上腕骨外側上顆炎の治し方とストレッチとサポーター

上腕骨外側上顆炎の治し方

この記事で扱うポイント
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まずは病態を誤解しない

「炎症」より腱の過負荷と治癒不全(tendinopathy)として捉えると、安静・薬だけに偏らない説明がしやすくなります。

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保存療法の核は負荷調整

日常動作・職業動作の“痛みを増やす負荷”を特定し、許容できる負荷に落としてから運動療法を積み上げます。

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エクササイズは単独より設計が重要

エキセントリック運動は有望ですが、エビデンスは一枚岩ではありません。継続可能なメニューと評価指標をセットで運用します。

上腕骨外側上顆炎の治し方:保存療法の考え方

 

上腕骨外側上顆炎(いわゆるテニス肘)は、手関節背屈や把持を繰り返す動作で、外側上顆付着部(主に短橈側手根伸筋など)に過負荷がかかり、痛みと機能低下が生じる状態として臨床で遭遇します。

近年は「炎症」という語感に引っ張られすぎず、腱の治癒不全を含む“lateral elbow tendinopathy”として患者説明を組み立てると、NSAIDsや安静“だけ”で完結しにくい理由を共有しやすくなります(病態として多彩な介入が議論されている点はガイドラインでも前提になっています)。

The Beneficial Effects of Eccentric Exercise in the Management of Lateral Elbow Tendinopathy: A Systematic Review and Meta-Analysis - PMC
As a first-line treatment for lateral elbow tendinopathy (LET), eccentric exercise has been suggested as a conservative ...

保存療法の最初の仕事は、治療手段の選択よりも「負荷の棚卸し」です。具体的には、①痛みを増やす動作(ペットボトルのふた、フライパン、工具、マウス操作、雑巾しぼり等)を特定し、②回避ではなく代替(両手で持つ、太いグリップに変更、手首中間位、肘伸展位での反復を減らす等)を提案し、③許容できる疼痛レベルでの活動を再設計します。

この段階で“やってはいけない”のは、痛みが強いのに握力勝負のリハ(強い把持を伴う筋トレ)を毎日課してしまうことです。腱付着部の疼痛を増悪させ、患者の自己効力感も落としやすいので、痛みの自己モニタリング(例:運動中の痛みは軽度、翌日に増悪しない)をルール化します。

一方で、保存療法に「万能の一手」があるわけではありません。成人の外側上顆炎に対する非手術治療を比較したポジションステートメントでは、(偏心性強化を含む)運動ベースの理学療法が“無治療(no active treatment)”と短中期の痛み・機能で同等、注射(ステロイド、PRP、自家血)もプラセボと同等と結論づけています。

Position statement: nonoperative management of lateral epicondylitis in adults - PMC
We sought to compare methods of nonsurgical treatment of lateral epicondylitis in men and women older than 18 years to d...

この文脈は、臨床家にとって悲観材料というより「経過は波があり、自然軽快も混ざる疾患であるため、評価指標(PSFS、PRTEE等)と、仕事・生活のゴール設定が大事」という示唆として読むのが実用的です。

上腕骨外側上顆炎の治し方:ストレッチとエクササイズ(エキセントリック)

ストレッチは“痛い部位を伸ばす”というより、「腱付着部にかかる張力ピークを下げる」目的で位置づけると説明がぶれません。臨床で使いやすいのは、肘伸展+前腕回内+手関節屈曲(手背を引く)方向で、前腕伸筋群の伸張感が得られる形です(いくつかの医療機関サイトでも同様のフォームが示されています)。

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頻度は「毎日できる量」が正義で、30秒保持×数回などは提案しやすい一方、痛みが強い急性期は“伸張痛が出ない範囲”に落として導入します。ストレッチの目的が疼痛の即時改善ではなく、運動療法に入るための準備(可動域・筋緊張の調整)であることも明確にします。

筋力トレーニングでは、エキセントリック(遠心性)運動がよく話題になります。メタアナリシスでは、補助療法にエキセントリック運動を追加することで疼痛(VAS)と筋力の改善が示され、他の運動(求心性や等張性)と比べても疼痛改善で優位になる可能性が報告されています。

The Beneficial Effects of Eccentric Exercise in the Management of Lateral Elbow Tendinopathy: A Systematic Review and Meta-Analysis - PMC
As a first-line treatment for lateral elbow tendinopathy (LET), eccentric exercise has been suggested as a conservative ...

