グアノシンとグアニンの違いと核酸における役割

グアノシンとグアニンの違い

この記事のポイント
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グアニンは塩基

核酸を構成する5種類の主な塩基のうちのひとつで、プリン塩基に分類されます

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グアノシンはヌクレオシド

グアニンにリボース(糖)が結合した化合物で、さらにリン酸が結合するとヌクレオチドになります

GTPはエネルギー分子

グアノシンにリン酸が3つ結合したGTPは、細胞内のシグナル伝達やタンパク質合成に重要な役割を果たします

グアニンの基本構造と核酸塩基としての特徴

グアニンは分子式C₅H₅N₅Oで表されるプリン塩基の一種で、核酸を構成する5種類の主な塩基のうちのひとつです。プリン塩基はイミダゾール環とピリミジン環が融合した構造を持ち、グアニンにはカルボニル基(C=O)とアミノ基(NH₂)が含まれています。分子量は151.13で、DNAやRNAの二重鎖構造においてシトシンと3本の水素結合を介して塩基対を形成します。

参考)グアニン – Wikipedia


グアニンの名称は、海鳥の排泄物の堆積物(グアノ)中から発見されたことに由来しています。また、サケ科やタチウオ、サンマなどの魚類の銀白色部位を構成する主要成分としても知られており、魚の体表面の光沢に関与しています。プリン塩基には「プリンはAg(銀)」という語呂合わせがあり、アデニン(A)とグアニン(G)の2種類がプリン塩基に分類されることを覚えやすくしています。

参考)核酸 – オーソモレキュラー栄養医学研究所

グアノシンのヌクレオシド構造とリボース結合

グアノシンは、グアニンにリボース環がβ-N₉-グリコシド結合で構成されたヌクレオシドです。化学式はC₁₀H₁₃N₅O₅で、分子量は283.24となります。リボースは5炭素(五炭糖)を持つ糖で、グアニンはリボース環の1’炭素を介してこの分子に結合しています。

参考)グアノシンとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書


ヌクレオシドは「塩基+糖」の構造を持つ化合物で、グアノシンの場合はグアニン塩基とリボース糖が結合したものです。ヌクレオシドにリン酸が結合すると「塩基+糖+リン酸」の構成を持つヌクレオチドになります。グアノシンは白色の結晶性粉末として存在し、融点は239℃(分解)、無臭の性質を持っています。

参考)ヌクレオチドとは簡単に言うとどんな意味?ヌクレオシドとの違い…


グアノシンは冷水やアルコールにはほとんど溶けませんが、温水、酸、アルカリには溶解します。RNAをアルカリ加水分解して得たグアニル酸を酵素的に脱リン酸することで得られます。

参考)グアノシンとは? 意味や使い方 – コトバンク

グアノシンのリン酸化とヌクレオチド形成

グアノシンはリン酸化されることで様々なヌクレオチドに変換されます。主なものとしてGMP(グアニル酸、グアノシン一リン酸)、GDP(グアノシン二リン酸)、GTP(グアノシン三リン酸)、cGMP(環状グアノシン一リン酸)があります。

参考)グアニン(Guanine) – yakugaku lab


ヌクレオチドは核酸の基本構成単位であり、リボース糖の5’炭素にリン酸が結合した構造を持っています。GTPの場合、リボースの1’炭素にグアニン核酸塩基が結合し、リボースの5’炭素には三リン酸部分が結合しています。リン酸は1つとは限らず、3つのリン酸が結合したGTPもヌクレオチドとして分類されます。

参考)ヌクレオチドとヌクレオシドの違いとは?


ヌクレオシドの糖がリボースの場合はリボヌクレオシド、デオキシリボースの場合はデオキシリボヌクレオシドと呼ばれます。グアニンがデオキシリボース環に結合したものはデオキシグアノシンと呼ばれ、DNAの構成成分となります。

参考)ヌクレオシド – Wikipedia

グアノシン三リン酸(GTP)のエネルギー代謝における役割

GTPはATPアデノシン三リン酸)と同様に、エネルギーが豊富な分子として細胞内で重要な役割を果たしています。GTPとATPは同じプリン塩基を持つリボ核酸ですが、エネルギー分子として働く局面には明確な違いがあります。ATPは細胞内のほぼ全ての代謝反応に関与し、細胞のATP濃度は常に1-5 mMに保たれています。一方、GTPはタンパク質の合成や制御、細胞骨格の形成、膜輸送、シグナル伝達を駆動する役割を持ち、細胞のGTP濃度は0.1-1 mMの濃度域で変動します。

参考)グアノシン三リン酸 GTP


GTPの加水分解により30kJ(7kcal)のエネルギーを発生させる化学結合を持つため、高エネルギーリン酸化合物と言われています。ただし、高エネルギーなのはリン酸とリン酸の結合のみであり、グアノシンと結合しているリン酸は通常の結合です。GTPからGDPへの加水分解は、結合した因子の解離に常に先行し、GTPが結合すると因子の構造がわずかに変化します。​
転写過程でRNAを合成する際には、GTPは必要な構成要素の一つとして利用されます。また、細胞内では約27パーセントのエネルギー予算がタンパク質合成(翻訳)の際にGTPとして消費されます。GTPはGタンパク質を活性化することで細胞内のシグナル伝達経路を調節し、GTP由来のcGMPは血管拡張や光受容などの細胞応答に関与するセカンドメッセンジャーとなります。

参考)Redirecting…

グアニン代謝とプリン体・痛風の関連性

グアニンはプリン塩基の一種であり、プリン代謝の過程で尿酸へと変換されます。プリン塩基(アデニン・グアニン)はキサンチンデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼによってヒポキサンチン→キサンチン→尿酸と酸化代謝を受けて排泄されます。この代謝過程で段階的に酸素原子が導入されていきます。

参考)尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ…


GTP合成に関わる酵素には遺伝性疾患が報告されており、その表現型からGTP代謝調節は脳機能や視覚、免疫システムにおいて重要な役割を担っていることが知られています。GTP代謝異常は痛風などの疾患とも関連します。サルベージ経路においてGTP合成を担うHPRT1(ヒポキサンチン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ-1)に機能欠失型変異があると、部分欠失では高尿酸血症となり、重症の痛風や急性腎不全を引き起こします(Kelley-Seegmiller症候群)。

参考)DOJIN NEWS


尿酸ナトリウムの血漿中における溶解度は7.0 mg/dL(約400 μM)であり、ヒトの正常な尿酸値は2~7 mg/dLにも達するため、ほぼ飽和濃度近くまで存在しています。これを超えた場合、尿酸ナトリウムは結晶として析出する場合が多くなり、特に体温の低い足の拇指関節などでは結晶の析出が起こりやすくなります。痛風発作の好発部位として足の親指の関節が挙げられるのはこのことが原因の一つです。​
プリン代謝と尿酸の関係について詳しく解説されている参考リンク:尿酸の構造と痛風リスクに関する詳細情報