グラゾプレビル販売中止と代替治療の選択
グラゾプレビルが販売中止になっても、既存の在庫が残っている施設では処方継続できると思っていませんか?実は薬価削除後に使用すると保険請求が一切通らず、全額自費となるリスクがあります。
グラゾプレビル販売中止の背景と理由
販売中止の理由として、MSD社は「C型肝炎治療における本剤への医療ニーズが大きく変化したため」と発表しています。 端的に言えば、より治療効果が高く利便性に優れた後継DAA(直接作用型抗ウイルス薬)の台頭によって、グラゾプレビルを含む旧世代薬の需要が急速に低下したのです。 msdconnect(https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2023/01/discontinued_erelsa-grazyna_202105.pdf)
つまり「需要消滅による自然退場」です。
販売中止時期は2021年10月末。 経過措置期間は2021年11月〜2022年3月31日まで設定され、薬価削除日は2022年4月1日となりました。 さらに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の情報提供ホームページからも電子添文が削除されています。 dsu-system(https://dsu-system.jp/dsu/339/2210/notice/notice_2210_20250812144545.pdf)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | グラゾプレビル水和物 |
| 商品名 | グラジナ錠50mg |
| 製造販売 | MSD株式会社 |
| 販売中止時期 | 2021年10月末 |
| 経過措置期間 | 2021年11月〜2022年3月31日 |
| 薬価削除日 | 2022年4月1日 |
| RMP(リスク管理計画)削除確定日 | 2023年1月30日 |
RMPの削除が2023年1月30日に正式確定しており、グラゾプレビルはすでに医療制度上の「存在しない薬」となっています。これは見落としがちなポイントです。 eps.co(https://www.eps.co.jp/ja/pdf/RMP_del-summary_202512.pdf)
参考:日本肝臓学会 C型肝炎治療ガイドライン(グラゾプレビルの記載削除について)
グラゾプレビル販売中止後の代替薬:マヴィレットの位置づけ
グラゾプレビルの販売中止後、C型肝炎治療の主役となったのがグレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠(商品名:マヴィレット配合錠)です。 これは第3世代DAAに分類され、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬(グレカプレビル)とNS5A阻害薬(ピブレンタスビル)の2成分配合剤です。 med.myclimatejapan(https://med.myclimatejapan.com/asunapurebiruhanenchiryouyakugenjou.html)
最大の特徴は、遺伝子型1〜6型すべてに対応する汎遺伝子型(pan-genotypic)活性を持つことです。 グラゾプレビルがセログループ1型のみを対象としていたのと比べると、適応の広さは大きなアドバンテージです。これは使えそうです。 passmed.co(https://passmed.co.jp/di/archives/1278)
SVR12率(投与終了後12週時点での持続性ウイルス学的著効)は、未治療のジェノタイプ1・2型慢性肝炎で99%以上と報告されています。 さらに、肝硬変を伴わない症例では最短8週間の投与で治療を完結できます。 グラゾプレビル+エルバスビルは12週間投与が基本だったため、治療期間の短縮というメリットも明確です。 carenet(https://www.carenet.com/news/journal/carenet/45465)
また、重度の慢性腎臓病(CKD ステージ4・5)を合併するHCV感染患者に対しても、グレカプレビル/ピブレンタスビルの12週投与でSVR98%(104例中102例)が確認されています。 腎機能障害のある患者では従来薬の使用に制限が多かったことを考えると、この点は処方選択上の重要な知識です。 carenet(https://www.carenet.com/news/journal/carenet/44856)
グラゾプレビル販売中止がもたらしたガイドライン上の変化
日本肝臓学会は、グラゾプレビルおよびエルバスビルの販売中止を受け、C型肝炎治療ガイドラインから両薬剤の記載を正式に削除しました。 現在の最新版は第8.4版(2025年7月改訂)で、グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠とソホスブビル/ベルパタスビル配合錠(エプクルーサ)が推奨治療の中心となっています。 jsh.or(https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_c.html)
