腓骨筋腱脱臼 手術 入院期間
腓骨筋腱脱臼の手術適応とギプス固定
腓骨筋腱脱臼は足関節捻挫に紛れて見逃されやすく、初回脱臼を放置すると反復性となり、階段昇降など日常動作でも脱臼時の疼痛や「力が抜ける」訴えにつながります。
初回脱臼では保存療法として4~6週間のギプス固定が選択肢になりますが、ギプス固定による治癒率は約50%とされ、早期のスポーツ復帰を希望する場合は初回でも手術が検討され得ます。
反復性脱臼では手術が一般的な流れで、患者説明では「反復=上腓骨筋支帯が良い位置で治癒していない可能性」という病態理解(なぜ装具やリハビリだけでは不十分になり得るか)を先に共有すると同意形成が速くなります。
【医療者向けポイント】
- 「捻挫と違う痛みの場所」を言語化:腓骨筋腱脱臼は外くるぶし“後方”の痛み・腫脹が手がかりになり得ます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8498153/
- 見逃しの代償:反復性になるほど、治療ゴールが「痛みゼロ」より「不安定感ゼロ+再脱臼予防」に寄ります。semanticscholar+1
- 保存療法の説明では「半数は反復性へ」を先に提示し、フォローアップの重要性を強調します。semanticscholar+1
腓骨筋腱脱臼の手術術式と上腓骨筋支帯
反復性腓骨筋腱脱臼の病態として、腱そのものが断裂して飛び出すというより、上腓骨筋支帯と連続する骨膜が腓骨から剥離し、結果として形成された仮性嚢へ腱が逸脱する、という説明が古典的に整理されています。
そのため「仮性嚢を閉鎖し、解剖学的構築を回復する」発想で行う上腓骨筋支帯の解剖学的修復(Das De法に準じた修復)が合理的とされ、実際に術後2~4週の外固定、免荷3~4週、2か月でランニング許可という後療法プロトコルで良好なスポーツ復帰が報告されています。
また、手術法の大枠として、上腓骨筋支帯を修復する方法に加え、腓骨筋腱が通る溝を深くする腱溝形成(骨を削る/切る)などがあり、余剰筋(例:腓骨筋の低位筋腹や副腓骨筋など)や余分な腱の存在がある場合は切除を併用する考え方も示されています。
【あまり知られていない(説明に効く)視点】
- “腱の問題”ではなく“トンネル容積の問題”:上腓骨筋支帯修復は「屋根の修理」、腱溝形成は「床(溝)を掘って容積を増やす」介入で、同じ再脱臼予防でも狙っている構造が違います。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 解剖学的修復で使用する縫合糸に関して、非吸収糸では結節部刺激症状が多かった一方、吸収糸群で再脱臼を経験したという報告があり、固定強度と刺激症状のトレードオフを示唆します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9011067/
腓骨筋腱脱臼の入院期間と免荷歩行
腓骨筋腱脱臼に関する一般向けの解説では「初回脱臼で4~6週間のギプス固定」「反復性では手術」といった治療の流れが示されていますが、入院期間そのものは施設・術式・疼痛・社会背景で大きく変動し得ます。
臨床では、入院の主目的を「術後早期合併症(出血・感染・神経障害)監視」だけでなく、「装具・ギプスの適合確認」「免荷歩行の安全な獲得」「自宅環境に合わせた動作指導」に置くと、退院基準をチームで共有しやすくなります。
免荷の期間は報告により幅がありますが、解剖学的修復術の後療法として免荷3~4週とする記載があり、退院時点で松葉杖歩行が安定しているか(段差、トイレ、入浴導線)が実務上の“入院期間を左右する因子”になります。
【入院期間を延ばしやすい要素(現場での説明例)】
- 疼痛が強く鎮痛で歩行練習が進まない。
- ギプスの圧迫・皮膚トラブル懸念で調整が必要。
- 自宅が階段環境で、免荷歩行の安全確保に追加練習が必要。
- 仕事復帰要件(通勤、運転)と固定期間が合わず、社会調整が必要。
※上記は一般論であり、実際の入院期間は施設の運用(クリニカルパス、地域連携、外来リハの可否)に強く依存します。semanticscholar+1
腓骨筋腱脱臼の術後リハビリとスポーツ復帰
腓骨筋腱脱臼の手術成績に関する系統的レビューでは、手術によりAOFASスコアが改善し、長期フォローでも再脱臼率が低いこと、さらに腱溝形成+上腓骨筋支帯修復の組み合わせ群の方が「上腓骨筋支帯修復単独」よりスポーツ復帰率が高いことが示されています。
また、腓骨筋腱脱臼の発生機序として、急激な足関節背屈に伴う腓骨筋の急激な収縮(特に偏心性収縮)が関与し、解剖学的素因(腓骨後方溝が平坦/凸、低位筋腹、副腓骨筋など)もリスクになり得ると整理されています。
術後プロトコルは報告により差があり得ますが、古典的な報告では外固定2~4週、免荷3~4週、2か月でランニング許可、3か月以内にスポーツ復帰という経過が示されており、スポーツ現場へ戻す際は「切り返し動作」「背屈+外反強制位」を段階的に再獲得させる視点が重要です。
【意外と盲点になりやすい点】
- 「捻挫後の腓骨筋腱痛」として扱われると、背屈位での腱逸脱(スナッピング)の再現テストや動的エコーの適応が後手に回り、反復性を助長し得ます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- リハで外反筋強化を急ぎすぎると、修復直後の上腓骨筋支帯に剪断ストレスが入り得るため、固定解除後も負荷設定は“腱の強化”ではなく“トンネルの安定化を壊さない”順序で考えます。pmc.ncbi.nlm.nih+1
腓骨筋腱脱臼の独自視点:仮性嚢と説明責任
腓骨筋腱脱臼の病態は、骨膜剥離により形成された仮性嚢へ腱が逸脱する、という理解が提示されており、この“袋(スペース)”の存在は患者説明に非常に有用です。
具体的には、「脱臼=腱がずれる」よりも「腱が入り込むスペース(仮性嚢)ができてしまい、そこに滑り込む」へ言い換えると、保存療法で治りにくい理由や、手術で“閉鎖/再建”を行う意味が伝わりやすくなります。
さらに、初回脱臼のギプス固定で治癒が約半数という情報をセットで示すことで、患者の期待値を適正化し、再診・再評価(超音波やMRIを含む)の必要性を前向きに理解してもらいやすくなります。
【説明テンプレ(医療者向け)】
- 「骨からはがれた支帯と骨膜で“袋”ができ、そこに腱が滑り込むのが脱臼です。」
- 「ギプス固定は“袋が良い位置でくっつくのを待つ治療”ですが、半数はクセになります。」pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 「手術は“袋を閉じて屋根(上腓骨筋支帯)を直す”ことで、腱が乗り上げる経路を消す治療です。」pmc.ncbi.nlm.nih+1
【関連論文(リンク)】
【権威性のある日本語参考リンク(治療方針:保存4~6週、治癒率、手術適応の整理)】
【権威性のある日本語参考リンク(病態:上腓骨筋支帯、診断の手がかり、治療の選択肢)】
