一酸化窒素吸入療法の診療報酬と算定要件
96時間を超えても、摘要欄に理由を書けばさらに48時間分の一酸化窒素ガス加算が算定できます。
一酸化窒素吸入療法の診療報酬点数と算定区分
一酸化窒素吸入療法(J045-2)は、1日につき算定する処置料です。 算定区分は「新生児の低酸素性呼吸不全に対して実施する場合」と「その他の場合」の2区分に分かれており、どちらも所定点数は1,680点となっています。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
点数だけ見ると2区分は同じです。
ただし、この1,680点はあくまでも「1日分の基本点数」であり、実際の算定額はここに一酸化窒素ガス加算が加わります。 ガス加算は吸入時間1時間ごとに900点が加算される仕組みで、24時間継続吸入であれば1日あたりガス加算だけで21,600点(約21.6万円相当)に達します。これは使えそうです。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-j045-2/)
「その他の場合」の算定対象には、心臓手術の周術期における肺高血圧の改善や先天性横隔膜ヘルニアの周術期が含まれます。 2016年の改定で心臓手術の周術期も正式に保険算定が認められたという経緯があり、改定前後のルールを混同しないことが重要です。 gemmed.ghc-j(https://gemmed.ghc-j.com/?p=7145)
| 算定区分 | 対象疾患・状況 | 所定点数 | ガス加算上限時間 |
|---|---|---|---|
| 1(新生児低酸素性呼吸不全) | 肺高血圧を伴う新生児の低酸素性呼吸不全 | 1,680点 | 96時間(+48時間延長可) |
| 2(その他の場合) | 心臓手術・先天性横隔膜ヘルニアの周術期肺高血圧 | 1,680点 | 168時間(+48時間延長可) |
参考:令和6年度改定後の最新点数および通知の詳細確認に適したページです。
J045-2 一酸化窒素吸入療法 – 令和6年度診療報酬改定(ナレティ)
一酸化窒素吸入療法の施設基準と届出の要件
算定には、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生局長等への届出が必要です。 届出なしに算定した場合は、診療報酬の不正請求と見なされるリスクがあります。施設基準が条件です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
具体的には、新生児特定集中治療室管理料(A302)または総合周産期特定集中治療室管理料(A303)の届出を行っている保険医療機関であることが要件となっています。 つまり、NICUまたはMFICUを持たない施設では原則として算定できません。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ts11-4/)
届出書類の様式は「様式57の3」が定められており、地方厚生局への提出が必要です。 新規開設後や施設基準に変更が生じた際は速やかに届出内容を更新することが求められます。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/6-2-2-1.pdf)
参考:施設基準に係る届出書の様式や添付書類の確認に役立つ公式文書です。
一酸化窒素ガス加算の算定ルールと時間管理の注意点
ガス加算は「吸入時間1時間ごとに900点」という構造です。 1時間に満たない端数は「1時間」として切り上げて計算するため、たとえば1時間30分の吸入であれば2時間分=1,800点が加算されます。これが基本です。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-j045-2/)
重要なのは、ガス加算は本療法の終了日にまとめて算定する点です。 毎日の吸入時間を正確に記録し、終了時に累計時間を集計する必要があります。日々の記録が不正確だと、算定漏れや過剰算定の原因になります。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
区分1(新生児の低酸素性呼吸不全)では、ガス加算の算定上限は開始時刻から通算96時間です。 区分2(その他の場合)では通算168時間が上限となります。どちらも、医学的根拠がある場合はさらに48時間の延長算定が認められています。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
96時間を超えた場合の査定事例では、「全期間の加算がゼロ査定」となるケースが報告されています。 正しくは「96時間を超えた分のみ」が査定対象であるため、査定内容に誤りがあれば再審査請求が可能です。厳しいところですね。 igakutushin.co(https://www.igakutushin.co.jp/product_corrections/detail/1139)
参考:査定事例と正しい算定の解釈を確認できる実務向け情報です。
一酸化窒素吸入療法の診療録・摘要欄への記載義務
算定においては、摘要欄への記載が必須となる場面が複数あります。見落とすと損です。