ただし同論文でも、研究数が少ないこと、運動条件(回数、頻度、デバイス、痛み許容の扱い)が不均一であることが限界として明記されています。したがって、現場では「エキセントリック=必勝法」と教えるより、患者に合う負荷量・道具(セラバンド、ダンベル、ゴムバー等)を選び、症状日誌とセットで調整していく運用が現実的です。

実装のコツ(医療者向けの“設計”の話)として、次のように組むと破綻しにくいです。

・運動の前提:痛みが強い動作(強い把持+手関節背屈)をいったん減らし、“治る余地”を作る。

・導入期(1~2週):等尺性(アイソメトリック)で疼痛が増えない強度から開始し、生活動作での痛みが落ちたら次へ。

・進展期:エキセントリックを中心に、回数よりも「ゆっくり下ろす」「反動を使わない」を優先。

・評価:握力(痛みなし握力)、PRTEE、仕事動作の再現テスト(軽い工具・マウス操作時間)などを固定して追跡。

こうした“段階づけ”は、論文の結論(短中期で差が出にくい可能性)を踏まえつつも、患者の納得感と継続率を上げるのに役立ちます。

Position statement: nonoperative management of lateral epicondylitis in adults - PMC
We sought to compare methods of nonsurgical treatment of lateral epicondylitis in men and women older than 18 years to d...

上腕骨外側上顆炎の治し方:サポーター(肘バンド)と装具療法

サポーター(いわゆるエルボーバンド、カウンターフォースブレース)は、前腕伸筋の筋腹側で圧迫をかけ、外側上顆付着部に入る張力を“分散”させる狙いで使われます。装具療法として圧迫型肘バンドが主として用いられる、という位置づけは日本語の学術情報にも見られます。

上腕骨外上顆炎に対する中指伸展制御ストラップ付き手関節バンドによる治療後3カ月の追跡調査結果について
J-STAGE

ここで重要なのは、バンドは“治す道具”というより「痛みで悪化する作業を、許容範囲に落とすための道具」という説明です。患者が「バンドをつけているから無理して良い」と誤解すると、結果的に過負荷が続き、慢性化しやすくなります。

医療者としての実務上のチェックポイントは次です。

  • 装着位置:痛い外側上顆そのものではなく、少し遠位の前腕筋腹部に当てる(局所圧痛点を直圧しない)。
  • 強さ:しびれ・冷感・皮膚トラブルが出ない強度(末梢循環と神経症状を必ず確認)。
  • 使う場面:家事・仕事・スポーツなど“負荷が避けられない場面”に限定し、安静時は外す。
  • 併用:バンドだけで放置せず、ストレッチと運動療法、作業の工夫とセットで使う。

意外と見落とされがちな点として、「中指伸展」や「手関節背屈」が病因に関与する、という整理があります。中指伸展制御ストラップ付き装具を扱った報告では、上腕骨外上顆炎の病因に過度の手関節背屈や中指伸展が関与する旨が述べられています。

上腕骨外上顆炎に対する中指伸展制御ストラップ付き手関節バンドによる治療後3カ月の追跡調査結果について
J-STAGE

臨床では「マウスを中指で強くクリックする」「中指主導で荷物を持つ」「工具で中指だけ伸展位が固定される」といった癖がある人がいて、ここに介入すると“肘”に触れずに痛みが下がることがあります(患者にとって意外性が高く、行動変容が起きやすいポイントです)。

上腕骨外側上顆炎の治し方:注射・体外衝撃波・PRPとエビデンスの読み方

外来で質問が多いのが「注射で早く治るか」「PRPは効くか」です。成人の外側上顆炎に対する非手術治療の比較では、ステロイド注射、PRP、自家血注射はいずれもプラセボと短中期の痛み・機能が同等とされ、強い推奨として“これらを支持しない”という結論が示されています。

Position statement: nonoperative management of lateral epicondylitis in adults - PMC
We sought to compare methods of nonsurgical treatment of lateral epicondylitis in men and women older than 18 years to d...

