胃穿孔 死亡率 手術 敗血症 腹膜炎

胃穿孔 死亡率

胃穿孔 死亡率の臨床ポイント
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死亡率は「時間」と「全身炎症」で上がる

腹膜炎が汎発化して敗血症・DIC・多臓器不全へ進む前に介入できるかが最大の分岐になる。

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CT所見で保存治療の可否を絞る

free airだけでなく、腹水の量と分布(ダグラス窩)で腹腔内汚染の程度を推定し、方針が変わる。

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保存治療は「厳密な適応」と「撤退線」が前提

適応を満たしても悪化時に即手術へ移行できない環境では、結果的に死亡率リスクを上げ得る。

胃穿孔 死亡率と腹膜炎 敗血症 DIC

 

胃穿孔の死亡率を考えるとき、穿孔孔径や原因疾患だけでなく、「腹腔内汚染→腹膜炎→敗血症→DIC→多臓器不全」という連鎖のどこで食い止められるかが本質になる。胃・十二指腸潰瘍穿孔は放置すれば汎発性腹膜炎を併発し、敗血症やショックで致死的になり得る、という古典的理解は現在も変わらない。

臨床では「free airがある=手術」になりがちだが、実際には被覆穿孔(大網や周囲臓器で一時的に塞がる)もあり、局所腹膜炎に留まる症例は保存的治療が成立する余地がある。一方で、腹膜炎が汎発化し始めた段階(バイタル不安定、SIRSが進行、乳酸上昇、意識変容など)では、同じ“胃穿孔”でも死亡率の傾きが急になる。

見落としやすいのは、腹痛が一時的に軽減する「偽の改善」である。穿孔直後は腹膜刺激症状が強く、数時間後に疼痛が鈍ることがあるが、炎症の沈静化ではなく、腹腔内への内容物流出が拡大し神経反応が変わっただけの場合がある。痛みが軽い=軽症と短絡せず、腹部所見の経時変化と循環・呼吸の微細な変動を拾うことが、死亡率リスクの早期察知につながる。

胃穿孔 死亡率の予後因子 高齢 併存症

胃穿孔(広義の上部消化管穿孔)における予後は、若年で穿孔が小さいかどうかより「患者側の予備能」に強く引きずられる。古い国内報告でも、併存症を有する群で死亡が高いことが示唆されており、背景因子の重さが転帰に直結する構図が見える。

臨床感覚としては、高齢・心肺腎機能低下・抗血栓薬内服・ステロイドや免疫抑制状態などが重なるほど、同じ穿孔でも“手術侵襲に耐えられない”方向へ引っ張られ、結果として保存治療を選ばざるを得ない局面が増える。この「本当は手術が必要だが、全身状態が悪く見送られる」ケースは、死亡率の高い集団を形成しやすい。

また、ガイドライン上も消化性潰瘍の重症合併症(出血や穿孔)による死亡が存在することが明記されており、疫学的には潰瘍患者数が減っても“重症イベントがゼロになるわけではない”点は医療者が再確認しておきたい。症例数の減少は経験機会の減少でもあり、当直帯などでの初動の質が施設差として出やすい領域である。

胃穿孔 死亡率を下げるCT 腹水 ダグラス窩 保存的治療

保存的治療の成否は、経験則ではなく「適応基準」と「監視体制」で決まる。上部消化管穿孔に対する保存的治療を検討した国内論文では、適応基準として①全身状態が安定、②腹膜刺激症状が上腹部に限局、③CTでダグラス窩に腹水がない/少量、の3点を提示している。さらに、悪化や腹水増量があれば緊急手術へ移行する、という“撤退線”を明確化している点が重要である。

この枠組みを「胃穿孔」へ応用する際のポイントは、穿孔部位そのものよりも腹腔内汚染の推定にCTを使うことだ。free airは診断の入口に過ぎず、腹水の量・分布(特に骨盤腔まで落ちているか)が、汎発化の進行度を示すサインになりやすい。ダグラス窩に明らかな液体貯留がある場合、炎症・汚染の範囲が広く、保存的治療の“成功確率”は下がる方向へ働く。

保存的治療の中身は、絶飲食・輸液・PPI投与・抗菌薬・胃管減圧などの組み合わせとして記載されており、開始後は腹部所見の悪化や画像上の腹水増量を厳重に監視する運用が前提となる。つまり「保存=何もしない」ではなく、「侵襲を下げつつ、悪化の芽を最速で摘むための集中管理」である。

胃穿孔 死亡率と手術移行 タイミング 24時間

保存的治療を選択した症例でも、一定割合が手術へ移行する。前述の国内検討では、保存的治療を入院時に選択した症例のうち手術移行例が存在し、悪化時に速やかに切り替えた症例は軽快退院している一方、手術同意が得られず死亡に至ったケースも記載されている。ここから読み取れるのは、「適応基準」よりも「移行判断の速度」と「同意形成の設計」が死亡率に影響し得る、という現実である。

臨床で使える撤退線の例としては、(1) 痛みや腹膜刺激症状が24時間程度で改善傾向を示さない、(2) 画像上の腹水が増える、(3) バイタルが崩れる、(4) 炎症反応や代謝性アシドーシスが悪化する、などが挙げられる。論文中でも保存的治療が奏効する症例は24時間以内に腹部症状が軽快することが多く、改善しない場合は手術的ドレナージが必要という趣旨が述べられている。

独自視点として強調したいのは、「手術をする/しない」の二択ではなく、「保存で入るが、いつ何を根拠に手術へ切り替えるか」をチームで共有できているかが、死亡率の差として表面化しやすい点である。夜間帯に当直医が保存方針で入院させ、翌朝に主治医が評価する運用は多いが、その間に敗血症化した場合、結果は“保存が悪い”のではなく“監視設計が弱い”ことが原因になり得る。だからこそ、患者・家族への説明は「保存で様子を見る」ではなく、「保存を試すが悪化時は緊急手術に直ちに切り替える」までをワンセットで合意しておくべきである。

胃穿孔そのものの死亡率を単一の数字で語るのは難しいが、少なくとも臨床現場では「敗血症・DIC・多臓器不全へ進む前に介入できるか」「保存治療を選ぶならCT腹水(ダグラス窩)と全身状態で厳密に選別できているか」「手術移行の撤退線が明文化されているか」が、死亡率を下げるための再現性あるレバーになる。

第9章に「穿孔に対する内科的(保存的)治療」の項目があり、穿孔治療の考え方を体系的に確認できる(消化性潰瘍診療ガイドライン2020)

https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/syoukasei2020_2.pdf

保存的治療の適応基準(全身状態、腹膜刺激症状の範囲、CTでのダグラス窩腹水)と、悪化時の手術移行運用が具体的に書かれている(上部消化管穿孔に対する保存的治療症例の検討)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/70/3/70_3_667/_pdf

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