眼筋不全麻痺と複視
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眼筋不全麻痺の原因:動眼神経麻痺と外転神経麻痺
眼筋不全麻痺は、臨床的には「眼球運動に関わる神経(動眼・滑車・外転)や外眼筋の機能低下により、眼位がずれて複視が出る状態」の総称として扱うのが実務的です。日本弱視斜視学会の解説でも、麻痺性斜視では麻痺筋が作用する方向で眼位ずれが最大となり複視が強くなるため、患者は複視を避ける頭位異常(顔を回す・傾ける)をとることがある、と整理されています。
原因は大きく「生命予後や神経学的緊急性が高いもの」と「保存的に経過をみやすいもの」が混在するため、病歴と身体所見での層別化が重要です。たとえば動眼神経麻痺では、動脈瘤の圧迫が疑われるケースがあり、散瞳(瞳孔散大)や対光反射低下を伴う所見は特に重視すべきとされています。脳神経外科の解説では、動脈瘤による動眼神経麻痺で「突然の眼窩部痛、眼瞼下垂、眼球偏位、瞳孔散大」などが挙げられ、散瞳を伴う動眼神経麻痺はくも膜下出血の前兆になり得る点が強調されています。
一方で、糖尿病などの血管危険因子を背景とした虚血性(血管性)の眼運動神経麻痺は、自然回復の割合が多いという臨床知見があります。医書.jpの解説でも、血管性(虚血性)の眼運動神経麻痺は自然回復が多く、原因疾患(糖尿病など)の治療と併せて補助的に薬物治療を行う、という整理です。糖尿病性神経障害のガイドライン(日本糖尿病学会)でも、単神経障害は血糖コントロールとは無関係に自然軽快が多い、というポイントが示されています。
ただし「虚血性っぽいから様子見」と決め打ちするのは危険で、初診時に“虚血性の典型から外れる所見”がないかを確認します。典型から外れるポイントとしては、強い頭痛や髄膜刺激症状、意識障害、他の脳神経症状の合併、進行性、外傷、癌既往、免疫抑制、若年、発熱・炎症所見などが挙げられます(施設の救急プロトコルに準拠して運用してください)。麻痺性斜視のページでも「命にかかわる疾患がひそんでいることがあるため、複視に気づいたらすぐ眼科へ受診」と注意喚起されており、入口でのリスク評価が最優先です。
眼筋不全麻痺の症状:複視と頭位異常
眼筋不全麻痺が患者の生活に与える負担は「見え方の破綻」が中心で、なかでも複視が最も典型的です。麻痺性斜視では、麻痺筋が担当する方向視で眼位ずれが最大化し、複視が強くなるという“方向性”が診察の手がかりになります。日本弱視斜視学会は、外転神経麻痺では外転制限と内斜視が起こり、麻痺眼側注視で水平性複視が増悪し、複視回避の頭位異常(麻痺眼側への顔まわし)がみられる、と具体的に述べています。
医療従事者向けに強調したいのは、複視の問診を「有無」だけで終わらせず、患者が自然に行っている代償行動を拾うことです。たとえば「運転や歩行で疲れる」「片目をつぶる」「首がこる」「写真で顔がいつも傾いている」といった訴えは、複視そのものより先に出てくることがあります。診察室では、正面視で軽くても側方視で破綻するケースがあり、患者が“見やすい頭位”を自分で探している場合、再現性のある頭位異常として観察できます。
また、複視が日内変動する場合や、訴えと他覚所見が一致しない場合は鑑別が広がります。日本弱視斜視学会の解説でも、瞳孔異常がなく、複視や眼瞼下垂に日内変動がある場合は重症筋無力症との鑑別が必要、と明記されています。ここは医療者間連携のポイントで、眼科で「眼筋不全麻痺」と見えたものが、実際には神経筋接合部の問題(眼筋型MG)として治療方針が大きく変わることがあります。
眼筋不全麻痺の診断:MRIとMRAと救急
眼筋不全麻痺の診断で最も重要なのは、原因検索を“順番”として設計することです。多くの現場でまず考えるべきは、動脈瘤や脳梗塞など中枢性・血管性疾患の除外で、疑う根拠があれば画像検査を早期に組み込みます。眼筋麻痺の解説記事でも、脳動脈瘤・脳腫瘍・脳梗塞・頭蓋内圧亢進などが疑われるため、早急に頭部MRIやMRAが必要とされています。
特に「瞳孔散大を伴う動眼神経麻痺」は、救急対応が必要になり得る代表例です。脳神経外科の解説では、散瞳を伴う動眼神経麻痺は動脈瘤圧迫が強く疑われ、くも膜下出血の前兆である可能性がある、とされています。くも膜下出血の看護解説でも、内頚-後交通動脈(IC-PC)分岐部の動脈瘤で動眼神経が圧迫され、複視・眼瞼下垂・散瞳が症状として整理されています。こうした所見が揃う場合、眼科単独で抱えず、脳神経外科へ即時連携する判断が患者予後に直結します。
