ジルチアゼム 投与方法と禁忌、副作用の特徴と注意点

ジルチアゼム 投与方法と禁忌、副作用

 

ジルチアゼムの基本情報

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薬剤分類

カルシウム拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)

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主な効能

狭心症、高血圧症、頻脈性不整脈の治療

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注意すべき副作用

徐脈、房室ブロック、肝機能障害、浮腫

 

ジルチアゼムの投与方法と剤形による違い

ジルチアゼムは、その剤形によって投与方法が異なります。主な剤形と投与方法は以下の通りです。

経口投与(錠剤・カプセル剤)

  • 狭心症、異型狭心症の場合:通常、成人にはジルチアゼム塩酸塩として1回30mgを1日3回経口投与します。効果が不十分な場合は、1回60mgを1日3回まで増量することができます。
  • 高血圧症の場合:徐放性製剤を用いることが多く、用量は患者の状態に応じて調整します。

注射剤(静脈内投与)

  • 頻脈性不整脈(上室性):通常、成人にはジルチアゼム塩酸塩として1回10mgを約3分間で緩徐に静注します。
  • 手術時の異常高血圧の救急処置:
    • 1回静注の場合:通常、成人にはジルチアゼム塩酸塩として1回10mgを約1分間で緩徐に静注します。
    • 点滴静注の場合:通常、成人には1分間に体重kg当たりジルチアゼム塩酸塩として5~15μgを点滴静注します。
  • 高血圧性緊急症:通常、成人には1分間に体重kg当たりジルチアゼム塩酸塩として5~15μgを点滴静注します。目標値まで血圧を下げた後、血圧をモニターしながら点滴速度を調節します。
  • 不安定狭心症:通常、成人には1分間に体重kg当たりジルチアゼム塩酸塩として1~5μgを点滴静注します。投与量は低用量から開始し、患者の病態に応じて適宜増減しますが、最高用量は1分間に体重kg当たり5μgまでとなっています。

注射剤を使用する際の注意点として、他剤との配合によりpHが8を超える場合には、ジルチアゼムが析出することがあるため注意が必要です。

ジルチアゼムの禁忌事項と使用上の重要な注意点

ジルチアゼムには、以下のような禁忌事項があります。これらの状態にある患者には投与を避けるべきです。

絶対的禁忌

  1. 重篤な低血圧あるいは心原性ショックのある患者
    • 症状を悪化させるおそれがあります
  2. 2度以上の房室ブロック、洞不全症候群(持続性洞性徐脈<50拍/分未満>、洞停止、洞房ブロック等)のある患者
    • 本剤の心刺激生成抑制作用、心伝導抑制作用が過度にあらわれるおそれがあります
  3. 重篤なうっ血性心不全の患者
    • 心不全症状を悪化させるおそれがあります
  4. 重篤な心筋症のある患者
    • 心不全症状を悪化させるおそれがあります
  5. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  6. 妊婦または妊娠している可能性のある女性
    • 動物実験で催奇形作用(マウス:骨格異常、外形異常)及び胎児毒性(マウス、ラット:致死)が報告されています
  7. アスナプレビル含有製剤投与中、イバブラジン塩酸塩投与中、ロミタピドメシル酸塩投与中の患者

慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

  • うっ血性心不全の患者
  • 高度な徐脈(50拍/分未満)や1度の房室ブロックのある患者
  • 肝機能障害のある患者
  • 高齢者

ジルチアゼムの副作用と発現頻度、対処法

ジルチアゼムの副作用は多岐にわたりますが、主な副作用とその対処法について解説します。

重大な副作用

  1. 徐脈、房室ブロック
    • 発現頻度:頻度不明
    • 症状:脈が遅くなる、めまい、失神など
    • 対処法:投与を中止し、適切な処置を行う必要があります
  2. 肝機能障害、黄疸
    • 症状:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸
    • 対処法:観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行います

その他の副作用

  1. 循環器系
    • 症状:徐脈、房室ブロック、顔面潮紅、めまい、洞停止、血圧低下、動悸、胸痛、浮腫、洞房ブロック
    • 発現頻度:頻度不明
  2. 精神神経系
    • 症状:倦怠感、頭痛、頭重感、こむらがえり、脱力感、眠気、不眠、パーキンソン様症状
    • 発現頻度:頻度不明
  3. 肝臓
    • 症状:AST上昇、ALT上昇、黄疸、Al-P上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇、肝腫大
    • 発現頻度:頻度不明
  4. 過敏症
    • 症状:発疹、そう痒、多形性紅斑様皮疹、蕁麻疹、光線過敏症、膿疱
    • 発現頻度:頻度不明
  5. 消化器
    • 症状:胃部不快感、便秘、腹痛、胸やけ、食欲不振、嘔気、軟便、下痢、口渇
    • 発現頻度:頻度不明
  6. 血液
    • 症状:血小板減少、白血球減少
    • 発現頻度:頻度不明
  7. その他
    • 症状:歯肉肥厚、女性化乳房、しびれ
    • 発現頻度:頻度不明

副作用が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うことが重要です。特に高齢者では副作用が現れやすいため、注意深い観察が必要です。

ジルチアゼムと高齢者への投与における血行動態への影響

高齢者高血圧患者へのジルチアゼム投与は、その血行動態への影響を考慮する必要があります。70~85歳の高血圧者および正常血圧者を対象とした研究では、ジルチアゼムの血行動態に対する効果が詳細に検討されています。

