胃瘻漏と原因
胃瘻漏の観察とスキンケア
胃瘻漏を疑ったら、まず「いつ漏れるか(注入中/注入後/体位変換後)」「何が漏れているか(栄養剤・胃液・浸出液)」「皮膚がどう変化しているか(発赤、びらん、浸軟、痛み、かゆみ)」をセットで確認します。特に漏れが続くと皮膚が浸軟し、発赤やびらん、瘙痒、真菌感染などのスキントラブルに進みやすく、患者・家族の不安やQOL低下にも直結します。これは「漏れ=皮膚トラブルの入口」なので、観察所見を“漏れ量の増減”だけで終わらせないのがポイントです。
洗浄は「やりすぎない・残さない」がコツです。日常ケアとしては洗浄が基本で、消毒や強い洗剤を常用しない考え方が示されており、入浴時に石鹸と湯でやさしく洗い流すのが良いケアとされています。洗浄後は水分をよく拭き取り、自然乾燥を基本にして、乾燥を急いでドライヤーを当てる運用は避けます(熱傷や皮膚乾燥、カテーテル劣化のリスクがあるため)。
参考)PEGのトラブル A to Z ②スキントラブル|TOPIC…
皮膚保護は「漏れを止めるまでの橋渡し」と位置づけます。漏れた内容物が皮膚に直接触れないよう、撥水性クリームの薄塗りや創傷被覆材、皮膚被膜剤・粉状保護材、PEG専用被覆材などを状況に応じて使い分けることが紹介されています。少量なら被覆材で吸収できる一方、コントロールできない漏れでは医師の指示下で陰圧パック療法(漏れを陰圧で持続吸引)という選択肢が言及されており、「守り方」も段階があると理解しておくと判断が早くなります。
意外と現場で差が出るのが“当て物”の選び方です。滅菌ガーゼはコスト面で交換をためらいがちで、漏れた栄養剤が付着すると真菌感染の温床になりやすく推奨しない、という実務的な指摘があります。その代替として、ティッシュペーパーをこより状にして巻いて汚れる都度交換する方法や、切り込みを入れたスポンジ、化粧用パフ、生理用ナプキンなど「安価・入手容易・乾燥しやすい」物品を活用する考え方が示されています。
胃瘻漏の原因と対策
胃瘻漏は「皮膚側で受け止める問題」に見えますが、根本は原因の切り分けです。漏れを放置すると瘻孔が拡大し、漏れがさらに悪化する悪循環になり得るため、早い段階で“漏れそのもの”をコントロールする発想が重要になります。漏れ対策を皮膚保護だけで完結させると、見た目は一時的に落ち着いても再燃しやすい点はチームで共有しておくと安全です。
原因の代表は、(1)圧迫・摩擦、(2)投与条件や腹腔内圧上昇、(3)デバイス不具合や適合不良、など複数が重なります。看護roo!の解説では、漏れの主な原因として不適切な太さのカテーテル、カテーテル破損、腹腔内圧上昇、胃内ガス・栄養剤停滞、便秘などが挙げられています。つまり、瘻孔周囲だけを見ていると、便秘やガス、栄養投与条件の問題を見逃します。
対策の考え方は「短期:漏れを受け止める」「中期:漏れを減らす」「必要なら:ルートや投与法を変える」です。漏れのコントロールとして、栄養剤の半固形化投与や、胃瘻カテーテルの小腸挿管(PEGJ)が挙げられており、特にPEGJは有効だが医療機関でレントゲン確認下の導入が必要とされています。施設の対応力(透視・内視鏡・交換体制)に合わせて、いつ誰に相談するかの基準も事前に決めておくと、漏れが慢性化しにくくなります。
「やってはいけない対策」も明確にしておくべきです。漏れるからといってカテーテルを太いサイズにしたり、外部ストッパーをきつく締めたりすると、局所の圧迫が強まり壊死を招いて瘻孔をさらに拡大させる恐れがある、と注意喚起されています。現場では“漏れ=締める”に引っ張られやすいので、申し送りで禁忌として共有すると事故を減らせます。
胃瘻漏とストッパーと圧迫
胃瘻漏の背景に「圧迫」がある場合、皮膚トラブルと感染の両方が絡みます。PDNの解説では、瘻孔感染に対応する際に原因を考える必要があり、2大原因として「圧迫」と「漏れ」が挙げられています。つまり、漏れが見えているケースでも、実はストッパー圧迫が火種になっていることがあり得ます。