一方で、MRI/MRAを「撮るべき患者」と「外来フォローでよい患者」を分けるためには、最低限の神経学的スクリーニング(意識、言語、四肢麻痺、感覚、歩行、頭痛の質、髄膜刺激、眼底所見など)を同時に行う必要があります。画像に頼り切るのではなく、症状の時間経過(突然か、進行性か、反復性か)と随伴症状(疼痛、発熱、外傷)を組み合わせると、検査の優先順位がつけやすくなります。
ここで“意外に落とし穴”になりやすいのが、「虚血性で説明できそう」でも中枢に小病変があるケースです。近年はDWIの工夫で中脳の微小梗塞が検出され、孤発性の動眼神経麻痺として診断された症例報告もあります。臨床では、純粋な末梢神経障害に見えるプレゼンテーションが必ずしも末梢に限らない点を意識し、危険因子が強い患者や、所見が非典型な患者では画像の閾値を下げる運用が現実的です。
参考:麻痺性斜視の症状(複視・頭位異常)と、受診の緊急性について
参考:散瞳を伴う動眼神経麻痺が動脈瘤を疑う重要所見である点(くも膜下出血の前兆になり得る点)
眼筋不全麻痺の治療:プリズム眼鏡と斜視手術
治療の原則は「原因疾患の治療が第一」で、その上で患者の困りごと(複視、生活機能)を軽減する支持療法を組み立てます。麻痺性斜視の解説でも、原因疾患の治療が第一であり、発症から6か月経過しても複視が続く場合に斜視手術を検討する、とされています。ここでいう6か月は、自然回復が期待できる病態が一定数あること、また眼位が安定してから外科的矯正を行う方が結果の予測が立てやすいことが背景にあります。
実臨床で有用なのが、手術までの“つなぎ”としての光学的治療です。麻痺性斜視におけるプリズム眼鏡の適応を扱った報告では、まず原因治療を行いながら複視の軽減・消失を目的に治療し、手術時期は自然回復も含め6か月以上待つことが多い一方、プリズム治療などの光学的治療は早期から有用で、部分遮蔽が適する場合もある、と述べられています。患者にとっては「今日から生活できるか」が重要なので、診断名の確定と並行して、運転・転倒・就労の安全性まで踏み込んだ提案が必要です。
薬物治療については原因により位置づけが異なります。虚血性が疑わしい眼運動神経麻痺では自然回復が多いという整理があり、糖尿病など原因疾患の治療と併せて補助的な薬物治療を行う、という立て付けが一般的です。糖尿病性の単神経障害は血糖コントロールとは無関係に自然軽快が多い、というガイドラインのポイントも踏まえると、患者説明では「血糖が悪いから治らない」と短絡せず、ただし全身管理は再発や他の合併症予防のために重要、というバランスが求められます。
眼筋不全麻痺の独自視点:再発性有痛性眼筋麻痺性ニューロパチー
検索上位では「糖尿病」「動脈瘤」「脳梗塞」といった頻出原因が前面に出やすい一方で、現場で“説明がつきにくい反復例”に遭遇したときに思い出したい概念があります。近年の分類では「再発性有痛性眼筋麻痺性ニューロパチー(RPON)」という名称が用いられ、頭痛と眼球運動神経麻痺の反復が特徴とされています。脳神経外科の解説でも、眼球運動に関わる脳神経(動眼神経が多い)の麻痺を繰り返す発作で、同側の頭痛を伴うことが示され、麻痺は可逆性が多いが不可逆例の報告もある点が触れられています。
この病態を臨床で扱うときのポイントは、「痛みが強い=脳動脈瘤」と即断しない一方で、「反復するから良性」とも言い切れない、という二重の注意です。Tolosa-Hunt症候群などの有痛性眼筋麻痺の鑑別では、腫瘍、脈管炎、脳底髄膜炎、サルコイド、糖尿病、眼筋麻痺性片頭痛など多彩な原因があり、適切な検査で他の原因を否定する必要がある、と症例報告でも整理されています。痛みがステロイドで速やかに軽快しても、眼球運動障害は遷延することがあり得る点も示されており、「痛みが引いたから終わり」ではなく、神経所見の時間経過を追う姿勢が重要です。
医療従事者向けの実務としては、反復例に対し「毎回同じ説明で終わらせない」仕組みづくりが有効です。具体的には、初回と同じ側か、瞳孔所見はどうか、画像で神経走行に造影効果がないか、全身性炎症所見がないか、免疫背景や感染リスクが変化していないか、といったチェック項目をテンプレ化すると、見落としを減らせます。患者側も「また同じだろう」と受診が遅れがちなので、受診の目安(新規の散瞳、激しい頭痛、意識変容、四肢のしびれ・脱力など)を具体的に渡すことが再発例では特に重要です。
参考:糖尿病性単神経障害(外眼筋麻痺を含む)は自然軽快が多い、というガイドラインの要点
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/10.pdf

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