hdlコレステロール高い100以上の原因と健康への影響
HDLコレステロールが100mg/dL以上となる高HDL血症は、一般的には善玉コレステロールとして知られているものの、実際には複雑な健康への影響を持つ状態です。通常のHDLコレステロール基準値は男性で40mg/dL以上、女性で50mg/dL以上とされており、100mg/dL以上の値は統計的に全人口の約0.1%に見られる比較的稀な状態です。
参考)https://kateinoigaku.jp/qa/5923
この高値状態では、従来考えられていた「高ければ高いほど良い」という概念とは異なり、動脈硬化性疾患のリスクが増加する可能性が近年の研究で明らかになっています。特に日本人においては、HDLコレステロールが極端に高い場合、心血管疾患の発症率が上昇するU字型の関係が報告されており、100mg/dL以上では注意深い評価が必要となります。
参考)https://hoken.kakaku.com/health_check/hdl_cholesterol/
hdlコレステロール高値の主要原因となるCETP欠損症
HDLコレステロールが100mg/dL以上の異常高値を示す最も重要な原因の一つが、CETP(コレステリルエステル転送蛋白)欠損症です。この遺伝性疾患は、日本人において特に高い頻度で見られ、ホモ接合体では数万人に1人、ヘテロ接合体では50人に1人の割合で存在すると推定されています。
参考)https://www.j-athero.org/jp/general/3_kenkoushindan/
CETP欠損症では、HDLから他のリポ蛋白への コレステロール転送が阻害されるため、HDLコレステロール値が150-250mg/dLという極めて高い値を示すことがあります。この状態では、単純にHDLが高いからといって心血管保護効果が得られるわけではなく、むしろ動脈硬化が進行する可能性が指摘されています。
参考)https://www.nanbyou.or.jp/entry/643
日本動脈硬化学会の研究では、CETP欠損症患者において下行大動脈の動脈硬化指標が健常者より有意に悪化していることが示されており、特に大量飲酒や他のHDL代謝関連蛋白の異常を伴う場合、その動脈硬化惹起性は更に増悪することが報告されています。
参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/2085
hdlコレステロール異常高値による動脈硬化リスク
従来「善玉コレステロール」として親しまれてきたHDLコレステロールですが、100mg/dL以上の異常高値では、その機能が質的に変化し、動脈硬化を促進する可能性があることが明らかになっています。この現象は「機能不全HDL」と呼ばれ、正常なHDLが持つ逆コレステロール輸送機能や抗炎症作用、抗酸化作用が低下した状態を指します。
参考)https://www.mdpi.com/2075-4426/14/9/996
機能不全HDLは、アポリポ蛋白A-1の酸化的修飾や酵素の不活化により、末梢組織からのコレステロール除去能力が著しく低下します。その結果、血管内皮機能障害を引き起こし、炎症反応を促進することで、冠動脈疾患のリスクを高める可能性があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8466913/
特に男性で40歳以上、女性で閉経後にHDLコレステロールが100mg/dLを超える場合には、薬剤の副作用、アルコール摂取、または潜在的な肝疾患などの要因も考慮する必要があります。これらの状況では、HDLの質的変化により、期待される心血管保護効果が得られない可能性が高くなります。
参考)https://solare-clinic-sas.jp/dyslipidemia/
hdlコレステロール高値の検査と診断アプローチ
HDLコレステロールが100mg/dL以上の高値を示した場合、まず詳細な病歴聴取と身体診察を行い、二次的な原因の有無を評価することが重要です。検査項目としては、肝機能検査、甲状腺機能検査、腎機能検査に加えて、アルコール摂取歴、薬剤使用歴の確認が必要となります。
参考)https://www.shoushikai-kenshin.com/clinic/medical_checkup/cholesterol/
遺伝的要因の評価では、CETP活性の測定や遺伝子解析が有用ですが、これらの検査は専門医療機関での実施が推奨されます。家族歴の詳細な聴取も重要で、血縁者に類似の高HDL血症や早期冠動脈疾患の既往がある場合は、遺伝性疾患の可能性を強く疑う必要があります。
参考)https://clinic-fw.org/Qamp;A/q_a019.html
さらに、HDLの機能評価として、コレステロール流出能力の測定や、HDLの粒子サイズ分布の解析なども、専門医療機関では実施可能となっています。これらの検査により、HDLの量的異常だけでなく、質的異常の評価も可能となり、より精確なリスク評価が行えます。
参考)https://www.mdpi.com/2673-8937/4/2/24/pdf?version=1718593734
hdlコレステロール高値に対する生活指導と管理戦略
HDLコレステロールが100mg/dL以上の場合の管理は、まず原因の特定と除去から始まります。アルコール摂取が関与している場合は、段階的な減酒指導を行い、1日のアルコール摂取量を男性で20g未満、女性で10g未満に制限することが推奨されます。
食事療法では、飽和脂肪酸の摂取を総エネルギーの7%未満に制限し、トランス脂肪酸を含む食品の摂取を避けることが重要です。代わりに、n-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む青魚や、食物繊維を多く含む野菜、海藻類の摂取を積極的に勧めます。
参考)https://e-clinic.gr.jp/internal-medicine/hyperlipidaemia/
運動療法については、中強度の有酸素運動を週150分以上実施することで、HDLの質的改善と動脈硬化予防効果が期待できます。ウォーキング、水泳、サイクリングなどの継続可能な運動を選択し、1回30分程度、週3-5回の頻度で実施することが理想的です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5390423/
薬物療法は、生活習慣の改善だけでは不十分な場合や、他の動脈硬化危険因子を合併している場合に検討されます。LDLコレステロールが同時に高値の場合は、スタチン系薬剤による治療が優先されますが、HDLのみが異常高値の場合の特異的治療法は確立されていないのが現状です。