腎前性aki 原因と脱水と出血と心不全

腎前性aki 原因

腎前性AKIを最短で整理
🩺

本質は「腎灌流低下」

腎前性AKIは腎実質の一次障害ではなく、腎血流・糸球体濾過の低下が主因。可逆性が高い一方、放置で腎性AKIへ進展し得ます。

💧

原因は「有効循環血液量」

脱水・出血だけでなく、心不全・肝硬変・敗血症など“体液は多いのに腎血流が足りない”状況も腎前性の重要原因です。

⚠️

検査は万能でない

FENaや尿中Naは有用ですが、利尿薬・敗血症・CKDなどで解釈が崩れます。身体所見と経過(輸液反応性)で補正します。

腎前性aki 原因としての脱水と出血と第三腔

 

腎前性AKIの最頻カテゴリーは「実質的な循環血液量の減少」で、脱水(嘔吐・下痢・発熱・経口摂取低下)、出血、そして第三腔(膵炎、熱傷、術後・腹膜炎など)をまず疑います。

ここで重要なのは、問診で“減った理由”を拾うことです。例えば高齢者では「食欲低下+利尿薬+発熱」のような複合パターンが典型で、見た目の浮腫や体重増加があっても、実は腎灌流が落ちていることがあります(いわゆるeffective circulating volumeの低下)。

身体所見は古典的ですが強力です。口腔乾燥、皮膚ツルゴール低下、起立性低血圧、頻脈、末梢冷感、頸静脈虚脱などを“セットで”評価し、尿量低下(乏尿)を同時に追います。

検査所見では、腎前性の文脈では尿中Na低値、FENa低値が教科書的に挙げられますが、「これだけで決め打ちしない」が安全です。

参考)https://kindai.repo.nii.ac.jp/record/10395/files/AN00063584-20130625-0063.pdf

利尿薬使用中はFENaが上がって腎前性を見逃しやすいため、状況に応じてFEUN(尿素窒素排泄分画)などを参考にする、という考え方も臨床では重要です(ただし指標の限界は常に意識します)。

参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kobe-160205.pdf

腎前性aki 原因としての心不全と低心拍出

腎前性AKIは「体液が足りない」だけでなく、「心拍出が足りない」ことでも起こります。心不全では全身は体液過剰でも、有効循環血液量が低下し腎血流が落ち、腎前性のパターンを呈し得ます。

このとき、むやみに輸液を増やすと肺うっ血を悪化させる一方、利尿を強めすぎると腎灌流がさらに落ちるため、循環・うっ血の両面からの“微調整”が必要です。

臨床のコツは「低灌流」と「うっ血」のサインを同時に拾うことです。冷汗・四肢冷感・尿量低下・意識変容など低灌流を示す所見と、ラ音・起坐呼吸・頸静脈怒張・下腿浮腫などうっ血所見のバランスを見て、血圧・尿量・腎機能の推移を短いスパンで追います。

腎前性AKIは“長引くと腎性(例:ATN)へ移行し得る”ため、心不全例でも「腎灌流が回復しうる時間」を意識した早期介入が重要になります。

腎前性aki 原因としての薬剤(NSAIDsとACE阻害薬ARBと利尿薬)

腎血流がギリギリで保たれている患者(脱水、腎動脈狭窄、心不全、ネフローゼなど)では、薬剤が“最後の支え”を外して腎前性AKIを誘発します。

代表はNSAIDsで、腎血流維持に寄与するプロスタグランジン経路を抑制し、腎灌流を低下させ得ます。

ACE阻害薬/ARB輸出細動脈の収縮を抑えることで糸球体内圧(濾過圧)を下げうるため、腎灌流低下状態ではクレアチニンが急に上がって腎前性AKI様になることがあります。

さらに利尿薬は体液量を減らして腎灌流低下を助長し、NSAIDs+ACE阻害薬/ARB+利尿薬の併用はいわゆる“トリプルワーミー”として腎前性AKIリスクを押し上げる臨床状況として注意が必要です(実臨床では高齢者・夏季・感染時に多い)。

対応は「腎前性AKIを疑ったら、原因薬剤の休薬/調整を早めに検討する」ことが基本で、同時に脱水・感染・出血などトリガーも潰します。

参考)https://kdigo.org/wp-content/uploads/2016/10/KDIGO-2012-AKI-Guideline-English.pdf

腎前性aki 原因としての敗血症と肝硬変(意外な落とし穴)

腎前性AKIの盲点は「血圧が保たれていても腎灌流が落ちる」パターンです。敗血症では血管拡張や微小循環障害などが絡み、尿指標が典型的にならないことがあるため、“FENa<1%だから腎前性で安心”のような短絡が危険になります。

KDIGOガイドラインでも、AKIは原因検索と可逆的原因への注意を迅速に行うことが強調されています。

もう一つは肝硬変で、末梢血管拡張により有効循環血液量が低下しやすく、消化管出血、過剰な利尿、腹水穿刺排液などのイベントで腎前性に傾きます。

ここでの実務的ポイントは「輸液反応性=診断の材料だが、万能の金標準ではない」という姿勢です。輸液で尿量が増える/Crが改善することは腎前性を支持しますが、心不全や肝硬変では“入れれば良い”ではなく、循環動態と呼吸状態を壊さない範囲で行う必要があります。

参考)Prerenal Kidney Failure – Stat…

少し意外な話として、近年は「容量反応性の高窒素血症が真の“腎障害”か、それとも生理的反応か」という議論もあり、腎前性という言葉の扱いはアップデートされ続けています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7152133/

だからこそ現場では、ラベル貼りよりも「可逆的因子(出血、脱水、薬剤、ショック)の除去」と「進展(腎性AKI化)の予防」を優先するほうが安全に働きます。

有用:AKIの原因評価(腎灌流低下など)と対応の整理がある(図・表)

AKI(急性腎障害)診療ガイドライン(日本腎臓学会ほか)

有用:国際標準のAKI定義(KDIGO)と、原因検索・可逆性原因への注意が明記

KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury (2012)

有用:NSAIDs/ACE阻害薬/ARBなど薬剤による腎前性AKIの機序と注意点

薬剤性急性腎障害(J-STAGE PDF)

慢性腎臓病療養指導士 2025年度対策オリジナル問題集(全300問)/第1刷(増補版)