非抱合型ビリルビン値と肝機能検査の基準値や異常値の原因

非抱合型ビリルビン値と肝機能検査

非抱合型ビリルビン値の基本情報
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基準値の範囲

非抱合型ビリルビン値の正常範囲は0.2~0.8mg/dLです

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高値の主な原因

溶血性貧血、ギルバート症候群などが代表的です

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検査の重要性

肝機能や胆道系の問題を早期発見するために重要な指標です

ビリルビンは、古くなった赤血球が分解されるときに生成される黄色の色素です。体内では主に2つの形態で存在しています。水に溶けにくい「非抱合型ビリルビン」と、肝臓で処理された水溶性の「抱合型ビリルビン」です。今回は特に非抱合型ビリルビン値に焦点を当て、その基準値や異常値が示す病態について詳しく解説します。

非抱合型ビリルビンは、主に赤血球内のヘモグロビンが分解されることで生成されます。通常、この非抱合型ビリルビンは肝臓に運ばれ、グルクロン酸と結合して抱合型ビリルビンに変換されます。この過程が適切に行われることで、ビリルビンは胆汁を通じて腸管へと排出されていきます。

肝機能検査では、総ビリルビン値とともに直接ビリルビン(抱合型)と間接ビリルビン(非抱合型)の値を測定することで、肝臓や胆道系の問題を診断する重要な手がかりとなります。

非抱合型ビリルビン値の基準値と正常範囲

健康な成人の非抱合型ビリルビン値(間接ビリルビン)の基準値は、一般的に0.2~0.8mg/dL程度とされています。ただし、検査機関や測定方法によって若干の差異があることもあります。

総ビリルビン値の基準値は0.2~1.2mg/dLであり、そのうちの大部分(約80%)が非抱合型ビリルビンで構成されています。検査結果では「間接ビリルビン」として表記されることが多いです。

非抱合型ビリルビン値は日内変動があり、空腹時や絶食時に上昇する傾向があります。また、激しい運動後や長時間の断食後にも一時的に上昇することがあるため、検査前の生活状況も考慮する必要があります。

さらに、新生児では生理的黄疸として非抱合型ビリルビン値が一時的に上昇することが知られています。これは肝臓のグルクロン酸抱合能力がまだ十分に発達していないためです。通常は生後1~2週間で自然に改善しますが、高ビリルビン血症が続く場合は医師の診察が必要です。

非抱合型ビリルビン値が高い原因と関連する病気

非抱合型ビリルビン値の上昇は、主に以下のような原因や疾患と関連しています。

  1. 溶血性貧血:赤血球が過剰に破壊されることで、非抱合型ビリルビンの産生が増加します。
    • 自己免疫性溶血性貧血
    • 遺伝性球状赤血球症
    • 薬剤性溶血性貧血
  2. ギルバート症候群:肝臓でのビリルビン抱合に関わる酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素)の活性が低下する遺伝性疾患です。日本人の約3~7%に見られる比較的一般的な体質で、通常は治療を必要としません。
  3. クリグラー・ナジャール症候群:ギルバート症候群よりも重症の遺伝性疾患で、UDP-グルクロン酸転移酵素の完全または部分的欠損により、非抱合型ビリルビン値が著しく上昇します。
  4. 新生児黄疸:新生児の肝機能が未熟なため、一時的に非抱合型ビリルビン値が上昇します。
  5. 薬剤性:一部の薬剤(リファンピシン、プロベネシドなど)は、ビリルビンの取り込みや代謝を阻害することがあります。

非抱合型ビリルビン値が高値を示す場合、これらの原因を特定するために追加の検査が必要になることがあります。例えば、網状赤血球数、ハプトグロビン、直接クームス試験などの検査が溶血性貧血の診断に役立ちます。

非抱合型ビリルビン値と黄疸の関係性

黄疸は、ビリルビン値の上昇によって皮膚や粘膜、強膜(白目の部分)が黄色く見える状態です。非抱合型ビリルビン値と黄疸の関係性について詳しく見ていきましょう。

一般的に、総ビリルビン値が2.0~2.5mg/dL以上になると黄疸が肉眼で確認できるようになります。非抱合型ビリルビンが主に上昇している場合(間接高ビリルビン血症)と、抱合型ビリルビンが主に上昇している場合(直接高ビリルビン血症)では、黄疸の特徴や原因疾患が異なります。

非抱合型ビリルビン上昇による黄疸の特徴:

  • 皮膚や強膜の黄染
  • 尿の色は通常正常(非抱合型ビリルビンは水に溶けにくいため尿中に排泄されない)
  • 主な原因:溶血性疾患、ギルバート症候群など

抱合型ビリルビン上昇による黄疸の特徴:

  • 皮膚や強膜の黄染
  • 濃い茶色の尿(抱合型ビリルビンは水溶性のため尿中に排泄される)
  • 主な原因:肝細胞障害、胆道閉塞など

黄疸の鑑別診断には、ビリルビン分画(直接・間接ビリルビン)の測定が重要です。非抱合型ビリルビンが優位に上昇している場合は、赤血球の過剰破壊や肝臓でのビリルビン抱合障害を疑います。

また、黄疸の発症時期や進行速度も診断の手がかりとなります。例えば、新生児黄疸は通常生後2~3日目に出現し、1週間程度で自然に改善することが多いですが、生後24時間以内に出現する黄疸や2週間以上持続する黄疸は病的な原因を考慮する必要があります。

非抱合型ビリルビン値の検査方法と肝機能検査での位置づけ

非抱合型ビリルビン値は、肝機能検査の一環として測定されます。ここでは、その検査方法と肝機能検査全体における位置づけについて解説します。

検査方法:

