眼窩変形 外傷 眼窩骨折 後遺症と手術

眼窩変形 外傷と眼窩骨折

眼窩変形 外傷と眼窩骨折の要点
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症状・初期評価

眼窩変形は眼球陥没や複視、感覚障害として顕在化し、頭頸部外傷診療では見逃しが問題になります。

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画像診断と手術適応

CTを中心に眼窩骨折の範囲と眼窩内容逸脱を評価し、手術適応とタイミングを判断します。

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後遺症と長期フォロー

眼窩変形による整容・機能障害は遅発することもあり、多職種での長期フォローが重要です。

眼窩変形 外傷と眼窩骨折の病態

眼窩変形は、多くが眼窩底骨折や眼窩内側壁骨折などの外傷性眼窩骨折に続発し、眼窩内容量の増大や骨壁偏位により眼球陥没や眼瞼形態変化として顕在化します。

外傷機転としては、ボール外傷や肘打ちなど比較的低エネルギーの鈍的外傷でも生じうる一方、多発顔面骨骨折に合併する高エネルギー外傷では、眼窩上壁や眼窩縁を含む複雑骨折となり、整容と視機能の両面で重篤な眼窩変形を残すことがあります。

眼窩底は上顎洞、内側壁は篩骨洞と接し薄い骨板で構成されるため、眼球に急激な圧力が加わると「blow-out fracture」として眼窩内容が副鼻腔側に逸脱し、眼窩容積が増大して眼球陥没をきたしやすい構造的脆弱性を有しています。

また眼窩下神経や視神経周囲、外眼筋の嵌頓・牽引が加わることで、複視や視力障害、頬部~上口唇のしびれといった機能障害を伴う眼窩変形となる点が臨床上重要です。

眼窩変形 眼窩骨折の症状評価と身体診察

眼窩変形が疑われる症例では、まず視力・対光反射・視野・眼位を系統的に確認し、視神経障害や眼内損傷を見逃さないことが前提となります。

眼窩底骨折では、眼球陥没や眼裂狭小化、上眼瞼溝の深化といった微妙な整容変化が単独で現れることもあり、対側との比較観察と、患者自身の「顔つきが変わった」という訴えに注意を払う必要があります。

複視の評価では、Hessチャートやカバーテストが標準的ですが、救急場面では上下・左右・斜めの凝視方向での自覚的複視の有無と疼痛を簡便に聴取し、外眼筋絞扼の可能性を早期に推定します。

また、眼窩下神経支配領域(下眼瞼・頬・上口唇)の感覚低下や異常感覚は、眼窩下縁骨折や眼窩底骨折に伴う神経障害の指標であり、長期に残存すると生活の質に影響するため、初期から経時的に記録しておくことが重要です。

眼窩変形 CTを用いた画像診断と手術適応

外傷後の眼窩変形評価では、薄切骨条件CTによる冠状断・矢状断・軸位断の三方向評価が基本であり、骨折線の範囲と眼窩内容逸脱量、外眼筋の位置関係を具体的に把握します。

眼窩底骨折では、骨欠損面積がおおむね2平方センチメートル以上、または眼窩内容の明らかな副鼻腔内逸脱がある場合、将来的な眼球陥没による眼窩変形リスクが高く、早期手術の適応とされることが多いと報告されています。

筋絞扼型の眼窩骨折(主に小児)では、外眼筋が骨折部に嵌頓し急性の眼球運動制限と強い疼痛、悪心・徐脈などのoculocardiac reflexを伴うことがあり、24〜48時間以内の緊急手術が推奨されます。

一方で、通常型骨折では受傷直後の腫脹が強く、眼球陥没の評価が困難なこともあるため、一般には1〜2週間の待機後に腫脹が落ち着いた時点で複視や整容障害の残存を評価し、手術適応を最終判断する戦略がとられます。

最近では、3D再構成CTやシミュレーションソフトを用いて、対側眼窩容積との差を数値化し、眼窩変形の程度とインプラント再建量を術前に計画する施設も増えており、眼窩変形の再発予防や再手術例の減少に寄与している点は意外と知られていない進歩です。

眼窩変形 手術手技とインプラント選択の実際

眼窩変形を是正する眼窩骨折手術では、眼窩内容を眼窩内に戻すことと、骨欠損部を適切な形状で再建して眼窩容積を回復させることが主目的となり、アプローチとしては下眼瞼皮膚切開、経結膜切開、経鼻内視鏡アプローチなどが用いられます。

近年、日本でも白目(結膜)からの経結膜アプローチを第一選択とする施設が増えており、皮膚切開を避けることで瘢痕を残さず、術後の整容面で有利なだけでなく、全身麻酔下で比較的短時間に手術を完遂しやすい点が特徴です。

骨欠損部は、自家骨(腸骨、頭蓋骨、肋軟骨)や吸収性プレート、チタンメッシュプレート、ハイドロキシアパタイトなどの人工骨で再建されますが、眼窩変形の再発を防ぐには、眼窩ストラット(下壁と内側壁の接合部)など支持構造を意識した三次元的再建が重要とされています。

再手術例では、初回手術で挿入されたプレートが骨壁から浮いており、眼窩内容の支持が不十分で眼球陥没が残存しているケースが少なくなく、最近の報告では、人工骨を橋脚のように重ねてその上にプレートを載せ、眼窩容積を積極的に「減らす」ことで眼窩変形を補正する工夫が紹介されています。

また、軽度の眼窩変形や高齢・全身リスクの高い症例では、ヒアルロン酸や脂肪注入による眼窩陥凹充填が整容目的で選択されることもありますが、骨格変形を是正する治療ではないため、患者説明では限界と再注入の可能性を明示しておくことが実臨床上のポイントです。

眼窩変形 長期フォローアップと医療従事者の視点(独自)

眼窩変形は、受傷直後よりも数週間から数か月かけて腫脹軽減と瘢痕拘縮が進む中で顕在化する場合があり、初期診療で「問題なし」と判断された症例が後から整容・機能面の訴えを強くすることは、現場では意外と頻繁に経験されます。

そのため、救急外来や一般病棟で眼窩骨折患者を診る際には、視機能だけでなく「左右差」「目が小さく見える」「まぶたのくぼみ」といった整容の変化もカルテに記載し、必要に応じて形成外科・眼形成外科への早期紹介を組み込んだ院内フローを整備しておくことが望まれます。

医療者側が見落としやすいポイントとして、軽度の複視やしびれがあっても「そのうち慣れる」と患者が自己判断してしまうケースがあり、後遺障害認定や職業復帰、運転可否の判断に影響するため、症状の変化を患者自身が記録できるようなチェックシートや簡易アンケートを外来で活用することは、医療安全と説明責任の観点からも有用です。

また、眼窩変形が残存した患者では、心理的負担や社会生活上の制約が無視できず、形成外科だけでなく心療内科やカウンセリングとの連携、職場・学校への情報提供など、医療従事者がチームとして関わる視点が求められます。

長期フォローでは、視機能の安定だけでなく、ライフイベント(就職・結婚など)の節目で整容再建の希望が出てくることがあり、その都度リビジョン手術や非外科的治療の選択肢を再提示できるよう、診療側が眼窩変形を「長期的に向き合うべき外傷後状態」と捉えておくことが重要です。

眼窩底骨折の診断と治療の総説として参考になる日本語総説論文

眼窩底骨折の診断と治療(日本頭蓋顎顔面外科学会誌)

眼窩骨折手術と術後眼窩変形への具体的アプローチを写真付きで解説しているクリニックページ

白目(結膜)からアプローチする眼窩骨折手術