胃平滑筋腫 治療 内視鏡 外科 診断

胃平滑筋腫 治療

胃平滑筋腫 治療:この記事の要点
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まず「平滑筋腫」か「GIST」かを疑う

胃の粘膜下腫瘍は見た目が似やすく、治療適応は鑑別の精度で変わります(EUS・病理・免疫染色が鍵)。

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腫瘍径2cmが一つの分岐点

潰瘍や不整がなく2cm未満なら年1〜2回フォローが基本、2cm以上や所見ありならCT/EUS/EUS-FNAで精査します。

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治療は「切除」中心、方法は低侵襲へ

外科(腹腔鏡)に加え、LECSや内視鏡的全層切除など“胃の切除範囲を最小化”する発想が普及しています。

胃平滑筋腫の診断 EUSと鑑別

胃平滑筋腫は、内視鏡では「粘膜下腫瘍(SMT)」として見つかることが多く、肉眼所見だけで確定するのは困難です。特に臨床で問題になるのは、同じくSMTとして見えるGISTや神経鞘腫などとの鑑別で、治療(切除適応・術式・フォロー)の前提がここで変わります。

EUS(超音波内視鏡)は「胃壁のどの層由来か」「内部のエコー性状」「境界の明瞭さ」などを評価でき、SMT診療の解像度を一段引き上げます。ガイドラインでも、腫瘍径2cm以上や不整・潰瘍・増大傾向がある場合はCT、EUS、EUS-FNAなどで精査する流れが明確に示されています。

一方、2cm未満で半球状・平滑な輪郭、潰瘍や陥凹を伴わないSMTは、年1〜2回のフォローアップが推奨されています。 ここで重要なのは「小さい=放置」ではなく、形状変化・増大傾向・表面所見(びらん/潰瘍)を拾える体制を作ることです。

意外と見落とされやすいのは、腫瘍の発生層が「固有筋層」か「粘膜筋板寄り」かで、内視鏡的アプローチの難易度や穿孔リスクの見立てが変わる点です。EUSを“診断目的”だけでなく、“治療設計のためのマッピング”として扱うと、後工程がスムーズになります。

胃平滑筋腫の治療適応と経過観察

胃平滑筋腫は一般に良性腫瘍として扱われますが、実臨床では「本当に平滑筋腫と断定できるのか」「症状があるか」「増大しているか」「潰瘍形成があるか」が治療適応の中心になります。SMT領域では“診断の不確実性”が治療適応そのものになり得るため、医療者側の説明は病理確定の価値も含めて設計する必要があります。

ガイドラインの枠組みでは、腫瘍径2cm未満で所見が落ち着いていれば年1〜2回フォロー、2cm以上や不整・潰瘍・増大があれば精査(CT/EUS/EUS-FNA)へ進む整理が現実的です。 とくに「増大傾向」は、患者が無症状でも切除を検討する十分な理由になり得ます。

経過観察の実務で悩みがちなのは、フォロー間隔よりも「どの所見が出たら方針転換するか」の合意形成です。例えば、内視鏡で頂部にびらんが出た、EUSで内部不均一が増した、輪郭が不整化した、患者が出血症状(貧血、黒色便)を訴えた――このあたりは“悪性を示す所見そのもの”というより、“鑑別が難しくなったサイン”として切除・生検の議論に移行しやすいポイントです。

また、患者説明では「小さいSMTはフォローが基本」という一般論だけだと、後で“なぜ取らなかったのか”の説明が難しくなる場面があります。ガイドラインが示すフォロー推奨(年1〜2回)を軸にしつつ、施設で実施可能なEUS、病理確定までの導線(連携先)を具体化して提示しておくことが安全です。

胃平滑筋腫の治療 内視鏡切除と先進医療

胃平滑筋腫を含む胃粘膜下腫瘍の治療は、従来は開腹または腹腔鏡下の外科手術が標準治療と整理されてきました。 一方で近年は、腹腔鏡と内視鏡を併用するLECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術)が開発され、2014年に保険適用となった経緯があり、局所切除の精度を上げつつ切除範囲を最小限にする流れが加速しています。

さらに、一定の条件を満たす胃粘膜下腫瘍に対して「経口内視鏡のみを用いて胃の一部を切除する」内視鏡的胃局所切除術が先進医療として整理されています。 先進医療情報では対象を「長径1.1cm以上、かつ3cm以下」などとし、経口回収できるサイズであることが条件として明記されています。

