減数分裂と体細胞分裂の違い

減数分裂と体細胞分裂の違い

この記事でわかること
🧬

染色体数とDNA量の変化

体細胞分裂では染色体数が維持されますが、減数分裂では染色体数が半減します

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分裂の目的と役割

体細胞分裂は成長と組織修復、減数分裂は配偶子形成に働きます

減数分裂特有の現象

対合と乗換えによる遺伝的多様性の創出メカニズムを解説します

減数分裂と体細胞分裂における染色体数の変化

体細胞分裂と減数分裂の最も大きな違いは、分裂後の染色体数です。体細胞分裂では、分裂前と分裂後で染色体数が変わらず、元の細胞と全く同じ性質の細胞が作られます。例えば、ヒトの体細胞は46本の染色体を持っていますが、体細胞分裂後も娘細胞は46本の染色体を維持します。

参考)【高校生物基礎】「体細胞分裂と減数分裂」


一方、減数分裂では第一分裂と第二分裂という連続した2回の分裂を経て、染色体数が元の細胞の半分になります。ヒトの場合、減数分裂によって形成される精子や卵子は23本の染色体を持ちます。この染色体数の半減は、受精時に精子と卵子が融合することで元の染色体数(46本)に戻るために必要不可欠です。

参考)体細胞分裂と減数分裂の違いをわかりやすく!分裂の違いなんて簡…


体細胞分裂と減数分裂の染色体数変化について詳しく解説した教育サイト

減数分裂における対合と乗換えの役割

減数分裂には体細胞分裂には見られない特有の現象があります。減数分裂の第一分裂前期では、父親由来の染色体と母親由来の染色体がくっつく「対合」が起こります。対合によって作られた2本の染色体が接着したものを二価染色体といいます。

参考)【高校生物】「減数分裂のプロセス」


この対合の際に、染色体の一部が入れ替わる「乗換え」という現象が発生します。乗換えは非姉妹染色分体間で起こり、遺伝子の組み合わせが変わることで「組換え」が生じます。相同染色体が対合して分離する過程で、染色体が交差している像がキアズマ(chiasma)として観察され、これが乗換えの結果であると考えられています。

参考)https://saigot.sakura.ne.jp/iden/6-4.htm


この乗換えによる遺伝子の組み換えは、配偶子の多様性を増すために重要な役割を果たしています。体細胞分裂では染色体の乗換えは起こらないため、これは減数分裂の大きな特徴です。

参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/03/44004/


減数分裂における乗換えのメカニズムについて詳細な解説

減数分裂と体細胞分裂のDNA量の変化パターン

DNA量の変化パターンも両者で大きく異なります。体細胞分裂では、分裂開始前の間期にDNAを合成し、DNA量が2倍になった後、分裂によって元のDNA量に戻ります。このサイクルを繰り返すことで、細胞は増殖していきます。

参考)生殖と減数分裂


減数分裂では、間期にDNA量が2倍になる点は体細胞分裂と同じですが、その後の第一分裂と第二分裂という2回の連続した分裂により、最終的にDNA量が元の半分になります。重要なのは、第一分裂と第二分裂の間にはDNA合成が起こらないという点です。

参考)研究内容1 – 佐藤研究室 – 早稲田大学 – 先進理工学部…


DNA量が半減する時期については、減数分裂の第二分裂終期にDNA量が元の半分になります。この変化パターンは試験でも頻出のポイントです。

参考)体細胞分裂中のDNA変動量と計算|長岡駅前教室

📊 DNA量変化の比較表

分裂の種類 間期のDNA量 分裂後のDNA量 分裂回数
体細胞分裂 2倍 元に戻る(2n) 1回
減数分裂 2倍 半分になる(n) 2回連続

体細胞分裂と減数分裂の分裂期の過程

体細胞分裂の分裂期は、前期、中期、後期、終期という4つの段階に分けられます。前期では染色体が凝縮して観察可能になり、中期では染色体が細胞の赤道面に並び、後期では姉妹染色分体が分離して両極に移動します。

参考)【高校生物基礎】「分裂期」


減数分裂の第一分裂は、体細胞分裂とは異なる特徴を持ちます。第一分裂前期には相同染色体の対合が起こり、中期では二価染色体が赤道面に並びます。第一分裂後期では、体細胞分裂と異なり、セントロメアが分離せず相同染色体が両極に分配されます。

参考)http://www.wakayama-med.ac.jp/med/lasbiology1/morita/img/file13.pdf


減数分裂の第二分裂は、体細胞分裂とほぼ同じ過程で進行します。第二分裂では姉妹染色分体が分離し、その形態は体細胞分裂期の染色体の分配に似ています。

参考)大阪大学蛋白質研究所『ゲノムー染色体機能研究室』: 研究(一…

配偶子形成における減数分裂の重要性

減数分裂は、精子や卵子などの配偶子(生殖細胞)を形成するために特別に行われる分裂です。体細胞分裂が全身で行われるのに対し、減数分裂は生殖細胞だけで行われます。精母細胞から精細胞が生じる過程や、卵母細胞から卵が形成される過程が減数分裂です。