外部ストッパー管理の実務は、数ミリの調整で結果が変わります。PDNでは、外部ストッパーと皮膚の間に1cm程度のゆとりが正常で、きつすぎると皮膚に食い込み潰瘍を形成するため、まずストッパーを緩める(ボタン型なら長めへの交換を検討)とされています。さらに円背などでストッパーが食い込みやすい場合は、ゆとりを3cm以上にし、ストッパーと皮膚の間に切り込みスポンジを入れて直接当たらないように工夫する方法が紹介されています。
看護roo!でも、ストッパー管理は「皮膚表面」と「胃壁」両者の圧迫を考えて行い、外部ストッパー圧迫による皮膚潰瘍だけでなく、内部ストッパー圧迫による胃潰瘍形成やバンパー埋没症候群(BBS)の予防が必要とされています。ここが重要で、外から見える“食い込み”だけ直しても、内側の圧迫が残っていれば痛みや漏れの誘因が続き得ます。外・内の圧迫を同時に疑う視点が、胃瘻漏の長期化を止めます。
“固定”にも落とし穴があります。チューブ型を腹帯などで固定してカテーテルが倒れた状態になると、内部バンパーにより反対側胃壁が蹴り上げられ圧迫壊死につながることがあるため、根元を立てる工夫(こよりティッシュ、スポンジ、化粧用パフに切り込みを入れて挟む等)が挙げられています。固定は「動かないほど良い」ではなく、「圧迫と摩擦を増やさない固定」を目標に再設計する必要があります。
胃瘻漏と感染と真菌
胃瘻漏が続くと皮膚が常に湿潤になり、細菌・真菌の温床ができやすくなります。PDNでは、栄養剤のしみ込んだガーゼなどが皮膚に長時間接触していると「温度」「湿度」「栄養」がそろって細菌や真菌の感染温床になり、ガーゼの形に皮膚炎が起きるのが特徴的と述べられています。見た目の“赤み”がガーゼ形状に一致するなら、ケア物品そのものが原因の可能性が高いと考えます。
このタイプの予防はシンプルで、「湿ったものを置きっぱなしにしない」運用が中心です。PDNでは、ガーゼ放置を避け、ティッシュペーパーなどをまめに交換することで予防できるとされ、発生した真菌感染には抗真菌剤軟膏で対応するとされています。つまり、薬剤を増やす前に、まず“交換頻度”と“乾燥しやすさ”を見直すだけで改善するケースが一定数あります。
感染か刺激かで迷うときは、観察項目を固定化すると判断がぶれません。看護roo!では、胃瘻の観察で発赤・疼痛・熱感・硬結・排膿などの炎症徴候、滲出液、漏れ、浸軟などを系統的に見ることが説明されています。記録は「発赤あり」だけでなく、範囲(時計方向)、湿潤の程度、漏れのタイミング、当て物の種類までセットで残すと、カンファレンスで原因が絞れます。
胃瘻漏とチーム連携の独自視点
胃瘻漏は、医学的には“局所トラブル”でも、運用上は「小さなズレの積み重ね」で慢性化します。PDNではスキントラブルが生命に直結しにくい一方で本人・家族の苦痛や関心が強く、医師の関心が薄いこともあり、看護師等が板挟みで苦労することが多いと指摘されています。ここに独自視点として、漏れを“ケアの問題”に閉じ込めず、役割分担と意思決定ルートを先に整えることが、実は最短の治療になります。
具体的には、次の3点をチームの「共通言語」にします。第一に、観察の最小セット(漏れ量・漏れのタイミング・皮膚所見・ストッパー余裕・固定方法・便秘/腹満・投与条件)を統一します。第二に、介入の順序(洗浄・乾燥→皮膚保護→圧迫是正→投与条件調整→医師へルート変更相談)を明文化し、“人によって締め方が違う”状態をなくします。第三に、再発しやすい手技(こよりティッシュの厚巻き、ガーゼの置きっぱなし、固定で倒す、ストッパーを締める)を「やりがちリスト」として新人教育に組み込みます。根拠として、こよりティッシュは厚く巻いてゆとりをなくすと圧迫になる、ガーゼは感染温床になりやすい、という注意点がそれぞれ明記されています。
患者・家族への説明も、漏れのコントロールに直結します。看護roo!では、入浴で「胃瘻からお湯が入るのでは?」という不安に対し、胃の内圧が高いので入る心配はないと説明するとされています。こうした不安が減ると過剰な防水テープや密閉保護が減り、結果として蒸れ・浸軟・感染が減る、という“臨床の連鎖”が起こります。
(参考:日々の観察・洗浄・漏れ対策(半固形化、PEGJ等)・ガーゼ回避など、胃瘻スキントラブルの実践ポイント)
PEGのトラブル A to Z ②スキントラブル|TOPIC…
(参考:漏れの原因(便秘・腹腔内圧など)と「締めない・太くしない」注意点、ストッパー管理と固定の工夫)