この手技の実務上のポイントは、腫瘍が固有筋層に及ぶ場合には、腫瘍付着部の固有筋層を含めて胃壁全層を切除(意図的穿孔)し、穿孔部を縫合する、という“設計された穿孔”を前提にしている点です。 逆に固有筋層の浅い部分までなら、全層切除ではなく筋層の一部切除+クリップ閉鎖で完結する選択肢があり、侵襲の最小化に直結します。

意外な実感として、医療従事者側が「穿孔=合併症」と条件反射しやすいのに対し、EFTR/全層切除の文脈では“治療工程として計画的に起こして閉じる”概念が重要です。 この前提をチーム内で共有しておかないと、術後説明や合併症評価の言語がズレて、トラブルの火種になります。

胃平滑筋腫の治療 外科とLECS

外科治療は、病変の位置・発育方向(内腔突出/壁外突出)・腫瘍径・悪性疑いの程度・施設の手技環境によって最適解が変わります。胃SMTはリンパ節郭清を必要としない局所切除で完結することが多く、腫瘍学的な安全(腫瘍破裂回避、適切な切除断端)と機能温存(過大切除の回避)を同時に追う設計が基本になります。

LECSは、内視鏡で病変範囲を内腔側から正確に同定し、腹腔鏡で切除・縫合を担保することで、切除範囲を最小限にしやすいという利点があります。 胃の局所切除では“どこをどれだけ切ったか”が術後QOL(胃の変形、狭窄、排出障害)に直結するため、局在(噴門近傍、幽門近傍、前庭部など)に応じてLECSを含む低侵襲・高精度の選択肢を検討する意味があります。

ここで医療者が押さえたいのは、「平滑筋腫だから小さければ経過観察」だけでは片付かない点です。たとえば同じSMTでもGISTは“腫瘍径が小さく核分裂像が目立たなくても転移を示すことがある”とされ、良悪性の断定が難しいという前提があるため、鑑別が揺れる段階では“診断確定のための切除”が合理化されます。

また、腹腔鏡下手術は小病変に限らず適応が拡大してきた一方で、腫瘍径が大きいほど操作時の腫瘍破裂リスクや取り回しが問題になりやすいのは変わりません。 結局、治療方針のコアは「病理確定と腫瘍学的安全性」と「機能温存」の二軸で、術式はその実装手段として選びます。

胃平滑筋腫の診断 免疫染色と独自視点

胃平滑筋腫を“平滑筋腫”として確定させるうえで、免疫染色のパターンは極めて実務的です。平滑筋腫瘍ではDesminやα-SMAが陽性になり、c-kitやCD34、S-100は陰性となる、という整理は鑑別の基本として共有されています。

独自視点として強調したいのは、免疫染色を「確定診断の儀式」で終わらせず、“治療の過不足を防ぐ安全装置”として位置づけることです。SMTを見つけた時点で、治療側は「切るならどの方法で、どの範囲で、穿孔は許容するのか」まで逆算して動きますが、その逆算の精度は“鑑別の確度”で決まります。

さらに、GISTの鑑別では、KIT免疫染色だけに頼ると落とし穴があり得る点も重要です。GISTは免疫染色で95%がKIT陽性で、DOG1はKIT陽性・陰性に関わらず95%以上で陽性になり診断的価値が高い一方、平滑筋腫では腫瘍細胞自体はKIT陰性でも、KIT陽性の肥満細胞やカハール介在細胞が混在し誤認に注意が必要、とガイドライン内で具体的に言及されています。

つまり、病理レポートを読む側(内視鏡医・外科医)も「陽性/陰性」だけを見るのではなく、“どの細胞が染まっているか”“びまん性か部分的か”を確認し、必要なら病理医と再確認するのが現場の質を上げます。

診断(画像・病理)と治療(内視鏡/LECS/腹腔鏡)の接続が分かる。

日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(GIST):SMTのフォロー基準、2cm以上の精査、EUS-FNAと免疫染色(DOG1/KIT等)の注意点

低侵襲治療(先進医療)の適応条件と手技コンセプトが分かる。

先進医療情報ステーション:内視鏡的胃局所切除術(1.1〜3cmなど適応、固有筋層に及ぶ場合の全層切除と縫合、クリップ閉鎖の考え方)