異性愛とはの基本理解
異性愛の定義と性的指向
異性愛(いせいあい)は、ヘテロセクシュアリティとも呼ばれ、性別またはジェンダーが異なる人同士、つまり男性と女性の間での親愛や性愛を指します。性的指向としての異性愛は、異性に対する「感情的、ロマンチック、および/または性的魅力の永続的なパターン」を示すものです。
医療従事者にとって重要なのは、異性愛が単なる恋愛感情だけでなく、「それらの魅力、関連する行動、およびそれらの魅力を共有する他者のコミュニティへのメンバーシップに基づいた個人のアイデンティティの感覚」も含むということです。これは患者のアイデンティティ全体を理解する上で欠かせない視点です。
異性愛は、両性愛及び同性愛と並んで、性的指向の3つの主要なカテゴリーの1つであり、文化を問わず、大多数の人は異性愛者とされています。医療現場では、患者の性的指向を前提とせず、多様性を理解することが求められます。
異性愛のヘテロセクシュアリティとしての特徴
ヘテロセクシュアルという用語は、ギリシア語由来の「ちがう」という意味を表す「ヘテロ」から来ています。この「違う」という概念は、自己の性別と異なる性別に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる状態を示しています。
参考)ヘテロセクシュアルとは?【「あたりまえ」なんかじゃないよ、異…
重要なのは、ヘテロセクシュアルを「性的な感情」と「恋愛感情」で区別することです。性的な感情を表すのがヘテロセクシュアルで、恋愛感情のみの場合はヘテロロマンティックと表現されます。医療従事者は、患者のセクシュアリティを理解する際、この細かな区別も考慮する必要があります。
医療現場では、「何も言わなければ、患者・利用者はヘテロセクシュアル(異性愛者)であることが前提にされます」が、実際には性的指向が同性愛あるいは両性愛である人(LGB)は50人に一人程度の割合で存在します。病床数1000床程度の大きな病院では、入院患者の約20人程度がLGBであることになります。
参考)https://www.okayama-u.ac.jp/user/mikiya/img/file4.pdf
異性愛における性別認識の複雑性
異性愛を理解する上で重要なのが「異性」の定義です。単純に身体的性別で決まるのではなく、性自認(ジェンダーアイデンティティ)が関わってきます。例えば、身体的性が男性である同士であっても、相手の性自認が女性であり、それを異性と捉えて恋愛感情がある場合も異性愛に含まれることがあります。
参考)ヘテロセクシュアルとは?意味について。シスジェンダーとの違い…
この複雑さは医療現場でも重要な意味を持ちます。医療者側がGID(性同一性障害)の患者について「ヘテロセクシュアル(異性愛者)だと思われがちですが、必ずしもそうではありません。多様な性的指向を持っています」という事実を理解する必要があります。
深く理解するためには、単純な見方ではなく多角的な理解が必要で、これは患者との信頼関係構築において重要な要素となります。医療従事者には、この複雑性を理解した上で患者に接することが求められます。
異性愛の脳科学的メカニズム
科学者たちは性的指向の正確な原因を判明させていませんが、遺伝、ホルモン、環境の影響の複雑な相互作用によって引き起こされると理論づけており、性的指向を選択によるものとは考えていません。特に男性の場合、性的指向の社会的原因よりも非社会的、生物学的原因を支持する証拠がかなり多く存在します。
性的指向を左右する重要な脳部位として「前視床下部間質核」が注目されています。この部位は異性愛男性と同性愛男性では大きさが異なり、男性の方が女性よりも神経細胞の数が多く、大きさも2倍以上あることが分かっています。同性愛男性の場合は、異性愛男性よりも小さく、女性とほぼ同じ大きさだという報告があります。
参考)異性、同性… 恋愛対象は「脳の性別」で決まる – 日本経済新…
さらに、性フェロモンに対する視床下部の反応も性的指向と関連しています。男性異性愛者は女性の性フェロモンであるエストラテトラエノール(EST)に、男性同性愛者は男性の性フェロモンであるアンドロステノン(AND)に視床下部が反応するという研究結果があります。
参考)脳の性分化と同性愛 – Neurology 興味を持った「…
異性愛のホルモン的基盤と恋愛の生物学
恋愛や愛着における異性愛のメカニズムには、複数のホルモンが関与しています。恋愛は魅了、性欲、愛着の3つの要素で構成され、それぞれ異なるホルモンが作用します。
参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2024/05/63779/
恋愛初期の魅了段階では、ドーパミンの分泌量が増加し、報酬系が活性化します。同時にアドレナリンの分泌も高まり、興奮や覚醒が促進される一方で、心を落ち着かせるセロトニンのレベルは低下します。これにより感情の起伏が激しくなり、相手のことが頭から離れない状態が生まれます。
性欲に関してはテストステロンやエストロゲン、プロゲステロンといった性ホルモンが重要な役割を果たします。テストステロンは性欲だけでなく攻撃性やリスク選好性を高め、女性では排卵期にエストロゲン分泌が増加し性的興奮が高まることが知られています。
愛着感情には、オキシトシンやバソプレシンというホルモンが重要です。交際中の男女はシングルの男女に比べ、オキシトシン分泌量が著しく増大し、交際開始当初のオキシトシン分泌量が高いカップルほど半年後に別れる確率が低いという報告もあります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/71/9/71_630/_pdf/-char/ja