イブプロフェン系薬剤の一覧と分類
イブプロフェン系薬剤の内服薬製剤一覧
イブプロフェン系薬剤は、プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される代表的な薬剤群です。 内服薬として最も汎用されているのは先発品のブルフェン錠であり、100mg錠と200mg錠が存在し、薬価はそれぞれ6.1円/錠に設定されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG01908
後発医薬品として多様な製品が販売されており、主要なものには辰巳化学のイブプロフェン錠100mg「TCK」(6.1円/錠)、イブプロフェン錠200mg「TCK」(8.9円/錠)、日医工岐阜工場のイブプロフェン錠100mg「NIG」(6.1円/錠)、イブプロフェン錠200mg「NIG」(8.9円/錠)などがあります。 また、顆粒製剤として科研製薬のブルフェン顆粒20%(7円/g)や鶴原製薬のイブプロフェン顆粒20%「ツルハラ」(6.5円/g)も臨床で使用されています。
現在の日本医薬品市場において、イブプロフェンAPI市場は2023年時点で約60億米ドルの規模を有しており、2036年末には110億米ドルを超えると予測されています。 この背景には、関節炎患者の増加があり、アメリカでは約5人に1人が医学的に関節炎と診断されており、関節炎セグメントが予測期間中に約60%の最大シェアを占めると推定されています。
参考)https://www.researchnester.jp/industry-analysis/ibuprofen-api-market/4796
イブプロフェン系薬剤の外用薬および注射製剤
外用薬製剤では、鳥居薬品のスタデルム軟膏5%(11.1円/g)、スタデルムクリーム5%(11.1円/g)が先発品として広く使用されています。 また、久光製薬のベシカム軟膏5%(12.8円/g)、ベシカムクリーム5%(12.8円/g)も外用イブプロフェン製剤として重要な位置を占めています。
外用イブプロフェン製剤は、プロスタグランジン類の生合成阻害作用や血小板凝集抑制作用、肉芽増殖抑制作用などを介して、皮膚の赤みや腫れ、痛み、かゆみなどを軽減します。 これらの外用薬は全身への影響を最小限に抑えながら、局所的な抗炎症効果を発揮できる利点があります。
参考)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/staderm.html
注射製剤として、レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパンのイブリーフ静注20mgが存在し、薬価は13,235円/瓶と高額に設定されています。 この静注製剤は特殊な病態や緊急時に使用される製剤として位置づけられています。
イブプロフェン系薬剤の作用機序と薬物動態
イブプロフェンは1960年代に英Boots Groupの研究部門によりプロピオン酸の誘導体として創薬された薬剤であり、WHO必須医薬品モデル・リストに含まれている医薬品の一つです。 作用機序は、プロスタグランジン合成阻害による抗炎症・鎮痛・解熱効果を発揮することにあります。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%B3
薬理学的特性として、紫外線紅斑(モルモット、1.25~10mg/kg、p.o.)においてアスピリンの16~32倍の効果を示し、Carrageenin浮腫(ラット、1~50mg/kg、p.o.)においてインドメタシンよりわずかに弱く、アスピリンの約9倍の抗炎症効果を示します。 また、アジュバント関節炎(ラット)の慢性炎症に対しては10~30mg/kg/日で抑制作用を示し、アスピリンの5~10倍の効果を有しています。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/72370/interview/72370_interview.pdf
薬物動態面では、イブプロフェンは4-8時間効果が持続し、これは用量依存的ですが、半減期から推定される持続時間より長い特徴があります。 通常の経口投与量は4-6時間ごとに200-400mgであり、1日最大投与量は800-1200mgとされています。 最近の製剤技術の進歩により、速溶性イブプロフェン製剤では従来製剤に比べて約30%高いCmax値と約56分短いTmax値を実現しており、より迅速な効果発現が期待できます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpstj/69/5/69_329/_pdf
イブプロフェン系薬剤の臨床適応と治療効果
イブプロフェン系薬剤の臨床適応は多岐にわたり、関節リウマチ、関節痛及び関節炎、神経痛及び神経炎、背腰痛、頸腕症候群、子宮付属器炎、月経困難症、紅斑(結節性紅斑、多形滲出性紅斑、遠心性環状紅斑)などの消炎・鎮痛が主要な適応症です。 また、手術並びに外傷後の消炎・鎮痛、急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛にも使用されます。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070883.pdf
関節炎治療においては、処方される高用量のイブプロフェンで関節リウマチやその他の炎症性関節炎を効果的に治療できます。 イブプロフェンは関節リウマチの治療において、他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と同様にアスピリンと同等の効果を示しながら、アスピリンよりも優れた忍容性と安全性プロファイルを備えています。
疼痛管理の観点から、ラット足蹠の炎症性疼痛(Randall-Selitto法)に対してアスピリンの30倍の効果を示すことが確認されており、鎮痛効果の優秀性が実証されています。 さらに、軽症の慢性頭痛については市販薬(OTC)での対処が可能とされており、医療機関受診前の初期治療として重要な役割を担っています。
成人の標準的な用法・用量は、イブプロフェンとして通常1日量600mgを3回に分けて経口投与し、小児では年齢に応じて5~7歳で1日量200~300mg、8~10歳で300~400mg、11~15歳で400~600mgを3回に分けて投与します。
イブプロフェン系薬剤の安全性プロファイルと副作用管理
イブプロフェン系薬剤の安全性管理において、副作用の理解と適切な対応は医療従事者にとって極めて重要です。主要な副作用として胃腸障害が最も頻繁に報告されており、吐き気、嘔吐、胃部不快感、腹痛、食欲不振、下痢、便秘などの消化器症状が挙げられます。 これらの症状は、イブプロフェンが胃の粘膜保護に関わるプロスタグランジンの生成を抑制するために発生し、特に空腹時の服用や長期・高用量での服用でリスクが高まります。
参考)https://utu-yobo.com/column/40146
中枢神経系への影響として、頭痛(薬効による頭痛とは異なる)、眠気、めまい、不眠などが報告されており、これらの症状が現れた場合は車の運転や危険を伴う機械の操作を避ける必要があります。 また、過敏症として発疹、かゆみ、じんましん、浮腫(むくみ)なども観察されています。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=51050
重大な副作用として注意すべき症状には、ショック・アナフィラキシー(胸内苦悶、悪寒、冷汗、呼吸困難、四肢しびれ感、血圧低下、血管浮腫、蕁麻疹)、再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少、消化性潰瘍、胃腸出血、潰瘍性大腸炎などがあり、これらの症状が認められた場合には直ちに投与を中止し適切な処置を行う必要があります。 特に胃腸出血のサインとして、ひどい腹痛や黒い便、血を吐くなどの症状は緊急医療機関受診が必要な重要な警告症状です。
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/ibuprofen/
高齢者では副作用が現れやすいため、少量から投与を開始し、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが求められます。 妊婦への投与については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、特に妊娠末期には動脈管収縮のリスクがあるため投与を避けることが望ましいとされています。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/sinkei/JY-12076.pdf