ガイドラインが変わったということですね。
医療従事者として注意が必要なのは、古いガイドラインに基づく処方情報や教科書記述がそのまま残存していることです。特に研修医や薬学生向けの教育資材で、削除前の情報が引用され続けているケースが見受けられます。処方支援システム(電子カルテ上のDSS)がグラゾプレビルの禁忌・併用禁忌情報を更新していない場合、アラートの精度が低下するリスクがあります。実際にPMDAの電子添文削除を受けて、他の薬剤の添付文書から「グラゾプレビルとの併用禁忌」記載を削除する改訂作業が行われています。 施設の医薬品情報管理担当者への確認を一度行うことをお勧めします。 dsu-system(https://dsu-system.jp/dsu/339/2210/notice/notice_2210_20250812144545.pdf)
参考:日本肝臓学会 C型肝炎治療ガイドライン 第8.4版
https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8.4_202507.pdf
グラゾプレビル販売中止前後での患者への説明対応と切り替えの実務
販売中止時に最も影響を受けたのは、すでにグラゾプレビル+エルバスビル療法を継続中だった患者です。経過措置期間(2022年3月末まで)内に処方が完結できるか否かが、現場での緊急対応の焦点となりました。 msdconnect(https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2023/01/discontinued_erelsa-grazyna_202105.pdf)
標準的な治療期間は12週間(約3か月)です。2021年10月末の販売中止から逆算すると、同年7月末以降に新規で開始した患者は、経過措置内に治療を完了できないリスクがありました。これは見落としやすいポイントです。
こうした移行期において重要なのは、患者への丁寧な説明です。「薬が変わる=治療効果が落ちる」と誤解する患者は少なくありません。しかし現実には、代替薬であるマヴィレットの有効性はグラゾプレビル配合療法と同等以上であり、治療期間も短縮されています。 患者説明の資材や院内FAQ を早期に整備した施設では、切り替えに際するクレームや治療中断がほとんど発生しなかったとされています。 sekine-clinic(https://www.sekine-clinic.org/heptitis)
説明の準備が対応の質を決めます。
薬剤師としての役割も大きいです。服薬指導の場面では、マヴィレットの食後服用が推奨されること(脂溶性で食事による吸収改善効果がある)など、グラゾプレビルとは異なる服薬注意事項を患者が正確に理解できているかを確認する必要があります。 適正使用ガイドを活用したダブルチェック体制が、切り替え後の治療成功率を支えます。 a-connect.abbvie.co(https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/maviret/pdf_1806_MAVIRET_useguide.pdf)
参考:マヴィレット配合錠 適正使用ガイド(アッヴィ)
https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/maviret/pdf_1806_MAVIRET_useguide.pdf
グラゾプレビルを知ることで見えるDAA全体の変遷と処方判断の視点
グラゾプレビルは、IFN(インターフェロン)フリー時代の第2世代DAAとして登場した4番目の経口C型肝炎治療薬です。 第1世代のシメプレビル、ダクラタスビル/アスナプレビル、オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビルに続く存在として、耐性変異症例での高い治療効果が期待されました。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/43066)
しかし承認からわずか5年で販売中止となった事実は、C型肝炎治療薬の進化スピードの速さを端的に示しています。意外ですね。
現在、C型肝炎の治療においては以下の薬剤が主軸となっています。
- マヴィレット配合錠(グレカプレビル/ピブレンタスビル):全ジェノタイプ1〜6型対応、未治療例で最短8週投与、SVR99%以上 do-yukai(https://www.do-yukai.com/medical/121.html)
- エプクルーサ配合錠(ソホスブビル/ベルパタスビル):全ジェノタイプ対応、代償性・非代償性肝硬変にも適応
グラゾプレビルを含む旧世代薬が次々と販売中止となる流れの中で、医療従事者に求められるのは「最新ガイドラインと実際の薬剤供給状況を常に照合する習慣」です。 薬価収載・削除の情報は厚生労働省やPMDAのサイトに随時掲載されるため、月次でチェックするフローを施設内で標準化しておくことが有用です。 jsh.or(https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_c.html)
参考:PMDAの添付文書情報(承認・削除ステータス確認)