間欠跛行のリハビリ|改善に効果的な運動療法と日常生活の注意点

間欠跛行のリハビリと治療法

間欠跛行のリハビリの概要
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運動療法の効果

ストレッチや歩行訓練により、歩行距離が平均約300m改善し、腰痛や下肢痛が軽減されることが報告されています

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筋力トレーニング

体幹や下肢の筋力強化により、姿勢保持能力が向上し、症状の進行を抑制できます

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個別アプローチ

神経性と血管性では対処法が異なるため、原因に応じたリハビリ計画の立案が重要です


間欠跛行とは、歩行中に下肢に痛みやしびれが生じ、休息することで症状が改善される状態を指します。安静時には症状がほとんどなく、一定時間歩くと歩行が困難になり、短い休息で再び歩けるようになるのが特徴です。間欠跛行の主な原因には、腰部脊柱管狭窄症による神経性間欠跛行と、閉塞性動脈硬化症による血管性間欠跛行の2種類があります。適切なリハビリを継続することで、歩行能力の改善が期待でき、日常生活の質を大きく向上させることが可能です。

参考)神経性間欠跛行の分類 (脊椎脊髄ジャーナル 33巻4号)

間欠跛行の原因と症状の特徴

間欠跛行には神経性と血管性の2つのタイプがあり、それぞれ原因と症状が異なります。神経性間欠跛行は、加齢による背骨の変形や椎間板の変性により腰部神経が圧迫されることで発症し、腰・お尻・太もも・ふくらはぎに症状が現れます。特徴として、前かがみの姿勢で症状が軽減し、自転車やカートを押す動作では楽に移動できることが挙げられます。一方、血管性間欠跛行は動脈硬化による足の血管の狭窄や閉塞が原因で、歩行時に筋肉への血流が不足することで痛みが生じます。血管性では片足だけに症状が出ることが多く、ふくらはぎより下のしびれや冷感が特徴的です。神経性間欠跛行は腰部脊柱管狭窄症が最も多く、60歳以上の高齢者に好発します。

参考)【医師監修】間欠跛行とは?原因や治る可能性を医師が解説

間欠跛行に効果的なストレッチと運動療法

間欠跛行のリハビリでは、ストレッチを中心とした運動療法が症状改善に非常に効果的です。腰部脊柱管狭窄症による間欠跛行では、腰の反りを強めてしまう筋肉をストレッチすることが重要です。具体的には、仰向けになり両膝を抱えて胸に引き寄せる膝かかえストレッチが推奨されます。このストレッチは腰背部筋を伸ばし、呼吸を止めずに20~30秒間保持し、3回繰り返すことが効果的です。また、骨盤を傾かせる股関節前面筋のストレッチとして、片膝立ちストレッチも有効です。片方の足を後ろに引き、前足の膝に両手を置いて前方に体重をかけることで、股関節の柔軟性を高められます。実際に70代男性が週1回の理学療法とセルフストレッチを継続した結果、歩行距離が500m未満から3km以上に改善した事例も報告されています。

参考)脊柱管狭窄症リハビリの基本 – リニューロ・川平法のニューロ…

間欠跛行の歩行訓練とリハビリの実践方法

歩行訓練は間欠跛行のリハビリにおいて中心的な役割を果たします。マニュアルセラピーと体幹および下肢のストレッチ、筋力トレーニング、エルゴメーター、体重支持トレッドミルを組み合わせて6週間(12セッション)実施すると、腰痛や下肢痛が軽減され、歩行能力が平均約300m改善すると報告されています。股関節および腰椎の拘縮改善を目的とする運動療法は、91.3%の症例に有効で、初診時平均102.1mだった歩行距離が1カ月後には大幅に改善しました。歩行訓練では、症状が出る直前で休憩を取るのではなく、軽い痛みやしびれを感じても少し我慢して歩き続けることで、徐々に歩行距離が伸びてきます。ただし、無理をしすぎると症状が悪化する可能性があるため、自分のペースで無理のない範囲で継続することが重要です。家の中での歩行練習や、その場での足踏み運動も効果的なリハビリ方法として推奨されています。

参考)腰部脊柱管狭窄症のリハビリで知っておくべき10個の方法

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間欠跛行の理学療法プログラムと治療効果

理学療法による包括的なリハビリプログラムは、間欠跛行の症状改善に高い効果を示しています。有酸素運動として、少し息が上がる程度の負荷で10~20分程度の運動を行うことが推奨されます。筋力トレーニングでは、姿勢保持や歩行に必要な体幹・下肢を中心とした筋力強化が重要です。認知行動療法を含む患者教育も併用することで、より効果的な症状管理が可能になります。短期的(2週間~3ヶ月以内)には歩行能力の改善が報告されていますが、中期的(3ヶ月~12ヶ月)には改善確率が低下するため、運動習慣を身につけ自己管理できるようにすることが重要です。重症度の評価にはZurich Claudication Questionnaire(ZCQ)が用いられ、6週間のリハビリプログラムで短期的に重症度が改善することが確認されています。興味深いことに、リハビリの効果は手術と比較しても劣っておらず、手術の前にリハビリの実施を検討する価値があります。​

間欠跛行リハビリの日常生活での注意点と予防法

間欠跛行の症状を悪化させないためには、日常生活での姿勢や動作に注意が必要です。腰を反らす姿勢は脊柱管を狭め神経圧迫を強めるため、背筋を伸ばして大股で歩くことは避けるべきです。歩行時は小さめの歩幅で、自然な姿勢を保つことが腰への負担を軽減します。前かがみ姿勢では症状が楽になりますが、首や膝に負担がかかるため、全身の柔軟性を高めることが重要です。杖やシルバーカーなどの補助具を活用することで、歩行時の負担を軽減できます。また、毎日20分程度の散歩を習慣化し、お風呂に浸かって筋肉をマッサージすることで血流が改善します。肥満は腰への負担を増加させるため、適正体重の維持も重要です。寝具は硬めのものを選び、腰の反りを防ぐことが推奨されます。腰回りの背骨の負担を減らすため、股関節や肩甲骨まわりの筋肉を積極的に動かすことも予防につながります。

参考)長く歩けない…脊柱管狭窄症の間欠性跛行を改善する「正しい歩き…

間欠跛行と他の疾患との鑑別診断

間欠跛行を引き起こす疾患は複数あるため、正確な診断が治療の第一歩となります。神経性間欠跛行の原因となる腰部脊柱管狭窄症では、両側の臀部から足全体がしびれ、立っているだけでも症状が出現します。これに対して血管性間欠跛行では、片側のふくらはぎより下に症状が現れ、冷感を伴うことが特徴です。血管性間欠跛行は高血圧糖尿病脂質異常症、喫煙、加齢などが危険因子となります。神経性間欠跛行では、加齢、不良姿勢、重労働などが悪化要因です。症状の出現パターンも鑑別に役立ち、神経性では前かがみや座位で症状が軽減するのに対し、血管性では歩行を中止して休息することでのみ改善します。動脈硬化が進行している場合、下肢の皮膚の色が変化することもあります。これらの違いを理解することで、適切な治療法を選択でき、リハビリの効果を最大化することができます。自己判断せず、医療機関で専門医による診察を受けることが重要です。

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