反復性単関節炎と鑑別診断
反復性単関節炎の鑑別診断の全体像
反復性単関節炎は「同じ関節が腫れては引く」を繰り返すため、外傷・変性・炎症・感染が混在しやすく、発作ごとに“今回は何が起きているか”を再評価する姿勢が重要です。
とくに単関節炎の現場では、痛風・CPPDなどの結晶性関節炎、外傷(半月板や靱帯損傷を含む)、感染性関節炎が頻度の高い三本柱として挙げられます。
一方で、反復するという時間軸は「自己炎症(遺伝性炎症)」「慢性滑膜疾患」「腫瘍随伴」「治療介入後の二次的問題」など、急性単発では見落としやすい領域を示唆します。
発作性の経過を言語化するため、以下のような整理が有用です(問診テンプレとしても使えます)。
- 発症様式:数時間でピークか、数日かけて増悪か。
参考)https://bpac.org.nz/BT/2008/November/monoarthritis.aspx
- 持続時間:24〜72時間で自然軽快しやすいか、1週間以上続くか。
参考)GRJ 家族性地中海熱
- 発作間欠期:無症状に戻るか、違和感が残るか(慢性炎症・構造障害の示唆)。
参考)単関節および単関節周囲の痛み – 06. 筋骨格系疾患と結合…
- 誘因:脱水・飲酒・外傷・手術・感染後など(結晶/感染/反応性の示唆)。
- 部位:膝・足関節・股関節など大関節か(FMFの典型部位を含む)。
医療従事者向けに強調したいのは、「反復している=良性」とは限らない点です。感染性関節炎は適切に治療しても不可逆的な関節破壊を来し得るため、疑う閾値を下げる必要があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
反復性単関節炎と関節穿刺の適応
単関節炎で最も重要な鑑別は感染性関節炎であり、診断の鍵は関節穿刺で得た関節液の評価(塗抹・培養を含む)です。
臨床でありがちな落とし穴は、「過去に痛風と診断されたことがある」「今回も典型的に見える」ために穿刺を省略してしまうことですが、治療反応が悪い場合や感染の可能性がある場合は関節穿刺が推奨されます。
さらに重要なのは、結晶が見つかったからといって感染を否定できない点で、結晶性関節炎と感染性関節炎が併存しうるため、関節液の微生物学的検査(グラム染色・培養)は“結晶があっても”実施する、という考え方が強調されています。
関節液で現場判断に直結しやすい観点を、反復例でも使える形にまとめます。
- 白血球数・分画:高値は感染を示唆しますが、結晶性でも上がり得るため「単独で決めない」ことが重要です。
- グラム染色・培養:起炎菌同定と治療選択に直結するため、疑えば迅速提出を優先します。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- 結晶検査:結晶性関節炎の診断には偏光顕微鏡での結晶確認が重要です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1380
また、反復性単関節炎の文脈では「関節液が少量で十分採れない」「抗菌薬投与後で培養が陰性になりやすい」など、現実的な制約が出ます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12535428/
その場合でも、“穿刺できた量で何を優先するか”をチームで決めておくと運用が安定します(例:まず培養/グラム染色、次に結晶、次に細胞数)。theidaten+1
反復性単関節炎と感染性関節炎の見逃し
感染性関節炎は整形外科・救急・内科いずれでも遭遇しうる緊急疾患で、診断と治療の遅れが関節破壊につながり得るため、常に除外対象として扱います。
ガイドラインでも、疑い例では関節液採取と微生物学的評価を含む迅速な診断・治療の重要性が示されています。
そして現場で本当に危険なのは、結晶性関節炎が“感染のマスク”になるケースで、結晶が見つかっても感染を捨てずに、関節液の培養など微生物学的検査を行うべきだとされています。
反復性単関節炎で感染を疑う赤旗(レッドフラッグ)を、運用しやすい形で挙げます。
- 発熱や悪寒、全身状態不良が強い。
- 免疫抑制(ステロイド・生物学的製剤など)や関節内注射・手技後の発症。pmc.ncbi.nlm.nih+1
- “いつもの発作”と違い、痛みが増悪し続ける、可動域制限が強い、鎮痛に反応しない。
- 関節液で結晶があっても、グラム染色・培養を省略しない(併存があり得る)。
参考)Coexistence of septic and crys…
「反復しているから感染ではない」と決め打ちするより、「反復していても感染は起こり得る」という前提で、毎回のエピソードを再評価する方が安全です。reumatologiaclinica+1
反復性単関節炎と結晶性関節炎
急性単関節炎の主要原因として結晶性関節炎(痛風、CPPD)は頻度が高く、感染や外傷と並んで最初に鑑別に入ります。
結晶性関節炎の診断には関節液の偏光顕微鏡による結晶確認が重要で、血清尿酸など単一の血液検査だけで確定させない姿勢が推奨されています。
また、結晶性関節炎は感染性関節炎を“否定する根拠”にはならず、両者の併存があり得るため、結晶が見つかった場合でも関節液の培養など微生物学的検査が重要です。
意外と見落とされやすい臨床上のポイントとして、「治療が効いているように見える=感染ではない」とは言い切れない点があります。
実際、CPPDが感染に似た経過をとりうること、そして関節液評価(結晶・培養)を丁寧に行う重要性が症例報告でも繰り返し示されています。
反復性単関節炎の文脈では、結晶性関節炎と構造的問題(変形性関節症、半月板障害など)が重なり、発作が起きやすくなることもあるため、「結晶だけ治療して終わり」ではなく、関節の背景(アライメント、既存変性)も含めた再発予防が実務的です。
現場で使えるメモとして、結晶性を疑っても必ず確認したい項目を挙げます。
- 関節穿刺が可能なら、結晶+培養を同時に出す(どちらか片方に寄せない)。
- 再発のたびに臨床像が変わる場合は、同じ診断名で固定せず、画像(X線/MRI)も再検討する。
反復性単関節炎と家族性地中海熱
反復性単関節炎の中には、痛風や感染では説明しにくい“短期間の炎症発作”を繰り返す遺伝性炎症疾患が含まれ、家族性地中海熱(FMF)はその代表です。
FMFでは、発作開始から24時間以内の高熱、下肢の大関節(膝・足首・腰など)での発症、24〜48時間でピーク後に徐々に軽快する、といった特徴が示され、無菌性の滑膜浸出液がみられることが多いとされています。
さらに、再発性単関節炎がFMFの唯一の症状となることがあり、その場合は全身評価が行われるまで正確な診断に至らない可能性がある点が強調されています。
“意外な臨床のヒント”としては、反復性単関節炎の患者でFMFを疑う診断の手掛かりとして、高熱、コルヒチンに対する良好な反応、家族歴、遺伝子型などが挙げられていることです。
つまり、関節局所のワークアップ(穿刺・画像)を進めつつ、発熱パターンと家族歴を聞き切ることが、反復例では診断効率を大きく左右します。
また、感染性関節炎を除外すべき優先順位は変わらないため、FMFを疑っても「まず穿刺で感染を外す」という順序は崩さない方が安全です。theidaten+1
有用な日本語参考リンク(FMFの診断の手掛かり:反復性単関節炎・高熱・コルヒチン反応などの記載)。
有用な日本語参考リンク(単関節痛/単関節炎の診断方針:結晶確認などの要点)。
有用な参考リンク(感染性関節炎ガイドライン:診断・マネジメントの推奨)。