参考)細胞分裂・生殖・遺伝


ヒトの場合、減数分裂によって1つの生殖細胞から4つの精子が作られます(男性の場合)。これに対して、女性の卵子形成では4つの細胞のうち1つだけが卵子になります。減数分裂した卵子は必ず22本+Xの染色体を持ちますが、精子の場合は22本+Xまたは22本+Yの染色体を持ちます。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6103459/


配偶子で染色体数を半減させなければ、受精時に染色体数が通常の細胞の2倍になってしまいます。生物の染色体数はそれぞれ決まっているため、減数分裂による染色体数の半減は生殖において必須のプロセスです。

参考)https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/pdf2/develop.pdf


配偶子形成と減数分裂の関係について詳しい解説資料

体細胞分裂の目的と生物学的意義

体細胞分裂は、からだをつくる細胞が分裂する細胞分裂です。その主な目的は、生物の成長と損傷した組織の修復です。皮膚などの細胞が増殖する際に行われるのが体細胞分裂であり、私たちの身体が成長し、傷が治るのはこの分裂のおかげです。

参考)遺伝子はどのように細胞の成長や分裂を制御しているのですか? …


体細胞分裂は「細胞周期」と呼ばれる組織的で段階的な方法で進行します。細胞周期には間期(G1期、S期、G2期)と分裂期(M期)があり、このサイクルが厳密に制御されることで、分裂する細胞のDNAが正しくコピーされます。

参考)細胞周期と細胞分裂の基礎から応用まで: 特集解説


細胞周期にはチェックポイントと呼ばれる時点があり、ここで遺伝子に問題がないかを検証し、問題があれば周期を止めて修復します。細胞のDNAに修復不可能なエラーが存在している場合、その細胞はアポトーシス(自死)を起こすことがあります。細胞周期の正常な制御が阻害されると、がんなどの疾患につながる可能性があります。​

🔬 体細胞分裂の特徴まとめ

  • 目的: 成長と組織修復
  • 染色体数: 分裂前後で変化なし(2n→2n)
  • 分裂回数: 1回
  • 発生場所: 全身の体細胞
  • DNA複製: 間期に1回

減数分裂の第二分裂と体細胞分裂の類似性

減数分裂の特徴を理解する上で重要なのは、第一分裂と第二分裂の違いです。減数分裂では第一分裂の直後に第二分裂を開始しますが、この第二分裂は体細胞分裂をして増えているだけなので、やっていることは体細胞分裂と同じといえます。​
第二分裂では、第一分裂で分かれた細胞がそれぞれ分裂し、姉妹染色分体が分離します。この過程は体細胞分裂の染色体分配のメカニズムと本質的に同じです。第一分裂と第二分裂の間にはDNA合成期(S期)がないという点が、通常の細胞周期との大きな違いです。​
どちらの分裂も分裂開始前の間期にDNAを合成し、DNA量が倍になっている点は共通しています。この共通点と相違点を理解することで、体細胞分裂と減数分裂の関係性がより明確になります。​
減数分裂における第一分裂と第二分裂の詳細な解説

減数分裂による遺伝的多様性の創出メカニズム

減数分裂が生物にとって重要な理由の一つは、遺伝的多様性を生み出すことです。この多様性は主に2つのメカニズムによって実現されます。​
第一のメカニズムは、減数分裂第一分裂前期に起こる染色体の乗換えです。相同染色体が対合した際に染色体の一部が入れ替わることで、新しい遺伝子の組み合わせが生まれます。相同組換えによって出来る染色体のキアズマ構造は、相同染色体を第一分裂の際に正確に分配するためにも重要な役割を果たしています。

参考)乗換え (生物学) – Wikipedia


第二のメカニズムは、第一分裂後期における相同染色体の独立分配です。父親由来と母親由来の染色体がどちらの極に移動するかはランダムであり、これによって配偶子の遺伝的組み合わせにさらなる多様性が加わります。​
この遺伝的多様性は、生物が環境の変化に適応し、進化していく上で不可欠です。配偶子の組み合わせに加えて染色体の乗換えによる組み換えが起こることで、遺伝的変異の幅が大きく拡大します。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10679668/

💡 減数分裂による多様性創出

  • 乗換え(交叉): 相同染色体間で遺伝子が交換される
  • 独立分配: 相同染色体がランダムに分配される
  • 結果: 各配偶子が異なる遺伝子の組み合わせを持つ