まず、区分2(その他の場合)で56時間を超えて本療法を継続する場合は、「離脱の可能性についての検討結果」を診療録に記録することが義務付けられています。 56時間という数字は約2日と8時間であり、ICUでの治療経過の中で意外と早く到達します。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
次に、96時間(区分1)または168時間(区分2)を超えてガス加算を算定する場合は、「その理由および医学的根拠を詳細に」診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。 この記載がないまま延長算定を行うと、査定・返戻の対象になります。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-j045-2/)
記載内容は「症状の改善が不十分であり、継続的な一酸化窒素吸入療法が医学的に必要」などの具体的な根拠を含めることが求められます。テンプレートを事前に用意しておくと記載漏れを防げます。電子カルテのテキスト定型文機能を活用するのが効率的です。
- 56時間超(区分2):診療録に離脱検討の結果を記録
- 96時間超(区分1):摘要欄に理由・医学的根拠を詳細記載
- 168時間超(区分2):摘要欄に理由・医学的根拠を詳細記載
- いずれも延長は「さらに48時間を限度」として算定
参考:厚生局が公開している施設基準届出の正確な要件を確認できます。
一酸化窒素吸入療法で算定できない費用と包括範囲の落とし穴
算定の「包括範囲」を誤解すると、加算漏れや二重請求の両方のリスクが生じます。意外ですね。
一酸化窒素吸入療法の所定点数には、以下の費用が含まれる(包括)とされています。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_9_1_2%2Fj045-2.html)
- 呼吸心拍監視・新生児心拍呼吸監視・カルジオスコープなど(同一日)
- 経皮的動脈血酸素飽和度測定(SpO₂モニタリング)
- 非観血的連続血圧測定(同一日)
- 喀痰吸引・干渉低周波去痰器による喀痰排出
- 酸素吸入・突発性難聴に対する酸素療法
つまり、これらを同日に算定しようとすると重複算定として査定される可能性があります。 SpO₂モニタリングは通常別途算定できる処置ですが、一酸化窒素吸入療法施行中は包括されています。SpO₂が条件です。 iryojimuguide(https://iryojimuguide.com/sannsokyunyuudekinairiyuu/)
一方で、包括されないものもあります。人工呼吸器管理(J045)は一酸化窒素吸入療法と別途算定できますが、その運用には注意が必要です。 一酸化窒素ガスは一酸化窒素供給装置を人工呼吸器と接続して使用するため、機器の管理と算定の管理を混同しないようにしましょう。 fukuda.co(https://www.fukuda.co.jp/inhome_medical/support/pdf/hmv_shinryohoshu.pdf)
また、一酸化窒素吸入療法の機器(一酸化窒素供給装置)は特定保険医療材料には設定されておらず、技術料として包括して算定する形となっています。 機器コストは診療報酬点数の中に含まれていることを理解した上で、院内のコスト管理を行う必要があります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1030-7b02.pdf)
参考:人工呼吸療法全般の診療報酬算定の仕組みを確認できる資料です。
一酸化窒素吸入療法の上限超えと再審査請求:現場が見落としやすい実務対応
この項目は、検索上位にはほとんど見当たらない実務視点の内容です。現場で損をしないために知っておくべき情報です。
査定通知が届いたとき、「全部ゼロ」にされていたとしても、それが正しい査定とは限りません。 一酸化窒素吸入療法では、「96時間超の算定に摘要欄の記載がない」という理由で、96時間を超えた分だけでなく全期間分をゼロ査定するケースが実際に発生しています。これは誤った査定です。 igakutushin.co(https://www.igakutushin.co.jp/product_corrections/detail/1139)
正しくは「96時間を超えた分のみ」が査定対象であり、96時間以内の分は算定可能です。 査定内容を詳細に確認し、明らかな誤りがあれば再審査請求(審査支払機関への異議申し立て)を行うことができます。 igakutushin.co(https://www.igakutushin.co.jp/product_corrections/detail/1139)
再審査請求は審査決定通知を受けた月の翌月末日まで(社保は3ヶ月以内)が一般的な期限です。記録が残っている場合は、医学的根拠を添付して請求することで算定が認められるケースがあります。記録が必須です。
- 査定通知の「査定対象区分」を必ず確認する
- 全期間ゼロ査定は誤査定の可能性がある
- 診療録に根拠記録があれば再審査請求が有効
- 期限内(審査決定翌月末日など)に手続きをする
こうした査定対応の知識は、医療事務スタッフと医師が連携して持っておくべき情報です。院内で「算定ルール勉強会」を定期的に開催することで、算定漏れ・査定の両方を減らせます。これは使えそうです。
参考:医療現場での保険請求Q&Aが充実しており、類似ケースの調査に役立ちます。