したがって医療者の説明としては、「効く人がいる可能性は否定できないが、平均すると上乗せ効果は小さい(または不確実)ので、期待値調整と費用対効果の会話が必要」という整理が安全です。

一方で、患者側の価値観(重要な大会が近い、仕事を休めない、痛みで睡眠が崩れる等)によっては、短期的な疼痛緩和を狙った介入が“意思決定として”選ばれることもあります。ここでのポイントは、注射を「根治」ではなく、リハビリに入るためのウィンドウを作る目的に限定し、再発予防の負荷管理に接続できるかです。

Position statement: nonoperative management of lateral epicondylitis in adults - PMC
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体外衝撃波(ESWT)や、PRP+ESWT併用などは、医療機関の情報発信では“先進治療”として紹介されることがあります。例えば、PRPや体外衝撃波を上腕骨外側上顆炎の選択肢として提示している整形外科クリニックの記載もあります。

再生医療(PRP)|稲城平尾整形外科クリニック|栗平駅・黒川駅
稲城市の整形外科【稲城平尾整形外科クリニック】の再生医療(PRP)ページです。変形性膝関節症なら、ヒアルロン酸注射を何度も受けたが改善しない方。スポーツ関連疾患(外傷・変性)なら、リハビリで改善が見られない腱の変性疾患や、捻挫や肉離れ等早期...

ただし、こうした施設情報は“実施している/期待される機序”の説明には役立つ一方で、治療効果の大きさを保証するものではないため、ガイドラインやRCTの結論と並べて患者に提示し、認知バイアス(新しい=効く)を避けることが重要です。

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上腕骨外側上顆炎の治し方:検索上位に少ない独自視点(職業動作・マウスと中指伸展)

上腕骨外側上顆炎の患者で、検索上位のセルフケア(ストレッチ、テーピング)を真面目にやっているのに改善しないケースでは、「治療メニュー」より「職業動作の微調整」がボトルネックになっていることがあります。特にデスクワークでは、手関節背屈位でのマウス保持、前腕回内固定、そして中指伸展(クリック動作)が複合して、外側上顆に“低強度・長時間”の負荷を入れ続けます。病因に手関節背屈や中指伸展が関与するという整理は、装具に関する日本語文献でも触れられています。

上腕骨外上顆炎に対する中指伸展制御ストラップ付き手関節バンドによる治療後3カ月の追跡調査結果について
J-STAGE

意外性があり、しかも臨床で効果が出やすい介入例を挙げます(大きく外れない範囲で、患者説明に使える形)。

  • 🖱️マウス:クリックを中指→人差し指中心に変更、あるいはボタン割り当てを変更して中指伸展の反復を減らす。
  • ⌨️キーボード:手関節背屈が強い人は、パームレストで中間位に近づける(ただし前腕回内固定が強い場合は高さ調整が必要)。
  • 🔧工具:細いグリップは把持力が上がりやすいので、太いグリップにして握力のピークを下げる。
  • 🧴日常:ペットボトルや瓶の開栓は、肘伸展+手関節背屈で無理に回さず、滑り止めやオープナー、両手での分担を推奨。

この“動作の省エネ化”は、運動療法と同じくらい重要です。ガイドラインが示すように平均的には差が小さい可能性があるからこそ、個別の負荷源を潰す介入が相対的に価値を持ちます。

Position statement: nonoperative management of lateral epicondylitis in adults - PMC
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(参考リンク:非手術治療のエビデンス整理。運動療法や注射(ステロイド、PRP、自家血)がプラセボ/無治療と同等になり得る点がまとまっています)

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(参考リンク:エキセントリック運動のメタアナリシス。疼痛(VAS)や筋力への効果、プロトコル不均一など限界も含めて読めます)

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As a first-line treatment for lateral elbow tendinopathy (LET), eccentric exercise has been suggested as a conservative ...

(参考リンク:装具療法の学術的背景。病因として手関節背屈や中指伸展が関与し、圧迫型肘バンドが用いられる旨が示されています)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/23/2/23_2_159/_article/-char/ja/

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