非抱合型ビリルビン値は通常、血液検査で測定されます。具体的には以下の手順で行われます。

  1. 総ビリルビン値の測定:ジアゾ反応などを用いて血清中の総ビリルビン濃度を測定
  2. 直接ビリルビン(抱合型)の測定:水溶性のビリルビン濃度を測定
  3. 間接ビリルビン(非抱合型)の算出:総ビリルビン値から直接ビリルビン値を引いて算出

つまり、非抱合型ビリルビン値は直接測定されるのではなく、計算によって求められるのが一般的です。

肝機能検査における位置づけ:

肝機能検査は、肝臓の様々な機能を評価するための複数の検査項目から構成されています。非抱合型ビリルビン値は、その中でも以下のような位置づけにあります。

  1. 胆汁排泄機能の評価:ビリルビン代謝は肝臓の重要な機能の一つであり、非抱合型ビリルビン値の上昇は肝細胞でのビリルビン取り込みや抱合過程の障害を示唆します。
  2. 溶血性疾患のスクリーニング:非抱合型ビリルビン値の単独上昇は、溶血性疾患を示唆する重要な指標となります。
  3. 他の肝機能検査との組み合わせ:AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの肝酵素と組み合わせて評価することで、より詳細な肝臓・胆道系の状態評価が可能になります。

肝機能検査の基本的な項目と、それぞれが示す肝機能の側面は以下の通りです。

検査項目 主に反映する肝機能
AST(GOT)、ALT(GPT) 肝細胞障害
ALP、γ-GTP 胆汁うっ滞
総ビリルビン、直接・間接ビリルビン 胆汁排泄機能
アルブミンプロトロンビン時間 肝合成能
血清アンモニア 解毒機能

非抱合型ビリルビン値の上昇パターンと他の肝機能検査の結果を総合的に判断することで、より正確な診断が可能になります。例えば、非抱合型ビリルビン値のみが上昇し、他の肝機能検査が正常であれば、溶血性疾患やギルバート症候群などが疑われます。

非抱合型ビリルビン値が高い場合の対処法と治療方針

非抱合型ビリルビン値が高い場合の対処法は、原因となる疾患や状態によって異なります。ここでは、主な原因別の対処法と治療方針について解説します。

1. ギルバート症候群の場合

ギルバート症候群は良性の体質性疾患であり、通常は特別な治療を必要としません。以下のような対応が推奨されます。

  • 断食や過度の運動を避ける(これらはビリルビン値を上昇させる可能性があります)
  • 十分な水分摂取を心がける
  • 一部の薬剤(アセトアミノフェンなど)は代謝に影響を与える可能性があるため、医師に相談する

ギルバート症候群の患者さんは、ストレスや疲労、感染症などをきっかけに一時的に黄疸が出現することがありますが、通常は自然に改善します。

2. 溶血性貧血の場合

溶血性貧血が原因の場合は、原疾患の治療が必要です。

  • 自己免疫性溶血性貧血:ステロイド療法、免疫抑制剤、脾臓摘出術など
  • 遺伝性球状赤血球症:重症例では脾臓摘出術が考慮される
  • 薬剤性溶血性貧血:原因薬剤の中止

溶血が著しい場合は、輸血が必要になることもあります。また、非抱合型ビリルビン値が著しく上昇している場合は、ビリルビン脳症のリスクを減らすための治療(光線療法など)が考慮されることもあります。

3. 新生児黄疸の場合

新生児黄疸に対する治療は、ビリルビン値のレベルと赤ちゃんの状態によって決定されます。

  • 軽度~中等度の黄疸:光線療法(青色光を照射してビリルビンの分解を促進)
  • 重度の黄疸:交換輸血(ビリルビン値が非常に高く、ビリルビン脳症のリスクがある場合)
  • 母乳性黄疸:通常は母乳育児を継続しながら経過観察

4. クリグラー・ナジャール症候群の場合

この遺伝性疾患は重症度によって治療方針が異なります。

  • Ⅰ型(完全欠損):毎日の光線療法、肝移植が根治的治療となる場合も
  • Ⅱ型(部分欠損):フェノバルビタールなどの薬物療法、必要に応じて光線療法

5. 一般的な注意点

非抱合型ビリルビン値が高い場合の一般的な注意点として。

  • アルコール摂取を控える(肝機能への負担を減らす)
  • 十分な水分摂取を心がける
  • バランスの良い食事を摂る
  • 定期的な検査でビリルビン値の推移を確認する

非抱合型ビリルビン値の上昇が見られた場合は、その程度や他の検査結果、症状などを総合的に判断して、適切な対応を行うことが重要です。軽度の上昇であれば経過観察のみで問題ないことも多いですが、著しい上昇や他の肝機能検査の異常を伴う場合は、専門医による精密検査や治療が必要になります。

非抱合型ビリルビン値と抱合型ビリルビン値の違いと臨床的意義

非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)と抱合型ビリルビン(直接ビリルビン)は、性質や代謝経路、臨床的意義において重要な違いがあります。これらの違いを理解することは、肝胆道系疾患の診断において非常に重要です。

物理化学的性質の違い

特性 非抱合型ビリルビン 抱合型ビリルビン
水溶性 低い(脂溶性) 高い(水溶性)
血中での結合 アルブミンと強く結合 アルブミンと弱く結合
尿中排泄 されない される(尿が濃くなる原因)
血液脳関門の通過 可能(核黄疸の原因) 困難

代謝経路の違い

非抱合型ビリルビンは、主に古くなった赤血球のヘモグロビンが分