高齢者におけるジルチアゼムの血行動態への影響

  • ジルチアゼムの0.1mgと0.2mg/分×30分の静注投与は、心拍出量と一回拍出量を軽度増加させます
  • 心拍数と総末梢血管抵抗を減少させ、降圧効果をもたらします
  • 心電図P-R間隔を軽度延長しますが、重篤な房室伝導障害は生じにくいとされています

他のカルシウム拮抗薬との比較

ニフェジピン、ジルチアゼム、ベラパミルの比較研究では、それぞれの薬剤の特性が明らかになっています:

  • ニフェジピンとジルチアゼムの効果を収縮期血圧降下量がほぼ等しい時点で比較すると、ニフェジピンにおいて総末梢血管抵抗の減少量が大きく、反応性の心拍出量の増加量も大きい傾向があります
  • ジルチアゼムとベラパミルの効果を0.2mg/分×30分の投与終了時で比較すると、ベラパミルにおいて血圧の降下量が大きく、総末梢血管抵抗の減少量も大きいことが報告されています

高齢者高血圧の治療において、3種のカルシウム拮抗薬はいずれも末梢血管抵抗を減少して血圧を降下し、心拍出量を増加させる降圧剤として適していると考えられます。特に、血行動態に対する薬効の差異から、ニフェジピンは重症高血圧に、ジルチアゼムとベラパミルは軽・中等症高血圧に効果的に使用できると考えられています。

一般に高齢者では過度の降圧は好ましくないとされているため、高齢者に使用する場合は、低用量から投与を開始するなど患者の状態を十分観察しながら慎重に投与することが望ましいとされています。

ジルチアゼムと他剤併用時の相互作用と注意点

ジルチアゼムは他の薬剤と併用する際に、様々な相互作用を示すことがあります。特に注意すべき相互作用について解説します。

ジギタリス製剤との相互作用

ジルチアゼムとジギタリス製剤(ジゴキシン、メチルジゴキシン)を併用すると、以下のような相互作用が生じる可能性があります:

  • 徐脈、房室ブロック等があらわれることがあります
  • ジギタリス製剤の血中濃度上昇による中毒症状(悪心・嘔吐・頭痛・めまい・視覚異常等)があらわれることがあります

対処法

  • 心電図をモニターする
  • 定期的にジギタリス中毒の有無を観察する
  • 必要に応じてジギタリス製剤の血中濃度を測定する
  • 異常が認められた場合には減量若しくは投与を中止する

相互作用のメカニズム

  • 相加的に作用(心刺激生成・伝導抑制作用)を増強させると考えられます
  • 特にβ遮断剤との3剤併用時には注意を要します
  • ジルチアゼムはジギタリス製剤の血中濃度を上昇させると考えられています

その他の重要な相互作用

  1. β遮断薬
    • 相加的に心機能抑制作用が増強される可能性があります
    • 徐脈や心ブロックのリスクが高まります
  2. 降圧薬
    • 相加的に降圧作用が増強される可能性があります
    • 過度の血圧低下に注意が必要です
  3. CYP3A4で代謝される薬剤
    • ジルチアゼムはCYP3A4の阻害作用を持つため、同酵素で代謝される薬剤の血中濃度を上昇させる可能性があります
    • スタチン系薬剤、免疫抑制剤、抗不整脈薬などとの相互作用に注意が必要です
  4. アスナプレビル含有製剤、イバブラジン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩
    • これらの薬剤を投与中の患者には、ジルチアゼムの投与は禁忌とされています

併用療法を行う際には、これらの相互作用を十分に理解し、患者の状態を注意深く観察することが重要です。特に高齢者や複数の疾患を持つ患者では、ポリファーマシーによる相互作用のリスクが高まるため、より慎重な管理が求められます。

ジルチアゼムの臨床的位置づけと使い分け

ジルチアゼムはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬として、その特性を活かした臨床的な位置づけがあります。他のカルシウム拮抗薬との使い分けや、どのような病態に適しているかを理解することは、適切な薬剤選択において重要です。

カルシウム拮抗薬の分類とジルチアゼムの特徴

カルシウム拮抗薬は大きく分けて以下の2種類に分類されます:

  1. ジヒドロピリジン系アムロジピン、ニフェジピンなど)
    • 血管選択性が高く、末梢血管拡張作用が強い
    • 反射性頻脈を起こしやすい
    • 下腿浮腫の発現率が高い(10.7%程度)
  2. 非ジヒドロピリジン系(ジルチアゼム、ベラパミルなど)
    • 心筋抑制作用(陰性変時・変力作用)を持つ
    • 心拍数を低下させる効果がある
    • 便秘などの副作用が特徴的

ジルチアゼムが特に有用な臨床状況

  1. 頻脈を伴う高血圧患者
    • ジルチアゼムは心拍数を低下させる作用があるため、頻脈傾向のある高血圧患者に適しています
    • ジヒドロピリジン系で見られる反射性頻脈を避けたい場合に選択されます
  2. 狭心症患者
    • 冠動脈拡張作用と心筋酸素消費量減少作用の両方を持つため、狭心症治療に有効です
    • 特に労作性狭心症と冠攣縮性狭心症(異型狭心症)の両方に効果を示します
  3. 上室性頻脈性不整脈の患者
    • 房室結節伝導抑制作用があるため、上室性頻脈性不整脈の治療に用いられます