結節性多発性動脈炎 ガイドライン
結節性多発性動脈炎 ガイドライン 疾患概念と定義
結節性多発性動脈炎(PAN)は、中型〜小型動脈を主体とする壊死性血管炎で、糸球体腎炎や細動静脈・毛細血管レベルの血管炎を基本的に伴わず、ANCAとも関連しない、という枠組みで理解されます(CHCC2012の定義に沿う整理が国内解説でも採用されています)。
この「小血管炎を伴わない」という定義は、臨床でよく遭遇するANCA関連血管炎(MPA/GPA/EGPA)との鑑別を、最初から診断アルゴリズムに埋め込む意図があります。
一方で現場では「PANらしいが証明が難しい」症例が出るため、定義(国際)・認定基準(行政)・分類基準(研究)の目的の違いを理解して、どこまで確実性を上げるかをチームで共有しておくと診療がぶれにくくなります。
結節性多発性動脈炎 ガイドライン 診断基準と主要症候
日本の指定難病(難病42)の診断基準では、主要症候(発熱・体重減少、高血圧、腎不全/腎梗塞、脳出血/脳梗塞、心筋病変、胸膜炎、消化管出血/腸閉塞、多発性単神経炎、皮膚所見、多関節痛/筋痛/筋力低下)と、組織所見(中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎)、血管造影所見(腹部大動脈分枝の多発小動脈瘤・狭窄/閉塞)を組み合わせてDefinite/Probableを判定します。
Definiteは「主要症候2項目以上+組織所見」、Probableは「主要症候2項目以上+血管造影所見」または「主要症候のうち①(発熱+体重減少)を含む6項目以上」とされ、証拠の取り方が明確に二系統(病理ルート/画像ルート)に分かれています。
ここで重要なのは、PANに特異的な血清マーカーが基本的に存在しない前提で、症候→(まず除外)→画像/病理で固める構造になっている点で、検査の順序設計が診断精度と侵襲のバランスを左右します。
結節性多発性動脈炎 ガイドライン 検査(ANCA陰性・画像・病理)
検査の出発点として、PANではANCAが陰性で、有意な自己抗体が見いだされないことが多いと整理されており、炎症反応(CRP上昇、赤沈亢進)を補助線にしつつも、決め手は画像と病理になります。
画像では、血管造影で腹部大動脈分枝(腎・肝・腸間膜など)に多発する小動脈瘤、狭窄、閉塞を捉えることが要点で、侵襲を下げる選択肢としてCT angiographyやMR angiography、腎動脈超音波でも所見が得られる可能性が示されています。
病理は「中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎」を確認することが中核で、皮膚、神経、筋など“症候のある部位”を狙うと診断効率が上がります(症状と臓器虚血が直結する疾患なので、生検部位の戦略が実務上の差になります)。
結節性多発性動脈炎 ガイドライン 重症度分類と予後不良因子
国内解説では、治療選択は重症度に応じることが推奨され、さらに予後評価としてFive-Factor Score(FFS)が紹介されています(年齢、腎機能、心筋病変、重症消化管病変などが予後に関係)。
指定難病の重症度分類は、腎・肺・心・腸管・皮膚軟部組織・神経などの臓器障害、または治療に伴う重い合併症(感染症、骨壊死、消化性潰瘍などで入院を要する)で「重症」を定義しており、医療費助成の実務とも直結します。
意外と見落とされやすいのは、病勢そのものだけでなく“治療毒性”が重症度の枠組みに入っている点で、寛解導入後の感染症管理や骨粗鬆症・糖代謝のケアが、ガイドライン運用の一部として最初から要求されているとも言えます。
結節性多発性動脈炎 ガイドライン 治療(寛解導入・維持)と独自視点
国内の整理では、重症PANの寛解導入はグルココルチコイド(GC)にシクロホスファミド(CY)を併用する方針が推奨され、寛解後はアザチオプリン(AZA)やメトトレキサート(MTX)など毒性の低い免疫抑制薬へ移行する流れが提示されています。
また、経口CYと静注CYパルス(IVCY)では寛解率に差がなく、白血球減少や感染症などの副作用がIVCYで低いとされ、IVCYが推奨される、という「投与経路を副作用設計で選ぶ」視点が明確です。
独自視点として強調したいのは、PANは“疾患そのものの希少性”ゆえに、施設内の経験症例だけで標準化すると揺れやすい点です(診断がついた時点で、どの定義を採用し、どの重症度分類で治療を分岐し、どのアウトカムでフォローするかをチェックリスト化すると、若手〜ベテラン間の意思決定のばらつきが減ります)。
指定難病の概要・診断基準・重症度分類(臨床実務と申請実務の両方に有用)。
国内の疾患概念〜検査〜治療(CHCC定義、画像・病理、重症例のGC+CY、維持療法までの流れ)。
難治性血管炎に関する調査研究班:結節性多発動脈炎 解説
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抗リン脂質抗体症候群・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症・結節性多発動脈炎・リウマトイド血管炎の治療の手引き 2020[本/雑誌] / 針谷正祥/編集