綿花状白斑)か”の二択に落とさず、炎症性白点(white dot / white spot)を第三の軸として常に同時に考える」ことです。

参考)多発消失性白点症候群(MEWDS)について|眼科医ぐちょぽい…

臨床的には、若年〜中年で片眼の急な視力低下・暗点・羞明があり、眼底の白斑が淡く境界不鮮明、OCTで外層(EZ)変化が目立つ場合は、糖尿病・高血圧の既往がなくても“白点症候群の可能性”を含めて眼科専門医に接続するのが安全です。

逆に、糖尿病や高血圧など血管リスクが強く、出血や硬性白斑が目立ち、OCTで浮腫が主体なら、炎症性白点よりも血管透過性・虚血のシナリオが優位になります。hitosumi-cl+1​

実務に落とすと、黄斑部白斑を見たときの最短ルートは次の通りです。

  • 🧭 白斑の見え方:境界明瞭(硬性白斑寄り)か、境界不明瞭(綿花状白斑/炎症性白点の可能性)か。​
  • 🧪 OCT:高反射沈着(硬性白斑)か、外層(EZ)障害か、黄斑浮腫の有無はどうか。kyo-eye+1​
  • 🚑 緊急度:中心窩病変、急な視力低下、強い虚血サインがあれば早期紹介を優先する。hitosumi-cl+1​

参考リンク(網膜白斑の概念整理:硬性白斑と軟性白斑の違いが有用)

網膜白斑 – みんなの家庭の医学 WEB版