関節内ステロイド注射 副作用
関節内ステロイド注射 副作用の全体像(局所・全身・関節内)
関節内ステロイド注射の副作用は、①注射部位周囲(皮膚・皮下組織)②関節内構造(軟骨・骨・滑膜)③全身影響(糖代謝など)に分けて把握すると、患者説明と観察項目が整理しやすくなります。
局所合併症としては、注射後の疼痛増悪(いわゆる注射後フレア)、皮膚萎縮、皮下脂肪萎縮、色素変化(色素脱失/沈着)、出血、過敏反応などが報告されています。
関節内に関しては、最重要の重篤合併症として化膿性関節炎(関節内感染)があり、頻度は高くないものの発生時の機能予後に直結するため「見逃さない仕組み」が必要です。
さらに近年の論点として、反復投与や特定薬剤の条件下で軟骨量減少や関節構造変化が議論されており、短期の鎮痛効果と長期の関節保護を同時に満たす投与戦略が求められます。
医療従事者向けには、単に「副作用がある/ない」ではなく、(1)いつ起きるか(時間軸)(2)誰に起きやすいか(リスク因子)(3)何をしたら危険か(頻回投与、無菌操作不備など)をセットで示すと臨床に落とし込みやすくなります。
関節内ステロイド注射 副作用としての感染(化膿性関節炎)の見分け方
感染は稀でも最優先で除外すべき副作用で、注射後の「痛み・腫れ・熱感・発熱」が強い場合は早期再評価が基本です。
実務的には、「注射当日〜翌日くらいにピークで、その後軽快する痛み」はフレアであることが多い一方、「数日後に増悪する」「全身症状を伴う」「関節可動域が急に落ちる」場合は感染の疑いが上がります(フレアとの時間軸の違いを説明しておくと受診遅れが減ります)。
感染は手技起因の要素が大きく、無菌操作が維持されないことが重大合併症につながり得るため、標準予防策の徹底と記録(皮膚消毒、手袋、清潔野、針の取り扱い)を“安全手順”として固定化しておくことが重要です。
抗菌薬については、感染が疑わしいのに「診断前に漫然と投与」すると、関節穿刺の培養検出を妨げる可能性があり、まずは整形外科的評価(必要に応じた関節穿刺)につなげる導線を院内で共有しておくと安全です(受診時の優先順位づけが肝要です)。
患者指導の例として、次の赤旗を明確に伝えると現場が回ります。
・🚩注射後に発熱が出た、または悪寒がある
・🚩痛みが日ごとに増していく(特に2~3日以降)
・🚩腫れが強く、皮膚が熱い/赤い
・🚩歩けない・動かせないほどの疼痛
これらは「我慢せず当日連絡」が原則です。
関節内ステロイド注射 副作用としての注射後フレア(疼痛増悪)
注射後フレアは、感染ではなく注射後の一過性反応として比較的よく知られ、臨床では「副作用相談」の最多クラスになりやすいテーマです。
文献・解説では、フレアは患者の一部で起こり得る反応として説明されており、注射後に痛み・発赤・腫脹が出ても、それだけで直ちに感染と断定しない一方、重症度と時間経過でふるい分ける必要があります。

フレアは患者教育が非常に効く領域で、「起こり得るが多くは短期間」「感染のサインは別にある」という二段構えの説明で、不安の増幅と不必要な救急受診の両方を減らせます。
現場で役に立つ運用としては、電話トリアージ用に次をテンプレ化します。
・📌発症時期:注射後何時間/何日か
・📌体温:37.5℃以上が続くか
・📌腫れの変化:拡大しているか
・📌鎮痛薬反応:NSAIDs等で軽くなるか
・📌荷重:歩行可能か
「フレアを説明していない」こと自体がクレーム・再診増の原因になるため、同意説明の質を上げるだけで安全性と効率が同時に改善します。
関節内ステロイド注射 副作用としての皮膚萎縮・色素脱失(トリアムシノロンなど)
局所ステロイド注射で見落とされがちな副作用が、皮膚萎縮、皮下脂肪萎縮、色素脱失(白斑様変化)です。これらは生命に関わることは稀でも、目立つ部位では患者の心理的負担が大きく、医療側の「説明不足」が問題化しやすい領域です。
機序としては、局所に残留した糖質コルチコイドが線維芽細胞機能やコラーゲン合成などに影響し、皮下組織の萎縮や陥凹につながり得ることが整理されています(懸濁性製剤で局所貯留が問題になりやすい点は説明価値があります)。
また、非常に稀な報告として、局所注射後に線状の色素脱失・萎縮が出現するケースが報告されており、患者が「血管の病気」「皮膚疾患」と誤解して受診を繰り返すことがあります。
対策としては、(1)浅層への漏れを避ける(解剖と針先位置の意識)(2)同一部位への反復を避ける(3)薬剤選択と用量の妥当性を見直す、が現実的です。
患者向け説明のコツは、次のように「起こり得るが、頻度は高くない」「改善することもある」「再注射は慎重に」の3点を短文で伝えることです。
・🧴皮膚がへこむ/白くなることが“まれに”あります
・🕒時間がたって目立ちにくくなることもあります
・🔁同じ場所に何度も打つとリスクが上がる可能性があります
関節内ステロイド注射 副作用の独自視点:軟骨損傷リスクと「効くのに悪化する」パラドックス
独自視点として押さえておきたいのは、関節内ステロイドは短期的に痛みを下げ得る一方で、反復投与の文脈では画像上の軟骨変化や関節構造変化が議論され、「症状は軽いのに関節は進む」ように見えるパラドックスが臨床で問題になり得る点です。
代表的な論点として、変形性膝関節症での関節内トリアムシノロン反復投与が、MRIでの軟骨量減少と関連した報告が知られており、「注射の回数・間隔・適応」を“痛みだけ”で決めない重要性が示唆されます。
さらに、関節内注射に用いられる薬剤の軟骨毒性を俯瞰したスコーピングレビューでは、薬剤カテゴリ(ステロイドや局所麻酔薬など)によって軟骨への影響が議論されており、単一の“安全神話”では語れないことが分かります。
ここで重要なのは「ステロイド注射=禁忌」と極端に振れないことで、むしろ、炎症が強い局面で短期の鎮痛・可動域改善がリハビリ導入を助け、結果的に活動性を回復させる場面もあります(ただし“繰り返し前提”にしない設計が鍵です)。
現場での意思決定を安定させるために、次のチェックリストを推奨します。
・🧠目的:炎症沈静化か、鎮痛ブリッジか(リハビリ/減量/装具へつなぐか)
・📅頻度:反復投与が既定路線になっていないか
・🦴構造:画像・身体所見で急速進行例の兆候がないか(骨髄浮腫、急な可動域低下など)
・🧪背景:糖尿病など全身影響が問題になる患者か
“効いているから続ける”ではなく、“次の一手に移行するための注射”という位置づけにすると、患者説明も一貫します。
(血糖上昇の注意:全身性ステロイドで血糖上昇が起こり得ることは広く知られており、糖尿病では高血糖を来し悪化させるおそれがあると解説されています。
https://www.dm-town.com/flow/start/start_002 関節内注射でも全身影響がゼロとは言い切れないため、糖尿病患者では注射後数日間の血糖自己測定や症状観察の説明を組み込むと安全です。)
【日本語の参考リンク(添付文書ベースで副作用確認に有用:色素脱失・腱断裂などの記載)】
https://www.bmsmedinfo.jp/prescribing-information/prescribing-pdf-view.00P000000001736.html